2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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南 壮一郎氏(以下、南):皆さん、こんにちは。ビズリーチの南と申します。弊社は2009年4月14日にスタートして、丁度先月で丸5年になりました。僕らはよく事業作り、事業作りと言っていますが、事業作りは仲間探しだったな、というのが僕の5年間の振り返りです。
前職は楽天イーグルスという球団を、10年前の創業当時に7、8人で、仙台でつくっていました。その前は外資系金融マンだったので、採用、人事、組織とかわかって起業したわけでは一切ございません。ある意味、ド素人です。当時はド素人が会社をつくっていたのですが、もっとド素人だったのが、自分達のやっている商売の領域がインターネットの力で採用の領域を変えようとしているので、ダブルパンチなんです。自分で採用もやったことがないし、採用を商売にしたこともない。何もわからない世界に入っていきました。
採用の世界を見た時に、真っ先に「すごくブラックボックスだな」と思ったんです。あ、ブラックホールになっちゃってるんですけど(笑)。
(会場笑)
何がブラックボックスかと言うと、採用しようとしている企業と、仕事を探しているビジネスパーソンの間がすごくブラックホールだと見えました。これは、わかりやすく言うと、インターネットが普及する前の小売りの世界と似ています。ものを売りたい人とものを買いたい人、人を探したい人と仕事を探したい人って、本質的にはものすごくマッチングしやすいはずなんです。
だけども、「人を雇いたい―仕事を探したい」、「ものを売りたい―ものを買いたい」。で、「ものを売りたい―ものを食べたい」ではないので、マッチングしやすいのに、そこの間をわざとブラックボックスにしている人達がいるんだな、と。
それが、2次問屋さん、小売店さん、皆さんも昔学生時代に買い物した時、僕もそうでしたが、駅前に行って、2、3店舗周って商品や値段を比較して、一番いい商品を一番いい値段で買って得した気分でいても、実は、大阪で半額で売っていたり、名古屋で在庫処分セールしていたり。本当はいいものをもっと安く買えたはずだけれど、その機会を失っていた。流通業界に物理的にも依存していたんですね。
昔の小売業界では、「流通会社が小売業界を支配していた」とよく言われますが、採用の世界もまったく同じにしか見えなかったんです。人を雇いたい企業がいて、仕事を探したいビジネスパーソンがいて、人材業界がここをブラックボックスにして、自分達のルールと自分達の商売の原理で勝手にマッチングをして、市場原理で人が分配されない。
人材業界の多くの人は、企業に、何も考えずに採用のことを全部任せて欲しいのだと思います。企業が主体的能動的に採用ができにくくなればなるほど、人材業界は儲かります。求職者が自分のキャリアと選択肢をきちんと理解し、主体的能動的にキャリアデザインができにくくなればなるほど、人材業界は儲かるんです。
もちろん例外はたくさんありますが、敢えてわかりやすく言うと、必然的に人材業界は企業に何も考えずに採用を全て任せて欲しいし、求職者に自分のキャリアのことは何も考えなくして、駆け込み寺のように自分達のところに駆け込んでくれて、更に自分達にとって一番都合のいいマッチング、一番儲かるマッチングをするのが、日本の人材業界がつくりあげてきた仕組みだと思います。
故に、自分達がやりたかったのは、人材業界の原理で人が分配されるのではなく、ちゃんとマーケットプレイスをつくること。採用の世界の楽天市場になれればいいと思っています。企業がちゃんと自分の意志を持って。営業、マーケティング、商品開発、品質管理はみんな一生懸命やるんです。でも、採用になった途端に全てお任せなんです。新卒採用は自分達でやる大企業も出てきていますが、中途採用は人材会社に全部お任せしている企業が多いです。
求職者も、企業側が人材会社に任せているから自分達も人材会社に頼りすぎてになってしまう人が多く、すごく草食化しています、日本だけが。企業が肉食化して、求職者も肉食化すれば、ちゃんと市場は成り立つだろうなと。そういうプラットフォームになればいいなと思い、ビズリーチという会社をつくりました。
いきなりボリュームゾーンでやると、リクルートさんとかインテリジェンスさんとか、エン・ジャパンさんとか皆激しい戦いをやっていたので、難しいだろうと思い、管理職、専門職、グローバル人材、年収で言うと大体500万円以上の方々に特化したマーケットプレイスをつくり、データベースを企業に全公開しました。すると主体性を持った会社が現れました。
