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プロダクト・イノベーション(全5記事)

「R25はおれがつくった」という人がたくさんいるのはなぜか? リクルート流プロダクトづくりの秘密に迫る

革新的なプロダクトやサービスをつくり続ける代表企業の4名―Google・徳生健太郎氏、freee・佐々木大輔氏、リクルートライフスタイル・大宮英紀氏、KAIZEN platform・須藤憲司氏―が一同に会し、日常生活にイノベーションをもたらすプロダクトづくりの秘訣を語ります。(IVS 2014 Springより)

KAIZENプラットホーム・須藤憲司氏の自己紹介

小野裕史氏(以下、小野):では、リクルートを出て、独立された須藤さんお願いします。

須藤憲司氏(以下、須藤):どうも皆さんこんにちは。KAIZENプラットホームの須藤と申します。私もちょっと簡単に自己紹介させていただくと、もともとリクルートにいまして、10年勤めました。

最後の後半はですね、アドテクノロジーの分野を担当していまして、その後もこのKAIZENプラットホームという会社を作って、今はA/Bテストが簡単にできるようなプラットフォームを作っております。

今ですね、我々A/Bテストっていっても、要はサイトをどう改善しようかというのを考えていて、マーケターが考えて作らないといけないと思うんですけど。それを実際にJavaScriptのコードを入れて自分でテストを作ることもできますし、今400人くらいデザイナーさんがいるので、例えば「我々のサイトを、どう良くしたらいいですか?」という提案をもらうことができます。

それもクリックで選んでいくだけで実際にパフォーマンスはどう変わるのか、ということを測っていくことができるようなサービスを作っています。お陰様で去年のLaunch padに出させていただいて、そこからまたサービスが伸びていまして、去年の7月にローンチしてから600社ぐらいに使っていただいて、世界で38カ国ぐらいからアクセスがあるということでございます。

サービスをつくったきっかけ

須藤:さっきちょっと自己紹介したんですけども、リクルートでどんなサービスを作っていたかというと、私は昔「Cチーム」というサービスを作っていまして。

バナー広告ですね。クラウドソーシングでいっぱいデザインしてもらえばいいじゃんと。リクルートで色々なサービスをやっていて、すさまじい勢いで広告を出すんですけれども。その中で、私R25というサービスを担当したときに、「とりあえず広告をやってくれ、人を集めたい」みたいな話になったときに、「とりあえずって言われても、何を訴求していいかわからないです」と。

デザインがいっぱい上がってきたんだけど、「どれがいいですか?」って許可を取ろうかなと思ってあげたときに、「いや何でもいいから、とりあえずやれ」と。こんな適当でいいのかなと思うことが、実は結構あって。

要は、全部試してみたいなっていう思いがすごくあって、それを持っていると、僕のアイデアって本当に大したことないからどうしょうかなっていうのがあって、いろんな人に作ってもらっていろいろ出したら効果が変わるんじゃないか、みたいなことを考えてやりました。

統計的に考えれば、数打ちゃ当たるって話なんですけれども、この数打ちゃ当たるって結構すごくて、ほんとに数を打つと、だいたいクリック率とかも2倍ぐらいになるよねとか、もう確率論で絶対に上がるみたいなことがわかったので、それをどうやってたくさん簡単にできるようにしようかなっていうのを思い立って、そういうサービスをつくりました。

広告の高度化に合わせたサービスづくり

須藤:その後、アドネットワークとかトレーニングデスクっていうサービスを作って、今RTBとかいろんな入札の技術とかがすごく増えているので、これも全部効率よくいろいろ試したら、もっとパフォーマンスをあげられるんじゃないか、みたいなこと考えてサービスを作っていて。

今、広告はすごく高度化したんですけど、結局さっきのラストワンマイルの、動くデジタル版だと思っていて。サイトのホームページに来たときに、やっぱりおもてなししてあげたいなっていうのがすごくあって、その人に合ったとか、その文脈に合ったページにしてあげたいということで、最後ラストワンマイル、オンライン上のラストワンマイルのサービスを作っております。

皆さん、ちょっと同情していただきたいんですけども、徳生さん、佐々木さん、大宮さんと来て、「僕、話すこと絶対にないわ」と思って、どうしようかなと思って、卑近な例をやっぱり出したほうがいいなと思って。僕はプロダクトでもなければ、あまりイノベーションでもないかなと思っています。

