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第1部 パネルディスカッション(全2記事)

ここがヘンだよ日本企業 米国見本市で困惑される“商習慣”

2018年5月24日、MIJS(Made In Japan Software & Service)コンソーシアム主催による、「スタートアップのトップに聞く ”世界で勝っていくための作戦” meet ALIVE (MIJS Business Network Committee) #1」が開催されました。meet ALIVEとは、世界をより楽しく、より豊かに変えようとする企業やイノベーターたちが語らうMeet upコミュニティ。日本マイクロソフト株式会社のエバンジェリストの西脇氏が司会を務め、パネリストには株式会社tsumug、ユカイ工学株式会社、ライフイズテック株式会社のCEOが登壇しました。本セッションでは、海外と日本の商習慣の違いや、世界でビジネスを展開していく上で大切なことについて語ります。

日本でKickstarterを使うときの壁

西脇資哲氏(以下、西脇):こっち(スライドの下)の商品(Qoobo)はクラウドファンディングのKickstarterですね。

青木俊介氏(以下、青木):はい。

西脇:Kickstarterを実際にやられて(資金を)集めて成功されたんですけど、ちょっとどんな経緯でどんなご苦労があったか、そのあたりを教えてください。

青木:そうですね。僕たちがKickstarterをやるのは2回目だったんですけれども、やっぱり日本人がやってるプロジェクトはなかなか話題になりづらいというのがすごく……。なかなか大きい金額になりづらいということがあります。

西脇:牧田さんが笑ってますけど。大きい金額になったじゃねえかみたいな。

牧田:いや違うんです。私が(Qooboを)いじってるのを(青木さんが)心配そうに見てるから。

(会場笑)

西脇:壊れないように(笑)。

牧田恵里氏(以下、牧田):(続きを)しゃべってもいいですよ(笑)。

青木:はい(笑)。Kickstarterさんは、ちょうど昨年9月に日本オフィスを出して、日本のプロジェクトも支援する体制をちょっとずつ増やしていたんです。

西脇:日本だとどうですか。Kickstarterさんのほかに、クラウドファンディングで有名なところが2社ぐらいありますけども。

青木:正直、やっぱりまだまだ国内勢の(クラウドファンディングの)ほうが国内では目立つというか。国内のクラウドファンディングのほうが、支援者や大きい金額を集めることができると思うんです。

西脇:Kickstarterを選んだ理由は、当時有名なのがそれしかなかったからですかね。

青木:いえ、これは昨年10月にやっています。

西脇:ああ、これは新しいですか。

青木:はい。私は以前に1回Kickstarterでやったことがあって、その本部の方ともつながりがあったので、もう1回、日本初で海外に行くというのは、たぶん今日のテーマとも重なると思うんです。

牧田:「グローバルに行け」ということですね。

西脇:それだったら、Kickstarterで続けてやったほうがいい。

青木:はい。

西脇:Kickstarterはどうですか。

牧田:昔はあれでしたよね、amazonでしたっけ。米国法人がないと出せないとか、そんなことを言ってましたね。

西脇:昔はそういうのありました? 

青木:はい、ありました。

西脇:今は世界中誰でも出せるように。

青木:いえ、やっぱりオフィスがあるところだけですね。

coolとかわいい、アメリカと日本の反応の違いは?

西脇:CES(Consumer Electronics Show)が一つのきっかけだったと思いますけれども、この商品(Qoobo)を逆に世界に売り込もうと思ったとき、どういうことをされましたか。

青木:そうですね。やっぱり動画にはかなり力を入れて、なるべくきれいなものをつくりました。本当に広めるのは動画じゃないと難しいと思うんです。最初に発表したYouTubeのビデオを、ものすごいバイラルメディアで世界中のメディアで紹介していただいて、そこから海外のメディアからもたくさん問い合わせが来て、実際にアメリカのテレビ番組で紹介していただきました。

