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デジタル×ファッションの融合(全5記事)

服を買うのは何のため? ファストファッション全盛期のブランド戦略

2015年12月10日、「IVS 2015 Fall Kyoto」が開催されました。Session9B「デジタル×ファッションの融合」には、モデレーターを務める林信行氏、三越伊勢丹ホールディングス・北川竜也氏、デジタルファッション・森田修史氏、VASILY・金山裕樹氏の4名が登壇しました。本パートでは、ファストファッションの流行により、消費者の志向が多様化するなかで、ブランドや服の作り手に求められる“付加価値”について語り合いました。

ファッションを提供する店舗の課題

林信行氏(以下、林):デジタルとファッションは狭いテーマのようで、実はすごい広いテーマです。しかも今、すごく旬であると同時にすごい規模がある状態。

もし会場のほうで質問とかあったら手を挙げてほしいんですけど。とくになければ、北川さんとか、どんどんテーマを。

北川竜也氏(以下、北川):先ほどの金山さんのお話とつながるなと思ったのが、本当に日本人が持ってるクリエイティビティが、デジタルの力を使うことで出てくると。

それはいわゆるCGM、コンシューマー・ジェネレイテッド・メディアだと。そういう時代が来てるということをすごく実感します。

我々もお店づくりのときに、今まではどうしてもバイヤーの力で、お客様の先を行く提案をするということをずっとやってきたんですけれども。

いかに個のお客様と我々との結び付きを……例えばアプリを通じてなのか、デジタルのテクノロジーを使って作っていくのかというところがすごく大事になってくる。

そういう方々の表現の場として、東京ガールズコレクションがあったり、伊勢丹というお店があったり、場の価値が次の時代に生まれてくるんだろうなと。

我々もいろんなことを模索して、いっぱい失敗してるんですけれども。そういうことをもっとやっていかなきゃならないとお話を聞いていて痛感しました。

我々はアジアのお店も持ってるんですけれども、状況は非常によくないです。背景にはいろんな事情がありますけれども。

自分を何か表現しに行く場、ワクワクする場所だという、我々がそういう認識をご提供できてないということなのかなとすごく学ばされました。

クリエイターの下克上

金山裕樹氏(以下、金山):先ほど、「日本の個がすごい」という話をいただいたと思うんですけど。

例えば僕らのアプリで投稿されているコーディネイトは、本当に普通の素人の方たちがやってるんです。その普通の方がクオリティの高い、本来であれば雑誌の編集者やデザイナーがやるような投稿をスマホ上でやって、1日に数千というものをアップして楽しんでいただいている。

個の力というのは、僕自身もお話を聞いていてありましたし、ブランドさんと補完しながら、そういったところがモノづくりに活かされていくといいなと思います。

実際のコーディネートのデータは、累計で200〜300万ぐらいありますが。僕らはファッションの会社じゃなくて完全にテクノロジー会社なので、どの季節に何が使われているかとか、どれとどれが組み合わされているか、このブランドが好きな人は何のブランドが好きかとか、ECサイトの購買履歴まで全部トラッキングしています。

そういったデータをご提供して、いいモノづくりだったり、いい売り場づくりができてくるといいかなと思いました。こういう話をしたときに、「やろうぜ~」という方があまり多くないのもこの業界の特徴かなと思います。

森田修史氏(以下、森田):我々はデジタルファッションクリエイターを教育しているんですけど。自分で3次元でコンテンツを上げて、服が自動で着れるようになって、それでブランドを立ち上げて売るということもあり得るのかなと考えています。

例えば今、実際に服を作っている国々。東南アジアもございますし、バングラデシュなどもございます。そういった方々が実際に、そういう技術を習得して、自分で教育もしっかり受けて、こういうアプリを使って売ったらいいと。

自分のブランドの立ち上げ、H&MやZARAの服をもう作らない、我々でやりますというような反動が起これば、それこそ下克上が起こる可能性もあるのかなと思います。

ファッションが与える価値の再認識

:わかりました。会場のほうでとくに質問はないですか?

