2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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青野慶久氏(以下、青野):最後にもう1人、ゲストをご紹介したいと思っております。彼は佐藤仙務さんといいます。昨年、ある日私にFacebookでメッセージが届きました。「私は愛知県東海市に住む、重度の障がい者です。同じ難病を抱える幼なじみと2人でWeb制作会社を起業しました」。
私は、怪しいと思いました。信じられない。重度障がいの人が起業するなんて信じられない。これは何か売りつけるんだろうと。ただ、読んでますと、「本を書きましたので読んでください」と。それで、私は本を送ってもらいまして、読むことにしました。
それがこの本です。『寝たきりだけど社長やってます』、読んで号泣しました。すごい、すごい本です。その本にはこう書かれていました。「働く場所がなかった、だから会社を起こそうと思った」。もし私が重度の障がいを持っていたら、例えば親指しか動かない、そんな障がいを持っていたら、起業しようと思うだろうか? 絶対、思わない。絶対思わない。
この佐藤仙務さんは、自分の運命を自分で切り開いていかれました。そして、友人の松本さんと一緒に「仙拓」という会社をつくりました。仙人の仙、それから開拓の拓。仙人のような心境で、新しい市場をつくって、新しい未来をつくっていく。非常にすばらしい、2人の名前からとったこの会社名、私、大好きです。
今、世界のビジネスを立ち上げられています。ホームページを制作したり、名刺をつくったり、それから最近はkintoneを使ってシステム開発まで行っていただけるようになりました。もちろん、私の名刺もつくっていただいてます。格好いいでしょう。
今日、これをデザインしてくださった松本さん、お越しいただいています。松本さん、ありがとうございます。
(会場拍手)
青野:最近、松本さんのデザインセンスが上がってきて、どんどん格好よくなっていますね。すごいですね。名刺配ったときに、「名刺格好いいですね」って、そこから話が弾むのが、以前の名刺と比べて10倍以上上がりました。すばらしいです。
最近ですね、この仙拓、本当に注目されています。(スクリーンを)見てください。安倍総理と写ってますね。安倍昭恵夫人が訪問するんですね。私、応援してるつもりだったんですけど、もう私の手の届かないところにどんどん行ってしまってます。
実は今日もこの仙拓さん、佐藤さんを、某超有名なドキュメンタリー番組が(取材に)入っています。残念ながらこのサイボウズの取材ではなくて、佐藤さんの取材でいらっしゃっています。どんどん彼らは未来を切り開いておられます。
今日は株式会社仙拓の代表取締役社長の佐藤仙務さんにお越しいただいております。どうぞ、大きな拍手でお迎えください。
(会場拍手)
青野:どうもお越しいただきまして、ありがとうございます。
佐藤仙務氏(以下、佐藤):ありがとうございます。よろしくお願いします。
青野:今朝、移動されたんですよね。
佐藤:そうです。
青野:すいませんね、もう朝から。大変だったでしょう。
佐藤:いやいや。楽しみにしてました。ありがとうございます。
青野:本当ですか。ありがとうございます。まずみなさん、驚かれてると思うんですね。この人がね、若き起業家なんだ。今、20……?
佐藤:24歳です。
青野:24歳。
佐藤:はい。
青野:19歳で。
佐藤:ええ、会社を(立ち上げました)。
青野:(19歳で)起業されて、ということなんですが。まずは少し、そのいきさつをみなさんにお話しいただけませんでしょうか?
佐藤:そうですね……私自身、会社を起業するということは、全く考えていませんでした。
青野:考えていなかったんですか?
佐藤:はい。どこか普通に就職して働ければいいなと考えていたんですけど、学校卒業して働く場所を探そうとなったときに、どこにも雇ってもらえない。自分って働く場所ないんだということに気がついて。
「障がいを持っていると、これだけ働く場所がないんだ」ということに気がついて。このままではもうどこも働く場所がないということになって、それで、一緒に会社を立ち上げた松本がいるんですけど、松本を誘って、「一緒に会社を起こさない?」って誘って始めたのが、始まりですね。
青野:普通に考えますと、雇ってくれるところがなくても、それはある意味仕方がないことで。そこをあえて難しい、起業というところに踏み切らせた覚悟って一体何だったんですか?
佐藤:僕は3人兄弟の3番目で、兄が2人とも会社へ行って働いて、自分でお金を稼いでくるんですけど。その姿を見て、僕も普通に働いてお金を稼いで、社会のために役に立ちたいという思いが自然にあって、働かないという選択肢が自分の中にはなかったので。だったらもう最終手段として、会社を立ち上げようと思って。
青野:なるほど。働くのが当たり前であると。
佐藤:はい。
青野:自分が何か社会の役に立ちたいと。
佐藤:はい。
青野:そういう思いだったんですね。ただ、障がい者の方が起業されますと、まあ目立ってしまうと思うんですよね。それで、まあ、私に話しかけてくれたけれども、ちょっとこう障がいを前面に出すと、「それを売りにしてるんじゃないか?」とか、叩かれたりすることもあると思うんですけれど。
佐藤:はい。
青野:この辺りというのは、どういうふうに受けとめられてるんですか?
