2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐々木紀彦氏(以下、佐々木):皆さん、こんにちは。札幌で開催中のIVS Spring 2014 インタビュールームにゲストをお招きしております。今回お越しいただいたのは、こちらのお二人です。自己紹介していただいていいですか。
森川亮氏(以下、森川):LINE代表の森川です。今日はよろしくお願いします。
田中良和氏(以下、田中):GREEの田中です。よろしくお願いします。
佐々木:司会を務めさせていただきます、東洋経済オンラインの佐々木です。(※編集部注:この対談は5月に行われたものです)よろしくお願いします。今日のテーマは「改革力」ということで、昨日と今日と、色々セッションでもお話しされていましたけれど、ちょうど森川さんはLINE、今7年、社長をされているというお話でしたよね。
森川:はい。
佐々木:GREEは今年で10周年ですよね。
田中:そうですね。
佐々木:創立10周年ですね。その中で、色々紆余曲折あって常に変革してきていると思うんですけれども。LINEはずっと成長しているように見えますけど、その間でもどんどん変革はしているわけですよね、同じように見えて。
森川:そうですね。
佐々木:どういうふうなフェーズがあったと、この7年間を見ていらっしゃいますか?
森川:さっきもセッションでお話ししたんですけれども、もともとゲームの事業があって、それで7年ぐらいやって、その後は検索とかポータルとか、ライブドアも一緒になって、その事業を4年ほどやって、またLINEが3年ほどというところなんです。
どうしても、やっぱりうまくいかなくなってから次を準備しても、なかなかリスクが高いというか、その間に人が辞めちゃったりする可能性もあるので、いかにうまくいっている間に次の準備ができるかなんですけど。
そうするとやっぱり、今のものに投資するよりも新しいほうがリターンが少ないじゃないですか。そのバランスってやっぱり難しいと思うし、どうしてもそれを評価システムとかに落とし込むと、新しいことをやっている人のほうが評価されない可能性がありますよね。なので、そういう仕組みとか考えとか文化を変えるのは苦労した時期がありましたね。
佐々木:そういう意味では、今すごい急成長しているだけに、変えるモチベーションを持たせるのが結構難しいという状況でもありますか?
森川:なので、僕たちがやったのは、いつも変わっているようにしたんですよね。
佐々木:いつもそうですよね。
森川:はい。何か変わらなくて変わる、変われなくて変わるんだと、何で変わるの? と説明しなきゃいけないんですけど、いつも変わっていればそれが文化になるので、なるべく落ちつかないように今やっていますかね。
佐々木:田中さんは、ある意味ちょっと厳しい質問かもしれないんですけど、LINEとはいま対照的なところにあるのかなと。すごい急成長した後に結構リストラなんかもして。けれども、ある程度底打ちしてきたかなという感じもするとは思うんですけども。今、10年の中でも一番の変革期にあるというふうに考えていらっしゃいますか?
田中:そうですね。会社を始めてから3年間くらい、mixiさんとPCのSNSの事業や、フェイスブックさんとかと競争した頃というのも大変だったんですけども、今は今で逆に色んなアセットとか人とかがいるから大変、というところもありますね。
ただ、そうは言うものの、昔の「この競争に負けたら会社じゃなくなっちゃうかも、今日すぐに」みたいなのに比べれば、随分楽なんじゃないか、というふうに自分としてはトータルでは思います。
佐々木:一番のたうち回った時期というのは、もう過ぎたという感じですか? その、大変だった時期ですよね。
田中:そうですね。やっぱり、うまくいっている時期があればあるほど、うまくいかないということを許容できないカルチャーがどうしても生まれてしまうところがあるな、と思っていまして。
ただ、世の中というのは絶対に、永遠に右肩上がりで正比例が引き続きなんていうものは存在しないんですけども、成功体験が長ければ長いほど、そうじゃない時期が、何かすごいおかしなことが、不安なことに感じ過ぎてしまうと。それは両方あるもんだなということを自覚する必要があると思いますよね。
森川:うん、確かに。
佐々木:LINEは、まだまだ急成長続くとは思うんですけど、もし、ちょっと成長が鈍化したりとか下がったときにどうしようかみたいなことって、備えってあるものなんですか。そういうことは考えなくていいものなんですか?
