2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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でも、お2人って、また違うモチベーションでやられているのかなという気がしていて。それぞれどんなモチベーションでそんなリスクをとってチャレンジしているのか、お伺いしたいな。
山田淳氏(以下、山田):僕は頭の8割ぐらいは山のことしか考えていないので、起業という形よりも……。学生のころ思い描いていた姿というのは、自分の人生の時間の使い方として、例えば3分の1くらい自分の時間があって、3分の1ぐらい登山ガイドができて。
僕はガイドという仕事がすごく好きで、人を連れて行くのがすごく好きで今でも行くのですけれども、それプラス3分の1ぐらいでお金、生活できていくものを、基板となるものができるような姿になればいいなと。
その基板となるものも山絡みでできればベストだなと思っていて。だから、このテーマと全然離れてしまうのですけれども、僕は別に起業が楽しいとか、創業が楽しいと思ったことはあまりないんです。
経営者をやっていても、別に経営者が孤独とか、経営が楽しいとかと思ったこともあまりなくて。昼もちょっと話していたのですけれども、自分のサービスを使って、それがきっかけで山登りしましたとか、例えばレンタルというサービスがあったから、ようやく富士山に行けましたとか……。
うちの社員なんかはうちのフリーペーパーを読んで、山を始めようと思って、レンタル屋さんがあるとネットを調べて見つけて、レンタルして、僕のツアーに来て。どれもつながっていると知らなくて、八ヶ岳で酒を飲みながら「全部おまえか!」「全部おまえの仕業か!」みたいなことになって、結局入社したんですけれど(笑)。
そういうのがすごく楽しいんです。会社の売上が上がるとか、利益が上がるとかは、僕はあまり……。バイトからも「本当にお金に興味ないですよね」と言われて「いや、そんなことない、僕はお金好きやで」と言うんですけれども、本当に突っ込まれると、どうかよくわからないみたいなところはあります。
山田:そうですね。だから、例えばマッキンゼーに行ったときに、アウトドア系の企業がクライアントでいて、そこを通じて登山人口を増やせたら、僕はそれがよかったと思うし、そういう意味でいうと手段です。だから、起業したいと思ったことはないです。それは違う……?
柴田:いや、1番最初は全然違いました。もう本当に起業はかっこいいなと。2005年って藤田社長の、『渋谷で働く社長の告白』という本がベストセラーになった年なのですけれども、僕はミーハーなので、すげぇかっけーと思って(笑)。これ、なりてぇと思ってなったのが最初のきっかけです。
お金がモチベーションという話、これはすごく面白い話だと思っていて、僕はパフォーマンスと動機の種類は最終的にはあまり関係ないと思うんです。
ただ、金銭モチベーションは、実はあまり大きいモチベーションではなくて、もちろん人によってお金が大好きな人もいるかもしれないのですけれども、どっかでサチる可能性がすごい高いなと思っていて。
「もっと世の中変えたい」とか、「これ必要だと思う」みたいな動機のほうが多分モチベーションの総量として大きくなる可能性が高いのではないかと思っています。
結果に結びつくのは、本当にモチベーションの総量だと思うので、金銭動機でも別に全然構わないけれども、それよりはもっと強い動機があるんじゃないかと思います。
柴田:いや、だから、本当にすごく好きで、もう幾ら持っていても、幾らでも欲しいと思えるのだったらいいと思うのですけれども、ただ凡人はそう思えないと思うんですよね。数10億円、貯金があったら「もうしばらくいいや」というふうに、おなかいっぱいになると思うんですよ。使えないですし、大体。
山田:確かに。
柴田:なので、そうなったときに、モチベーションがサチってしまうので、そうではないことのほうが、ずっと頑張り続けられるのかなと思います。
山田:逆に、長谷川さんは、そのポジションが降ってきたわけですよね。
長谷川:そうですね。
山田:その中でのモチベーションというのは、最初の頃と今とで全然違うんですか。
長谷川:ベースが僕は、焼き肉屋さんにすごく期待をかけてもらって「社会を変えていきたい」とか、「日本をよくしたい」というのがもともとすごく強いんですね。だから、社会問題の解決というところに異常に燃えてしまうという気質が本能的にあるので、それはずっと変わらず持っているのですけれども。
会社を経営しだして変わった部分は、社員を大事にしたいなという気持ちで、これは経営しだしてから初めて、正直感じたことです。それはモチベーションになっていますね。
孫正義さんとかはすごいじゃないですか、もう社会をどんどんどんどん新しいイノベーションを仕掛けて変えていっているけれども。結構、そういうイケイケ系の会社さんの社員さんは疲弊してたりとかするようなところがちょっと……。
