2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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佐々木紀彦氏(以下、佐々木):皆さん、こんにちは。今回お越しいただきましたゲストはこちらのお2人です。自己紹介していただいてよろしいでしょうか?
松本大氏(以下、松本):はい、マネックスグループの社長をしております松本でございます。
佐々木:よろしくお願いします。
熊谷正寿氏(以下、熊谷):生中継に弱い(笑)、GMOインターネット株式会社の熊谷正寿です。よろしくお願いします。
佐々木:先ほどのセッションと同じテーマになってしまうのですが、「成長を続ける力」。マネックスさんは今500億円の売り上げ、GMOが1000億円の売り上げがありますが、これから成長を続ける中で、どれくらいの売上高までいけると見えていますか? 松本さんは先ほど55歳で引退されると宣言がございましたが?
松本:(笑)。年までにどうこうじゃないんですけど、自分が今考えているビジネスモデルとかビジネスの領域を考えると、今トップライン、営業収益が500億なんですけれども、1000億くらいまでは大体こういうことをやればいけるだろうと。しかもまあ、数年で。
マクロ関係も随分振らされてしまうのですが、数年という単位で、トップラインで1000億まではいけるだろうと思っています。税前のOPマージン(営業利益率)が今30%くらいなのですが、それも50%くらいまであげられるんじゃないかな、と思っています。
佐々木:今アメリカの事業も4半期ベースでいうと黒字?
松本:EBITDAで黒字化して、今期中にEBITでも黒字化してくると思います。社員が3分の2から7割がアメリカなんですよ。で、アメリカの社員の半分くらいがディベロッパー、開発者で。グループ全体のシステム開発を。日本にもたくさんいるのですが、主にアメリカを中心に開発をしています。
佐々木:韓国でもサービスを始められたり、アラビア語でも始める、と出ていましたけれども?
松本:よく知っていますね(笑)。
佐々木:ちゃんと勉強してきました。
松本:(笑)。韓国のシンハンというすごく大きな金融グループがあります。韓国で2番目に大きな証券会社と、1番目に大きい先物のブローカーを子会社に持っている会社です。韓国は競争率が激しいです。オンライン証券、証券業全般大変競争が厳しいです。手数料もタイトだし、お客さんの引き留めが大変なんですよ。
なのでそこでプレミアサービスを出したい。マネックスグループのアメリカの子会社であるトレンドステーションというのが、世界的にも有名な、アクティブトレーダーに向けた有名な会社で、いいツールを持っているので、それをそのままその名前でシンハンのお客様にプレミアオファリングとして出したい。それが6月2日から始まります。
あとは、中東サウジアラビアの大きいブローカー相手に、同じようにツールを提供する。どちらもアメリカ株ではなく、韓国では韓国の株式、中東では中東の株式と先物のツールです。中東は英語バージョンはすでに動いていて、今アラビア語バージョンをつくっています。あと数か月でそれが動き始める、そんな感じです。
佐々木:そしたら500億円から1000億円目指すとした時に、大部分は海外によるものがあるのでしょうか?
松本:アメリカは環境がいいので、テーパリングするぐらいですから。アメリカがだんだん伸びてくる部分と、今言った韓国やサウジアラビアがあるのですが、中国ですよね。中国本土内で今ジョイントベンチャーをつくっています。なので米日中と、その他世界。そんな感じです。
佐々木:熊谷さんのところは55年、超長期計画を持たれていると思いますが?
熊谷:そうですね。さすが勉強していらっしゃいますねー。
佐々木:(笑)。いやいや。1000億円のところは計画は細かくつくらない方針かと思いますが、どれくらいのところまで見えていますか?
熊谷:5年ほどビハインドをしています、55年計画から。今から15年前、1999年の8月27日に上場をいたしまして、その上場のちょうど1年前、98年の夏にこの55年計画というものをつくりました。
その時につくったゴールの数字は、55年後に売上高10兆円、利益が1兆円、関わる会社が200社以上、関わる仲間の数が20万人以上。難しいかなと思ったのですが、世界中の企業を調べてみるとまさにトヨタさんが当時そのくらいでしたし。いくつかそういう会社さんがあったので、出来ないことはないと思いました。信じることからスタートしよう、と。
その計画を信じて今に至っています。2007年に400億円ほどの損失を出し、会社を危なくしてしまったこともあるのですが、その分がちょうど約4、5年遅れになっています。成長のカーブは計画通りです。まずは信じることからスタートしようという気持ちです。
佐々木:今のところ少し遅れてはいても、大きな流れとしては順調に?
熊谷:55年という超長期計画で見ると、5年の遅れというのは1割以下ですからね。
佐々木:そうですよね。広告や証券等色々な事業をされていますが、特にどこが伸びると中期的に見ていらっしゃいますか?
熊谷:全部の域が伸びると思っています。というか、そもそも伸びないところは最初からやらない。僕らは1番になれる可能性がないことは基本的にしません。なぜなら、負けると、関わった人の人生みんな無駄になってしまうじゃないですか?
