2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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吉岡秀人氏:これは去年の正月ぐらいに、戸田恵梨香さんという女優がいますけど、彼女がここへ1週間ぐらい来てボランティアをしてくれました。
これは安倍昭恵さんですね。安倍首相の奥さんですけれども、この間安倍さんが来たときに公式訪問してくれまして、昔からずっと支援してくれてて毎年来てくれていたんですけれども、今回は公式に訪問してくれました。
公式訪問してくれて本当に良かったです。それまで向こうの社会福祉省は非協力的で、本当に邪魔ばっかりしてきたんですけれども、公式訪問してくれてから、非常に協力的になりまして、言うことをよく聞いてくれるようになりました。
だけどですよ、ここの施設はまだいいです。こっちは、向こうの地元の人たちがやっている施設です。
これ、男の子の施設なんですけど、こんなところにまだ寝かされています。1日2食、ふりかけかけて食べるだけって日がいっぱいあるんです。僕は次にこの子たちをなんとかしないといけないと思っています。それで、今は僕がやっている孤児院の近くに、大きな、もう巨大な職業訓練所を作ろうとたくらんでいます。
そしてそこで職業訓練をして、ここの出身の子どもたちをどんどん集めて、手に職を付けさせると。で、僕の施設はミャンマーで一番大きなヤンゴンという街にありますから、給料が地方都市より圧倒的に高いんです。そこで彼らの給料の1割ぐらいは僕がちょっとはねて、彼らの出身の施設にどんどん送ってあげればですね、食べるところから教育にお金が回っていくんだろうと思っていまして、これをやろうと思っています。約1000人規模の職業訓練所を作れたらいいと思って、ちょっと今いろいろ調整をしています。
そしてこれは何かというと、去年の外科学会総会の様子です。20年前、僕がこうやって国際医療を始めたときに、僕は、日本社会ではただの変わり者だったんです。とにかくみんな大学の医局に入っていたんですね。アメリカとかヨーロッパに留学をする人はいましたけど、途上国に行く医者なんかいなかった。それは変わり者じゃなくて、さらに2SD(標準偏差)を越えた先にいて、完全に誤差というか、全然違うところの世界の人間で黙殺の対象だったんですね。
ところが去年、おととしぐらいから、どんどん日本の学会から呼ばれ始めまして、これは日本外科学会の総会なんですね。去年福岡でやったんですけれども、3万5000人の外科医たちが日本全国から集結する学会です。これの1番最後の大きなセッションに、世界中から8人の外科医が呼び戻されるんです。そのうち5人は九州大学が主幹としてやっていましたので、九大ゆかりの人。3人だけ違ったんですが、そのうちの1人が僕だったんですね。
1人はアメリカのコロンビア大学で心臓の手術をしている人、1人はカナダのトロントでロボット手術をしている先生、そしてなぜか僕だったんです。僕がやっていることは、20年前も今も何も変わらないんです。変わらないんですけど、時代がもうそのように動いている、ということですね。そしてその会場に向かって、ある発表者がこう聞いたんですね。こういう途上国の医療に興味のある人はどのぐらいいますか、と、そしたら、一斉に手が上がるんですよ。
それはかつて、こういうことを邪魔してきていたような人たちで、教授とかでっかい病院の部長たちが、みんな我先にと手を上げるんですね。もう時代がそういうふうに変わったということです。そういうことを、医者たちももうしないといけないと、みんなが思う時代に突入したんだと思います。これくらい、時代の変化は早いんだと僕は認識しています。
これは、僕がジャパンハートという組織を2004年に作ってからの、医者と看護婦さんの数の伸びです。もう今はこんな感じに、海外に参加する医療者たちが増えているんです。そしてこの医療者を使って僕は、ミャンマーから始まった小さな小さな活動を、今はこれだけ展開できるようになったんです。カンボジア、ラホス、インドネシア、そしてフィリピン、東北、国内のいくつものへき地とか離島に、スタッフを派遣しています。たった1人で始めた活動からは、もう隔世の感がありますね。
