2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鈴木貴歩氏(以下、鈴木):スタートアップ界隈の中でもトランスリミットやスカイランドベンチャーズはすごく有名だと僕は思っていて、いろんなところで語られていると思うんですけど。
まさにビッグ・パレードで目指したい異文化交流みたいなところでいうと、「初めて知った」とか、「ゲームは楽しんでるけど、こういう会社だったんだ」という人も結構多いのかなということで、また改めてすごく勉強になりました。
ここからはいろいろと聞いていきたいと思うんですが、まず高場さんに聞きたいのが、「億いくぞ」というところを目指したきっかけというのを。何かあったんですか?
高場大樹氏(以下、高場):大学生のときにリュック背負ってバックパッカーをしてたんです。インドやバングラデシュ、東南アジア、当然アメリカにも行っていまして、世界のことがもともと好きでいろいろ旅をしていました。
その旅の中で「Facebookで友達になろう」ってインドとかバングラデッシュとかで言われて、、実際にFacebook上で友達になって、みたいなことを結構してました。7年ぐらい前ですかね、僕が大学4年生のときなので、まだFacebookが日本であまり認知されていない時期だったと思います。それでもFacebookは世界で利用されていたんです。
「これはおもしろいな」と。大学生のときはエンジニアになりたいと思って、プログラミングとかITの勉強をずっとやってましたので、一国で作られたサービスが世界中で使われていることを間近で体感する良い機会になりました。
シリコンバレーでできたサービスなのに、インドやバングラデシュで使われている。これはすごいなと。でもそのとき、「日本にはそういったサービスがあるのか?」と同時に思ったんです。当時はまったく思い当たらなかった。
今でいうとLINEさんとかが、アジアやスペインとかに広がってるんですけど。そういったサービスが全然日本から生まれてないっていうのにちょっと危機感を感じました。
「日本だけじゃなくて、世界の誰もが使えるようなサービスを作りたい」とそのときに思いました。
鈴木:なるほど。やはりそういう実情を目の当たりにして、「まだまだできることがある」ということで世界を目指すと決めたんですね。
高場:そうですね。やはりインターネット自体も世界共通の技術ですので、「簡単に日本で作ったサービスが世界中で使われる可能性がある」っていうのを利用しない手はないな、と思いました。
鈴木:それまではそんなに海外との接点とか留学とかっていうのはなかったんですか?
高場:留学自体はしてないですけど、2年生か3年生ぐらいからしょっちゅう海外に遊びに行っていました。
鈴木:ちなみにどんな遊びをされていたんですか?
高場:学校の関係で短期留学に行ったり、東南アジアにバックパッカーで行ったり。あと外国人の友達がよくいたので、韓国に遊びに行ったりとか。友達の家に遊びに行ったり、そういうことをしていました。
鈴木:なるほど。そういう交流の中で自然と「交流とインターネット」が結びついて、そこでFacebookという巨大なサービスがあるぞというところで、そこを目指そうという視点になったということですね。
高場:そうですね。
鈴木:トランスリミットを創業して、Brain Warsで「これで世界を狙うぞ」というところに至るまでの経緯を聞きたいんですが、例えばBrain Warsまでに何種類ぐらいゲームのアイデアを考えたんですか?
高場:ゲームのアイデアは一切考えてないです。起業して、創業日が1月なんですが、創業したタイミングからもうBrain Warsの開発を始めて、3ヶ月でリリースをしました。
鈴木:Brain Warsに至るまではどんな感じですか?
高場:2週間ほどあって、そのときは「教育で何かできないか?」みたいなことをちょっと考えていましたね。
考えてはいたんですけど、やっぱり教育って結構足の長いビジネスになってしまうというところで、エンジニア2人で創業した会社で、教育にこれまで携わっていなかったので、まったく知らない場所に飛び込んでいくのは難しいだろうな、結構時間がかかってしまうだろうな、っていうのがあって。
自分たちの庭で戦うのが一番いいということで、前職からやっているゲーム領域でやろうと。日本のソーシャルゲームは日本でしか流行っていない現状があって、それを世界で、日本のソーシャルゲームとはちょっと違う考え方ですけど、「もっと世界で流行るようなものを作っていきたい」と。
世界を見渡すと、そういうものが存在してはいるので、「日本からでも不可能ではないな」と。そういったコンセプトで考えたときにBrain Warsが出てきた。
鈴木:なるほど。Brain Warsって、僕から見るとすごい抽象化されてる感じがするんですけど、脳トレ的なイメージを参考にされたんですか?