最初は外資系企業でした。GEさん、アマゾンさん、グーグルさん、オラクルさん、IBMさん、アクセンチュアさん。日本以外の世界では、オープンなデータベースがいくらでもあります。企業がデータベースを見て、好きな人に好きなだけアプローチができる、というマーケットプレイスが海外ではできているわけなんです。それをつくったら、外資系企業が乗ってきてくれました。
そして、もう一つ乗ってきてくれたのがベンチャー企業。ベンチャー企業は、今まで人材業界に頼った高い採用コストの採用を余儀なくされていました。でも、ビズリーチがデータベースをオープンにしたことで、そのデータベースを使って自分でアプローチしてみたら、優秀な人材が実はいくらでもいたことに気づいたんです。今までは人材会社が紹介してくれなかっただけだと。
というのも、優秀な人は、年収の高い有名な会社に紹介したほうが人材会社は儲かるビジネスモデルだからです。人材会社が人を紹介するにあたって、大企業と比較して年収と知名度が高くないベンチャーや中小企業は食物連鎖の一番最後です。そういうプラットフォームをつくってきました。最後もう一つお話させてください。
皆さん制度のことを話していましたが、僕は採用のこと、自社の採用のことを。これまでひたすら「事業創りは仲間探しだ」と言い続け、ありとあらゆる方法で仲間探しをしてきました。これはビズリーチと、黄色がビズリーチから分社化した、タイムセールのルクサという会社です。2つの会社を併せて今333人の正社員とやっております。このあたりについてお話できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
あと、曽山さんの人事組織周りはベストプラクティスで皆が羨む成功例ですが、過去5年ほどで失敗した話とか。皆さんも参考になる失敗談等をしていただければと思います。
曽山:はい、わかりました。これは「マカロン」のパッケージを文字に出したものです。女性の活躍支援のための5つの人事制度から連なるものです。
岩瀬:マカロンってなんですか?
曽山:マカロンというのは「ママがCAでロングに働く」の頭文字を取ってマカロンと。ネーミングはすごく大事です。人事制度は社員に使ってもらってなんぼ、です。これは労務のメンバーがつくってくれました。一番特徴的なのは2番、3番。妊活の休暇は相談しにくい、というところを、不妊治療に行くことができるようにすることと、妊活のコンシェルジュを月に1回呼んで、これはこれからの実施ですが、個別のカウンセリングやセミナーをやろうとしています。出生率のアップに少しでもプラスになればいいなと思います。
あとは、子供が病気になったとき、看護で出社できないということがよくあるので、それは在宅勤務に。あと行事の出社。一番が実はポイントでして「F休」というのがありまして、これはFemale休暇の略です。男性上司に「生理休暇で休みたい」と言いにくいですよね。真面目な男性上司にありがちなシーンがあります。
何かというと、女性が生理になりました、お腹が痛いです。朝上司に電話をします。「お腹が痛いので、今日は休ませてもらってもいいですか?」と言うわけです。生理とは言いにくいので。すると男性上司で、その部下のことをかわいいと思っていればいるほど、「大丈夫、お腹? 病院行ったほうがいいんじゃないの? 今すぐ行こうか? 胃腸炎かなんかじゃないの?」と言って深堀りする、という罠があってですね。真面目に深堀れば深堀るほどイタイ上司になってしまう。
(会場笑)
男性上司は、本当にこれは気を付けたほうがいいです。「お腹が痛い」と言ったら黙ることが大事です。そこからヒントを得て、私達は女性の有給休暇は全部「F休」と言おうと。「F休で休みます」と言うのを、通常の有給であっても、生理なり妊活休暇であっても、F休と言おう、F休と言ったら、もうそれはそういうものだと深堀りしない。と、こういう風にしようと。人事にはきちんと理由を申請してもらうので、そこはフェアにやります。
このマカロンパッケージ、実はネーミングに関してですが、「ママチャレンジ」とか「ママチャレ!」とか「ママサポート」で「ママサポ!」とか言う制度が付いていたのですが、ちょっと気合いが入りすぎているようなネームだったので、女性にいまいち響かないかな、と思い労務のメンバー、女性のメンバーが「マカロン」を提案してくれて、「これいいじゃん!」と言ったら女性社員にも結構評判が良かった。
岩瀬:マカロンもF休も、ネーミングがすごく上手だなと思います。名前によって制度の使い勝手や運用面でも変わってくるんでしょうか?