これはフィリピンの台風のときですね。僕らはアジアに医療者が張り付いていますから、フィリピン台風の2日目に入りました。日本からのチームは、早くても1週間以上後に入っていますから、全然スピードが違うんですね。ですから、レイテ島の隣のパナイ島というところに入ったんですけど、パナイ島には、もう僕らが到着したときにはカナダの軍隊と僕らしかいなかったです。
それで僕らがずっと向こうの消防隊と協力して巡回して、3週間ぐらい経って撤収したんですけれども、その頃にようやく世界中のチームが入ってきました。
これがそのときの模様で、新潟大学のお医者さんです。
これは緊急救援、訓練に参加したときですけれども、今はこうやってインドネシアと一緒に、向こうの軍隊とかと一緒にやるようになっています。今度、僕は向こうのインドネシア政府と正式なサインをしにお伺いをします。
たった1つから、1人から始めた活動ですけど、20年という期間は本当長いですね。僕は昭和40年生まれなんですが、昭和40年の20年前は、日本は戦争に負けて、焼け野原だったんです。それから20年経って、もうオリンピック終わっていたんですよ、日本は20年で。そして今から20年前、ちょっと前までソ連があって、東西冷戦やっていたんです。核をお互いに向かい合って、打とう打とうとしていた時代ですね。1980年代までの韓国なんてのは軍事政権だったわけですし。
20年という時間は、本当速い時間です。今、僕が感じるのは、どこまでやろう、何をやろうとか、大きく何かをやろうとかじゃないと。それは皆さんも一緒だと思うんです。とにかくこの瞬間というか、今を、自分の納得できるように生きているかどうかです。だから、それは「今」という瞬間に一期一会しているということです。これを妥協しない。今という瞬間に妥協しなかったから、その結果の積み重ねが100人になって、200人になっている。あるいは1万人になって、10万人になるだけということですね。
あんまり時間もないので、しゃべり続けてもあれなんですけど。僕は思うのですが、こうやって(IVS会場の)皆さんは起業家の方たちで会社の方たちなんだけど、先ほど言ったように、戦争から始まっているじゃないですか。あれだけたくさんの人たちが亡くなっていますよね。
僕、特攻隊の人たちもそうですけれども、本当かわいそうだなと思ったんです。若いのに、なんでこんなに死ななくちゃいけなかったのかなって、現地で慰霊碑見るたびに本当に思う。
僕らはもっと自国民の命を、少なくとも自国民の命をもっと大切にしたほうが良かったんじゃないか。本当に今本当に反省すべきなんじゃないか。戦後、僕らは「人の命というのは大切なんだ」と言って生きてきたのかと。この前の原発の問題もそうですけど、そうやって生きてきているのかと。戦争であれだけ本当に人が死んだのに、人の命の大切さを本当に理解しているのかと思うんですね。
人の命を大切にするというのは、僕は文化だと、文化の力だと思うんです。「もののあはれ」は立派ですけれども、でもそうやって散ることだけが美しいわけではなくて、人の命を大切にするのは、本当にすごく大切な美しい文化なんだということを、僕らは戦後、本当に作ってきたのだろうかと思ったんです。
人の命に対する文化を創るためには、人の命に関わる行動の他、方法なんてないんです。皆さんと、僕にも関係ない遠い世界の人たちの命かもしれない。子どもたちの命かもしれない。でもそれを日本人たちが助けるということは、人の命は大切なんだよ、という文化をこの国につくることなんですよ。
だから、それがやがてまた戦争に巻き込まれたり、災害に巻き込まれたり、将来何が起こるかはわからないですね。僕らの子孫とか孫とか、ひ孫あるいはその子どもたちの代に、何が起こるかわからない。その時に「命は大切なんだよ」と、「死ぬなよ」と、「生き残って、そして立派にまた生きていけよ」と。そういう文化を、それまでに僕らはつくらないといけない。そのためには命に関わるほかないんです。