サービスをつくる際に重要視している3つのこと

須藤:やる時にすごく大事にしていることは、この3つなんですけど。1個は成熟している市場でやりたいと。バナー広告とか、その時すごく伸び悩んでいたので、要は枯れてる領域ってすごくいいなと思っていて、なぜかというとそこをイノベートすることで、インパクトがすごく大きいと思っていて、イノベーションをしようと仕掛けるんだったら大きいところとか、もうなんか伸びてないとか、もう終わってるよねって言われることをやりたいなと思っていて。

今A/Bテストとかやっているんですけど、だから例えばその次にいくんだったら、ネイティブのアプリケーションとかよりも、僕らEメールをやりたいなとか、Eメールってすごいよねみたいな、すさまじいぐらい来るけど、なんかもうちょっと何とかできるんじゃないかとかですね。そういう、もう成熟している市場を何か変えれるといいんじゃないか、みたいなことをよく考えたりしてます。

あと2番目は皆「面倒くさがり」ということですね。さっきのバナーのやつとかもそうなんですけど、僕に考えろと言われて、めちゃくちゃ面倒くさくてですね。要は、自分じゃない人からいっぱい知恵が欲しいって思うことってやっぱりたくさんあって。

自分のアイデア、さっきの徳生さんが1+1=2以上って言いましたけど、要はこれをどうしたらいいかっていうふうにアイデアを募っていくってすごく大事だなと思っていて。

よくエンジニアとかでも、いいエンジニアの条件の中に「怠惰」って入っていたりすると思うんですけれども、要は面倒くさいからこれを何とかしたいと。なので、そのサービスをいかにシンプルにするか、みたいなのは本当にすごく考えていまして、「改善するんだけど、面倒くさいことをなるべく抑えたい」みたいな、そういうことはすごく僕らも考えていたりします。

あと3番目ですね、原理原則には勝てないっていうか、さっきの数打ちゃ当たるですね。ああいう本当シンプルな原理原則ってやっぱりすごく強いんで、成熟している市場を変えていく時に、結構「原理、原則ってなんだっけ?」みたいなことをすごく考えていて。この3つをですね。結構大事にしてやっていたりします。

登壇者4名による「開発のプロセス」について

小野:ありがとうございました。今ですね、いろいろなテーマでお話いただいたんですが、ここから先はぜひインタラクティブにやりたいなと思っていますので、オーディエンスの皆さんには手を挙げていただきたいんですが。

今まで出てきた4名のお話の中で、いろんなテーマがあるんですが、そもそも「すぐれたプロダクトとは何か」という、そういった考え方についての話、例えば「異議のあるミッションがものをいう」っていう先ほどの話というのは、そもそものすぐれたものに対するコンセプト、考え方のベースの部分って話も1つありました。

一方で、今度は開発のプロセス面での話、例えば「百聞は一デモに如かず」といった、freeeも言っていました「まずは手を動かす」ですとか、皆さん共通して言っていたんですが。まずは「ものを出してみないとわからないよね」といった開発でのプロセス面、優れたプロダクトを生み出すための開発のプロセス面っていう視点での話も出ました。

3つ目にですね、大宮さんの方から出た「人×制度」という話がありましたけれども、人事制度も絡むかもしれませんが、もしかしたら社内の文化かもしれませんけれども、どういう組織であればすぐれたプロダクトを生み出しやすいのか、という組織面の話もありました。

この3つ、そもそも優れたプロダクトを生み出すための考え方という話と、その優れたプロダクトを生み出すためのプロセスのあり方という実務的な面と、あとはそれを組み立てるための、特に経営者の皆さん方多いので、組織はどうあるべきかという、その3つでここの話はぜひ聞いてみたいというのを。それぞれ考え方、プロセス面、開発プロセス面、それぞれ手を挙げていただければ。

じゃあ、そもそもの、すぐれたプロダクトを生み出すための考え方という点についてディスカッションを聞いてみたいなっていう方、手を挙げていただければ。

(会場挙手)

はい、1番多かったのは、開発のプロセス面。これ4名の方の話を聞いていても1番僕のメモも多いんですけれども、「柱を立てて、やらないことを決める」というのも、ひとつ開発のプロセスの中での考え方ですし。

