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年代別経営哲学論バトル(全5記事)

「若手は優秀、でも経験の差は埋められない」ベンチャー経営者らの、世代を超えた付き合い方

2016年12月7日に開催された「IVS 2016 Fall Kyoto」のなかで、各年代を代表する経営者たちによる「年代別経営哲学論バトル」が行われました。登壇したのはBASE・鶴岡氏とグリー・田中氏、ヤフー・川邊氏、KLab・真田氏。モデレーターを務めたのは夏野氏。本パートでは、ベンチャー経営者たちがほかの世代を接する際に感じたこと、さらに付き合う上で意識していることなどを語りました。

年代によって役割は変わっていく

夏野剛氏(以下、夏野):ユーザーサイドも多様化していると感じたことありますか? 例えば、eコマースをやっているなかで。

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):そうですね。BASEは、基本的には20〜30代の方がスマホでネットショップ作っています。おそらくYahoo! JAPANさんや楽天さんの出店者さんは、PCを使っていて、もしかすると運用担当の方が1人いて、「ネットショップを作ります」みたいな感じだと思うんですけど。

まあ、フリマならスマホでなんとなく想像しやすいと思うんですけど。

夏野:わかるわかる。

鶴岡:うちは、ほとんどスマホからネットショップを作るので。そういった意味では、ユーザーさんの、そのあたりの環境は劇的に変わっていると感じていますね。

夏野:やはり若い年齢層が多いんですか?

鶴岡:はい、圧倒的に20〜30代が中心ですね。

夏野:となると、GREEのユーザー層はどんな感じになっているんですか?

田中良和氏(以下、田中):それほど、自分とは変わんない感じですけどね。

夏野:30代が多い?

田中:30代くらいが一番多いんで。

鶴岡さんは、もっと本当は、「一番俺ができるぜ」「俺が一番すごい」と思っていることを隠している感じがしますよね。

鶴岡:いやいや、いやいや。

夏野:ツッコミ入りましたね。

鶴岡:(笑)。でも、難しいと思っていて。それこそシリコンバレーとか見ると、往々にして20代の方々が新しいイノベーティブなサービスを作っているんですよね。うちの会社には30代や40代ももちろんいるんですけど、年代によって役割は変わっていく気はしています。

夏野:それはちょっと聞きたいね。なんの役割が違うんだろう?

鶴岡:うちの会社で言うと、この次に来るサービスを考えたり、もしくは「ユーザーさんにこういう体験を届けたい」「ここのUIはこういうユーザーさんに使ってほしい」など、基本的には20代のメンバーがすべて作っています。

30代より上の方々は、それをどう実装するのが一番最適解になるかなど、そういった役割に分担されている気はしてます。どちらが偉い・偉くないはないです。ユーザーさんのインタラクションや、UI、UXに敏感な人たちが、今の20代がたまたま多い印象です。

「インターネット会社なんて……」→「競合が多くて困ったな」

夏野:なるほど。ちなみに、真田さん世代は、実は日本の人口構造から言うと、ここにいる人たちでやっと半分なんですよ。このおっさんのさらに向こう側にいる人たちが、実は半分います。だから、日本全体の平均年齢からいくと、たぶん真田さんがちょうど平均くらいかな。そして、そこから先が半分いる。

今まで、世代を上に対して感じてたことってあります? 上の世代に、「世代が違うな」と感じていたことなど。

真田:インターネットやモバイルなど、僕らの上の世代は、やっている人がいなかったから。

夏野:やっていないね。孫さんくらい。

真田哲弥氏(以下、真田):ですね。僕と夏野さん、あと、同い年が三木谷(浩史)さん、宇野(康秀)さん、熊谷(正寿)さん。このあたりがだいたい同世代なんです。上の世代がいなかったから、僕はラッキーだったと思っていますね。僕らの時代で勝負ができたのが良かったな、と。

夏野:では、逆に上の世代がいて、邪魔だと感じることをちょっと言ってみてください。

(会場笑)