曽山:そうですね。一番何が重要かというと、人事制度とは社員同士が「○○使った」って、口で流通するかどうかがすごく大事です。その時に「妊活休暇支援制度使った?」とか絶対に言わない。長いから。あとは恥ずかしいと思う人もいるかもしれない。なので、本当に軽く。これは妊活休暇と言っていても、「マカロン使った?」みたいな。そういう表現にすること、そういったところを大事にしています。
曽山:これは実は失敗はあまり無くなってきているんです。打率が上がってきてるのが本音でして。
岩瀬:では、もう少し会社が小さい頃は?
曽山:サイバーエージェントで人事制度で「あした会議」という人事制度があります。これは経営者や役員が社員5、6人とチームになり、役員がチームリーダーとなる新規事業バトル。1位からビリまで出る。今は社長の藤田晋が審査員になって点数を付ける、で、役員が頑張る、というモデルで良くできているんです。
一番最初の「あした会議」はどうだったかというと、藤田晋も参加して、トーナメント戦だったんです。トーナメントの投票、誰が勝ちを決めるかと言うと、そこに参加している社員の民主的な投票で決まったんです。そうすると、藤田晋が負ける、ということが起きるのです。
例えば、一番衝撃的だったのが、藤田晋対いま副社長をやっている日高、創業者なのですが。藤田もある人事制度をプレゼンしました。その後に日高もプレゼンして、その後ディベートするんです。すると日高が藤田の案についてうまく批判したんです。こんな人事制度だったら僕らサイバーエージェントの未来に繋がらない! みたいな。
その時は勝敗がその場に参加している全員による投票だったのですが、社員が皆日高の方に投票し、日高が勝ったという波乱がありました。ちなみにその後、社員は日高の制度を覚えていなかったのですが、それを藤田が強く意見を言ったのです。やはり新規事業の決断は民主的な投票だけで決めるものではないのだと(笑)。
(会場笑)
意見は聞くけど、最終的にはトップリーダーが決めて、投資も決めて、リスクを負ってやらなきゃダメだ、ということに気付いた……ということがあり、次からは「あした会議」が終わった後の役員会で議論した結果、藤田晋は審査員をやったほうがいいんじゃないかという話になり、役員も皆「それがいい」となって、次から藤田が審査員になり役員がバトルするようになりました。
結果、このほうがアイディアがたくさん出るようになりました。このように、ひとつの人事制度でも1回やったら次すぐ変える、ということが大事だなと。継続的に成長していくためには大事な学びでした。
理念や、こういう人になって欲しいというのは、村上さんはいつ頃から、どのように考えられたのかということ。そして社長として、人事や育てることに関して、どんな時間配分でされているのかを聞かせていただければと思います。
村上:ありがとうございます。組織とか人事とかを考え始めたのは、実は創業時には一切考えていなくて、理念ももっと違う形で。ちょっともう覚えていないのですが。3つくらいあったと思います。「エンジョイハードワーク」とか(笑)。
あとは、「社会に愛を」みたいなそんな感じのものがあって。想いとしては、今掲げている「幸せから生まれる幸せ」というのはあったのですが、言語化はできていませんでした。本当に思っていることって、言語化は後からで、行動が先かと思います。
創業時もとにかく行動、で。考えたプランも、今までの世の中に無いような仕組みで「これやったら面白いんじゃないか」「良い影響を与えられるんじゃないか」、そんな想いで始めました。人数が少ないうちは想いの共有だけで、「幸せから生まれる幸せ」という言葉がなくても、同じような方向を向き同じような考えを持っていられるのですが。
その後人数が増え、20名くらいの規模になった頃から、感情を人づてで伝えるのが難しくなり、言葉を掲げなければブレてしまうと感じ始めました。ちゃんと言葉にする、そしてあらゆるものに意志を持て、と私は言うのですが、言葉からあらゆる制度やロゴの意味までしっかり浸透させていくというのを大切にしてきました。
村上:「あたりまえを、発明しよう。」の言葉は、去年(2013年)の2月。その前が「文化となるWebサービスを、つくる。」でした。
岩瀬:ずっといいですね、こっちのほうが(笑)。
村上:そうですね(笑)。ほとんどニュアンスは同じなのですが、改めて考えていくにあたり、例えば、幹部陣とウェブという言葉を入れるかどうか。あたりまえのウェブサービスを発明しよう、なのか、あたりまえを発明しよう、なのかを議論しました。それを実現するにはどういう考えが必要で、どういう行動が必要かを議論し、考えるプロセスを通じて考え方をすり合わせる場にしました。
岩瀬:素晴らしいです。今の時間の使い方を教えてもらえますか?
