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最新のY Combinatorから見るスタートアップの潮流(全6記事)

Dropbox・Airbnbを育てた名門VC「Y Combinator」に一流の起業家が集まる理由

2017年10月30日、株式会社アドライトが主催するイベント「Trend Note Camp」が開催されました。第9回となる今回は「最新のY Combinatorから見るスタートアップの潮流」と題して、シリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル、Y Combinatorが投資する企業の特徴から、最新トレンドを分析します。登壇したのは、株式会社DGインキュベーションの林口哲也氏、BEENEXTの前田ヒロ氏、株式会社WiLの久保田雅也氏の3名。彼らが肌で感じてきた現地のスタートアップのカルチャーや、Y CombinatorのDemo Dayの様子など、起業家ならば知っておきたいシリコンバレーの現状を語ります。

運営力の高いY Combinator

木村忠昭氏(以下、木村):ここからはパネルディスカッションということで、会場のみなさまからもご質問いただければと思います。最初に私から1問だけおうかがいします。

なぜ今こんなにY Combinatorが注目されているのか、そしてY Combinatorのどんなところがすごいのか登壇順におうかがいしてみたいと思います。林口さんはデジタルガレージでアメリカ中に投資されたり、サンフランシスコの真ん中に、自社ビルですか?

林口哲也氏(以下、林口):そうですね。

木村:もうど真ん中にビルがあって、日本のプレーヤーとしてもアメリカでも非常に広く認識されているVCの1社だと思います。いろいろなアメリカのスタートアップとかコミュニティとかアクセラレーターを見る中で、Y Combinatorってどういうところが凄いなと思われますか?

林口:いろいろ考えてみたんですけれども、まず1つは毎バッチ120社ほどがプレゼンをしまして、当然応募してきたすべての会社がそこにいるとは思っていなくて、もうちょっと数は多いはずだと思います。それを年に2回きっちりと回していくっていう、その磁力というかそこに引き寄せるブランド力というのが1つ。

あとはその中からすごく大きく調達をしたり、注目を集めたりするような目玉案件みたいなものが必ず1、2社くらいは仕込んであるっていう仕込み力。

あとは先ほどどなたかのお話にもありましたけれども、フィルタリングみたいな機能という意味で起業家の方と投資家の方が、できるだけ本質的な議論ができる場をファシリテーションしてくれる。

ちょっと細かい話をすると、例えば当日になってから受け取るメールがあって、そこの中に「今日の登壇する会社一覧」みたいなものと、興味がありますよボタンとか投資したいですよボタンみたいなものがあるんですね。それをやると機械的にマッチングされたりとか、いろいろ仕組みがあります。

そういう細かなロジ周りは全部やってくれるという、運営力みたいなところ。このへんはずば抜けてレベルが高いなと思っています。

Y Combinatorは始動のタイミングが良かった

木村:ありがとうございます。続いてヒロさんにお尋ねします。ヒロさんは日本人の中でも先駆けてY Combinatorに行かれていますし、日本でも「オンラボ(Open Network Lab)」というアクセラレーションプログラムをされたりしています。古くからY Combinatorを見られている中でどういうところがすごいなと思いますか?

前田ヒロ氏(以下、前田):正直そんなにすごいことはなくて。すごくタイミングが良かったと思う。あの仕組みを2005年にやって、数年でDropboxとかAirbnbとかTwichとかInstacartとか本当に1,000億とか1兆円いってる会社もあるし。

とにかくすごく早いタイミングで実績を出して、それがブランドになってネットワーク効果になって、スタートアップ業界にとってのハーバードみたいな立ち位置になって。一番優秀な学生はとにかくハーバード大学を狙うじゃないか、だから同じかたちで一番優秀な起業家はとりあえずY Combinatorを狙うって感じで。ブランドとネットワーク効果が成り立っているという感じですかね。

でもやっぱり、自分たちがトップだという認識は絶対してると思うんだけど、それでも自分たちの勢いを止めないというかひたすら努力をし続ける。新しい取り組みを試す努力っていうのは素晴らしいなと思っています。