質問者1:楽天のキタガワです。ファッションが消費者に与える価値だとか、消費者がどういうふうにエンパワーされるのか。

昔で言えば、シンボリックなものとして、ブランドを身につけると自分自身に自信がついてよりよい自分になれるとか。そういった人の心の背中を押すような効果もあったと思うんですけれども。

お三方はどういったビジョンで、消費者にどんな人生を歩んでほしくてファッションを語ってるのか、ぜひお聞きしたいと思います。

北川:なかなか難しいご質問をありがとうございます。まさにそれをずっと追求していきたいのがファッションミュージアムの伊勢丹でございまして。これまでの考え方でいくと、我々で展開分類という分類をしまして。

お客様がどういうものを求めていらっしゃるか、もちろん人それぞれ違うんですけれども。ある程度の大枠のカテゴリーで、こんなことを求めていらっしゃるという分類をして、そこにヒットさせていくようなエッジの利いた商品を山盛りに並べるわけです。

そうなってくると、当然お客様はある場所にはすごいと思うけど、ある場所にはぜんぜん引っかからない。

これはもう、それぞれの方が選んでいただけるように、そういう買い場の展開をずっとしてきています。実はそこにairClosetの天沼さんもいらっしゃるので。

彼らのビジネスで、この間お話を聞いていてすばらしいな、それは我々の原点だなと思ったことが1つあって。

airClosetで届く洋服を着て街に出た方々が、ユーザーレビューみたいなところで 、ガラスがあって自分の姿が映ると、思わずチラ見しちゃうと。チラ見した自分にけっこう満足するというお話があって。それはファッションのすごく重要な役割なんだなと。

要は、自分が今まで着たことがないレザーのジャケットを着てみたら、「なんか俺、カッコいいぞ」とか、「私、かわいいぞ」とか。あるいはそれを着てデートに行くというときに、「なんか自信持てちゃった」とか。

そういう人生が変わる1つのきっかけが洋服になってるというお話を聞いて、すばらしいなと思いました。もちろん百貨店も展開分類で「こう着てほしい」というのはあるんですけれども。

それを着ることによって驚きが生まれるというところ、airClosetのビジネスでそういう機会を提供されてるんですけども。我々はリアルの販売員がたくさんいるわけですから、スタイリストがそういう場面をどれだけお客様に提供できるかというのは、とても大事だなと。

ただ単に洋服を提案する、置いて並べて見てもらうだけではなくて、我々が持っている人間の力を付与して、どれだけ新しい自分と出会っていただくとか、新しい価値に出会っていただくかということを追求していきたいと思っています。

“ストーリーへの共感”で生まれる購買意欲

森田:ファッションの多様化ということで、ファッション自体も広がっていますので一概には言えない。この前若い子に聞いたら、「おしゃれはカッコ悪いよね?」と言われたことがあるんです。

「何をそんなに頑張ってるの?」みたいな話があって。そういう意味でいくと、自分がどう生きたいかとか、ライフスタイルそのものにつながっていく話だと思うんです。

我々がやってる中で大半、8割の人が自分で決められない、自分でカスタマイズできないんです。選んでほしいんです。誰かに頼って、とくに日本人の場合は多いらしいですけど。

8割方がそういう買い方をしているということなので。実際にファッションを自分で決められない人たちにどう対応していくか。それが自分のファッションだという人も出てくると思うんですけど。一概にはわからないです。

金山:誰でもみんな服を着ますよね? でもファッションが出すべき価値というのは、ストーリーかなと思います。ブランドだったり、素材もそうですけれども。あとはその服を着て何かやるとか。

その服を買う瞬間になにかいい体験があったとか。そういったストーリーをどれだけ与えられるかということ。例えばこのストーリーに共感するから、伊勢丹さんで買うし、NIKEの靴を買うし、そういったものが選ばれるものになっていく。情報と一緒で、昔に比べると服もめちゃくちゃ増えたと思うんですよね。丈夫になりましたし。

選ばれるような価値を出していくというのは、その製品だったり、作り手だったり、買うまでのプロセスだったりにストーリーがあって、そのストーリーに共感できるかとか、そのストーリーに自分を反映させたいとか、そのストーリーに入りたいという気持ちにさせるかどうかなんじゃないかなと思ってます。

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