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起業する前にベンチャー就職をすることの利点(全4記事)

「皿洗いの先にチャンスが待っている」経営者が振り返る、DeNA時代の経験

2016年5月14日、社会人&大学生のためのベンチャーの祭典「Start Venture Festival 2016 Spring」が開催されました。パネルディスカッション「起業する前にベンチャー就職をすることの利点」では、モデレーターを務めるリンクアンドモチベーション・麻野耕司氏、アカツキ・塩田元規氏、フロムスクラッチ・安部泰洋氏、リッチメディア・坂本幸蔵氏の4名が登壇。本パートでは、塩田氏と安部氏、坂本氏がそれぞれの新卒時代を語りました。

内定を取った13社で一番小さい会社に入社

麻野耕司氏(以下、麻野):なるほど。坂本さんは自分の人生なので、自分で決められる生き方をしたいと考えて、自分で作れる会社がいいなと思って(サイバーエージェントに)入ったということでした。

塩田さんは理想主義だったので、もっと現実路線で収益をしっかり出している会社、自分の考えと少し違う会社を選んで、(DeNAに入る)覚悟を決めたと。

安部さんはいろいろあって、13社内定もらったなかで、なんでその1社に決めたんですか?

安部泰洋氏(以下、安部):一番小さかったからですね。それだけです。サイバーは当時300人ぐらい。DeNAが200人ぐらいなんですけど。僕が入った人材系の会社は当時50人ぐらいでした。

正直人材ビジネスなんて一切興味なかったですし。ただ、一番小さかったら、それだけ組織で個人が担う表面積がでかくなるからというだけです。

ちなみに、リンク(アンドモチベーション)に入ったのは、(当時)14社受けて13社内定もらったんですけど。1社だけ落ちたのが、リンクアンドモチベーションだったんですよ。

当時のリンクアンドモチベーションの採用メッセージが、「人の本気に火をつける」だったんですけど。落ちた瞬間、このビルに火をつけてやろうと(笑)。「クソ会社だよ」と思った。

麻野:一番ウケてる(笑)。

(会場笑)

ヘッドハンティングがあったときも、「このクソ会社を見返してやろう」と思って入ったという話なんですね。だから、本当に小さいところ。業界とかのこだわりは一切なかったので、小さいという理由だけで選んだんですね。

麻野:ありがとうございます。そのクソ会社の、そのときの新卒採用のリーダーをやってたのが僕。

(会場笑)

安部:こいつに落とされたわけですね(笑)。

塩田:ちなみに、僕も落とされてます(笑)。見る目が本当にあるのかってことだよね。

安部:見極めめっちゃ悪いでしょう?

麻野:安部さんは、ちょっと顔が変だったんでね……。

(会場笑)

安部:そんな採用基準ねえ。

1日20時間、土日も毎日働いた

麻野:なるほど。小さい会社に入る。これはけっこう難しいと思いますよ。学生さんって、どちらかというと「大きな会社に入りたい」と考える人が多い。

内定を取ったら、その中で一番大きな会社。広告会社全部受かったらたぶん電通に行くという人が多いんじゃないですかね。「小さい会社が……」ってすごく珍しいパターンだと思ってます。

それぞれそういう軸で会社を選んで、入ってみてどうだったのか? どんな仕事をして、どんなことが よくて、どんなことが嫌だったみたいなところがあったら聞きたいなと思います。

坂本さんはサイバーエージェント、「自分が作るんだ」と思って入ってみて、実際どうだったかを教えてもらっていいですか?

坂本:僕は2006年入社で、同期が100人いたんですけど。正直今、僕の同期がサイバーエージェントで統括とか役員とかすごい要職になっていて。正直入ったときびっくりしました。「こいつらすごいな」「マジで自分が死ぬ気でやらないと勝てないな」と思いました。

それは考え方・思考ももちろんそうなんですけど、行動するということを100人が100人ともやっていたような気がしていて。僕だけが「21世紀の代表を作る」と言ってるじゃなくて、全員がそういうふうにやってたんじゃないのかなと思ってます。

当時2006年で、アメーバブログもなかったんですけど、僕の同期のメンバーがアメーバブログの立ち上げをやって、そこから3年ぐらいで一気にドーンって立ち上がっていったのとか見てると……これは僕自身がやった話なので、みなさんがどうするかは別として、24時間中20時間ぐらい、土日も毎日働いてました。

当時土曜日に『華麗なる一族』というのがあって。キムタク扮する(万俵)鉄平という人間がいるんですけど。鉄鋼業のなかで、高炉の前で「うおー!」っていうんですけど、僕も土曜日の夕方に「うおー!」って一緒に言ってたりとか。