Y Combinatorフェローシップっていうプログラムだったり、あとスタートアップスクール。何万人か参加してるのかな? スタートアップスクールって要するにY Combinatorプログラムを、Y Combinatorに参加していなくても世界中どこからでもオンライン上で受けられるみたいな取り組みを始めるなどしていて。

とにかくすごくアンビシャスなんだよ。とくに今の後継者のサム・アルトマンはすごくて。そういうところはけっこう尊敬できるところかなと思いますね。

でも正直プロパーとしてそんなたいした……(笑)。アクセラレーターの運営者としては、たぶんやってることはそんなに変わらないという感じだから(笑)。でもやっぱりブランドができてると思いますね。

シリコンバレーのエコシステムにうまく適応

木村:ありがとうございます。最後に久保田さん。Y Combinatorについてどのようにみられていますか?

久保田雅也氏(以下、久保田):Y Combinatorだけで掻い摘んで見るというより、まさに今の話にも関連するんですけど、たぶんシリコンバレーのエコシステムの中にうまくポジションできてるところが価値が増幅できている理由だと思いますね。

フィルタリングなんてまさに彼らを通過した、あるいはY Combinatorのバッチですっていうのがある種スタートアップにとっては1つのかたちになります。それがブランドになってる。それをもって投資家が投資する。「あそこはY Combinatorが入ってて、セコイヤとか、アンドリーセンなんかが目利きして育てる。最後は大企業が、Y Combinatorだしセコイアだから高いけどいい会社なはず、と言って買っていく」みたいな感じですよね(笑)。

結果それが回り回ってエンジェルのお金になって、またY Combinatorのところに投資していく。いろんなエコシステムって、シリコンバレーはある種秘密結社みたいなかたちでみんながみんな、win-win-win-win-winくらいになるような人たちがガサっと集まってそういった経済圏を構成しています。

その中で、確固たるブランドと地位を独占的に持てている。もともとポール・グレアムが作ったときって?

前田:ボストンだった。

久保田:ですよね。ボストンだったのをわざわざサンフランシスコに移ってきた。みんなサンフランシスコまで行かなきゃいけないんですね。マウンテンビューに行って3ヶ月過ごさなきゃいけないんだけど。

「なんのためにやるの?」って言うと、コミュニティの洗礼を浴びましょう、サンドヒルのVCの調達、エンジェルにエクスポーズしましょうという意図だと。そこのコミュニティに入れている人、入ろうとしている人の結節点みたいなかたちに彼らがいるわけだと思います。結果、そこを、みんながすごくバリューとして認識している。

中身で言うとあれですよね? 基本的には、週1回食事会があるだけですもんね?

前田:そうですね。週1回の食事会があるのと、それ以外にも一応オフィスアワーっていう、任意なんだけどメンターみたいなY Combinatorのパートナーたちと時間を取って30分なり1時間議論をする、という感じでやっています。その2つのことしかやっていません。

ブロックチェーンでコスト削減

久保田:それを価値がないと見るかあると見るかだと思っていて、僕はすごく価値があると思うんですね。

さっきのスタートアップスクールって、今万人単位で受けてる「MOOC(ムーク)」で、みなさんも受けられるんですよ。ちなみに僕も受けてたんです。メルアド1個でオンラインでライブで授業してくれるんですね。そこでディスカッションとか参加できちゃったりして。ハンドルネームとか使ってするんだけど(笑)。そこまでオープンなのでコンテンツ自体はもはやproprietary(独占的)じゃなくて彼らはオープンにしてるんですけど。

ただバッチに入ってネットワークでコミュニティに入るバリューというのは、その3ヶ月でそこに対して自分を置いてみて、そこをきっかけにそのまま帰ってこないスタートアップもいるんですね。Airbnbもそうだと思います。そのまま本社をそこに移して、そのコミュニティの中で生きることのきっかけにもなるし。そのへんがバリューかなと。

木村:ありがとうございます。では時間も限られてますので、会場のほうからご質問をお伺いできればと思います。なにか質問がある方は挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか?

