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起業家という人生 教育を変革し、世界を変える(全6記事)

「皆揃ってソシャゲ作っても意味がない」教育を改革する起業家が学生にメッセージ

学生や若手ビジネスパーソンを対象に行われた起業家育成プログラム「IVS SEEEDS 2015 Summer」。セッション3には「教育を変革し、世界を変える」をテーマに、教育業界で急成長を遂げたスタートアップ3社の代表取締役が出席。このパートではスマートエデュケーションの池谷大吾氏をモデレーターに、ライフイズテック・水野雄介氏、LITALICO・長谷川敦弥氏、Ridilover・安部俊樹氏が現代の日本が抱えている教育の問題点について語り合います。このパートでは、「税金に頼るしかないドクター(博士)は今後どうすればいいのか」「価値ある教育を生み出すにはどうしたらいいのか」といった、イベント参加者からの質問にそれぞれが回答していきます。

できる人にどんどんリソースを投下してあげればいい

質問者:ドクターとかに入ってくると、それこそいい年齢にも関わらず、学振(日本学術振興会特別研究員)とかで大したことのない金額で生活しながら研究するって人が多いと思うんですけれども。それって結局お金の出どころが、市場価値がないから税金に頼るみたいな部分があると思うんですよ。

かつ、そういう人たちって「じゃあ自分で事業をやればいいじゃん」って、この会場の多くの人は思ったりするかもしれないですけど、それができないから日本社会で破綻していて。

優秀な人で、うまくいけば海外に行くし、ダメだったらニートになるみたいな、そういうところも多く見受けられるなと思うんですけど、そういう方に対しては「今後変わっていくことを期待してください」って言うほうがいい感じですかね?

安部敏樹氏(以下、安部):もっとスターに金集めてあげたらいいんじゃないですか? 僕は下のラインを変えるってあんまり効率的じゃないと思っていて。

むしろ、今すごい奴がいるんですよ。スター選手がいて。そのスター選手が大学の教授やっているけど、年収800万とかなわけですね。その人たちをガーンと伸ばして、年収100億とかになっておけば、そのおこぼれが下にいくじゃないですか?

僕はボトムラインのところを変えるよりも、上のほうを変えて、もっと集中投下すればいいと思うんで、悪平等みたいなほうがよくないと思います。できる人にどんどんリソースを投下してあげればいいし、そこがまた新しい産業を作って、あんまりうまく事業化できない人を養っていくと思うので、そういう考え方です。

人が10回であきらめることを1000回やった

池谷大吾氏(以下、池谷):このIVS SEEDSって学生さん向けにやってますけど、社会人向けというか我々のベンチャーの経営者向けのを宮崎でやって、そのときのゲストに、まさにミドリムシの出雲(充)社長が来て、すごい感銘を受けたんです。

彼もやっぱりすごく研究者で、ニッチな研究をずっとやってました。ただ、もう今はご存じの通り一部上場ですばらしい企業で、日本ベンチャー大賞とかも取れて、安倍(晋三)さんから賞状いただくみたいなわけですけど。

でもお話していて、やられてることってすごく誠実だなって思ったことがあって。やっぱり、仲間と一緒に自分たちがいいものだっていうことを確信してるんですよ。とっても地味ですけど、認知されてないから。

ミドリムシって気持ち悪いじゃないですか?(笑)名前も悪くって売れないんだ、と。最初、あの人おもしろい人なんで、ミドリムシについて説明してくれるんですけど、「ミドリムシは別にゴキブリではありません」みたいな。「ムシ」ってついてるけど(笑)。

ワカメと動物的なものがくっついたような、ワカメみたいなものだと。植物的でもあって動物的でもあって、すごい栄養源が強いもの。ただ培養がすごく難しくって、栄養があるんで培養中にどんどん細菌感染しちゃう。でも地味にそれに成功した。

すごくいいものだって言うんだけど、まったく売れませんと(笑)。誰も見向いてくれないんですよね。で、何をやったかっていうと、「僕はコツコツ。培養の成功に関しても、人が10回であきらめることを僕は1000回やりました」って。これお金がかかることじゃなくって、やっぱり信じてたんで、できるだろうって。人は、でもだいたい努力しないんだ、と。

コツコツやることを皆10回であきらめるのを、僕は1000回やったっていう話の後、よし、培養成功した。でも、これ、今度また課題があって売れないそうなんですよ。さっきの気持ち悪い問題もあって。

で、何をやったかっていうと、「僕は500社にアポを取りました」と。最初は本当、自分でプルルルって電話したりとか。あんなメガネをかけた研究者が、ですよ? すごい地道なことやってるんですよね。