西脇:ご自身が。

青木:私も何回か出ました。

西脇:本当ですか。こうやって(Qooboを撫でて)かわいがってかわいがって。

青木:そうですね。一緒にアメリカのおばあちゃんに会いに行こうみたいな企画で、老人ホームを訪問しておばあちゃんに触っていただいたりとか。

西脇:アメリカの老人ホームはかなりしっかりしたのがありますからね。

青木:でも、やっぱりペットは飼えないみたいで、おばあちゃんたちが「This is cool!」みたいな感じですごいノリノリでした。

西脇:そのへんは日本と違います? 日本のおばあちゃんがなでなでして「クール!」とかは。

青木:「クール!」とまでは言わないですけど、日本でもけっこう喜んでもらえましたね。やっぱり受け止める反応は日本人とアメリカ人で違っていて、日本だとほとんどの人が「かわいいね」と言うんですけど、アメリカだと4分の1くらいの人が「顔がないと嫌だ」と言う人がいますね。

西脇:そう聞きました。顔とか口は言いますよね。

青木:そうなんですね。

西脇:だからキティを向こうに持っていったときに、サンリオさんがすごく苦労なさったのも口ですよね。差別的になるから。それはすごく言われます。

海外展開のヒントは現地で得る

西脇:牧田さんはロックの仕組みを海外に持っていこうと思ったとき、どういう戦略にしようというお考えはございますか。

牧田:今ちょっと試していますが、CESはもう4年連続参加してます。今のtsumugは創業3年目になるので、tsumugの始まる前からCESに行って、みなさんがこんなふうにやってるのかとか、こんなやりかたがあるのかと見ていました。

西脇:やっぱりCESは勉強になりますよね。

牧田:そうですね。今年はSands Expoですごく大きなブースを持たせていただきました。メルチャリを持っていったんですけど、入国審査のときに「こっちで買ったほうが安いぜ」と審査官に言われて、そんなのわかっているんだけど、この(メルチャリの)ロゴが入ってるのが大切なんだよと(笑)。

西脇:そうですよね。海外の方の反応はどうですか?

牧田:すごく良かったです。今年はけっこう日本のメディアさんも海外のCESに注目していただいて、NHKワールドさんとかも来てくださって。NHKワールドで(取り上げられたおかげで)当時は海外の方からの問い合わせが増えましたね。「なんで増えたんだろう」と思ったら、「あ、そうだNHKワールドだ」と。

西脇:聞いた話ですと、CESに今年も何人か社員の方も(行かれたとか)。

牧田:そうですね、インターンも含めてですけど15人ぐらい。

西脇:インターンの方も会社がお金を出して。

牧田:そうですね。アメリカにいるメンバーもいたので、アメリカはもうそのまま国内線で来てもらって、とか。

西脇:やっぱりCESは勉強にもなりますし、継続的に出してることって意味があるんですね。

牧田:CESはやっぱり継続して出していくのが一番おもしろいと思います。定点観測もできるし、やっぱり今はハードウェアだけじゃなくてサービスと一緒に提供される方も増えてきているので、ハードの単体売りというよりは、いろいろサービスをつけて(提供しています)。

CESから見える日本と世界の相違点

牧田:去年(のCES)は、Alexa祭りですよね。

西脇:Alexaだらけですよ。

水野雄介氏(以下、水野):ニュースで、トヨタとSwitch Labの任天堂はよく見ましたけど。

西脇:去年は車だったんですよ。

牧田:私、4年前も思ったんですけど、日本にいると、ラスベガスの家電フェアのニュースには、モーターショーばりに車しか映ってないんですよ。

西脇:そうなんですよね。本当に車しか映らないですよね。

牧田:でも、車の会場は全体の4分の1もないので、もうちょっといろんなものを映してほしいですよね。

西脇:「現地に行け」という話ですよね。本当はCESは、コンシューマー・エレクトロニクス・ショーなんですけど、今おっしゃったように、車のブースがすごくメディアでも見えるんですよね。モーターがあるからなんですかね。

青木:やっぱり、日本企業が一番力を入れてるところは車メーカーが多かったのかなとは思いますね。それで、日本のメディアだと車がすごく目立つ、ということはあると思います。

