2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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桝本博之氏(以下、桝本):常識と非常識って、すごい離れていると思うんですね。
何でかと言ったら、多国籍軍がいっぱい住んでるから。日本は家に入ってくる時に、靴を脱ぐのが当たり前なんですけど、アメリカでは靴を脱がないんですよね。でも、靴を脱いでくる人もいますし、読めないというか。そう思っていたら、靴を履いてこない人もいますから(笑)。
いろんな意味で、常識と非常識がボーダーレス。なので、この中でグルグル動いていても、基本的にドーンと抜けようが(周りは気にしない)。
例えば、僕ここで、だんだん暑くなってきて、脱いでしまってTシャツなんですけど。今日、朝からずっとTシャツで、僕だけ何か夏にいるみたいな状態で。
日本だと「何しているの、この人?」という感じで見られるかもしれないけど、アメリカではそういうこともないし。
基本的には、いい意味でも悪い意味でも、人のことを気にしない。人のやっていることが気にならないような環境であるからこそ、常識にとらわれないということが出てくるのではないかなと。
桝本:日本国内に留まると、基本的に安定志向。これは、全員が全員そうではないと思いますけど。今さっき言った、常識と非常識のラインの真ん中を歩くのがいいのだとすれば、日本国内に留まって安定するのがいいのかな。
でも、最近は違いますよね。ここに来られている方も含めて、特に若い方々がアメリカ行こうとか、シリコンバレーに興味があるという流れにいくとすれば、安定に留まらないで挑戦しようという話だと思うんですけど。
安定に留まらずに行く時に、例えば、そこにいる学生さん。お父さんに「アメリカ行く」と言ったら、何て言われた?
学生:めっちゃ怒られました。
桝本:めっちゃ怒られたな(笑)。お父さん、安定したとこにいるもんな、部長さんでな。同期の息子なんですけどね(笑)。
結局は「日本人による日本人だけの社会」がいいという時代がずっと長く続いたので、そこにいるというのがあったんですけども。これから、日本人が世界を牽引するというところにもう1回しないといけないのではないかと。過去にもそういう状態だったと思いますけども。
僕ら自身も日本人だからこそ、「日本がいいね」と言われるとうれしい。単純な話です。サッカーとかラグビーとか、日本が勝ったらうれしいでしょ。世界を牽引していったらうれしい、と。テニスの選手が1位になったらうれしいという話かなと思っています。
桝本:ただ、これは言い過ぎかもしれません。メーカーから来られている方、いらっしゃいます?
(参加者挙手)
(挙手した参加者に向かって)日本の技術はどうですか?
参加者1:アメリカから見ると進んでなくて、昔のまんまのものをずっと誇示している。
桝本:なるほど。そういうところありますよね。(別の挙手した参加者に向かって)いかがですか?