森川:LINEの中でも、1個1個のアプリに関していうと、うまくいくものもあるし、そうじゃないものもあるので、必ずしも全部が絶好調というわけでもないんですよね。
また一方で、さっきの人の話でいうと、だめなときに入ってきた人がやっぱり活躍して、いいときに入ってきた人というのは、ダメなときに辞めたりとか難しかったりするので、今これから入ってくる人たちが活躍して次につながるかのほうが、もうちょっと先を見ると重要なのかなと思います。
佐々木:私、田中さんに3年前くらいにインタビューしたことがありまして、そのとき田中さん、「外に出ていく、外に出ていかないと面白い仕事がない」ということで、ドリームチームをつくらなきゃいけないと。それで海外でもどんどん活躍しなきゃいけないとおっしゃっていたんですよね。
そこで実際、GREEというのはドリームチームっぽく、すごい人集まってきたじゃないですか。けど、今はちょっと抜けていったりすることもあるじゃないですか。
そういった中で、人材の回転というか、まさしく今、森川さんおっしゃったように、厳しいときに来た人ほど改革する中、そういった力になるという面あると思いますけど、いま人材で気にかけているところとか、特に注力しているところというのはありますか?
田中:お二人がおっしゃっているとおり、突き抜け始めたときに、とんでもなく突き抜けていくために、色んな人を集めてドリームチームをつくっていくという局面もあると思っているんです。
ただ同時に、すべてが薔薇色に永遠にうまくいくわけがないという中において、ドリームチームとか、うまくいっているときとか、成長局面でしか働きたくない人というのがいるわけですよね。
ただ、未来永劫どんなサービスでさえも続くわけがないので、その人たちというのは、ある一定期間一緒に働ける人であって、山あり谷ありの中で働いていける人たちではない、という部分があるなと思っていまして。
それは別に個人の人生観としては全く問題ないと思うんですけれども、会社全体で見ると、(好ましいのは)やっぱり山あり谷ありをつくりながら、より高い山に目指していける人というと、いいときだけ、いいときというか、会社がすごい有意義なときだけ働きたいという人があまりにも多いというのは、あまり好ましくはないですよね。
佐々木:そこが痛感されたところですかね。
田中:そうですね。ただ同時に、会社をすごい伸ばしている局面には、そういった人たちが必要だということもまたあると思います。活躍する人は活躍する局面もあると思いますので、そこのところのバランスが難しいと思います。
佐々木:森川さんなんか、社員があまり居心地が良くなくてもいいというような発言もされていますけど、そういう意味では、今成功している中でもどんどん辞めたい人はや辞めてもいいというような、ある種、流動性の高い組織づくりというものを考えていらっしゃるんでしょうか。
森川:例えば変な話、やる気がないとか会社についていけない人たちをモチベートするよりは、モチベーションが高くてやる気がある人をもっとやる気にさせたほうが、お互いにハッピーですよね。
やっぱり人間って別れることを恐れちゃいけないと思うんですよ。それは運命だと思って逆に別れたたほうが、幸せな場合がありますよね。なので、要らないとか要るとかというよりは、幸せになるためには意思決定をしなきゃいけない。
それは事業もそうだと思うんです。この事業育ててきたから、何とか守りたいという気持ちがあったとしても、もっと可能性ある事業があればそれを捨てても次にかけるべきだなと思っていて。
僕たちの会社の歴史でいうと、1個成功したときに人手が足りなくて、結構、手足みたいな人も正直採ったんですよね。そういう人というのは、ちょっと鈍化すると逆に最前線で活躍しにくい人たちだったので、それが反省になったので、いま僕たちがやっているのは、人手が足りないから採るというよりは、人手が足りなくなったら、その仕事をやめて集中しようというやり方をしています。
佐々木:たぶんフェーズとして、いまLINEが660名ぐらいですかね。
森川:はい。
佐々木:それで(GREEは)、2,000名ぐらいですかね。
田中:2,000弱くらいですね。
佐々木:その意味でフェーズが、人数としてはちょっと違うところもあるのかなと思うんですけど。セッションでも、数十人、数百人、数千人のマネジメントが全然違う、というところを強調されていましたけれど、数千人でどう違うんですか。特にどういうところを今痛感されて、問題意識を持たれているんですか?