見方を変えたら、少し犠牲になっている部分もあるのかなと思っていて。それまでは、どちらかというと、僕はそれでもいいと最初は思っていたんです。
正直、社員が犠牲になっても社会を変えることのほうが大事だというふうに思っていた部分がだんだん、経営して、みんながすごく頑張ってくれているのを見ると、そのあたりは変わってきました。
質問者:スタートとイグジットのタイミングについて柴田さんにお聞きしたいなと思っております。お願いします。
柴田:まずそもそもイグジットするとどうなるのかというのは、皆さんなかなか肌感として湧きにくいと思うので、どうなるのかというお話をすると、株主が変わるんです。自分とかVCで持っていたのが、買収した会社、大概100%その会社というのになるのですね。
起業家って、ここにいる方も全員そうなのですけれども、実は3つの役割、帽子を持っていて、1つ目の帽子が先ほど言っていた組織のリーダーとしての立場、社員を引っ張っていかなければいけない、そういう責任がある。そういうリーダーシップが1つ目。
2つ目は自分がやっている事業とか、サービスとか、製品の最終的なプロダクトの責任者というかプロダクトマネジャーとしての帽子、これが2番目。
3番目が資本金を株主から預かっているという、会社の台所。会社の預金通帳をお金で満たしておくという帽子があって、イグジットすると、この3つ目に関しては人に下駄を預けた形になるので。
これはいわゆる雇われ経営者という状況なのですけど、1つ目と2つ目のロールはそのまま残るのだけれども、3つ目がなくなる。なので、つらさ的には3分の2ぐらいになるというのがイグジットされた状態なんです。
ではそれは置いておいて、どういうときにそういうタイミングを選ぶかというと、僕自身はその1番目と2番目の役割として、社員にとっても製品にとっもいいタイミングかどうかというのが大事だと思っています。
買収されないで上場までするということは、独立性を守るということなのですけれども、これのために、1番目と2番目が犠牲になってしまっては元も子もないと僕は思っています。
今、僕がやっているのは来店ポイントのサービスなのですけれども、例えば製品を伸ばすために、すごく強力なポイントを持っている会社と一緒になると、サービスの価値はすごく高まるんです。それを売っている営業の社員とかもすごく楽にどんどん世の中を変えていける。
同じ動きをしても、世の中に与えるインパクトの量は全然変わってくるので、僕はこういうときは株主を変えるタイミングかなと思っています。なので、その1番目と2番目の部分を成長させるために、外から中立的にお金を集めてくるのがいいのか、何か色のついたお金を集めたほうがいいのかが、ジャッジのポイントだと思います。これが経営者として見た場合の判断の基準だと僕は思っています。
質問者:ありがとうございます。
柴田:シナリオとしては考えたほうが僕はいいと思っています。これは人によって違うと思うのですけれども。実は会社のつくり方は、大きく分けると2パターンあると思っていて、1つがゴッドファーザー型と僕が呼んでいるもので、もう1つがオーシャンズ11型と呼んでいるものなのですけれども、両方ともヤクザ映画、ギャング映画ですけれども、組織のつくり方は全然違うんです。
ゴッドファーザー、名作なので皆さんも見たことがあるかもしれないですが、あれはファミリーなんです。ファミリービジネスで、家族を繁栄させていくためだったら、ビジネス、しのぎの中身は何でもいいんです。
最初はオリーブオイルを売っていたのですけれども、最終的にはラスベガスのギャンブルをやる。これは何でもいいんです。ファミリーが繁栄していけば何でもいい。この場合は、組織を守るということが資本の中立性を守ることにかなり密接に結びついているので、この場合はイグジットを考えるべきではないと思うのですけれども。
オーシャンズ11型は、最初からプランがある。どういうサービスを、どういうロードマップでつくっていくかというある程度イメージがある。
こういうときはわりと、ここまで行けば上場できるし、こういうふうに世の中が推移したら、バイアウトしたほうがいいかもしれないし、こういうふうに万が一なってしまったら、そもそも製品を変えたほうがいいかもしれないというイメージがある。あるいは会社を解散したほうがいいかもしれないみたいな、そういうシナリオは考えたほうがいいかなと。
これは会社を何のためにつくるかとか、どういうモチベーションでつくるかとか、どういうチームを集めるかというのが大きく2パターンあることから来ているのかなと思います。
質問者:ありがとうございます。
長谷川:どうですか。自分ではオーシャンズ11型だと思っています。客観的にどう見えるかわからないですけれども。
小林:山田さんのところは?