佐藤:賛否両論あると思うんですけど、やっぱり障がいを持ってて、自分のことを「寝たきり社長」だと呼んでるんですけど。そういった意味で、みなさんから見てもらうためには、やっぱりそこを使わない手はないんですけど。
ただ、注目されても、やっぱりいい商品、いいサービスを提供できないと、そこがおかしい話になってしまうので。注目してもらって、そこでいい商品をお客さんにデザインするというのを大事にしてますね。
青野:なるほど。注目を集めるために、自分の使えることは全部使うと。
佐藤:はい。
青野:いいサービスで、お客さんの信頼をとっていくと。ただ、その……叩く人もいるわけじゃないですか。今でしたら仙拓さんも相当有名になってきましたから、私なんかもよくネットで叩かれたりするんですよね。あの社長、アホやとかバカやとか言われて、言われる度に心折れるんですけど。そういう批判に対しては、どういうふうに受けとめておられるんですか?
佐藤:そうですね、私も、(障がいを売りにしてるんじゃないかという)批判の中で、やっぱり傷ついたり、ちょっと心が折れそうになったりすることもたまにはあるんですけど、その批判の中に、今後の会社の方向性のヒントというのが眠ってて、それを目をそらさずにちゃんと見つめて、そのヒントを自分で探そうと、今まで努力してます。
青野:すごいですね、前向きですね。なるほど、批判の中から自分の次の成長の種を見つけていくと、こういうことですね。
佐藤:はい。
青野:私もその心境まで、ちょっといってみたいもんですね(笑)。今日、お母さんにお越しいただいておりまして、子供が目立って、褒められたり批判されたりするのを、どういうふうに受けとめておられるのかなと思って、もしよろしければ少しお母さんにもお話を伺いたいんですけれど、よろしいですか?
佐藤仙務氏母(以下、佐藤母):よろしくお願いします。今、いろいろネットで注目されてはいるんですけど、本人は「批判の言葉は、でも本当にそれだけ自分のことを見てくれてる方がいる」というので、それはそれでありがたいというのはよく聞きます。
私も、あんまりこの子を褒めながら育ててはいないので、上の子もそうなんですけど、わりと褒めずに育てるので、きっと褒められないので余計頑張らなくちゃという(笑)、そういう育ち方をしているのかもしれないですけど。
青野:息子さんがネットで批判されたりするのを見たら、心が痛むんじゃないですか?
佐藤母:私は(ネットを)あんまり見ないので。
青野:パソコンをあまり使われないんですか?
佐藤母:はい。
青野:なるほど(笑)。
佐藤母:失礼しました(笑)。
青野:すばらしいですね。
佐藤母:すみません。
青野:もしよろしければ、この仙拓を今後どうしていきたいのか。どんなところに持っていきたいのか、次の展開なんかもお話しいただけませんか。
佐藤:そうですね、今、仙拓は社員が僕と松本を入れて4人いるんですけど、全員重度の障がいを持ってます。なかなかその全員障がいを持ってる会社って珍しいと思うんですけど。僕は最初、松本と会社を立ち上げて、最初は自分と松本がお給料をもらって食べていければいいのかなぐらいしか考えてなかったんですけど。
やっぱり会社を立ち上げて、社会に出て、いろんな障がいを持った方ともっと関わるようになって、その中で、「本当は働きたいんだけど、働く場所がない」と思う方がいっぱいいらっしゃって、自分たちと同じようなことを考える方っていっぱいいるんだなと思って。
やっぱり自分たちと同じような感じで、何かのためにやっているような会社にしていきたいなと思っているので、障がい者雇用というのは全面的にやっていきたいんですけど。
でも、その障がい者雇用が直接ビジネスになるというわけでもないと思うので、やっぱり仙拓、Webサイト、ページ、あと先ほどご紹介いただいたプリントアウトなどの名刺の発注システムをつくったりもしてるんですけれども、そういったサービスを目指しながら、最終的には上場まで持っていきたいですね。
青野:おっ、上場宣言きました! すごいですね。全員障がい者でやってる会社で上場、それはもう世界でも聞いたことないですね。すごい夢ですね。やっぱりこの夢があるから、佐藤さんは強いんでしょうね。
青野:でも、障がい者の方と一緒に働くというのは、たぶんみなさんいろんな障がいで、重度も違うし、場所も違うでしょうし、一緒に働くというのはすごく大変なように思うんですけれども、そのあたりはいかがですか?