川邊健太郎氏(以下、川邊):あの……、その話もしますけど。

夏野:あ、一番感じてる人だ。

川邊:いや……、上の世代の話で言うと、とある著名な経営者の方のお話をうかがったときに、「70代や80代と、今の経営者同士の感覚の違いってなんですかね?」と聞いたことがありました。その人はただ一言、「四半期決算でものを考えているか、年度なり3ヶ年でものを考えているかの感覚が、ぜんぜん違うと思うよ」「昔は四半期決算とかなかったから」と。

「だから、上の世代の経営者はもう少し中長期的に考えられていたけど、今は厳しいね」と、とある著名な経営者の方はおっしゃってましたね。その違いは相当あるんじゃないですかね。

夏野:まあ、そちら側の経営者との付き合いが多い私から見るとですね、その人たち、決算よりも、自分のことしか考えてない人が多いです。

川邊:なるほど。

夏野:まあ、それは置いといて。

川邊:はいはい。邪魔だな、と思うこと……。

夏野:真田さんは、上はもうぜんぜん青空だった、と。確かにそうですよね。そして、ちょうどテクノロジーの勃興と一緒だった。……あまり感じないですかね?

川邊:私なんかだと、ピュアネット会社で育ったんで、ぜんぜん感じないですけど、Yahoo! JAPANにはネット以外にもいろいろな業界の取引先があるじゃないですか。

夏野:はいはい。

川邊:そうすると、取引先のネット担当の人たちの上司は上の世代なんです。要する、「インターネットなんて、あんなもん……」と言っている方々と日々戦っていただいているのかな、と思ったりします。

夏野:それはありましたね。自分の直近じゃなくて、取引先の相手。そういうのは、もうぜんぜん感じないでしょ? 20代、30代は。

田中:僕が会社を作ったころは27歳くらいなんですけど、そのときからすでに、Yahoo! JAPANも楽天も、ディー・エヌ・エーも、ミクシィもありました。「ネット業界って、すげえでかい会社がいっぱいあって困ったな」と、当時から思ってたんです。そこから多くの人がまた、「グリーとかなんとかがあって大変だな」と見ていますけどね。

夏野:そういうのは感じたんだ。先行しているから、違うところで戦わなきゃいけない。

田中:1兆円企業、何千億企業がいっぱいゴロゴロしていて、「困ったもんだな」と思いましたね。

夏野:「困ったもんだな」(笑)。

(会場笑)

田中:新しいものをやる身としては、「どうすんだよ、これ」と思いましたね。

夏野:そういう感覚はあるんですね。

田中:それで3人から会社を始めるわけですからね。

夏野:鶴岡さんはどうなの?

鶴岡:うちも、コマースや決済をやっているんで、それこそYahoo! JAPANさん、楽天さん、GMOさんなど「あるじゃん」と散々言われる中でしたね。事業ドメインを選ぶこともありつつも、先ほど話したように、理解度は昔のインターネットよりは高いと思っています。スマートフォンの普及もあると思うので。どっちもどっちかな、という気はしたりはしますけどね。

若い経営者が唯一埋められないのは、経験の差

夏野:わかりました。では、いろんな世代が、現実に存在するんですが、2つ目の質問は、この世代を超えた付き合いは、どういう付き合いがベストなんですかね? 最初にみなさんに投げかけた質問は、「世代を超えた付き合いは可能か?」と投げかけたんですけど「不可能」と言う人は誰もいないと思ったんです(笑)。

逆に言うと、「どういった世代の組み合わせがこんな力を発揮する」「こういう世代の組み合わせは食い合わせが悪い」などがあれば、ぜひみなさんからうかがいたいんですが。

川邊:付き合い方で言うと、先ほど申し上げた通り、私は年に1度くらい若手、20代前半経営者と会ったり合宿したりしています。方針は、私は明確で「媚びる」。ひたすら媚びる。

夏野:媚びる? 川邊さんに媚びられたら、気持ち悪いね。

川邊:いやいや(笑)。もう、徹底的に媚びていく作戦です。

夏野:例えば、どういうふうに媚びるんですか? 鶴岡さんにやってみてください。

川邊:「痩せてるねぇ!」とか。

(会場笑)

夏野:それ、嘘じゃん!