山田:今の分け方でいうとゴットファーザー型になるのかな、わからない。イグジットというよりプランですよね。イグジットするかどうかも含めてプランについて考えていますかというのは、僕みたいに山で起業しますという形であっても、それは絶対考えたほうがいいと思います。
なぜかというと、苦しい時期は出てくるじゃないですか。そのときに、どこまでをやるのか、どこまではやらないのか、どこまでは心を変えていいのか、みたいなところはやっぱりあって、それは最初の社員とは共有しておくべきだと思うんです。でないとブレてしまうので。もうとにかく山以外のことはやりません、みたいなところとか。
うちは社員にも言っているんです。「よくVCも来ていただくけれども、VCも入れません。だって、僕が株主で、僕が経営者でオーナーではないと僕のやりたいことがやれないから。だから、株主利益の最大化だから、僕のいうとおりやってくれというところからスタートです」というところをちゃんと説明しておくというのは結構大事なことだと思うんです。
だから、行き当たりばったりで何かいいプランがあるから、「レンタル屋がよさそうで、ぽんと行きました」だと、やはり、結構働いている側も苦しいのかなと思うし、それは考えておいて、全く損はないことと思います。
質問者:先ほど、「起業生存率は今、低いと思うけれども、会社を経営して、潰してもいいからリビングデッドになる状態が1番悪い」みたいなお話をしていたのですけれども、自分が尊敬している会社をやられている経営者の方は、とにかく続けることが大切ということを言っていたんです。なので、その理由を詳しく聞かせていただければと思います。
柴田:いいご質問ですね(笑)。究極的に……。ゴメンね、これは逃げるようだけれども、正解はないと思っているし、資本主義はすごく多様な考え方を受け入れられる仕組みだから、色々な動機で起業している人がいて、あるいは会社を経営している人がいて全然大丈夫だと思うんです。(資本主義は)そういうのを受け入れる度量がある非常にいい制度だと僕は思うのですけれど。
先ほど言ったポイントは、色んな立場があると思っていて、僕が株主だったら「いや、解散すんなや。俺の金ゼロになるやんけ」と思うと思うのですけれども、自分の人生から見た場合、このままやっていても何も変わらないようだったら、1回リセットしたほうがいいじゃないですか。
リセットしたくなるタイミングは誰しもあると思うんです。だから、どの立場で見るかというのはすごく大事かなと思っています。
気持ちは、もう好きじゃないのだけれども別れられない彼女、みたいな感じで情が移っちゃうから。もちろんつらい決断ではあると思うのだけれども、そっちのほうがお互い3年後とか5年後に振り返ってみたらよかったということは往々にしてすごくたくさんあると思うんですね。
やはり経営者はそういった情に流されない、ちゃんと長期的な目線でみんなのことを考えられる視点を持つべきだと思うし、その観点から見てリビングデッドになっていて、全然よくないなと思ったら、僕は潔くやめる。
社員のみんなの就職を斡旋できるような、そもそもスペックの高い社員を採っていれば、別に彼らだって、自分の会社がなくなってしまっても転職ができるわけじゃないですか。だから、もし彼らを養う自信がないのだったら、「この人だったら、いつでも転職できるな」と思う人と一緒にやればいい。
あるいは「この会社うまくいかなそうだな」と思ったら、デッド。借金ではなくて、銀行から借り入れるのではなくて、株式、エクイティでVCが調達する。そうすれば例えば自分が連帯保証に入るみたいなことを避けることができるし。そういったことは必ず考えておくべきかと。
プランB、プランCみたいな、そういう受け身の取り方というのは経営者にすごく大事なスキルだと思います。1回目からやるのはなかなか難しいと思うけれども、2回、3回、4回とやっていくと、だんだんそれがうまくなってくると思います。
質問者:挑戦しつつ、リスクも考えながら進んでいく、みたいな。
柴田:挑戦することをやめてはいけない、ということを彼は言いたかったのではないかなと。
質問者:なるほど。わかりました。
柴田:その会社を潰すかどうかは、また別な次元で。会社は手段にしかすぎないので、そこがそう思えるほうが、多分、総合的には打率も上がると思うし、いい人生を歩めるのかなというふうに思います。
質問者:それは人生観とかに関わるとかというわけではなく、ですか。
柴田:人生観なのかもしれない。難しい話ですね。
質問者:すみません、ありがとうございます。
小林:大丈夫ですか。補足は特にないですか?
山田:言っていることの立場が違うんじゃないかな。経営者としては、もちろん従業員のためとか取引先のためにとかを考えたときには、ぎりぎりの状態でも続けたほうがいいかもしれないけれども、柴田さんの言っているのは、多分チャレンジするときの、チャレンジする人の人生というところの考え方を言っているので、主語が違うのかなという気はしました。
小林:すごくマッキンゼーっぽいフレームワークで斬ってきましたね。
柴田:先輩、助かりますね。
小林:ええ。
山田:いやいや。何でこっちからもいじられるねん!
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