例えば、僕らも新規事業とかやって企業とコラボレーションしますけど、500社なんてなかなかない数じゃないですか? でも、そういうことをコツコツやって501社目、本当はちょっと違うんでしょうけど501社目に出会った企業、そこは伊藤忠さんで、一気にブレイクしたみたいな。

切り口を見つけてくれた。自分たちは、なかなかミドリムシで切り口を見つけられなかったんだけれども、伊藤忠さんが入ることによって一気に切り口が見つかって、ドカーンと売れて、ああなったっていうお話をされていて。なので、「やったのは、人以上の努力です」みたいな。それしかないって。

確かにそうだろうなって思ったんで、もしそういうこともアドバイスになればなって思って、ちょっと言ったんですけど。研究者ってそういうものかなって思っていて、やっぱり努力を重ねることって人並み以上にやってる。僕は、決して出雲さんが天才だとは思わなかった。努力の天才だなとは思ったんですけど。そういうイメージは持ったかもしれないですね。

質問者:ありがとうございます。

価値ある教育を生み出すプロセスとは

池谷:最後になるんですけど、1問。はい、右側の方どうぞ。

質問者:お話ありがとうございます。質問なんですけども、価値ある教育っていうのが大事だなっていうお話があったと思うんですけど、たとえば具体的なサービスを生みだすプロセスについてなんですけど。

その価値ある教育を、もう1回受けたい(と思う)サービスを生み出すのは、どうやったらできるんでしょうか? 例えば、その中の難しさっていうのがあれば教えてください。

池谷:これ誰か、答えに自信のある人いますか?(笑)

安部:じゃあ、僕から一言(笑)。思考停止をしないことですね。基本的に「これぐらいかな」って思った時点で終わるんで。何でだろう、何でもっとよくならないんだろう、何でこれができないんだろう、何でこれがダメなんだろう? みたいなこと、ずっと「何で?」を問い続ける。

思考停止した時点で、そういうのってサービス改善がなくなるので、そこを徹底する。それを個人だけでやるんじゃなくて、チームとしてできる文化を作っておくっていうのが大事かなと思います。

池谷:せっかくいい質問なんで、終わった後にぜひ問いかけてくださいよ。そのへんのアドバイスって絶対できるはずなんで、ぜひ質問してください。

質問者:ありがとうございます。

池谷:最後に1人だけ(笑)。今手を挙げた人は、間違いなく終わったらそれぞれ問題解決してくださいね。皆さん多分丁寧に答えてくれると思うので。じゃあ、申し訳ないですけど、真ん中の方。これで最後にしたいと思います。

質問者:ありがとうございます。教育に関して、ターゲットの子供に対して影響を与えるんですけど、お金を払うのは親だったり、おじいさんおばあさんだったりすると思います。その際に、子供を変えるのに、やはり興味がないものにはなかなか来てくれなかったり、使ってもらえないっていう話をされていたんですけれども。

教育は、実際親の意識による格差が大きいと思うんですが、そのあたりターゲットや、どうやって知ってもらって使ってもらおうというふうな、工夫をしていることなど、何かあれば教えていただけるとうれしいです。

水野雄介氏(以下、水野):結構、池谷さんとかと違うと思うんだよね。池谷さんのところは完全に幼児だから、ターゲットは親ですよね。

僕の場合は中高生なので、すごい大事にしてるのは中学生・高校生がまず、来たいって思うこと。中学生・高校生ってもう自立してるじゃん? 自分が行きたいと思わないものって親から言われても行かないんだよね。

だから、まず中学生・高校生が行きたいなって思うものにするっていうのが、僕は一番大事だなと思ってますけど、どうですか?

池谷:同じですよ。我々は幼児に声をかけるということはないので、やっぱり親で。僕らは親に働きかける努力してますけど、それはちょっと個別に質問してくださいね(笑)。

質問者:はい。

池谷:一番最後に30秒くらいで、ぜひ学生の皆さんに我々の業界の魅力というか、ぜひチャレンジするといいんじゃないかということも含めて、終わりのメッセージいただきたいです。安部さんから。

皆揃ってソーシャルゲーム作っても意味がない

安部:僕はやっぱり教育という文脈って、すごいエゴイスティックになりがちな分野だなと思っていて。皆さんそれぞれの中でいい教育って考え方があると思うし。でも、それって本当に最適なものかって、ずっとわからないじゃないですか?

