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IVS DOJO 2016 Fall Kyoto(全4記事)

栄光から一転、8年間の借金返済生活へ--KLab真田氏が“背水の陣”から模索した、負けない戦い方

新しいチャレンジに失敗はつきもの。だが、負けてはいけない――。2016年12月7日に行われた「IVS 2016 Fall Kyoto」のセッション「IVS DOJO」で、KLab真田氏が登壇。自身のこれまでの失敗を振り返りつつ、「失敗しても負けない戦い方」について語りました。栄光から一転、8年間の借金返済生活を経て同氏が編み出した「負けないための7つの法則」とは?

背水の陣から編み出した「負けない戦い方」

司会者:いよいよ残るは最後の師範です。なにやら仕掛けが登場しました。実はこれから登壇いただく師範は、前回初代に師範にお願いした方で、快諾いただきました。その後「今のタイミングではこれは勝てる戦ではない」ということで、辞退してしまいました。

そしていよいよ今回、前回のリベンジということで、「今度は勝てる戦だ」と登壇いただけることになりました。では、登壇していただきましょう。最後の師範です。大きな拍手でお迎えください。真田師範の登壇です。

(会場拍手)

真田哲弥氏(以下、真田):コップはつきものとして、ビールセットを持ってきました(笑)。

司会者:コップとともに、こちらも大事ですので、お持ちください。

真田:はい。わかりました。手酌でまあまあ……。

(会場笑)

別にいいですよ。手酌で(笑)。

ということで、さっそく始めたいと思います。失敗はしてもいいんです。失敗は誰でもあることです。恐れずに、失敗はしてもいい。でも、負けちゃいけないということで、「失敗しても負けない戦い方」について話します。

戦い方には2通りあります。僕は、実は人生で4回起業しているわけですが、初めの2回は大勝ちを狙いにいく戦い方でした。そして、確かに大勝ちをした。しかしながら、そのあと大負けをしました。

あとの2回は、失敗をしても負けない戦い方を覚えました。僕の人生を振り返りながら、この実例として、負けない戦い方の説明をしたいと思います。

最初の起業は20歳大学生のときです。今や伝説とかツチノコのような呼ばれ方をしておりますが、株式会社リョーマという会社を作りました。

そして23歳になり、単身で上京し、会社を作りました。ダイヤルキューネットワークという会社です。

ここに映っているのは、僕ですね。今よりずいぶん、顔の幅が2分の1くらいのころです。23歳でしたけど、会社を起業して、2年目で40億円ベースに急成長させました。しかしながら、2年目で事実上の倒産。借金十数億円を背負う羽目になりました。

当時は連帯保証という仕組みがありまして。社長が連帯保障するので、会社の債務=社長の債務。25歳から8年間かかって、十数億円を返しました。時にはやくざに監禁され、夜逃げもしました。そういう8年間ですね。

ところが8年後の95年、インターネットブームがやってきたわけです。「インターネットで起業した〜い!」と、ふつふつと思うようになるわけですね。これはもうインターネットでやるしかない。

ビジネスアイデアも100個以上考えました。「こんなものができる」「あんなものもできる」。もう、考えまくりました。

ところが、8年間ずっと借金返済生活していて、もうその時点で33歳になっていました。もう、次は負けられない。背水の陣というか、断崖絶壁まで追い込まれた状況からどうするか。ここから、失敗しても負けない戦い方を模索し始めるわけです。

勝てる状況まで勝負をしない

法則その1。基礎体力、基礎知識をつけておく。

「インターネットでこんなビジネスできる」など、ビジネスアイデアをいろいろ考えると、すぐにでもやりたい。もう、やりたくてしかたがない性格なわけです。

ところが、僕はインターネットの技術がまったくわからなかった。ぜんぜんなにも知らなかった。「これじゃあ、やっても負けるんじゃないかな」ということで、まずは勉強しようということにしました。

すぐにでも起業したい気持ちを抑えて、33歳で人生初の就職を体験しました。当時、ブラウザ開発をやっていたACCESSというベンチャーに就職して、技術の勉強を始めました。

そのとき、僕が受注してきたのがiモードのブラウザやワイヤレスTCP/IPなどの開発ですね。これを受注して、プロジェクトリーダーをやっておりました。自分で開発をしているうちにだんだん「これ、イケるんじゃないか?」と思うようになるわけです。「よし。このiモードで起業しよう」と、なるわけですね。

(会場笑)

そして、「さあ、起業しよう」となります。そこで、負けないための法則その2。いい仲間を集める。学生時代の仲間と、サイバードという会社を作りました。「世界で初めてのモバイル専門のコンテンツプロバイダー」というコンセプトです。

法則その3。勝てる状況まで勝負しない。これが負けないための一番重要な法則だと思っています。

iモード向けのコンテンツプロバイダーを作りました。そして、99年2月にiモードがスタートしました。しかしながら問題は、「このiモードなるサービスが一体いつ普及するのか」です。

キャズムを超えるのはいつなのか。それは1年後なのか2年後なのか10年後なのか、さっぱりわからなかったわけですね。

iモード向けのサービスですから、そのユーザーが100万人を超えてきたら、これはビジネスとしてきっと儲かるだろう。でも、そうなるまでは儲からないんじゃないか。そこまでの間は、たった6人の社員で耐え抜きました。