田中:それ、ムカつかれますよ、若い人に(笑)。

川邊:ちょっとね、今日、いいもの食べてきちゃって、もうフワフワしてて、ちょっと。

夏野:嘘じゃん、それ。嘘はダメですよ。

川邊:総じて、若い経営者のほうが優秀ですよ。若ければ若いほど優秀。真摯に話を聞いてくれますし。ただ、唯一埋められないのは経験の差です。その経験の差でなにか言えることがあれば、最小限度、話を短くして伝える。そういう感じですかね。

夏野:真田さん、なにか経験が生きることは、どれくらいあります? 過去の経験のなかで。

真田:ふつうに生きていますけどね。

夏野:なんか、昔と同じことやっている気がするけどね。

真田:いや、同じことをやっているように見えて、微妙に違うんですよ(笑)。

先輩経営者から学べることは「マネジメント」「組織の作り方」

夏野:例えば田中さんから見ると、いろんな世代の人たちが会社の中にもいるし、付き合いもあるじゃないですか。「やはり経験がある人違うな」と思うことはあるんですか?

田中:誰が考えてもこうなるだろうをいっぱい知っているのはありますね。僕、とくに60代くらいの経営者と、けっこう頻繁に会うようにしているんです。「すごい勉強になるな」「同世代の人では学べないことだな」と思っていますね。

例えば、以前僕が困ったのは取締役会の進め方です。これは千差万別じゃないですか。KDDIの取締役会はどうやっているのか、何分で何人が出ているのか。議事録や資料は厚いのか薄いのかもわからないじゃないですか。

そういったことについて「こうやっているんだよ」と聞くと、意外に勉強になるなと思ってやっています。

夏野:たぶん、なんの勉強にもならないと思いますけどね、大会社の取締役会とかね。

川邊:結局ね、アイデアに関してはぜんぜん役に立たないです。20代のほうが冴えているんで。ですが、マネジメントや組織の作り方は、アドバイスすると「はー」と聞いてくれますね。アイデアはもう、こちらから言いもしないですし、恥ずかしいですから。仮に言ったとしても、スルーされるだけです。マネジメントや組織のところは、ある程度アドバイスしますね。

夏野:どうですか? ありがたいお言葉いただいたことありますか? 鶴岡さん。

鶴岡:そうですね。何十代の方というよりも、僕よりも上の方という感じだと思うんですけど。けっこう今の、まさしくと思っていて。

僕もBASEを作る前、家入(一真)さんという人が経営しているCAMPFIREという会社にいたんですけど、週に何回ミーティングするとか、それこそ、会社のドメイン形態とか、最初のころはすべてCAMPFIREからパクっていました。

その後に、サイバーエージェントさんやメルカリさんに出資してもらったタイミングで、藤田(晋)さんや山田進太郎さんにも、「ミーティングどうやってるんですか?」と、会社の運用方法や、組織の作り方みたいなところはうかがっていました。本を読んでもわかりづらいところだったりもするんで、そのへんを個人的にすべて聞きましたね。会社を運営するうえで。

川邊:無理に話を合わせなくてもいいんだよ?

鶴岡:いや、本当に(笑)。

夏野:逆じゃない。こっちが媚びているじゃん、みたいな感じ(笑)。

田中:僕もあったんですけど、会社を始めるときは、「出社時間をいつにするのか」から決めなきゃいけないじゃないですか。僕、まったくわからないんで、楽天と同じ出社時間で9時半にしたんです。そういうものを、どんどん学んでいかないと始まんないよね。

鶴岡:そうですね。会社の作り方も(松山)大河さんに最初は聞いていました。「銀行口座、どう作るんですか?」とか。基本的には全部教えてもらいましたけど。

夏野:あ、そういうレベルはよく知ってるかもしれないね、何回もやってると(笑)。

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