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成長を続ける力(全2記事)

「GMO全体がペパボ化しなさい」 熊谷正寿氏が語る、企業カルチャーと成長力

GMOの熊谷正寿氏、マネックスグループの松本大氏という2人のカリスマ経営者が「成長」について語った対談。現在の大グループを築くまでに行なってきた成長戦略、M&Aの秘訣、企業と人の考え方などについて持論を展開しました(IVS 2014 Springより)。

仲間になっていただく、という意識

佐々木:熊谷さんはM&Aに対する考え方は?

熊谷:松本さんに極めて近いです。オーガニックとM&Aは成長の為の両輪だと思っています。どちらかと言えばオーガニックで成長したいと願っています。ただし、軽リソースを入手する場合に、オーガニックだとやはり時間がかかります。例えば、技術力を強化したいといった場合に、そういう会社さんでいい巡りあわせがあったら、それはM&Aという判断も十分ありますよね。

M&Aに対する考え方なのですが、私はM&Aという言葉を使わないというところからスタートします。M&Aは成功するのがすごく難しくて、特に海外はもっと難しい訳ですが、M&Aする側、特に買収なんて言葉を使うと、買った側、買われた側の視線になってしまうと。

そこで上下の関係が出来て結局上手く行かない、というケースを何度も見ています。うちと言うことではなく、周りで見ている。やはり、仲間になっていただくという意識がすごく大切だし、うちでは絶対に「M&A」という言葉を使わない禁句集に載せています。商業提携の担当者は名刺に「仲間づくり担当」と書いてあります。そこまで徹底して、上下目線をつくらないようにしている。

あとはグループ社にして頂いた後も、本社と子会社という言葉は使いません。グループ会社という表現を使う。もっと言えば、これはM&Aとは関係ないですが、従業員という言葉も使いません。上下目線がある。仲間とかスタッフとか。そういうフラットな目線から、協業・提携、仲間づくりのベースに置いていきます。

それがないとうまくいかない、という気持ちをすごく持っています。とても難しいですね。できる事なら、話が戻りますが、オーガニックな成長がベストです。やむを得ない、ここ一番、という時だけM&Aという手法を使います。

海外の会社とカルチャーを一緒にするのは難しい

佐々木:カルチャーという意味ではどうですか? 経営理念を唱和したり。そういうのも一緒にやっていくのですか?

熊谷:もちろんです。それは協業・提携をさせていただく時の前提で、「僕たちはこういう文化を持っていて、こういう風なんですが、よかったら一緒になってください」とプロポーズします。

佐々木:戦略的だけではなく、そこは重視するということですね?

熊谷:そうです。一緒になってまったくカルチャーが違ってバラバラになってしまったら、全員不幸じゃないですか。

松本:国内はそうなるでしょうね。海外はあまり……。逆に「カルチャー」という話を出させないようにしています。やはり、アメリカの会社と日本の会社、全然違うんです。まったく違うんですよ。教育も違うし、職業に対する考え方とか、給料とか、評価とか、上下関係とか全部が違うんですよ。

違うので、違うものとして一緒にやっていくという仕組みをつくらなければいけない。カルチャーを一緒にしようとすると無理なんですよ。違うままひとつの会社として動けるような、そういう仕組みになんとかしています。

佐々木:そうすると日興ビーンズの買収の時と、トレードステーションの買収の時と全然違うということですね?

松本:全然違う。私も国内の時には「買収」なんていう言葉はなるだけ使わないように……禁句ですよね。ところがアメリカの会社の時には、それははっきり「アクイジション」と言った方が、返って彼らもさっぱりするんですよ。アメリカのトップ、アメリカのマネージメントに対する僕の命令は……。

仲はすごくいいんです。一緒に飲みに行くし、仲間だし、一緒のチームなのですが、それはぴたっとすごくバーティカルに、軍隊のように組織系統はしっかりしています。そうしないと、逆に彼らは働きにくいんですよね。国内とクロスボーダーだと、そういうところが違います。

「GMOがペパボ化しなさい」と言った

熊谷:勉強になります。M&Aを宗教に例えるとわかりやすい。キリスト教はヨーロッパ主体のカトリックと、北米を主体としたプロテスタントがあって、守るべき場所は守っています、読んでいるのも聖書。

でも実は、儀式も違えば、建物も違う。神父に牧師、聖書崇拝に人崇拝。マリア像がある無い、という違いがありますね。でも1点だけ守っています。企業のM&Aも同じで、特に異文化の場合には1点だけ守ってもらう。あとはその人たちの良さを認めて任せていく、という手法が重要ではないかと思っています。

国内も、我々は色んなところを合わせています。社名を合わせたりしています。しかし、グループジョインいただいた新しい仲間の会社には、その会社の良さを認めて、そこはむしろ変えない。我々がそちら側に寄っていって変わろう、ということをよくやっています。

うちに、今は社名が「ペパボ」という会社があります。もともとは「paperboy&co.」というこの間都知事に立候補した家入さんが創業した、今佐藤社長が率いている会社ですが。あの会社がグループジョインしてくださった時に、うちよりも数段良いオペレーションをしていたすごく優秀な会社だったんです。

僕が全グループの仲間たちに、「GMO化してはならぬ、paperboy&co.はあの良さを守って、むしろGMO全体がペパボ化しないさい」という指示を出したのを覚えています。協業・提携、M&Aというのは大変難しいので、いくつかのノウハウが重要だと思います。

松本:海外に大きな子会社があるじゃないですか? そこのトップはもともとのトップでアメリカ人です。日本の大企業が海外の会社を買収すると、トップは日本人にするんです。そうすると本社のトップは日本人、海外のトップも日本人。その下が現地人、日日外、みたいな。