(会場挙手)

質問者1:もしあったらでいいんですけど。Fintechとかそういう企業がいっぱいある中で、今少しずつ保険とテクノロジーを掛け合わせてInsTechが出てきていると思うんですけど。Y Combinatorの中でそういった潮流とか、もしいいサイトがあれば伺いたいなと思います。

木村:InsTechについてですね。

久保田:記憶してるところで1社あったのは、インシュアの代理店、ディストリビューターの事務。紙ベースのレコードの裏側を全部ブロックチェーンにして、ある種システム屋さんです。そこがブロックチェーンなんですけどっていう会社はありましたね。

なのでどっちかと言うと、インシュアのアンダーライティングのほうじゃなくてディストリビューションのほうだけなんですけど。そこって古い産業なので、紙ベースあるいは電話、ファックスみたいな、非常に非効率なやり取りがアンダーライターだと、ディストリビューターが間に立ってされているみたいです。記録なので改ざんされないようなかたちでブロックチェーンが使えます、というロンドンのスタートアップの会社がありましたね。

質問者1:それはブロックチェーンにするメリットというのはあるんですか?

久保田:改ざんとか、あとコストが安いと思います。プライベートブロックチェーンだと思うので。

質問者1:なるほど。ありがとうございます。

Y Combinatorで情報をコントロールするのは難しい

前田:写真を撮って、その……。

林口:あ~ありましたね。

前田:あったよね。

木村:Cover?

前田:Coverだっけ。Coverというサービス名で、その物の写真を撮ったらInsuranceかwarrantyがもらえるみたいな。そんな感じの。もらえるんだっけ? そういうサービスがあったんだけど。うまくいってるかどうかは、ぜんぜんわからない(笑)。

林口:すみません、今パッと名前出てこないんですけど、確か1社、今回の夏の回にもいたような気がしますね。TechCrunchさんの英語版の記事が開催日同日で必ずDay1Day2で全社記事化されているので、そこに行ってInsuranceってキーワードを検索するとたぶん1個あったと思います。すみません、ちょっとそれをご参照ください。

質問者1:ありがとうございます。

木村:よろしいですか? ほかにいかがでしょうか?

(会場挙手)

質問者2:オフレコ案件に関連してお聞きしたいです。オフレコ案件の理由として、アイデアを誰かにパクられるとまずいからっていうのがあるのでしょうか? 

というのは、誰もアイデアをパクらないのであなたのアイデアをどんどんみなさんに話してブラッシュアップしたほうがいいという意見もある中で、僕はどっちかと言うとアイデアを話すことによって参入障壁が低くなってパクられる可能性をちょっと心配するので、話す対象は選びたいなと思います。そこらへんはどう考えられますでしょうか?

木村:オフレコについての理由とか。

林口:正確な理由はわからないんですけれども、情報をコントロールするっていうのは難しいんだろうなと思ってます。例えば今回でも、500人くらいがすでに見に行っていて、いくら「オフレコだよ」って言ってもどうしても漏れ伝わるんだろうなというのがあります。

それよりも、例えば事業の実績値、売り上げや顧客数を強調したいんだけど、ちょっとそこを伏せておきたいみたいなケースとか。Y Combinatorの運営側がなにか理由を持って「これはオフレコにしよう」みたいなのか。たぶんいろいろ理由はあるんじゃないかなと思います。

木村:ほかの方いかがですか? けっこうおもしろいチームがオフレコじゃなかったり、「本当か!?」みたいなことがけっこうあったりして(笑)。

久保田:そうそう。

質問者2:あんまり関係ないのかもしれないですけど、アイデアを話してブラッシュアップしたほうがいいのか、パクられることを心配するのはあまり合理的じゃないのか。そこはみなさんどう考えますか?

木村:例えばVCの投資家の視点としていかがでしょうか?

前田:プロダクトのフェーズによると思うんだけど、市場とプロダクトの適合性が見つかってない状態であれば、できるだけアイデアの検証をしたほうがいいと思うのであんまり公にしないほうがいいと思う。でもそれが見えてるのであれば、変に目立たないほうがいいかなとは思いますけどね。

もちろん目立ったほうがいいタイミング、資金調達やたくさん採用するタイミングだったり、目的があるのであれば目立ったほうがいいと思います。あんまり目立つために目立つのはよくないっていう感じだね。

木村:よろしいですか?

質問者2:ありがとうございます。

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