「これは遠いところの関係ない人の命だ」ってやっていると、この国にはいつまでたっても、命の文化なんかできないんです。あの戦争の末期のときに、日本人が最後、どんどん日本人を見捨てて殺していったわけじゃないですか。アメリカ軍が迫ってきたときに、「うるさい! 赤ちゃんの泣き声で見つかる」と言って、「絞め殺せ」と言って、何人もの子どもたちが死んでいますよ、日本は、あのときに。
そうやって追い込まれると、人というのは命を、自分の身内以外の命の大切さなんか理解できなくなる。それは文化の力なんですね。最後まで命を守れるかは、文化の力だと思っているんです。だからこの国に「命は大切だ」という文化をつくるために、そのために、僕らはやらなければならない。関係ない命ではなくて、それは実は、僕ら自身のための人道支援活動だというふうに思っています。それが20年間ずっとこのことをやってきて、僕が今到達している最終ポイントなんです。
また機会があって10年後に話をするかもしれないですけれども、そしたらその時は、また別の次の地点に移っているかもしれない。次、もっと深くいけているかもしれないですけれども、でも僕が20年間やって悟った今の最終ポイントはそこです。これは誰のためでもない、私たち、あるいは自分の子孫のためにやっている活動だ、ということですね。以上です。
(会場拍手)
小林雅氏:ありがとうございました。ありがとうございます。時間が過ぎているんですけれども、最後にカッチャマン(プロフェッショナル・コネクター、勝屋久氏)にですね、質問とか感想を一言いただいて、それに答えて締めていただきたいなと思うんですけれども。
勝屋久氏:……キツいですね。吉岡先生、本当に素敵なお話をありがとうございます。去年父が亡くなって、介護を初めてして、本当に向き合ってよかった。そんなに軽いお話しじゃなくても、先生には深い話もいっぱいあると思うんですけれども、僕まだわからないところがあって。
ひとつだけ。人の命の大切さというのは、先生にとって「文化」ってさっきおっしゃられたんですけれども、人の命の大切さというのは、もうちょっとわかりやすい言葉でいうと、先生はどう捉えているのか。まだ僕は、ちょっとそこの域まではいけてないんですけれども、ぜひご教示いただきたいなと思います。
吉岡:こういうふうに僕は思っています。自分を大切にできない人間は、人のことなんか大切にできないんですね。僕らは、自己の延長線上でしか人のことを認識できないようにできています。ですから、自分がいくら自分を大切だと思っても、それは自分にはわからないんですね。自分の姿が鏡で写さないと見えないように、です。そして本当に、心の底から人を大切にしたいと思えば、自分を心の底から大切にしてくれる人間にしかできないと思っています。
そして、人の命を大切にできるという人間は、自分の命を本当に大切にできるという人間だと思うんですね。そしてそれは同心円状に、まさに水の上に何か落としたときに同心円に広がるように、自分という点から、自分の家族へ、そして周りの人たちへ、皆さんでいうと社員へ、そしてどんどん世界へ向かって広がっていくんですね。
だから人の命というのは、まさに自分の命の延長線上にあるものなんです。人の命を本当に大切にできる、という行動をとれたときに、自分の命を本当に大切にしているという証明になるというか、そういうふうに僕は認識しています。
だから僕が医療活動をして、人をどんどんどんどん治療していますけれども。ちょっと言葉があれかもしれないですけれども、彼らのためにやっている活動ではない、ということです。究極的に、それは僕がやりたいからやっている活動であって、だから彼らに僕は偉そうに言うこともないし、いつも感謝しています。「僕のところへ来てもらって申し訳ないな」と思っているときもたくさんあって、若いときなんか特にそう思ってたし、そういうことだと思うんです。
僕がやりたいからやっている。そうやってなぜかというと、1番最初にビデオで言ったように、自分の価値を自分で認められる。それが僕の人生で最も尊いことだというふうに思っているからです。
(了)
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