参加者2:進んでいるところもあれば、遅れているところもあるんじゃないかなと。
桝本:何となく、どこの会社か知っているだけに、メイド・イン・ジャパンにこだわっているというか、「よかったんや」というところはありますよね。僕らは、メイド・イン・ジャパンっていいものだと思っていますし。
ところが、アメリカ人にしてみれば、「メイド・イン・ジャパンが絶対いいんだ」というのは1980年代初頭の話で、今となれば別にそうでもない。
確かにトヨタとか日産とか、車が走っているなかで「いいな」というのはあるんですけれども。ひょっとしたら、もうじきテスラに全部いかれるかもしれませんね。そこで、「いやいや、(テスラには)パナソニックが電池出してまんねん!」って言うかもしれないけど(笑)。目立たない。
ソニーもそうですよね。うちの子供ですら、僕が65インチのテレビを買ってきて、「どうだ、シャープのええやつ買うたで!」って言ったら、「パパ、残念、サムソンちゃうわ……」って言うんですよね。「あっちのほうが薄いし」って。今や、技術でもそっちのほうがいいと思っている人もいるし。
「メイド・イン・ジャパン=世界最高峰」ではなくなっているので、あまりメイド・イン・ジャパンにこだわり過ぎる必要性はないんじゃないかなと。ならば、別にメイド・イン・USAがすべていいわけじゃないですけど、別に構わないんじゃないかと。
ただ、それだったら日本の出る幕はないので、メイド・イン・USAで、「いや、日本人がやってまんねん!」と。
最終的には「日本人がアメリカ人に絡んでいったら、すごいものあるんですよ」という流れに持っていければいいのかなと思っていて。僕のテーマは「メイド・イン・USA byジャパニーズ」というふうに、いつも置いています。
桝本:特に、最近の言葉で流行りだと思うんですけど、「グローバル」とか「イノベーション」とか言われて。グローバルという単語があまりにも簡単に使われてるんですけど、ひどいところで「グローバルって何ですか?」って聞いたら、「英語教育ですよ」とか言うんですよね(笑)。ちょっと違いますよね。それだと、アメリカ人全員グローバルだと。
僕の中でグローバルというのは、基本的にはコミュニケーションが図れる、相手のことを思いやれる、そういった人間力が豊かな人だと勝手に思っていまして。
グローバル人材というのは言語に関係なくて、文化の違う相手を敬って、相手を理解してコミュニケーションを円滑に進めることができるという技なんじゃないかなと思っています。
もう1つ。日本では「グローバルイノベーション」という言葉もありましたけども。「グローバル30」という、「30大学で30万人の留学生を呼ぼう」という話になったじゃないですか。
これも、これから僕が言うようなことを文科省の方はおっしゃっていませんよ。でも、ひどい言い方をすると、「外国人が優れているなら、優れている環境を作らなければあかん。日本人が影響を及ぼされて、自然とアメリカっぽく、もしくは、外国っぽくなるんちゃうかな?」みたいな考え方に近いように思えるんですよ、何となく。
それって、めちゃくちゃリアクティブじゃないですか。要は、待ってるだけじゃないですか。そうじゃなくて、自らが出て行くというのが必要かなと。
民主党政権から安倍(晋三)さん・自民党に代わって、当時の予算は今でもグローバル30に残っていますけども。プロアクティブになるということで、今度は民間がお金を出して「トビタテ! 留学JAPAN」というのをやってますよね。日本の方策も、リアクティブからプロアクティブに変わっているんですけれども。
桝本:もう1個心配なのは、結果としてプロアクティブなほうに持っていっているんですけども、日本はそのプロアクティブの結果がどうなったかという後追いをしない。
「ポスドク1万人計画(ポストドクター等1万人支援計画)」ってあったの知ってます? 1万人のポスドクを作った後、その1万人がどうなったか皆さん知ってます? 知らないですよね。
あと、「ベンチャー1000社計画」って言って、(大学発のベンチャー企業を)1000社立ち上げたんですけど。今もう、900社くらい潰れてますよ。わからないですけど、それくらいの数は潰れてます。
だけど、その後どうなったか知らないじゃないですか。「大学からベンチャーができた」というところ、東大から何社立ち上がり、阪大から何社立ち上がりということにフィーチャーを置くだけであって。そこからどういう成果が出たかについては、なかなか追わない。何か問題なんじゃないかなと思っています。