そういうものがあるからこそ、いろんな経験を積んだうえで教育に戻ってくるほうがいいんだろうな、と思っていて。教育だけを事業としてやっていくんじゃなくて、教育を軸にしながらも、いろんなところと触れ合うような事業を作っていけるといいのかなと思っています。

僕はそういうつもりで、社会問題のツアーっていうところから入っているので、もし興味がある人がいたら、ぜひ機会があったら一緒にやりましょう! という感じですかね。

(会場拍手)

池谷:皆さん拍手をお願いします。長谷川さんお願いします。

長谷川:今、ITがすごく盛り上がってきていて、いろんな優秀な方が今日も含めて、この業界にどんどん入ってきているなと思うんですけど。僕は皆揃ってソーシャルゲーム作っても意味がないと思うんですね(笑)。

皆でそれやるなよ、一部でいいよ、みたいな。あまりにもそこに資源が集まっていたりとか、皆で似たようなアプリを作って合戦していると。別に今あなたが作らなくても、1ヶ月後に誰かが作ってるんだったら、自分が頑張る意味って1ヶ月のタイムラグしかないじゃないですか?

だとしたら、自分が動いていかないと10年20年変わっていかないとか、向こう5年間は絶対に出ないとか、そういう革新的なものにチャレンジするっていうのを、僕だったらやっぱり頑張っていきたいなと思うんですね。

社会の問題とか教育に取り組んでいくときに、僕は原体験はいらないと思うんですね。一貫性もいらないし、何かよくわからんけど教育をやってみたいとか、何かよくわからんけど子供たちの可能性を広げたいとか……。

とにかくやってみたいんだっていう、自分の心にある真実のほうがずっと重要で、理由はいらないなと思うんです。なぜ教育をやりたいのかとか、人生のどういう原体験があったか、なんてまったくいらないと思っていて。

僕ね、自分が世界を変えるというふうに19歳のときに決めて岐阜を飛び出してきましたけれども、いまだに理由がわからないんですね。なんで自分が命の全部を賭けて世界をよくしたいと思ってるのかっていうのが、いまだにわからないんですよ。

うちの親からしたら、20歳のときに岐阜を飛び出して、「世界を変える」って言い出したわけですよ。しばらく宗教にハマってると思ってましたからね(笑)。ずーっと心配してましたし、一度は勘当されてますし。

いまだに僕も理由はわからないけど、自分の中で、やっぱり世界をよくしたいっていうのは真実なんですね。そっちのほうがずっと重要なので、もし今日お話を聞かれて、教育をやってみたいとか、子供の可能性を広げてみたいとか思ったら、その感覚のほうをむしろ信じて、挑戦する皆さんであってほしいと思ってます。

教育で、社会性と経済性が両立できるのかどうかって考えるくらいだったら……。迷うとできない理由が集まってくるんですよ、先行事例が少ない業界だから。迷ったら、やっぱりこうだから難しいっていう理由が集まってくると。

そういうふうな時間があるんだったら、教育で社会性も経済性も両立させるって決めたほうがいいですね。先に決める、と。覚悟を決めたら、どうやったらできるのかって知恵が、自分の中からも外からも集まってくるんじゃないかなと思うので。

この道でちゃんと教育も変えるし、子供たちを幸せにするし、会社としても持続的にやっていく、と。そういうふうに自分たちを信じる勇気を持って、一緒にチャレンジしていけたらうれしいなと思ってます。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

池谷:ありがとうございました。水野さんお願いします。

日本は教育でずっと成り立ってきた国

水野:今日はありがとうございました。日本はやっぱり資源が人しかないじゃん? だから教育がすべてだと思うんだよね。教育でずっと成り立ってきた国だから。

僕は、大人がイケてないせいで、子供たちにしわ寄せがいってしまうことはすごい嫌だなと思っていて。現場に立つと子供たちって変わるんだよね。立ったことある人はわかるかもしれないんだけど。

自分が生きている中で、1人の人生でも、ちょっとでもよくできるなら、それってすばらしいことだなと、俺は思っていて。自分の人生というか、命を使う価値があることなんじゃないかな、と思っていると。

教育って競合ないから、プレイヤーがどんどん増えれば増えるほど、たくさんいいものがいろんな人に届くようになってくると思うので、ぜひ一緒に21世紀の教育をよくできたらなと思います。今日はありがとうございました。

(会場拍手)

池谷:ありがとうございました。最後に皆さんに質問したいんですけど、今のお話を聞いて、教育系のスタートアップとか、こういった会社で頑張ってみたいなって、ちょっとでも思った人、手を挙げてください。

(会場挙手)

池谷:全員じゃないですか! どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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