2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小林雅氏(以下、小林):続いて、後ろのほういきますか。誰か後ろのほうの人います? じゃあ元気のよい、右の人。
質問者3:慶応大学SFC1年の○○と申します。よろしくお願いします。少し具体的な質問になってしまうんですけども、僕は今KBCというビジネスコンテストの運営団体にいて、今年ちょっと(規模が)大きくなったんですね。前までは8人だったんですけど、今年は1年生がいっぱい入って40人になりました。
小林:すごいですね!
質問者3:頑張って新歓をしまして(笑)。それで一気に規模が大きくなったから、団体に来なくなった人がいるんです。それはたぶん、「ビジネスコンテストを運営する」という僕たちの価値観に合っていないからだと思うんです。
ここからが質問なんですけども、みなさんは自分の経営する会社のビジョンを持ってらっしゃって、会社を大きくするにあたってそのビジョンに合っていない人が入ってきちゃうこともあると思うんですね。
その人のケアをどうしようかというのが僕の悩みで、僕は団体の目的に合っていない人も、多様性という意味で受け入れたいんですよね。でも、辞めさせたほうが彼のためになるかもしれないし。その辺の意見があったらお聞かせいただきたいです。
小林:ちなみにサークルと会社経営は、そもそも雇用形態が違っていたりするので、「お前クビにしろ」というのは難しいので(笑)。同じ条件で語れないという前提においてね。
質問者3:(サークルでも会社でも)団体における価値観が違う人へのケアという感じです。
金谷元気氏(以下、金谷):会社でいうと、ウチの場合はビジョンを決めたあとにミッションステートメント、「社員がどう行動していくか」というのを作ったんですけど、それに合わない人は辞めてしまうくらい、徹底してそのステートメントに沿って運営してきたので、合わない人は自然と辞める形になりました。
新規採用では、実はそういうことは最近起こってなくて。自分たちのビジョンやミッションステートメントからくる「ノックアウトファクター」というのを作ってるんですね。例えば、「このマインドを持ち合わせてない人は、どれだけスキルがあっても採用しません」というものです。
akippaでは、「途中であきらめるような人は入れない」とか。どんなにスキルがあってもマインドでノックアウトファクターを4つ決めています。ビジョンからステートメントに来て、そこから採用面接に落として、その4つに関連する質問をします。それで、合わない人はあまり入ってこなくなりました。採用は厳しくなりましたけど、そういったものを設定すると大丈夫かなと今は思ってます。
吉田浩一郎氏(以下、吉田):ビジョンとかステートメントという話がありましたけども、それがなぜ会社に必要かということなんです。例えば、サッカーは全世界中で流行っているじゃないですか。あれがなぜ流行っているかというと、同じルールでわかりやすいからですね。「ここからここは手を使っちゃいけない」「あそこにボールを入れたら勝ちだ」という。
これが、会社を興したときとかサークルを創ったときってないんですよ。何をやったらよくて、何をやったらダメという、スポーツでいうところのルールがない。だからサークルとか会社で最初によくあるのは、サッカーをやってるつもりだったんだけどそのルールを説明してなかったから、余裕で手を使うやつがいるとか、ボールを手で投げるやつがいるみたいな(笑)。そういうことが発生するわけですね。
だからルールが必要になる。よく私が社内で話してるのは、「我々は日本代表です」ということです。JリーグとかセリエAとかで活躍してる人たちがこの場所に集まったときに、日本代表チームとしての信頼関係があるかといったら、(最初に)ザックジャパンができ上がったときにはないじゃないですか。
その人にどれだけ実力があったとしても、チームとして集まったときには信用はゼロなので、そこから練習して、点を入れて、試合に勝っていく。(会社でいうと)業績を達成していく。そういうことで信頼関係ができるんです。
最近は、入社初日の人に「我々は信頼関係がないですからね」とよく言うようにしてるんです。けっこうびっくりされるんですけどね(笑)。要は「ある」と思ってスタートすると、だんだん減点方式になっていくんですよね。そうじゃなくて「(私とあなたは)違っている、だからお互いに尊敬の念を持って対話していきましょう」ということを最初にルール付けするというのをけっこうやっていますね。
そういう意味では、その方をどうするか以前に、「サークルとして何を大切にしてるのか」とか、さっきのミッションステートメントみたいなものを策定した上で、事前に言って、そのルールをもとにプレイをする。「これはイエローカードね、事前に言ったよね?」という形で運営するというのが、非常にわかりやすい形の信頼関係の作り方になるかなと思いますね。
小林:大丈夫ですかね? ちなみに会社とサークルの大きな違いって、「オーナーシップ」、所有してる人がいるというところなんですよね。例えば、オーナーがいて「俺はこうしたい、こう考えてる」というのに合わせて基本的に組織ができているんだけど、サークルだと「KBC実行委員会って誰のものですか」みたいな話になるから(笑)。「お前が勝手にビジョン決めるなよ」みたいな。
「やっぱりみんなで決めようよ」「多様な……」「俺はああしたい、こうしたい」っていっても、給料も払ってないわけだから、決まらないわけじゃないですか。そういうボランタリーな組織をマネージメントするのを学生時代に経験するということは、非常に重要だと思いますよ。
極論を言うと、会社に入ったら上司の言うことをきかなきゃいけないとか当たり前なんですよね。給料をもらってるから。「俺は絶対にこんなのやだ」と言えるのは、実は学生のときくらいで、好き勝手言ってる中でそれを束ねていくという経験は非常にいいんじゃないかなと、個人的には思いますね。(田中さんは)何か補足することありますか?