高場:そうですね。脳トレは参考にしました。当時、対戦ゲームが流行り始めた時期でして。前職からリアルタイム通信の技術は使っていたので、経験があるので簡単に実装できる。
鈴木:まず対戦が1つあったと。
高場:対戦の中で、「何で対戦しよう?」ってところなんですけど、クイズの対戦ゲームで遊んでて、「クイズおもしろいな」って思ったんですけど、そのクイズが英語ベースだったんです。僕、英語全然できないんですよ。
鈴木:そうなんですね。
高場:制限時間が10秒あるんですけど、9秒は読んでますね。それでだいたい読み切れないで終わったりしますけど。日本語であれば解けるものでも、英語では解けなかった。まあ英語勉強しろよって話なんですけど(笑)。
世界を見渡して、「全員英語ができるわけじゃないよね」っていうのがそのときに感じたことで。ちょっと逃げの発想ですけど、英語とかじゃなくて、「人類誰でもわかるようなものをテーマにしたほうがいいな」っていうので、脳トレ。
やっぱり脳がベースにあって、その上に知識とか言語だったりするので。その「人間であれば」っていうところだと脳だったんですよ。それで脳トレ。
数字とか色とか、そういうノンバーバルの領域っていうのは、子どもから大人まで国境をまたいでも全世代、全世界に使えるんだなって気づいて。そういったものをテーマにしました。
鈴木:じゃあ「対戦」っていうのと「ノンバーバル」っていうのがコアにあって。先ほどおっしゃってた、世界を見渡したっていうのは具体的にどんな感じだったんですか? ストアを見て回るみたいな感じですか?
高場:それでいうとやっぱり大学のときの経験が大きくて。いろんな国に行きますけど、もちろんアメリカはみんな英語しゃべれますよね。ただそれが、東南アジアに行くとやっぱりコミュニケーションがとりづらい。というのも、彼ら自身英語が完璧でもないし、僕自身も英語がしゃべれないし、ってことを痛感して。
そのときに感じたのは「ボディランゲージや表情、そういった面でのコミュニケーションが主になる」と。そこだったら誰でもできる。
鈴木:そこまで落とし込んでいくところで、Brain Warsのコンセプトは結構早く決まったんですね。
高場:そうですね。「対戦でゲームをやって世界だ」ってところは、わりとすぐに決まっちゃいました。
鈴木:世界を目指すための要素をまず洗い出して、それに合うものを作ったという順番で。
高場:はい。
鈴木:それを創業から3ヶ月でリリースしたということで、リリースからどういうふうに広げていったんですか?
高場:「ひたすらいいものを作り続ける」っていうのを僕らはやっていまして。特に何をしたってわけじゃないですね。いいもの作ってプレスリリース出して、いろんなメディアの方に取り上げていただいて、ある程度認知が広まった、みたいなサイクルで。僕ら自身はあんまりマーケティングを超やったとか、そういうのはないです。
鈴木:メディアっていうのは海外のメディアも含めて?
高場:海外のメディアは全然できなかったんです。国内はちょっと認知が広まったタイミングで、国内にいるAppleやGoogleの方が目をつけてくれた。それでクオリティ自体が非常に良いから、それをもっとiPhoneのユーザーとかAndroidのユーザー、他の人にも使ってもらいたいってことで、プラットフォームの方がお勧めをしてくれるっていうミラクルが発生しました。
鈴木:なるほど。
木下慶彦氏(以下、木下):これ、サクッと言っている部分がかなり多いと思うんですけど(笑)。
鈴木:そうですよね(笑)。そこを今ちょっと噛み砕こうと一生懸命やっているんですけど。
木下:めちゃくちゃ重要だと思うのが「いいものを作る」のは難しいです。彼は経験が、サイバーエージェントで5年?