(会場笑)

なにが言いたかったかというと、正直自分で時間軸をやらなきゃ勝てないなと思ったので。要は、月曜日から日曜日まで全部の時間を使ってやってたというのが一番かなと思ってます。

塩田:『華麗なる一族』ぜんぜん関係ないじゃん(笑)。

坂本:それぐらい熱狂してやってたという。それで入ってみて、なにも変わらなかったです。持った印象も。すごく環境もありましたし。やっぱりやった分だけリターンがあったなと思ってます。なので、サイバーエージェントはすっげえいい会社だと思いますね。すっげえいい会社だと思います。

(会場笑)

塩田:何回言うんですか(笑)。

坂本:言えば言うほどちょっと微妙な……。1回に留めておきますね、という感じです。

入社3年目までは量を質に変えるしかない

麻野:実際に24時間中20時間働いて、どんなものが得られました?

坂本:思うんですけど、新卒1年目、2年目、3年目ぐらいまでは、量をやって質に変えるしかないと今も信じていて。

すごい考えて考えて、答えが出るまでなにもできませんでしたという子、最近むちゃくちゃ多いんですけど。

5分考えてわからなかったら聞きに行って、行動するというのをすごくやれば、やったぶんだけ結果が出るのが、すごく身に染みて学べたなと思っています。

人の10倍実行して、人の5倍失敗して怒られて。結果人の2倍成長していれば、みんななんて言うかというと、「すごいね」って言われるんですよ。みなさんだから、間の10回やらないし、5回失敗するのもいやなんですよ。最近の人たちって。

僕はまったく逆なので、恥ずかしいとか遠回りするとか一切気にせずに、ゴールだけを見て、どうやったらできるのかというのを常に考えていたので。その環境はあったんじゃないかなと。

麻野:なるほど。CAテクノロジーで役員になったのは、入社何年目ですか?

坂本:2年目からです。

麻野:入社2年目でサイバーエージェントの役員になってるんですよね。その会社の立ち上げからやって、100人ぐらいの規模まで成長させることになりましたよね。

それだけサイバーの同期が優秀ななかで、勝てないなと思われたということでした。でも、みんながみんな2年目で抜擢されるわけじゃないじゃないですか。なんで坂本さんが抜擢されたんですか?

坂本:これはさっきの2人と一緒で、影響力って結果が出ないと意味がないというのはありました。今、サイバーがいい会社だって、こいつがサイバーに合う人材だと言っても、結果がないと絶対引き上げられないと思ったので。まあ1つは結果だなと思っています。あとは、うーん……なんですかね?

麻野:坂本さんは1年目のときにもうずば抜けた結果を出したということですか? どのぐらいの成果が出たんですか?

坂本:1年目で営業をやらせてもらってて、だいたい新卒の平均が年間だいたい売上2億ぐらいやってたらいいよね、という世界観のところ、僕は8億6000万ぐらいやってるんですよ。

8億6000万、仮に代理店でマージン20パーセントだとすると、だいたい2、3億ぐらい利益を出してるので。そういうものを評価していただいたんじゃないかなと。

他人の責任にする人は絶対うまくいかない

麻野:なるほど。逆に、成果が出ない同期もいたと思うんですけど、なにが違ったんですか? これから就職するみなさんにも参考になると思います。逆に、こういう人はうまくいかなかったというのがあったら聞いてみたいんですけど。

坂本:これは絶対に記憶していて。今もそう思ってるんですけど、他人の責任にする人は絶対なにをやってもうまくいかないと思います。「あの会社のほうがいい」とか、「この環境が悪い」「この上司が悪い」という、変えられないものを全部他人のせいにする。

一方で、変えられるものって、みなさん冷静に考えてみたら全部共通してるんです。未来も、自分も、意思も、全部自分で変えられるんです。

他人も、過去も、感情も、変えられないんですよ。この分類がうまくいってたら、絶対に誰もが結果が出てると思います。

できないことは絶対ないと思うんです。それって今現時点でできてないだけで。どこかのタイミングでできる。僕はそれを信じていて。それを体現したいから、今も会社という枠組みで、社会にそれだけのものを提供したいと思っています。

もしここで聞いていただいているみなさんの中で「俺すげー自信なくしてて、よくわからないんだよね」「人生迷ってます」という人がいたら、自分を信じてあげてほしくて。それで、変えられるものを選択する。