大宮さんも「まずやろうぜ」って話から生まれたっていうのは、全く同じようなことをやっていたと思うんですが、優れたプロダクトを生み出すための開発のプロセスのあり方は、ぜひそれぞれの工夫をしていることですとか、今出た話以外に工夫されていること、気にされていること、考え方などあったらぜひシェアさせていただきたいんですけども。

いい環境をつくるよりも、わるい障壁を取り除くことが大切

徳生健太郎氏(以下、徳生):1番ここがみなさん興味あるんじゃないかと僕は思ったんですけど、先ほどちょっと打ち合わせの時も話していたんですが、イノベーションを持ち上げるとか、引き出すってすごく難しい。

たぶんやらなきゃいけないのは、障壁をどんどん落とすこと。やっぱりそういう人を集めなきゃいけないし、雇ったところで彼らの能力を信じて、その彼らが100%、120%力を出せる環境をつくる……というよりは障壁を取る。

それがAppleのバリューチェーンであったり、大きすぎるチームだとか、何かプロダクトマネージャーみたいな人がいっぱいくっついて、製品の方針をぶれさせるとか、そういうことを取り除くっていうところに僕は気をつけてます。

どちらかというと。何かこういうブレストをやると、イノベーションが出てくるって、実は何回かやったんですけども、往々にしてうまくいかなかったという感じがしました。

小野:ほとんどのGoogleさんのプロダクトっていうのは、個から生まれるんですか、そのグループから生まれるというよりも。

徳生:どっかで「個」っていうのはあるのかもしれないんですが、ただやっぱり、なんていうか、クリティカルマスというか、それこそさっきの1+1から1+1+1+1+1くらいになってきて、それがなんだか渦巻きのようになってきて、勢いがついてくるっていう形が多いですね。

P&G「ジョイ」の開発バックグラウンドから気づいた発想の切り口

佐々木大輔氏(以下、佐々木):自分で良いですか? おそらくプロセスって言った時に、まずこのアイデアで何をやるかっていうところと、きっとそれをどう実現していくかというところがあると思うんですけど。

ひとつアイデアのところで、僕がすごく印象に残っている話っていうのは、僕が就職活動していた頃に、P&Gの就職説明会に行って、その時にそこで話していたのは、チャレンジジョイの開発と、ジョイを使うと油の落ちる具合が今までのと全然違うっていうそういう……。

小野:あのCMも結構衝撃的でしたよね。

佐々木:衝撃的でしたよね。

小野:皿の上の油が、1滴の状態でパーッとなくなる。

佐々木:そうです、そうです。あれを見て、あれの説明、開発バックグラウンドっていうのがすごく面白くて。アプローチとしては、色んな家庭に行って観察をしましたと。色んな主婦がなんと一生懸命「油落ちない、落ちない」って洗っているんですね。

それを見て、「洗剤って油落ちないですか?」というふうにインタビューする人が聞いても、主婦の人達は、「いやいや、落ちるんですよ、普段は」と言って、もっとかけてグジュグジュグジュグジュグジュ。ほら落ちたって言って。

だから主婦は、それに対して問題を感じてないんですよね。「別にこんなもんだと思っている」と。落ちると主張するんだけども、周りから見ていると、これって絶対問題だよね、っていうことはたぶん世の中のみんなが慣れていて気づかないだけで、結構いっぱいあるんじゃないかなと思うんですね。

そういったことが、発想の切り口の1つとして、すごく大事なんじゃないかなと思っていて、僕自身が今までやっていることのほとんどは、そういうところに目をつけたプロダクトアイデアみたいなところが多いと思います。

なので、今回の会計ソフトっていう切り口で言うと、僕自身がスタートアップのCFOをやりながら、また別途プロダクトの開発もしているので、CFOの時間を減らしたかった。そのために会計ソフトを何とか効率化できないかなと思ったけど、うまくできなかったっていう経験があったから、そこでの自分自身に対する観察みたいなものが元になっているんですけれども。

そうではなくて、広く他の人が抱えている問題っていうのを見たときに対しても、やっぱり、普通に観察してみて「これって本当に合理的なのかな」と考えてみるというのが、1つの切り口としてあるのかなと思っています。

エンジニアが自分で考えて、自分で形にするのが1番早い

佐々木:あと、それをどう実現するかっていうところに関しては、今freeeでは、早くやるっていうことがやっぱり大事なんですよね。なぜかと言うと、既存のプレイヤーに追いついていくためには、機能をより充実させていかなきゃいけないというフェーズの中で、やっぱりどれだけ早くそれを実現できるかっていうのは競争環境上、とても大事だと思っていて。