牧田:今年はけっこうsleep techとか、baby techとか、healthcare tech以外のいろんなカテゴリーが増えてますね。

青木:そうですね。リストバンドで運動量が測れるというようなものはだいぶ淘汰されてきて、その代わりにベッドにセンサーが入ってるとか、よりよい睡眠ができる抱きまくらとか、そういうのがいくつもありますよね。

牧田:VRをやってるのかなと思ったら、睡眠に良い脳波をコントロールするためのデバイスとか。

青木:それこそ、教育用のプログラミングが学べるロボットみたいなものとか。

西脇:ライフイズテックさんもあってもよさそうですね。

水野:はい。今年はちょっと(CESに)出たいなと思っています。

ビジネスで世界に進出するためには何が必要か

西脇:さて、お三方におうかがいしたい。世界に進出するためには、会社をつくって、大きくして、世界を見据えるビジネスをやらなきゃいけないんですけど、やっぱり重要なことがいくつかあると思うんです。

例えば英語なのか、あるいはマインドなのか、それか知り合いの人脈か、海外進出まで見据えた会社をつくって、それを実現させるためには何が重要なのかというキーワードをちょっといただきたいと思います。一つないしは二つで考えてください。

つまり、今日いらっしゃっている方に、「これは大事にしておけ、これは学んでおけ、これは今やっておけ」ということを書いていただきたいと思っています。じゃあ、お願いします。その(書いていただいている)間、私がちょっとしゃべってます。

ちなみに私はよく、スタートアップの方の資金の話とか、「マイクロソフトで取り扱ってよ!」みたいな話があって、売り込みもけっこうあるんですけど、一貫して申し上げていることの一つは英語なんですね。

外資系にいると、それをすごく感じるんですよ。「外資系だから英語しゃべれるだろ、西脇さん」じゃなくて。私はそんなにしゃべれないんですけど、度胸なんです。

海外の方は、(相手が)たじろいでる瞬間に「ああ、もうこいつ駄目だ」と思っちゃう。英語が上手いか下手かじゃないんですよ。単語が素晴らしいか素晴らしくないかじゃないんです。そんなこと言ったら、イギリス人の英語ってすごくきれいですからね。「うわあ、いい英語しゃべるなあ」と思いますから。

ただ、やっぱり(相手の)度胸とか、落ち着きですごく見計らうんですよね。そこでたじろいでしまうと「まあこいつ、俺の話なんて聞かねえよ」という。けっこう最初のインプレッションが大事なんですね。

それが一つかなと思います。その次に技術力や人脈ですね。マイクロソフトにいるとやっぱりそういうことを感じます。さて、三名の方におうかがいしたいと思います。

「コミット」と「日本らしいユニークなもの」

西脇:順番は……そうですね、じゃあ水野さん、お願いいたします。何が必要でしょうか。

水野:僕は「コミット」にしてみました。

西脇:コミットメント。ちょっと説明してみてください。

水野:もちろん英語も必要だし、人脈も必要だし、まだこれからなので、何が一番必要なのかまだわからない部分があるんですけど。

一番言われるのは、「じゃあ投資をしよう」というときに、「ここに会社はあるのか、君はこっちに来るのか」と言われるんですね。シンガポールで会社をつくったときも、そういうことがすごくありました。

西脇:経営者だから決断を求められますしね。

水野:そうですね。あとは日本を主軸としてやっていくのか、本当にグローバルにやっていくのかという代表のコミットメントがあるのかは必ず聞かれるので、まずはそこなのかなと思います。

僕はソニーの盛田さんがすごく好きなんですけど、盛田さんはアメリカに出るときにニューヨークの五番街に自分が住んで、毎夜パーティなどをやって人脈を自分で広げたし、「絶対これを成功させるんだ」というコミットは、非常に重要なんじゃないかと思っております。

西脇:コミットメント。「経営者として責任を持て」ということですね。では続いて青木さん、お願いできますか。海外進出に大切なもの、お願いします。

青木:「日本らしいユニークなもの」ですね。

西脇:「日本らしいユニークなもの」。ちょっと(ご説明を)お願いします。

青木:そうですね、僕たちが製品を海外に展示持っていくと「This is very Japanese」みたいなコメントがあるんです。

西脇:言われるんですか。

青木:言われます。自分たちではそんなに意識してはいないんですけれど、やっぱり海外に持っていったときにすごくユニークなものは日本にいっぱいあると思っていて、そういう良さがうまく出せれば世界でも戦えるんじゃないかなと思います。