プロアクティブというのは、自分から発信して、その結果がどうなったかまでちゃんと解析して報告する必要性があるのかなと。そういうところは、シリコンバレーではできているのかなと思います。
いろいろな経験をする必要があるんですけれども、知識は日本でも十分つくと思うんですよ。日本語で、日本の権威ある先生から学ぶんですから、間違いなく知識はつくんですけども。人間力という、要するに自分からプロアクティブに動くようなことが、なかなかないのかな。
桝本:日本が変わった時、明治維新がこの200年の幅で一番変わったと思われるんですけど、その時は徳川政権が260年続いて「あかんなぁ」と思ってた人、革命家の方が出てきて、自らが海外に出て行ってるじゃないですか。サンフランシスコに行くと、「咸臨丸が来たよ」という碑もあります。
そういうかたちで、その時には自らが動いたわけですよね。それによって、日本は変わったし、そこで地方から出てきた方々が結束して頑張った。
その後、第1次大戦まで頑張って勝って、第2次世界大戦もいい感じになっていたんでしょうけど、最後に怒られましたよね。「これ以上やったらいけません」と。
もしあの原発の後、革命家が出てしまったらどうなったかと言ったら、たぶん「日本はテロ国や」という話になっていたかもしれません。
だけど、日本人はそんな心じゃないですよね。当時から一生懸命頑張って、「ごめんなさい」とちゃんと言って、一時は一部統治下になりましたけど。でも、そこで頑張ったのは起業家というか、産業をもう1回興そうという人だったと思うんです。
僕は起業家を「会社を作った人」ではなくて、「チャレンジャー」と訳しますけども。そういった方が出てきて、一部の日本のお金のある人たちが助けて、うまいこと日本がどんどん進んでいったと。進んでいったことをいいことに、そのままずっときたら現在じゃないですか。
桝本:先ほどの、「(日本は)ちょっと過去のものにこだわっている」というのですが、今はちょっと変えないといけない時期に来ていると思いません? そういうふうに僕は思うんですよ。
今回も、日本を盛り上げていくので、もう1回起業家みたいなチャレンジをする人が(出てほしい)。今度は自ら出て行ったり、今さら咸臨丸で行ったりする必要性はないので。
飛行機に乗って、シリコンバレーのようなインフラを使って、日本からの発信じゃなくて、日本の技術や日本というものを向こうから発信するほうが速いのではないかな。
これ、簡単な原理です。僕らみたいな素人が、「これ、おいしいですよ」って一生懸命口コミで言ってもなかなか広まらないですけど、テレビでマツコ・デラックスが、「これ、おいしいよ」って言ったら、それはボーンと広まるわけじゃないですか。有名人がいかに大きなところで言うかという話なので。
今、シリコンバレーもブームになってますけども、そういったことを海外のシリコンバレーのインフラを使って、「あれってすごい」という話につながれば一番いいんじゃないかなと思っています。
桝本:ここ大事なんで、長いんですけど、ちゃんと話しておきますと、僕の中でのグローバル人材育成のキーワード。あくまでもキーワードなんですけど。
まず1つは、よく言われるイノベーションだと思います。イノベーションというのは、言葉に訳すと「革新」ですけど、革新という言葉をもって、「革新できていますか? 革新という活動をできていますか?」と言われても、自信を持って「はい!」と言う人いますか? なかなか難しいのではないか。
革新というのは、常識を覆す行為ですよね。常識を覆すということは、非常識なことをやる。さっき言った通り、「非常識なことをやることはダメよ」と言われるんですから、日本ではイノベーションは起きにくい。だから、それは(以下の)キーワードだと思います。
起業家精神。先ほどから言ってますけど、チャレンジする心を持つことなんで、心の教育はドンドンしなきゃいけないんですけど。心の教育をしても、周りに1人もチャレンジする人がいなかったら、それはやっぱり無理です。環境はすごく大事だと思います。
多様性。さっきから言っている「異文化を受け入れる」とか、「相手の心をつかむ」という感じでいくと、今日も日本人の方が見た感じ多いので、日本はなかなか多様性という意味では難しいかなという気もします。
コミュニケーション能力。これは僕のエクスキューズですけど、「語学力じゃないよ」と。あくまでも、相手に物を伝えられるかどうかということです。