それを実現するためにはやっぱり、各エンジニアが自分たちでもう物を決めて、自分たちで形にするっていうのが1番早いですよね。

なので、freeeでは仕様を決めるっていう役割の人は1人もいなくてですね。全員のエンジニアと、大体大枠のやることは、ミーティングなりなんなりで決めるんですけれども、あとはもうエンジニア個々で細かいことは全部決めて、「はい、できました」「動かしてみました」っていうようなやり方をしています。

これはやっぱり、もちろん優秀な人だけが集まっているチームじゃないとなかなか成立しないやり方ではあるんですけれども、最もパワフルなんじゃないかなと思ってやっています。

小野:先ほどちょっと楽屋で話がありましたけども、一切、未だに仕様書がないっていうお話で。

佐々木:仕様書はないですね。仕様書もないですし、本当にその役割分担がないですね、仕様を決めるっていう。

小野:まずは、形にしてなんぼという。

佐々木:はい。

小野:ありがとうございました。

リクルート流のプロダクトづくり

小野:では、須藤さんお願いします。

須藤:そうですね。さっき徳生さんの話を聞いて、これ違ってたら大宮さん、言ってほしいんですけど、リクルートの場合、個が創発することって僕はあんまりなかった気がしていて。要は勝手にやりたいやつが、どれだけ邪魔をされても、こっそりだまくらかして何かやっていく、っていうのがリクルート流だったと思うんですけど……。

大宮:そうですね、はい。

須藤:なんていうんですかね。そういう障壁を下げるとか、なんかそういう感じじゃなくて、誰か障壁を何かこっそりくぐっていくみたいな、そういう。

徳生:その執念があるからできる、みたいなことですかね。

須藤:何なんですかね、なんか……。

大宮:たぶんそういう人が採用されていたりとか。

須藤:そう、採用な気がしていて……。

大宮:そういうふうに成功している人がやっぱりいるので、ここまでやって良いんだろうなというふうに思えるんじゃないですか。

須藤:なので、「なんかうまくやれ」みたいな感じですね。

大宮:もう本当に手段を選ばないとか、変ですけど、結局「自分がこうしたい」とか、「こういうふうになったら、世の中もっとよくなるのに」って思いがあるのに、なんか勝手に自分で制約をつけて飛び越えることをしないなんておかしいなと思って。

それを体現してくれる、していた過去の先人たちがいるので、やっぱりそういうことは、ひとつの励みになっているかなと思うんです。

須藤:そういう意味での「ハックする」というか、なんですかね。ちょっと小ずるくやる、みたいなこととかは、スタイルが多分ちょっと違うんだろうなと思って伺っていたんです。

大宮:それがフィルターになっているのかもしれませんね。失敗するものもあるわけですよね。

須藤:逆にそれを越えられないぐらいだと、どうせそれやりたくないでしょ、っていうことだと思うんで。

「R25はおれがつくった」という人がたくさんいるのはなぜか?

小野:実際に事例があるっていう点は、Googleさんもリクルートさんも共通してますよね。その奇想天外のGoogleグラスもそうですし、最近の血糖値を測るコンタクトレンズとか、そういうのをニュースで見ると、「こういうのありなんだ」っていうふうに見せるってすごく重要で。

多分リクルートさんの中にもそういうふうにして作ってきた先人がいるから「あ、アリなんだ」っていう人たちが生まれるんじゃないかな、というふうに思うんですよね。

大宮:そうですね。はい。それとですね。リクルート、ちっちゃい成功を見せると、急に賛同者が増えたりするんですよ。周りの人はすごく「乗っかり力」は半端ないので……。

須藤:すごく現金で、ちょろっと成功すると、「それ俺もいいと思っていた!」っていうふうにみんなが言うので……。

小野:どっかのVCファンディングみたいですね(笑)。R25が盛り上がったときに、俺R25作ったと言う人がたくさんいたみたいなそういう話ですね。

須藤:リクナビを作ったって人はたぶん1000人くらいいると思うんですけど。そういうことだと思った。要は「ノリの良さ」みたいなので、たぶん担保されているんだと思うんですね。ノリが良くて、結構ガッツがあるみたいな人が、個々で突破していって、その事例が残っているみたいな。結構、人に担保されているような気がしますね。

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