村上:私は、実はこういうことを考えるのがそこまで得意というわけではなく、最後のスライドにも記載しましたが、私ではなく創業メンバーのひとりである桂という、19歳ごろからずっと一緒にやっているメンバーが中心に動いています。考えはすり合っているので、行動の部分は背中を見せながらやるのが得意なのかな、と認識しています。
岩瀬:採用とか評価、研修等一連の人事系には、どれくらい時間を使っているイメージですか?
村上:2、3割でしょうか。どこまでを研修と言うかですね。例えば、主要メンバーとは1週間に1回、1on1という形でミーティングをして、その過程でフィードバックをしたり、考えを伝えたり。それを研修と言うか、なんと言うかによりますね。
岩瀬:直接やっているのは何名くらいですか?
村上:10名弱ですね。
制度や組織面で、これまでとこれから、どういうことを気を付けているかを教えていただきたいです。先ほど、スライドは無いのですがオフィスの写真を見せていただきましたが、本当に斬新な感じでした。このあたりも含めてお話いただけますか?
本田:先ほどは無茶苦茶な話をしてしまいましたが、まともなほうの話をします。
(会場笑)
本田:コーポレートミッションの話がありましたが、設立して3期終わるくらい、70人近くなっている頃でした。そろそろだなと思い考えたのが、「人に、人らしい仕事を」というコーポレートミッションをつくりました。これは我々、もともと広告の世界で広告のテクノロジーを変えていこう、ということでやっていますが、今後も引き続き、広告から仮に出ることはあってもB2Bは決めたよ、というか。コンシューマーのことをやっていくつもりはない、ということ。
そしてITの根本の話になるのですが。ITでプロダクトをつくって、作業の効率が上がって、人がムダなこと・単純な作業をしなくなるというのは当たり前の話であって。その後人間がやることがなくなってしまうことがどうなのかとか。その後のその人達をどうすべきなのか、とか。
そこに対するサジェスチョンを与えるレベルのプロダクトをつくってみたいとか。そういう想いをこめて、単純作業をしなくなった人間を、もっと人間らしい仕事に、やっていることを昇華させたい、という想いをこめて、そんなミッションにしました。
まさに広告業界の現場に起こっているのが、よく皮肉で言うのですが、アドテックで一番成功したプロダクトとはなんだろう? という話をします。ウェブ広告事業に従事している人達が、どのツールを一番使っているかと言うと、エクセルです。アドテックで勝利したプレイヤーがエクセルだった、というのはすごく残念。
みんな夢を持って広告業界に来ます。それこそ、新卒でいまだに広告業界は人気ですよね? 皆お客様に対してキャンペーンのプランニングをしたり、そんな想いを持ってきている中で、一日中エクセルを使っている、というのは残念なことです。
僕もエンジニアとして広告プロダクトを設計するにあたり、どういう設計思想でいるかと言うと、テクノロジーの部分とサイエンスの部分をどう賢く使うかと、最後はアートなんです。どう表現するか。どう表現するかで、マーケター様が消費者に与えたい印象というのは変わってくるので、その3つをどううまくミックスさせるかという、そういうプロダクトをつくっています。
それをきちんと会社の文化にも反映させたいと思っています。ですので、なぜかオフィスが楽器だらけ、バスケットゴールを置いてみたり、プールを置いてみたり。
岩瀬:プールは水は入っていないんですよね?
本田:それやったら森ビルさんに本当に怒られるので(笑)。白樺の木を50本くらい立ててみたり、色々おかしなことをやりながら、はい。アートを大切にするテクノロジー企業みたいな。そういった考えでコーポレート文化をつくっています。
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