僕らはそれじゃいかんと思い、日外外と。それは、私の部分で案外負担はあるのですが。アメリカのトップをうちの本社のボードにも入れているし、エグクティブコミッティにも、執行部にも入れていて。そこはすごくコミュニケーションしています。

上でしっかり握ったうえで、彼にローカルマネジメントをさせるというやり方をしています。僕はそれのほうが、熊谷さんの仰るような、それぞれの良さを残しながらやっていくという時には、特に海外の場合には、このやり方がいいと思います。

熊谷:ということで、本日のテーマは「成長を続ける力」から、「成功するM&A」に?(笑)

自分は陳腐化していっている、という認識を持つ

佐々木:ちょっと話題を変えまして、お2人は自分だけの会社ということだけではなく、永続的に続く会社というのを意識されていると思いますが、成長を続ける為に、後継者、というと言い方は悪いかもしれませんが、自分を超えるマネジメント、経営者をつくる為にどういうことをされていますか?

松本:とにかく優秀な人間をなるべく採るのと、やはりやらせなくてはいけないですね。僕去年、大きいことをやりました。1963年生まれなのですが、去年自分への誕生日プレゼントであり、且つ戒めというか。1963年式の車を買ったんです。すっごいかっこいいんです。

熊谷:なんですか。車種は?

松本:コルベットスティングレーなんですけど。

熊谷:うわ! かっこいい!

松本:ほんとにね。腰抜けるくらいかっこいいんですよ! ところが、性能的にはフィットとかに勝てないです(笑)。で、これが自分に対して、たまたまかっこいい、のかもしれない。でも性能で勝てるわけがない、現代版に。

これは自分に対して、「お前は1963年式だ」と言い聞かせる為にですね(笑)、去年買ったんです。後継者育成も色々やるのですが、一番自分にとって大切なのは、自分はとにかく1963年代式であり、陳腐化していっているということをきちんと認識することが一番大切だと思っています。

熊谷:松本さん先ほどセッションで「ポンコツ」という言葉をお使いになったじゃないですか、最後に? ポンコツって久しぶりに聞いたなと思ったんですが、そこから来ているんですね?(笑)

松本:まぁ、一度、首都高で止まったことありますからね(笑)

熊谷:いやー、かっこいいですよ、63年式。

経営者が育つ"仕組み"をつくる

佐々木:熊谷さんはいかがですか、後継者育成について?

熊谷:今、話が面白かったんで何も考えてなかったです(笑)。えーっと僕はですね、生中継に弱いんですが(笑)。後継者育成、僕は基本的に任せる経営をしています。立候補、任せる経営、ガラス張り、がキーワードです。

立候補、「お前はやってくれ」じゃなくて、「やります!」という人に任せる。そしてそれをガラス張りにする。ここが人を成長させるポイントだと思っています。多くの方々に、幹部の仲間の皆さんに、同じスタイルで接しています。そこから自然に次の後継者が現れること願っています。これが僕のスタンスです。

佐々木:放牧みたいな感じですかね? 優秀な人がどんどん出てくる土壌をつくってあげる。

熊谷:そうですね。仕組みをつくる。一言で言うと、成長する仕組みをつくる。経営者が出てくるのも同じように仕組みで、それを待っている、というのが僕のスタイルです。

佐々木:セッションでも「仕組み」を強調されていましたが、成長できるかどうかは、仕組みで何割くらい決まるのでしょうか?

熊谷:考え方まで徹底できれば、大方は仕組みで決まると思っています。ただ、僕の次の世代は、僕個人が今まで取ってきたリスクと取れる度量が変わってくるでしょうから。というか責任が取れる量が変わってくるでしょうから。そういう意味ではその部分ももっと、縮こまらないように仕組みづくりをしていかんと、と思っています。

大方はやはり考え方も含めてそれを定着させる、それができれば仕組みで成長が決まると思っています。あるいは、そうしなければビジョナリーな会社になれないと思います。時を刻むのではなく、時を告げるしくみをつくる。そこは大事だと思います。

佐々木:お2人のようなカリスマの後を継ぐ人は大変ですね。日本ってそこに成功した企業ってあまりないですよね? 創業者の後。

熊谷:大きいところは、まぁ皆そうじゃないですか? 例えば、トヨタさんもそうだし、弥太郎さんの三菱財閥もそうだろうし。例えば三菱って、ネットで検索すると20社くらい出てくるんじゃないですか? 住友って入れても出てきますよね? それはやはり、成長して日本を支える産業になることに成功してきた企業グループなんですよね。そういう成功事例がありますから、皆でやりましょう。

「いかに自らが知らざるか」を知ること

佐々木:残念ながら時間が迫ってまいりましたので、最後にカメラ目線で皆さんにメッセージをお願いします。

松本:成長は人だと思います。うちでも言われます、「最近マネックスはベンチャーらしくなくなってきた、どうするんですか社長!?」とか言って、「お前がやれよ!」みたいな(笑)。

成長をどうするんですか? とかは自分が考えるべきことであり、経営者は自分で引っ張ることであり、できなかったらやめるべきであり。どんなポジションにいても、そういう気持ちで仕事に臨んでいってほしいと思います。

熊谷:先ほども申しあげたのですが、2点。1点目、まず成長するベースは「いかに自らが知らざるか」を知ること。いかに自らが何も知らないかに気づくことが成長の原点だと思います。そしてその成長を加速させるのは、困難です。チャレンジ。困難は人を成長させます。経験者は語る。以上です。

佐々木:どうもありがとうございました。

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