田中弦氏(以下、田中):ビジョンに共鳴できない人は絶対入れないですね。会社に。
質問者3:やっぱりビジョンからはみ出た人は、みなさんけっこう切り捨てるというか、他に行ってもらったほうがという……。
小林:ログミーの見出しになっちゃうよね(笑)。
吉田:切り捨てるわけじゃなくて、逆の目線で。他の人たちがルールを守っていたりビジョンに共感してるのに、その人1人のために他の人たちが我慢するほうがアンフェアですよね。その人がいることで、みんなが毎日気をつかうということがあるとしたら、お互いのためにならないじゃないですか。
その人を引き上げたいという気持ちはわかりますけど、じゃあ、残りの人はついてきてくれるか。あなたの言うことを守って100%頑張ってくれてる人たちはどうなんですかという話だと思いますね。
質問者3:サッカーのルールの例で言うと、ラグビーというスポーツは、まずサッカーをやっていて、ボールを手で持って走り出したらおもしろくてできたんですよね。そういう感じで、ミッションに合わない人も会社のためになると僕は思っていて。
吉田:それは時間軸の問題で、サッカーの試合中にラグビーをやらないでしょ? サッカーの試合が終わってから、練習時間とかで「これがいいよ」ってラグビーに発展するでしょう。だからサークルはわからないですけど、仕事という軸だけでみると、「その中の時間ではルールを守ろうよ」というのは悪いことじゃないと思いますよ。
どんなに正しいことを言っていても、9時出勤の人が毎日12時に来ていると。「12時に来てるけど、こいついいこと言うんだよな」ということがあるとしたら、それが(社員数)3人くらいのときは許容できるかもしれないですけど、100人とかでそういうのを許容してたら会社はおかしくなっちゃいますね。
田中:こだわりの問題だと思うんですよね。ウチの会社だと、「広告に興味があります」という人は絶対に採らないです。要は事業内容に興味がある……例えば「ビジネスプランコンテストをやることに興味がある」人を採るのか、それとももうちょっと崇高なビジョンがあって、「それを実現するために今はビジネスプランコンテストをやってます」なのか。
これはけっこう違うじゃないですか。なので、それをこだわるかどうかという話だと思うんですよ。僕はけっこうこだわるんで、そういうふうに採用とかもしちゃってますね。
吉田:あと、そもそも世の中の仕組みには政治とか宗教とか企業とかNPO団体とか、いろいろあるわけじゃないですか。その中で我々は「企業」というのを選択してるので、そういった意味では、ビジネスを成り立たせることを通して社会の役に立つわけですよ。
本当にそういう人たちに貢献したいというのであれば、NPO団体とかを作るというやり方もあると思うんですね。我々はそういう団体とよく組んでますよ。(クラウドワークスは)仕事を出せるので、障害者の団体に対して仕事を出すとか。だからそれは役割の問題だと思いますけどね。
質問者3:ありがとうございました。
小林:はい。じゃあ次にいきましょうかね。
質問者4:○○と申します。88年生まれの社会人で、今までに2回起業しています。質問を細かく分けると2点で、「挫折したときの立ち上がり方」、それから挫折しているということは1回ビジネスモデルが崩れている可能性が高いと思うんですけど、そのときの「新しいビジネスモデルへの出会い方」、この2点を教えていただければと思います。
小林:挫折といえば吉田さんですか?(笑)
吉田:(笑)。でも、私ちょっとしゃべっちゃったのでこっち(金谷氏)も……200個のアイデアの話とか。
金谷:まず、サッカーをやめるときにも挫折してます。でも、ひとつのことを追い求めながらも、ちょっと興味のあることは継続して見ていくこともあると思うんですよ。サッカー選手を目指しながらも、当時経営の本は読んでいて、少しは経営に興味があったんです。
プライベートのことを言うと、自分のことじゃないんですけど、例えば好きな彼女と別れたときに……。
吉田:完全に自分のことじゃないですか(笑)。
小林:架空の話ってことですか?(笑)
金谷:架空の話です(笑)。好きな彼女と別れたときに、次の相手がいなかったらずっとその人のことを思ってしまうわけです。でも新しく好きな人ができたら、別れた彼女のことを忘れるじゃないですか。もう(挫折のショックから立ち直るには)それしかないですよ。
小林:本当ですか?