海外のオンラインメディアで一番人気があるゲームは任天堂のSwitch だったりしますし、(日本のものは)ああいうすごくユニークなものだと思います。僕は任天堂はすごく好きで、ニューヨークの任天堂ストアに何回か行ったことがあるんです。

日本人はまったくいないんですけど、「お前東京から来たのか」とか言われて、「日本人に会えてうれしい」みたいな感じですごく言われます。アメリカ人の大人も子どもも、もう本当に喜んでマリオのグッズなどを買っているのを見て、こういうユニークなものが受けるんだなと思います。

西脇:日本のユニークなものはまず強いんですよね。

契約の「スピード」が商談成立のカギ

牧田:最近観たスティーブン・スピルバーグの『レディプレイヤー1』。

西脇:みなさん観ました? すっごい有名な(映画です)ね。

牧田:みなさん、観た方いらっしゃるんですかね。

西脇:若干ネタバレになってもいいので、ちょっとご説明ください。

牧田:スピルバーグさんが日本のコンテンツが大好きなので、原作も日本のコンテンツがすごくいっぱい出てくるんですよ。観ると「あ、日本すごいな」と思います。

西脇:スピルバーグの映画の中にちりばめられている日本のコンテンツの素晴らしさを感じさせる、(ということ)ですよね。映画はどういうストーリーでしたっけ。

牧田:映画は、未来の世界でVRの中で生活をしていくという、わりと……。

西脇:そうですね、VR映画なんですよね。というのがテーマになっている映画なんですけど、やっぱりVRでもなんでも、使われているコンテンツが重要ですよね。そこで日本のものが使われている。それも、今に通じる「日本らしいユニークなもの」ですね。では、最後に牧田さん、アメリカ進出にとって重要なことはなんでしょう。お願いします。

牧田:私は「スピード」。重要なことというより、自分が感銘を受けたことです。日本でもすべてのものに言えると思うんですが、スピード感が日本と比べて圧倒的に違うなと思っています。

私が初めてCESに行ったのが4、5年前ぐらいなんですけど、そのときのCESはSuite Room Meetingと言って、実際に会場内に出展はしてないんですけど、ラスベガスのホテルのSuite Roomを使って、そこでどんどん商談をしていくみたいな感じでした。

西脇:そこで契約も決まっちゃうんですよね。

牧田:そうなんですよ、その場でもう。けっこうCESにいらっしゃってる各メーカーさんとか各キャリアさんとか、世界中のVIPの方たちがいらっしゃっているので、その方たちともアポイントもいきなり取って、だいたい4個とか5個ぐらいの質問で商談が決まっていく感じです。

水野:へえ、おもしろそう。

名刺を集めて写真を撮るだけで帰ってはいけない

牧田:それを一回見させていただいて。

西脇:やっぱりスピード感ですね。

牧田:すごかったですね。そこのアメリカ人からも言われたんですけど、「日本は名刺集めしてるよね」みたいな話をされて、確かに(笑)。

青木:遠回しに馬鹿にされてますね。

西脇:(アメリカでは)とりあえず商談するんですよね。

牧田:そうなんですよ。ちょっと恥ずかしくなりました。あと、「けっこう写真だけ撮って帰るよね」とか(言われることも)。

西脇:みなさんそうじゃないですか、イベントに行くと写真だけ撮って。

牧田:CESに初めて行って質問したら、「お前、どこから来たの?」と聞かれて「日本だよ」と言ったら「え、日本人なのに質問するの?」なんて言われました。

そのくらい、ちょっとギャップを感じて。日本だと普通だと思ってたんですけど。私はこんな顔してますけど、ずっと日本で育っているので、「え、こんなに違うんだ」というショックを受けました。