佐藤:そうですね、やっぱり身体的なハンデとか、我々の場合は身体障がい者なのですけど、世の中にはいろんな障がいを持った方がいて。でも、ITを使ってパソコンを通して行うと、障がいを持ってるとかもうわかんないですよね。
先ほど、青野さんの名刺、松本がつくったってご紹介いただいたんですけど、あれをパッと見て、障がい者がつくったかどうかわかんないじゃないですか。
青野:絶対わからないですね。
佐藤:なので、障がい者とか健常者とか関係なく、本当に能力さえ認めてもらえれば働けるような時代になったのかなと思っているので、なかなか大変さもあるんですけど、楽しみな部分もまたいっぱいありますね。
青野:ITがこういうところで生かされてると、すごくうれしいですね。
佐藤:すごい助かってます。
青野:ITがなければ、たぶん佐藤さんと出会うこともなかったかもしれませんね。最初、本当にわからなくて、Facebookでメッセージきたとき、健常者なのか障がい者なのか、どこにいらっしゃる方なのかもわからない。この垣根をなくすところが、やっぱりITのすごいところですね。
まだ障がい者雇用については、社会でも進んでいないところが多いと思うんですけれども、この障がい者雇用がなかなか社会に進んでいかない理由ですとか、私たちのような企業がどういう心構えでいれば障がい者雇用をもっと積極的にできるようになるのか。そのあたり、アドバイスいただけませんか。
佐藤:そうですね、アドバイスというか、我々も手探りなところはあるんですけど、今、障がい者雇用というと、いろんな会社さんが嫌々障がい者を雇って、法定雇用率を達しないといけないというデータのほうが多いのかなと考えていて、そういうふうに感じること自体がまず、おかしいのかなと考えていて。
障がい者雇用という1つの枠で見るんじゃなくて、やっぱり障がい者、一人ひとり見ると、本当にそれぞれ違った可能性とか、個性とか、そういったものがたくさんあって、障がい者雇用というふうに見るより、その障がいを持った方を受け入れて、「この人、うちの会社でこんなふうに働いてもらったら役に立つかもしれない」という心構えだと、もっと雇いやすいというか、集めやすいのかなと思いますね。
青野:そうですね。みなさん、それぞれ違いますもんね。
佐藤:はい。
青野:なので、やっぱりその多様性を前提に、一人ひとりの個性を生かして活躍場所をつくっていくと。もうどの会社でも当たり前にやっていることを、もっとオープンにやろうと。そんな心境でいけば、いけそうですね。
佐藤:はい。そうかもしれないです。
青野:ありがとうございます。時間も残り少なくなってきましたので、もしよろしければ、今日この会場にいらっしゃる方は、佐藤さんに相当びっくりされてると思うんですよね。この強い覚悟をお持ちの佐藤さんからみなさんに、メッセージをいただけませんでしょうか。
佐藤:まず、この場に誘っていただいたことが、本当に大変うれしいなと思っています。それから、やっぱり私自身が障がい者の当事者ということで、その当事者自身から障がい雇用を進めていきたいなと思ってるんですけど。
やっぱり我々だけではできないこと、足りない部分というのがあるので、ぜひみなさん、仙拓という会社から知っていただいて、障がい者がこれだけ働けるんだよとか、社会で働くことができるんだよというのを、まず知ってもらえるだけで、僕はうれしいなと思っているので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。
青野:メッセージありがとうございます。
佐藤:ありがとうございます。
青野:それでは、佐藤さん、今日はお越しいただきまして、どうもありがとうございました。お母さんもありがとうございました。大きな拍手でお送りくださいませ。
(会場拍手)
青野:すばらしいですね。もう、人間ってここまで強くなれるんだということを実感いたします。仙拓、絶賛、お客様募集中でございます。ホームページの作成から、名刺から、システムの構築まで引き受けておりますので、もしよろしければ、みなさんも仙拓とつながりを持って、一緒に社会を変えていきましょう。
みなさん、覚悟はできつつありますでしょうか? 最後に、ガンジーの言葉を紹介して終わりたいと思います。
「死ぬほどの覚悟ができていれば、人は自由に生きられる」
もし今、みなさんが自分の人生に不自由さを感じておられるんでしたら、もしかしたら足りないのは、周りではなくて自分の覚悟かもしれない。覚悟を持てる、そんな社会になっていけばと思います。
変える覚悟、変わる覚悟。私たちには社会を変えていく、大きな武器があります。それが、クラウドです。ぜひともみなさん、このクラウドを最大限活用していただいて、社会を一緒に変えていきましょう。
変える覚悟、変わる覚悟。これで私の基調講演を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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