金谷:(笑)。
田中:でも、人間忘れますよね。僕は10年間でけっこうつらいことがいっぱいあったんですけど、まるで覚えてないんで。
金谷:やっぱり次のことを考えるしかない。
小林:それは年齢の問題じゃないですか?(笑)
田中:それもあると思うんですよね。脳細胞がなくなってきてますから(笑)。でも、僕は一応まだ30代なんですけど。まあいいや(笑)。
小林:同い年じゃないですか?
田中:39。
小林:俺は40。
田中:僕のほうが年下ですよ。
小林:マジですか。絶対こっち(田中氏)のほうが年上に見えますよね(笑)。
田中:僕は得体が知れないタイプなんで(笑)。
小林:……そういう会話(をする場)じゃないと(笑)。なんだったっけ? 忘れるってやつだったっけ。
吉田:挫折挫折。
田中:あんまり覚えてない。
小林:一般的に言えることなんですけど、起業家は忘れやすいですね。嫌なことを忘れるのが得意な人種だと思います。そういう人じゃないと向かない職種かもしれない。職種で考えるとね。でも、挫折を挫折と思ってないんじゃないですか?
金谷:そうですね。そう思わないとたぶんダメで、コロプラの千葉(功太郎)さんが言ってたんですけど、「失敗は成功のもと」じゃないらしいですね。失敗は成功には活きないので、キッパリ忘れてやるしかない。
小林:ならないって言ってますね。小さな成功が重要だという。
吉田:まあでも、失敗もいいんですよね。振り返ったときに一番成長できるので。そのプロセスを何回も繰り返していくとだんだんわかってくるので、できれば若いときにたくさんチャレンジして失敗するというのはすごく重要だと思います。
私は、昔は失敗してもすごく逃げ回っていたというか、とにかく問題と向き合いたくないというか。でも逃げ回っていて、36歳くらいのときにみんな離れちゃったみたいな。業界の人も見離してたし、その当時はアパレルをやっていたので、「IT業界なのにベトナムでアパレルやっている変な人」という扱いで、役員とか社員とかは全部抜けていって。本当に1人になっちゃったんですよね。
そこまで逃げ回っていたというか、自己否定ができなかったというか。そういう感じだったので、やっぱり退路を断つというのが非常に重要なのかなと思いますね。
ウジウジ悩んでるって、余裕があるんですよ。36歳のときは、本当に余裕のかけらもないというか(笑)。だって、何か言っても周りに聞いてくれる人がいないですからね。そこまでいくと人は変われたという感じがあるので、逃げてみるのもいいんじゃないですかね。
小林:逃げてみる。いいですね。
吉田:私は夏休みの宿題を9月1日に出せなくて、「家に忘れました」とか言って1週間経ってもまだ出せなくて、10月になっても唯一出してない人になったという経験があるんですけど、その夢は今でも見ますからね。
小林:そういう人ってどれくらいいます?