やっぱりそこに馴染まないといけないし、そのスピード感に勝っていかなきゃいけないので、けっこう自分のマインドから変えていかないと、と思いました。

西脇:そうですよね。CESは今、牧田さんがおっしゃったように、サイドミーティングエリアがすごくたくさんあって、さまざまなミーティングが行われているんですね。

1つ目は、牧田さんがおっしゃったように、代理店契約なんですよね。名刺交換をして、そこで数量のコミットメントをするんです。だからコミットの話なんですよ。「だったら契約するよ」と言うんですね。

2つ目がサプライヤーなんです。商品を出していると、「うちの商品を使ってくれ」と言われるんです。実は、CESはサプライヤーの契約のイベントなんですよね。売るところよりも、サプライヤーの契約をみんなすごく狙っている。

だから、アジア勢がすごく契約に躍起になっている。その作戦で、日本はやっぱり負けてるなというのは私も感じます。

さあもう1回いきましょう。「コミットメント」、そして「日本らしいユニークなもの」、それを「スピーディーに」持っていけ、ということですね。これはみなさん、とても重要なところなので写真を撮ってくださいね。

尊敬する経営者

西脇:さて、もうひとつ質問をさせてください。みなさんもうすでに活躍なさっていますけど、これから海外に進出していくにあたって、やっぱり心の奥底には、経営者として学んだ大事な遺伝子というか、誰かに学んだことや尊敬する人がいると思うんです。

例えば、ホンダに勤めてる方は、みんな本田宗一郎と言うんですね。ソニーは盛田さんと言うわけです。ですから、お三方にもたぶん(経営を)学んだ師となる方、あるいはお手本だったり尊敬する人、この人の言葉で勇気づけられたということがあると思うんです。

お三方の尊敬する経営者像を知りたいと思っております。ちなみに私は日本では孫さんとか言ったりするんですけど。そこにいらっしゃる内野さんも、尊敬しているんですよ。本当に経営者としても素晴らしいんですね。

内野氏:何も出ないよ。

西脇:本当ですか。これ以上言わないでもいいですか。ベンチャーのときにお会いしてるんですけど、やっぱりすごく決断が早かったですよね。ただ、時間の使い方がすごく上手で、お仕事の時間が終わると、お仕事の話をまったくしないんですよ。

大阪に行って食事の時間になると、食事の話しかしないんです。お酒が入るとお酒の話しかしないんです。だから、本当私が申し上げるのは失礼かもしれませんが、私はすごく時間の使い方が上手な経営者のお一人だなと思っております。

MIJSはそういう方がたくさん多いので、本当に羨ましいと思います。さて、今度は逆からいきましょう。牧田さんお願いします。

牧田:はい。私はさくらインターネットの田中社長です。

西脇:素晴らしい方ですよね。

牧田:そうなんです!!

西脇:ちょっと意外なんですよ。田中社長はバキバキやってらっしゃいますけど、もっとこう、スター的な感じかなと思いきや。

牧田:そうなんですよ。スター的な方だと、スターすぎちゃうので私はちょっと……。なんてことを言うと、田中社長が(笑)。

西脇:「そんなことないですよ」。

(一同笑)

いつでも初心を忘れず謙虚にいること

牧田:実際によくお見かけする方でもあるので、18歳から今のさくらインターネットを20年やってらっしゃるんですけど、それこそインターネットの変遷をずっと見ていらっしゃった起業家の一人でもあると思うんです。ぜんぜん奢らず偉ぶらず、こういうイベントがあると、登壇者なのにお客さんのために扉開けてたりするんですね。

西脇:登壇者で社長なのにね。

牧田:そう、受付に座ってらっしゃったりとか。

西脇:謙虚なんですね。

牧田:謙虚な姿勢で同じ目線で話してくださる方です。

西脇:実際にお会いになって、いろんなアドバイスとかいただいたりするんですか。

牧田:そうですね、アドバイスをいただくこともありますし、一緒に考えてくれる方だなと思います。私も今、自分が社長という肩書でこういうところに呼んでいただいたりするんですけど、どんな状態になっても初心のような気持ちをずっと持っていたいなと。そういうことを常に頭の中に残してくださる方だなと思います。