人生は1回で、平均寿命をプラスマイナス10年ですよ、どなたも。だとすると、負けることに関わらせたら、それは無駄になることに人の命を費やしているということになります。ナンバーワンになれないことはやらないというのが僕たちのポリシーです。
佐々木:成長を続ける上で、国内の敵もそうですが、特に海外のすごいプレイヤーに勝っていかないと大きな成長はなかなかできないと思うのですが、それぞれの会社の「世界に通用する強み」はどこにあると見ていらっしゃいますか?
松本:やはり金融だとアメリカはすごく巨大であり、技術もアイディアも経験も色んなことがアメリカから来ていますね。我々は3年前に英断をしました。当時アメリカで上場していたトレードステーションという会社、これはアメリカで5番目に大きいオンライン証券、且つ技術力。
大体アメリカの証券会社はシステムを外につくっているところを、彼らは内製していて、且つ、アクティブトレーダー向けの仕組みだとダントツ。バロンズというウォールストリートジャーナルの、まぁ日経新聞にヴェリタスがあるみたいな。
ウォールストリートジャーナルにバロンズがあって、そこでも何度も何度もオンラインブローカーナンバーワンの称号をトレードステーションはもらっているんです。そこを思い切って買収しました。それは大変リスクもあったし、かなり強烈な意志を持たなければ……まぁ表現が難しいのですが(笑)。
佐々木:マネックスが創業して以来の最大の決断でしたか?
松本:まぁそうでしょうね。当時で10数年かけて蓄えてきた、利益や資本取引で色んな事で蓄えてきた純資産が600億、700億あって、そのうちの300億、403ミリオンドルだったんですが、それを使って買う。しかも大震災の直後でした。
実は大震災の日にファイナルデューデリジェンスを終えて僕はちょうど帰ってきたんです。成田に着陸して10分後に震災が来て。その後原発の問題も起きて。これだけのキャピタルを、10何年間貯めたキャピタルを全部吐き出すというのはリスクあるし、やめようと思ったんです。
一旦コールオフと言って、アメリカのインベストメントバンクにも言って、1週間後に再起動しました。やはりこういう時こそ、資本は海外に使っていかなきゃいかんと。そして買いました。それは大きな決断でした。アメリカでやる以上は、それなりに確立している会社を買って始めないと勝負にならないだろうと思い、最初からそういうところに手を出して始めました。
佐々木:先ほどの損失の話もそうですけど、成長を続ける為にはどこかで大きな決断をしていかなければ、順調にずっと伸びるということはなかなかないんですよね?
熊谷:「1本足打法」とよく言うのですが、1商材で、同じマーケットだけで伸び悩んでいる。限界がありますよね。うちも今1000億が見えていますけれども、それっていくつかの商材を、長く続く商材を積み重ねてそこに至っていますから。そこには乗せる度に、松本さんじゃないですけどチャレンジがある。乗せる度にリスクがあるからチャレンジ、チャレンジ、チャレンジ、ですよね。
佐々木:成長を続ける為にはM&Aが大事な戦略になっていくと思いますが、そこはGMOもたくさん買われていますが、戦略としてある部分はありますか? 成功するM&Aの為の秘訣は? そんなに単純なものはないと思いますが。気をつけるべきところは?
松本:(笑)。それはむずかしい。僕は、結果としては随分やっているんですよ。本当はあまりやりたくないんですよ。オーガニックにつくるほうがいいと思っていて。我々はいくつかやっているのですが、大きなものは日本において日興ビーンズ証券を買収したのと、あとは先ほど言ったアメリカのトレードステーションの買収、この2つが大きいです。
日興ビーンズを買収したのは、オンライン証券をやる上で規模が必要というので規模を取りに行ったんです。トレードステーションの場合は、技術と、やはりグローバル展開をしようと思った時に日本じゃだめなんですよ。韓国、サウジアラビアに行くという時に、仮に同じプロダクトを持っていても、日本人が韓国やサウジアラビアに行ってこういうのありますよ、と。
これを韓国語化するから、サウジアラビア語化するから、と言ってもなかなか商談つけるの難しいです。会社のマネージは私がやっていますが、そういうところはアメリカにやってもらいます。英語圏のアメリカ人のほうが、そういう商売は上手。営業を受ける側も受け入れやすいですよね、アメリカ人が来るほうが。
佐々木:最先端のイメージがありますからね。
松本:あとはアメリカってジェネリックじゃないですか? 日本は個性がありますが。なので技術を手にしようと。あとはグローバル進出をしようという時に、アメリカにひとつ持つしかないと思ったんです。それはつくるのは時間がかかりすぎてしまうので、取るしかないと。
そういう、戦略的にどうしても……ということでM&Aをやっていたので、M&A事態が戦略ではないのです。どうしてもM&Aでないと、アクイジション(新規顧客獲得)でなければいけないからやっている。
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