(会場挙手)
小林:けっこういますね!(笑)
吉田:やっぱり世の中、逃げ回るとどうなるかという思いを1回しておくと、それが自分の中ですごくブレーキになるというか。「今ここで逃げると、あんな思いをすることになる」みたいな(笑)。
小林:(金谷氏に)大丈夫ですか? 「俺も逃げ回った」というのは。
金谷:そうですね、逃げ回りましたね。僕もそういうタイプだったので、とにかく口でうまく言って何とかするしかないですよね。そういうときは。
小林:僕はこれでも真面目にやるタイプだったので。
吉田:今、はしごを外されたような(笑)。
小林:いやいや(笑)。世の中真面目に生きたほうがいいという。
吉田:小林さんはめちゃくちゃ真面目に、愚直にやるタイプですもんね。
田中:僕は何とかなっちゃうタイプですね。突然神が降りてきて、助けてくれるんで。
吉田:どっちかというと、ご自分が神みたいですけどね(笑)。
田中:そうですね(笑)。
小林:時間もそろそろなんですけど、あと1問くらいいきましょうかね。じゃあ、手前の黒い服の。お願いします。
質問者5:私は学生をやりながらコピーライターと営業をやっております○○と申します。ひとつお聞きしたいことがございまして、おそらく10年くらい会社をやられていると思うんですけども、そこの中で「ウチの会社は他のところと違うから、これだけ長い期間経営できたんだ」ということってありますかね。
小林:なるほど。(田中氏に)10年間やってるのってここくらい?
田中:何か理由あるのかな。まあ、すごくこだわりはありましたよね。どんなピンチに陥っても会社は絶対に続ける、絶対に成長させる。そのために何でもすると思ってやってきたんで。何か特別な理由があるかってたまに聞かれるんですけど、あんまりわからないですよね。
小林:世の中、何百万社って会社があるわけだから(笑)。そんなに特別なことをしないようなパン屋さんでも何でも、別に存続してるわけじゃないですか。
田中:だから「やれることは全部やってきた」という、それだけですよね。
小林:ひとつ言えるのは……よく例えで言うんですけど、地方のレストランではなぜかナポリタンとかいろいろなもの出してるじゃないですか。東京ではそういうのは存在し得ないじゃないですか。イタリアンでめちゃくちゃおいしいとか(長所を明確にしている)。そういう競争相手とか相対的な距離感で決まるので、そこでの意識が非常に重要なのかなと思いますけどね。
田中:しかもインターネット産業ってコストが、ハードディスクならこの20年で3万分の1とかに下がってて、さらに市場も伸びてるじゃないですか。だから成長させられないほうがおかしいという前提で。(その中で)挫折は僕はけっこう味わったんで、俺は相当イケてなかったんだなと。最初はそこからのスタートなんで、今は「頑張ってよかったね」という。「特に理由はないです」という感じだと思います。
吉田:(クラウドワークスの)「“働く”を通して人々に笑顔を」というミッションは36歳のときの孤独から生まれた考え方で、やっぱり他人がいないと人というのは何もできないんだと。そういうことで腹をくくってやりはじめたので、一緒に働いてくれる仲間の幸せを祈る気持ち……誰しもが持ってると思いますけど、それは絶対誰にも負けないというか。
その思いを強く持ったからこそ「何か悩んでる」と聞いたら、絶対に今改善しようと思いますし、その形を続けてきたので今があるかなと思ってますね。
小林:時間もアレなんで、最後に一言ずつみなさんにメッセージをいただいて終わりにしたいと思います。じゃあ田中さんから一言ずつ、言いたいことを。
田中:ベンチャーは超楽しいんで、ここにいる人は全員ベンチャー業界に入ってほしいなと思ってます。ありがとうございました。
(会場拍手)
金谷:今、学生の方とか若手の社会人の方がおられると思うんですが、身ひとつで何ができるかというところをたぶん見たほうがいいと思ってまして。
僕は起業する半年前くらいに、花火大会に行ったんです。クーラーボックスを買って、30円くらいのジュースをいっぱい買って氷を入れて、花火大会に歩いていって100円で100本くらい売ったんですけど。
これをしたときに「身ひとつでもなんとかなるな」と思ったのがすごく自信になって起業に繋がったので、身ひとつで何かをやってみること。今おすすめなのは、梅雨なので雨の日に100均で傘を買いまくって、傘を持ってない人に300円くらいで売るという(笑)。
そういうことをすることによって、身ひとつで何かできるんじゃないかというのもあると思うんで。そういう、耐えられるかどうかとか……社長の胆力はすごく重要なので、身ひとつになっても何か価値を生み出せるという(能力は)誰しもが持ってると思うので、それを一度経験しておけばいいかなと思います。
以上です。ありがとうございました。
小林:じゃあ今日は雨が降ってるので、100均で(買って)今すぐ売るということですね。ありがとうございます。
(会場拍手)
小林:ということで、スタートアップ・ピッチのパート2を終わりにしたいと思います。ありがとうございました!
(会場拍手)
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