西脇:初心忘るるべからず。

牧田:はい。

西脇:私もすごく以前から存じ上げていて。マイクロソフトの前にオラクルに勤めていた時代から存じ上げているんですけど、すごく丁寧な方です。お辞儀もすごくされる方なんですよね。

そして、当時はアポイントがなくても会ってくれまして。今は社長ですから、セキュリティの面もあって難しいでしょうけど、素晴らしい方ですね。

スティーブ・ジョブズに先駆けた日本人

西脇:続きまして、青木さん、お願いします。

水野:我々一緒なんです。

西脇:一緒ですか、じゃあどうぞお願いします。(ボードを上げる)ソニーの盛田さん。かぶりましたね、二人で相談したんじゃない?(笑)。

水野:いやいや、会ったことはないんですけどね。

青木:お会いしたことはないんですけど。

西脇:あ、本当ですか。

青木:でも、僕は盛田さんの映像はYouTubeに古い映像がいっぱいあるので(見ています)。それがかっこいいんですよ。まずすごいのは、日本人なのに、アメリカのアメリカンエキスプレスのCMに出てるという(笑)。

(会場笑)

西脇:確かにそうですね。

青木:それで、普通にアメリカでタレント活動してるという。夜の番組でも、盛田さんコーナーみたいなのがあって、当時は日本の技術もすごかったので、「今度はこんな小さいカセットでビデオが撮れるんだよ」みたいなものを毎週出して、みんながどよめく。

これはYouTube で見られます。決して英語は上手くはないんですけど、モノがすごいのでみんなちゃんと聞くんですよね。

西脇:私もおっしゃるとおりで、「こんな小さなカセットで音楽が聴けるんだよ」みたいな話って、ぶっちゃけ少し前、スティーブ・ジョブズがやってたのと同じじゃねーかと正直思うんですよね。「盛田さんが昔やってたよ!」と思うんですよ。

青木:そうですよね。

世界的なイノベーションを起こし続ける会社に

西脇:さて、じゃあ水野さん。なぜ盛田さん(を選ばれたんですか)。

水野:そうですね。僕は盛田さんの本とかYouTubeもすごく観たんですけど、もともと盛田さんは物理出身なんですね。僕も物理学出身なので、本を読んでいて、考え方が似てるなとすごく思うんです。

西脇:例えばどういう考え方ですか。

水野:例えば、物理は基本的には本質を見抜く力がすごく重要で、世の中にはいろいろな物理現象があるんです。この物理現象がすごくシンプルなひとつの方程式で成り立つわけですよね。F=maとか。力は質量×加速度。こんなにシンプルなことがあるのか、と。

西脇:たぶんシンプルなのに、ほとんどの方がシンプルになっていないと思っていますよね。

水野:物がこう動くのも、僕がこうやって(ボードを)出すのも、全部同じ方程式で動いている。しかもそれを因数分解して、mとaに分解する必要があるわけじゃないですか。

物理にはそういうところがあるんですけど、経営にも目的があって、その目的に対して分解していく考え方が戦略という。そういうところが、まず読んでいておもしろい。

それで、やっぱり11個のイノベーションを起こしたという。5年に1回くらい起こしたと言われてますけど、ジョブズまでもがみんなソニーに感化されて、ソニーみたいな会社をつくりたいと思った。

(ソニーは)「世界のソニー」と言われてましたけど、僕らも教育という業界で、「世界のライフイズテック」と言われるような、5年に1回、世界的なイノベーションを起こし続ける会社をつくりたいというのはすごく思いますね。

西脇:盛田さんから学ぶことは多いですね。もう1回、3名の(ボードを)出してください。実は私、ちょっと意外だったんですよね。わりとトレンディな方が出てくるかと思いきや、真面目(な方)。言葉が悪いですけど、愚直な感じですよね。そういう方を選ばれたということですね。