これは今どき風に言うと、KPIを定めて、それを達成するまでバーンレートをできるだけ低くする。これが勝てる状況まで勝負をしないということですね。

最近のスマホ系サービス、今どきの話に直すと、「転換点KPI」という発想ですね。転換点KPIは、ライフタイムバリューがCPIより多くなる、ここを転換点KPIとして、そこまでは大勝負をしない。KPIを磨くために、ひたすらバーンレートを少なくして、少人数でやるという話です。

一気にぶっこめ、外れたらきっぱり計画変更

負けない法則その4。これがたぶん一番重要かもしれません。勝てるタイミングでは躊躇なく大勝負をすること。

先ほど法則3では「勝てるタイミングまで勝負をしない」と言いました。勝負しないんですから、負けはしないわけです。一方で、勝てるタイミングで勝負をしないかぎり、勝つこともないわけですね。この見極めがとても大事だと思っています。

もう1つ大事なことは、戦力の逐次投入をしない。一気にぶっこめ。そういうことですね。

僕の事例でいうと、99年8月にiモードで100万人突破しました。「さあ、勝負だ」ということで、ここから大号令をかけていきます。「先行者メリットを活かして一等地を全部押さえるんだ」。当時でいう細木数子、あるいは宝塚など、こういったところを押さえにいきました。

そして、今まで社員6人で耐えてきましたが、その月から毎月15人ずつ採用しました。半年後には社員100人を突破し、物量をもって、毎月のように新規コンテンツをリリースしていました。

その結果、2000年にサイバードは創業から史上最短でIPOし、2001年には売上100億円を突破という快進撃となりました。

一方で1999年。エンジニアたちと妄想を膨らませておりました。それは、「ケータイでプログラムのロードと実行ができるようになれば、コンピュータの主流はPCからケータイにとって変わるはずだ」と。

当時、まだそんな携帯電話は存在しなかったわけです。そこで「今のうちに携帯用のソフトウェア会社を作ろうぜ」「そうしたら、携帯時代のジョブスかゲイツになれるんだ!」という発想で、2000年に株式会社ケイ・ラボラトリーを作りました。

この会社も、モバイル向け専門のソフトウェア開発会社としては世界初です。懐かしいですね。

ところが、そういう時代を夢見たけど、そんな日は来やしねえ。でも、社員を雇っているからお金は出ていく。でも、そんな日は来ない。

そこで大事な法則。法則その5。あてが外れたら、きっぱり計画変更。

ケータイ・モバイル向けのプログラム開発・ソフトウェア開発をやろうと思ってたんですけど、ガラッと変えまして、サーバーサイドで受託開発をやることにしました。そうじゃないと食っていけません。それで着々と成長していきます。

負けないための法則その6。勝てないときは、BtoBか受託。もうこれです。みなさん知ってますね。

ローリスクからハイレバへ。BtoB×受託、これが一番ローリスクです。そして、そこから順番に、会社の売上構成比あるいは人員の比率を、左向きに回転させていくのが一番確実に成長していく。

いつまでも受託とBtoBだけ続けていても、成長なんかしやしない。いや、成長できますけど、速度が遅い。ということで、順次BtoCの自社コンテンツを少しずつ作るように、増やしていくようにしました。

大事なのは「勝つまでやめない」

法則その7。勝つまで続ける。勝つまでやめない。これは、ギャンブルと一緒ですね。負けた状態でやめるから負けなんですね。勝つ状態までやめなかったらいいわけです。

ところがギャンブルの場合は、お金が尽きるからやめざるをえなくなってハウスの勝ちになります。勝つまで続ける。勝つまでやめない。これが勝つ極意ですよね。当たり前なんですけど。

そうすると、流れが変わりました。2007年、iPhoneの発売です。このあたりから流れが変わっていきます。徐々に、夢見た世界に近づいていくわけですね。

そして、2009年にはソーシャルゲームブームが到来します。懐かしいですね。「Zyngaを抜く」と言っていた人も世のなかにはいました。僕じゃないですよ。でも、そこで「ゲーム作ろうぜ」となったわけです。

法則その8。勝負の前に資金調達。負けてもやり直せる資金。これを用意しておく。

ここにいるみなさんは経営者の方ばかりですから、当然ご存じだと思いますが、一番大事なことは、お金がなくならないようにすることです。お金はなくなってから借りにいったり、「出資してくれ」と言うと、だいたい嫌がられます。お金があるときに準備をする。「雨が降る前に傘をさせ」ということですね。

当時の僕はゲーム部門を作ろうとしてるわけですが、そこで、100パーセント小会社だったゲーム事業を、別法人にしました。ひょっとすると、当たるかもしれないからです。

当たるか当たらないかわからないうちに、VCさんを回りました。この中にも、回らせていただいた方がいます。「ゲームを作るから、よかったら出資してください」と言っておきながら、自前資金でゲームを作るということをやりました。

当時、すでに当社は150人くらいの社員がいて、受託で売上を立てて給料を払っていました。その受託を止めてゲームを作るのは、けっこうリスクの高いことでした。だから、こういうことをやったわけです。

ところが、心配していたことは起こらず、1作目から大ヒットしました。半年で500万ダウンロードを稼ぐ大成功になりました。キャッシュフローが回らなくなるんじゃないかという心配は遠のき、そこで別会社を吸収合併をして、事なきを得たのです。

ということで、最後のまとめです。失敗しても負けない戦い方、勝てる状況まで勝負をしないこと。勝てるときが来たら大勝負をすること。そして、勝つまでやめないこと。

はい。このスライド画像は、単なる僕のハロウィンの仮装でございました。ということで、ご清聴ありがとうございました。

司会者:ありがとうございました。みなさま、大きな握手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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