桝本:主体性。簡単な話です。自発的な行動を取るか。これ、いつも本当に皆に言っているんですけど。皆さん、「考える」という単語と「悩む」という単語を一緒にしていませんか。
レストランに食べに行って、「うわぁ、めっちゃメニューある、おいしそう! 何にしようか悩むわ〜!」と言っているケース、多くないですか? 食べたことないのに、何で悩むのかなってね。知らないのに、何で悩むのかな。
悩むというのは、結論がない中で「どうしよう?」と考えているのではなくて、結論がない状態の時間を延ばすことにしか思えないですよね。考えるというのは、「あ、忘れた。年かな。覚えてないけど、ああしてこうして……。これ食べておいしかったから、これ食べよう!」という話になるわけですよね。
知識をつければ、考えたら結論が出ると思います。知識がない中で悩んでたって、永遠に悩むだけなので、結論は出ないと思います。そこがすごい大事かなと。
主体性というのは自発的な行動を取るんですけど、その中で結論を出さないといけない。いつも、うちに来る学生に言ってます。
「飯食べに行って悩む」って言うから、「悩むんじゃなくて考えろ」と。考えてもわからなかったら、「どうせ考えてもわからないだろ?」と。知らない単語でいっぱい書いてあるんだから。隣の人を見て、「あれ、おいしそう」「I’d like to get this one.」とか「No.4!」とか適当に言えばいいんですよ。
そういう生活で十分主体性は取れていくと思うし、それで失敗したら「絶対No.4頼まない」「あのレストラン二度と行かない」ということで。考えたら解決できます。そのためにはチャレンジする。
そういう情報を得るためには、ネットワーキング力も大事ですよね。ネットワークの作り方というのも、すごい大事です。今日も皆さんと名刺交換させていただきますけど、この後何回つながるか。その名刺を何回見るかと言ったら、ほとんどないと思います、今までのケースで。
なので、維持する方法。せっかく維持するために、FacebookやTwitterやメールというものができたので、できれば今日も皆さんと維持をしたいなと思っていますし、そのためには自分から発信するのも必要だと思います。
桝本:もう1つ、強固なメンタリティ。いつも言っています。メンタリティが強いとか弱いとかは基本的には関係ないんですよ。「メンタリティが弱いんです」という言い訳なんです。メンタリティが弱い人というのは何かというと、バーンとやられた時に「あ〜」とすぐ泣く人です。ゲームに弱いというか。
でも、「私はメンタリティの器がすごく大きいです」「ストレスがドンドン入ってもぜんぜん大丈夫です」と言う人もいるんですけど、最後にはポロッと漏れますよね。嫁さんの一言で「あっ……」となります。
ストレスを受け入れる器を大きくすることが、日本のメンタル教育だったのかもしれないけど、ストレスがたまらない、下に穴があいているツボを作ってあげてください。ストレスを逃す。
シリコンバレーは、そういう意味では楽なんですよ。ガーッと言われても、「めっちゃ天気ええやん!」「通勤10分やん!」「雨降らないやん!」ってね(笑)。しょうもないことですけど、そういった部分がたぶんストレスの解消にもなってますし。
もっと言えば、オンとオフの切り替えが簡単にできるということだと思っています。自らがそういうことをやればいいんですけど、環境がそれを補ってくれて、手伝ってくれているのはある。
桝本:思いやりの心、日本を応援する心。これも、さっきから言っていることなんですけど。日本を応援する心というのは、すごい大事だと思うんですね。グローバルというのは、日本という軸があってグローバルなんですね。日本という軸がなくてグローバルって流れていくと、これはただのかぶれなんです。
アメリカナイズされているやつはかっこいいと思うんですけど、アメリカかぶれしているってかっこよくないでしょ。アメリカに行ってきて、「俺アメリカ行ってきたんだぜ、ベイビー」とか言っているやつがいるとすれば(笑)。「アホちゃうか」って話。
日本を応援するためにも、いかに日本というものをこよなく愛するか。別に僕、日本教でも何でもないですよ(笑)。だけど、今日のテーマの中からは、日本を応援するという意味で、そういうことを言いたいと思っています。
整理すると、知識は「学習・好奇心・体感」で十分学ぶことができます。これは、日本でもいっぱい教育されています。非常にいいと思います。
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