経営者が自分の会社を自己評価

西脇:では、もう一つお伺いしたいんです。例えばライフイズテックさんは、もうブランドとして非常に有名なわけですよね。ディズニーさんとやってらっしゃるんですから。みなさん方が、ご自身の会社を評価したときに、(どのくらいかを)数字で教えて欲しいんです。

自分が描いているゴールに対して、今、何パーセントぐらいまで来ていますか。みなさんがどういう尺度で自分の成長を描いているか。これをちょっと聞きたいんですね。これは内野さんにも聞きたいと思ってるんです。何パーセントぐらいか答えてください。

内野:内緒。

西脇:内緒! さあ三名の方に聞いてみたいと思いますけど、ご自身の会社はまだ10パーセントぐらいだ、いや半分ぐらいだから50パーセントぐらい。そういう、何パーセントぐらいの地点にいるのかをちょっと聞きたいと思うんですね。

そうすると、これからどんなことをしていかなきゃいけないかということをたぶんロードマップにしてると思うんですね。青木さん、ずいぶん慎重に書いてらっしゃいますね。これ、ご自身の会社が何パーセントぐらいなのかということを、「せーの」でいきたいと思います。

牧田:本当、難しい。

西脇:さあ、ご自身の会社は今何パーセントぐらいなのか。せーの、お願いします。

(一同回答)

ほう、2パーセント、15パーセント、8パーセント。

世界の認識を変えたロボット「Pepper」

西脇:では、牧田さん、8パーセント の理由は?

牧田:8パーセント の理由ですか。

西脇:はい。まだ92パーセント 残してるんですからね。

牧田:そうなんです。まだ92パーセント。さっきのTiNKというモデル、コネクテッド・ロックというものだけでも、まだ8パーセントだと思っているんです。やりたいことはまだその先にあるので。

西脇:ぜんぜん大きいと。

牧田:そうなんですよね。今回のtsumugが初めての自分の会社なんですけど、正直こんなにいっぱいお金が使えるとは思わなかったんですよ。それはお金を貰って使える、じゃなくて、自分が使いたいことが生まれてくるというのが、体験として実は初めてです。

西脇:そうするともっとやりたくなるんですよね。

牧田:そうなんですよね。(お金を)使うのはすごく難しいことなんだと思っていたんですけど、こんなにも使いたいと思える先があるのはとても幸せなことだと思っています。

西脇:牧田さんの話はすごく一貫してるんですよね、お金には色があるという話から、投資はちゃんと利益のある人からお互いにやるということですね。そして、そのお金がこんなにも使えるんだということがあるから、会社が無限に広がっていく。すごく一貫しているんです。わかりやすい。

では青木さん。15パーセント(の理由はなんですか)。

青木:そうですね。僕たちはロボットの会社と言っていますけども、世の中でロボットと言われだしてから、本当にまだ4年も経ってない。Pepperが出てきて、初めてみんなロボットと言い始めたんですね。Pepperが出る前に、「僕がロボットでビジネスをしたい」という話をしても、みんなギャグだとしか思ってくれなかったんですよ。

西脇:Pepperは世界を変えましたか。

青木:Pepperは世界の認識を変えたと思いますね。やっぱりビジョンを示したというか。それで世界が変わったことで、僕たちも本当にロボットのビジネスになり始めたというのはありますし、ようやく自分たちの目指す方向というか、解くべき問題みたいなものが見えてきたところかな、と思っています。

西脇:まだまだ、見えただけだと。

青木:はい。

西脇:では2パーセント。非常に少ない数字なんですが、ちょっとお願いします。

水野:そうですね、本当にやりたいことがまだまだあって、21世紀の教育変革というのが僕らの会社の目標、ビジョンです。次は学校をつくりたいけど、学校は教育予算がどんどん減ってくので、学校を民営化していかなきゃいけない。

そうなると、まずモデル校を1校つくって。20年後、30年後には、厚生年金に入っていない会社には新卒が入らないのと一緒で、学校を持ってない会社には(人が)入らないので、学校を持ってくださいよ、ということになる。

やっぱりオックスフォードみたいに、地域を絡めて700年続く学校ってすばらしいなと思っていて。いじめの問題もそうだし、先生の問題もそうだし、一人ひとりの感性を最大限に伸ばすためにやれることがある。

しかもエデュケーションとかエンターテイメントって、エデュケーションにテクノロジーとかエンターテイメントをかけ合わせて変えられることがたくさんあるので、人生を賭けて挑戦していきたいなと思っています。

西脇:なるほど。だってあと98パーセントもありますからね。

水野:そうですね、50倍なんですね。

これからの発展のために企業が求める人材とは?