田中:やっぱり、いわゆる単に組織的にというふうにやると、規模が大きくなるにつれて機能不全化するな、というのはすごい感じていますよね。だから、小分けにしたチームに分けていくということについて、この2年くらいはやっていました。
ただ、同時に一つの組織でも、もっと効率に動かせるというノウハウも十二分にあるなというふうに思っていて、だからGREEという、ある意味、本チャンの事業のほうでは、より組織立って、機能分権もするんですけども。
ただ、もっとやりようによっては、ちゃんとこなせるものを考えていきながらも、新規事業にいけばいくほど、1個の箱の中に入れるんじゃなくて、どんどん小分けにするということでやっています。
佐々木:森川さん、よくルールをつくらないという、いわゆる放牧みたいなこともおっしゃっていますけど、すごい急成長なので、600名になって、すぐ1,000人、2,000人になると思うんです。その中でやっぱり何か、結構変わってくる面もあるというふうに予測していらっしゃいますか。
森川:そうですね、もともと会社分割して減ったんです。もともと1,500人くらいの会社で、今はグループでいうと2,000人くらいになっているんですね、福岡の子会社とか入れると。僕たちがやっていたのは、最初はやっぱり新しいものと既存のものと。
既存のものは、やっぱり利益率を上げるために標準化するとかコスト削減とかプロセスとかやるんですけども、でも、そうするとその人たちのマインドがそうなっちゃうので、そういう人たちを最前線に持ってくるのが難しくなっちゃったんですよね。
どうしてかというと、オペレーションの仕事は子会社をつくって、それで全く切り分けたんです、採用もすべて。今その部分は一部、福岡でやっていますけど。なので、東京の人はとにかく新しくものをつくるかつくらないか、つくらない人は要らないくらいの気持ちで今やっていますね。
佐々木:分けちゃっているんですね。田中さんは「数千人の経営をしたことがある経営者なんかに色々話を聞いて参考にしている」というふうにおっしゃっていましたけど、森川さん、そういう過程で、何か参考にした企業とか人の話とかありますか? ここまで大きくしていく過程で。
森川:僕の場合は、韓国の会社があって、その創業者の話が一番参考になるというか。僕よりもちょっと先を行っているので、すごく参考になるところもありますし。あとやっぱり最前線で戦っている人の話が参考になりますよね。引退した方とか本に書かれていることよりは、今この瞬間頑張っている人の話のほうが参考になりますかね。
佐々木:最近良かった本とかありますか? 特に良かった本。
森川:最近、イノベーションを生む環境、どうしてもイノベーションというのは今まで人にすごく依存していて、この人は生めるけどこの人は生めない、とか。
でもその本質には、この人が生れてくる背景があるじゃないですか。そういうのを日本以外で、韓国とかシリコンバレーとかイスラエルとか研究しながら、もうちょっと人に依存しないイノベーションが定期的に起こるようなあり方をつくってみたいなと思って。そういう関係の本を読んでいますね、いくつか。
佐々木:イスラエルにも行かれたみたいですね。
森川:これから……。
佐々木:これからですか。
森川:今年行こうかなと思って(笑)。
佐々木:そうなんですか、ブログで書かれていたので……。
森川:この間、首相にお会いして。
佐々木:そうなんですね。田中さん、色んな方に聞かれて、特に印象に残った方のお話しとかってありますか?
田中:僕はやっぱり、いわゆる日本のちゃんとした大きな会社、というと言い方が漠然としますけど。そういった会社を経営陣としてやってきた人たちの話を聞くと、「何でこれってこうなっているんですか?」と聞くと、あたり前ですけど、今僕らがそれを見るとはじめからそうであるように思えるんですけど、それが10年、20年、30年かけてそうなっていた必然性というのがあるわけですよね。
特に日本の法律のもとにやっているので、そういった意味ではシリコンバレーの会社というのは参考にならないところがあるんですよ。法律がやっぱり根本から違うというところがありますので。そういう意味では日本の大きな会社のやり方を色々聞いていって、ああ、なるほどなと思ってやっています。
佐々木:特に面白いなって思った企業ありますか? ここはマネたいなと、部分的にでも。
田中:特にというのはないですね。どっちかというと普通に。うちの今の管理部門は商社からきた人が多いんですけど、いわゆる大手商社は、結構CMビジネスから、ある意味そういった普通のビジネスに変わっていったりとか、そのときにどういうふうに会社を分割していって、どういうふうな人材を送って、どうマネジメントしているとか。
かといって、全員が全員ある会社に行くわけじゃなくて、こうやっているとか。そういうのを聞いて、ああ、なるほどなと思っていました。
佐々木:そういう意味では法律的にも韓国は似ているんですか? 日本と。シリコンバレーと違って、結構学べるところ、直結しているところは多いですか?
森川:国ごとに違いますかね。たぶん、法律と文化と両方だと思うんですけど。韓国の場合は、海外に出ないと生き残れないというのが本質的にあるので、そこで働く人たちも、すごく新しいことにチャレンジする意識がありますけど、日本の場合は法律もそうだし文化もそうで、どっちかというとリスクマネジメントを求められるじゃないですか。そういうところが、ちょっと違うところがありますよね。
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