このシンプルな2つで、僕はなんでもできると思ってるので。ぜひそういうのをみなさんのなかでやってほしいなと思ってます。

麻野:なるほど。そういう環境、(同期が)すごく優秀で、サイバーみたいな裁量権が与えられても、自分を信じてとことんやれない人はダメだったんですね。逆に、自信を信じてとことんやったら、大きい会社では与えられないようなチャンスが与えられていったということですよね。

坂本:そうですね。普通に考えてみてください。だって、10年選手に知識やスキルで絶対勝てるわけがないんですよ。そしたらなにができるかというと、自分で変えられるものを選択するしかなくて。僕はそういうふうに思ってます。

勘違いした自分と向き合えたDeNAの2年半

麻野:なるほど。ありがとうございます。塩田さんはどうでした? DeNAに入ってどんな仕事をして、どんな感覚を持ちましたか?

塩田:僕の場合は、一番最初に入ったのは広告の営業部隊でした。最初はメールマガジンのメールの件数を1個1個ちゃんと暗記するみたいなことからやったわけです。

だいたい1年弱くらいでマネージャーをさせてもらって。そこから3ヶ月後ぐらいに1個の部署のマネージャーをやったら次の違う部署のマネージャーをやって、というのを繰り返したという感じです。それで、2年半で辞めました。

DeNAはものすごくよかったと思っていて。まず1つ目は、料理でいうと皿洗いみたいなところからちゃんとやらせてくれたという感じです。

それで、ベンチャーをやってたり、だいたいの「社長やりたい」とか言うやつは、基本的に勘違いしてるわけですよ。「俺はできる」と。それで、僕も勘違いしてるわけです。「俺は世界一すばらしい人間だ」とか思ってたわけですよ(笑)。

それで入ってみて、できないことに気づくわけですよね。当たり前のことすらできないと。それをしっかり向きあわせてくれる環境だったので。

そのときに、ぐだぐだ文句を言ってれば、そこに留まるわけです。基本的には不満を言ってるということは、その場所にそのまま留まってるということで、成長しないということだと思うので。それを1個1個積み重ねながら爆速でやったという。

まあ、変わらず生意気だったと思いますけど。その生意気さと、素直さというかしっかりした部分の両輪を回せたということがよかったんじゃないですかね。

皿洗いの先にチャンスが待っている

麻野:なんとなくベンチャー、どこの会社も「うちの会社、裁量権あるよ」とか「抜擢するよ」と言うので、それで入って皿洗いからだったら、けっこう「ん?」とか、萎えちゃったりする人もいると思うんですけど、そのときはなんで頑張って皿洗いできたんですか?

塩田:そもそもベンチャーで「裁量権がある」というのは、あるんですけど、「裁量権を得れるOpportunityがある」ということであって。誰にでも権利だけを平等に渡せるわけがないわけです。普通にやる気のない人に渡したら……。

逆にいうと、1人の人がちゃんと頑張らなかったらベンチャーは傾くので。一人ひとりの影響力が大きい分、ちゃんとした人に任せないと。

「それは当たり前だよな」というところと、苦しいときとか、期待とのギャップがあったときに、そこを埋めていくこと、できてない現実とできる未来を埋めていける場所があって。

僕が当時DeNAを信じられていたのは、年功序列とか、そういうよくわからない判断で人の登用を決める会社ではないということは信じられてたわけです。ベンチャーは基本そうだと思いますけど。

ちゃんと自分がバリューを出せる人間であれば、当然そこにチャンスが来るということは信じられていたので。なので、そこに向かっては、自分は迷いはなくて、自分ができてなかったらちゃんとやるというシンプルな感じですね。

麻野:皿洗いの先にチャンスが待ってる、という未来を信じたということなんですね。

塩田:いい料理を作る人はやっぱり皿洗いがちゃんとできるんですよ。当たり前ですけど。その土台がしっかりしてなくて成長できる人はいないんですよね。というのは、それはすごく怪しい成長なわけです。ベースのところをしっかりやらないと。

だから、僕らも今日合わせてこういう変な服を着てますけど。もちろんちゃんとするときはちゃんとするわけですよ。今日もちゃんとしてますけど(笑)。

僕らみたいに一見そういうふうにただ楽しく仕事をしてるように見えるかもしれないけど、積み上げてきた土台というのがお互いにあって、それが人間の深みを増すわけです。

それができてない人は1発は成功するかもしれないけど、1発屋になる可能性も高い。継続的に価値を出し続ける人間は土台がしっかりしてるわけです。まあ、そういうことです。

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