西脇:では、次の質問です。この残りのパーセントを埋めるためにどういう人材が必要なのか、どういう人材があれば残りのパーセントを埋められるか。「こんな人が欲しい」というのをちょっと書いていただきたいと思っております。

けっこうパネルのMCをやらせていただくんですけど、パーセンテージがすごく低かったですね。これはここ数年の傾向なんです。昔はけっこうパーセンテージが高かったんですよ。つまり、やった感ややりきった感をけっこう出しているんです。

例えば、昔はディズニーと一緒にやってスゴ受けのインベストをしたら、もうけっこうやりきった感なんですよ。でも今はすごく感応性が高い。ITは本当にそれが深いと思うので、けっこうみなさん少ない数字を書かれるんです。これは特徴として現れてるなという気がしました。……と、言ってるあいだに書いてくださいね。

(会場笑)

西脇:残りのパーセントを埋めるために、このあとどういう人材が欲しいか、ということですね。それをぜひ書いていただきたいです。例えばお金に細かい人とか、人脈のある人とか、エンジニアとか、やっぱり天下りだとかいろいろある。

どんな人がいれば経営を世界に羽ばたかせられるか。もしかしたら、MIJSからそういう人が集まるかも知れませんからね。さあよろしいですか、じゃあいきましょうか。水野さんお願いします。

水野:僕は各分野のトップです。

西脇:専門家ですか。

水野:専門家という言い方もそうですし、わかりやすく言うと、例えば自分の会社で中高生向けのファンドを作りますということになったら、孫さんに来て欲しい、みたいな感じです。

つまり、例えばこれからもっとVRで教室をつくりましょう、となるとそのトップが欲しいし、例えば海外に向けてマーケティングもっとやっていかなきゃいけないならそこのトップの人が欲しい。Facebookでやってた人とか。こないだのメルカリじゃないですけど。

もちろんそのときの企業の体力に合わせなきゃいけないんですけど、それにギリギリいけるような、レアルマドリードをつくるんだったらトップの人を。

西脇:つまりあれですね、トップだということですね。私、専門家と申し上げましたけど、実はトップなんですね。

水野:トップが欲しいです。

西脇:ありがとうございます。では牧田さん、お願いします。

牧田:はい。もちろんフェーズによると思うんですけど、固定概念を捨てきれる人ですね。

西脇:まったくもう捨てきっちゃう人。

牧田:もう捨てきっちゃう人。

西脇:過去なんか捨てきっちゃう。

牧田:そうなんです。これは今自分もトライしてることなんですけど、やっぱりすごく難しくて。自分がどういう過去体験をしてきたかとか、なにで成功体験があったかとか、そういうのにとらわれないで今の事業を考えたり、新しいことに取り組むのはすごく難しいんですよね。

それはもう若い人もご年配の方もみなさんそうだと思うんですけど、どの年代の人でも、これをやれる人がやっぱり強いですね。なんでもつくれると思います。

西脇:じゃあそんな人が人材として集まればいいわけですね。

牧田:今はそうですね。

西脇:そうですよね。さて、そして青木さん、お願いします。

青木:はい。(コメントが書かれたボードを出す)

(会場笑)

西脇:そうだね、お金に変えてくれないとね。商材をお金に変えてくれる人がいいよ、ということですね。

青木:もう日本だけじゃなくて、世界で売ってくれる人ですね。

西脇:MIJSはけっこう優秀な人が多い。ぜひともアプローチしていただきたいと思います。さて、こんなかたちで、将来に向かってお三方が考えている内容を整理させていただきました。みなさんの参考になりましたことを願って、この時間を終わりにしたいと思います。どうぞ拍手をお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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