高場:5年ですね。
木下:5年エンジニアをやって、むしろエースだったわけですよね。共同創業のもう1人のCTOも同じレベル。僕はスタートアップにたくさん触れ合っていて、スタートアップや大企業のプロジェクトの相談もよくされますが、2人、このエースクラスのエンジニアが起業するっていう。
かつ、高場さんはこうやってビジネスマインドもあるし。エンジニアでビジネスインサイトがすごいあるタイプの人が起業するっていうのは、本当にないです。
彼がサービスローンチするくらいまでってだいたい2000万円くらいの投資を受けていたし、それも全額使ってないんですよね。例えば「外注で2000万円用意すればいいものが作れる」みたいな発想だと、まぁ無理ですね。
鈴木:そうじゃないですよね。
木下:1個のものに1億円投資して何か新しいプロダクトを作ったって、それでも全然当たらないんで。この「いいものを作る」っていう発想観っていうのは、彼がやっぱり真剣にめちゃくちゃ集中してプロダクトを作っているっていうのがありきで、ここが難しい。
鈴木:そこをちょっと聞きたいんですけど、まずBrain Warsはコンセプトありきでできた。そこに合わせていったと。「いいものを作る」っていうのはもうちょっと違うプロセスじゃないですか? たとえば「A/Bテスト」なのか、そこも高場さんだったりCTOの方のインサイトなのか、その辺はどうですか?
高場:非常に難しいんですけど、自分たちがいいっていうものを信じて作るだけです。特に何かテストしたりっていうのはほとんどないんですけど、僕らは海外向けのサービスも日本向けのサービスもやったことがあるので、「作る技術はもう手元にありました」っていうところですね。
それプラス、世界の市場を見て、自分たちが本当におもしろいっていうものまでひたすら突きつめ続ける。
あと創業時は2人3人だったんで、社内だけではこれが本当におもしろいのか、おもしろくないのかわからなかったんですよ。というのも、作り続けてるので愛情が入っちゃって。おもしろくないのに(笑)。
鈴木:それ、音楽を作る過程でも一緒ですよね(笑)。作ってる過程で愛情が移っちゃって。
高場:なので、その時期には会う人会う人に見せ続けたりしました。「こんなもん作ってるんですけど」って言って、端末を1個渡して、僕の端末と対戦をするっていうのをやって。
初めてなのにすぐプレイできるし、それだけでちょっと盛り上がるし、っていうので「これはおもしろいんだな」って感覚値を掴みつつ、やっぱり挑戦していくというところですかね。
あとは特に、「技術的にいいもの」を目指して作っていて、外注を一切使わない。全部100パーセント内製で作っています。いいエンジニアしか入れないってところで、「エンジニアやりたい」って面接で来るんですけど、もう「技術がある」か「気合いがある」か(笑)。そのどちらかでしか採用しない。
鈴木:気合いも大事なんですね。
高場:気合いも大事です。
鈴木:ちなみにエンジニアでいうところの気合いは、どういう人ですか?
高場:50年間毎日書き続けようって人ですね。
木下:(笑)。
鈴木:50年間、コードをPCに向かって書き続けられるってことですね(笑)。
高場:そうですね。木下さんがよく言ってる通り、やっぱりその仕事が好きで、そこで1流になりたいと思っている、50年スパンでやりたいと思ってる人の1年目2年目みたいなのは、もうその時点で天才(笑)。
木下:天才ですね(笑)。
高場:そういう人を入れるか、すでに技術力があるとか、自分とこれまで一緒に働いたことがある、信頼関係がある人から採用をしていて。アウトプットを出せばいいってものじゃなくて、アウトプットの過程とか、アウトプットの中の見えない部分までしっかりと見ています。
鈴木:そういうところでいいものを追求すると。いいものっていうのは1つ、インサイトに基づく、楽しんでもらえるかっていう軸と、あと多分UI/UXがすごくスムーズにいくとか、そういう使い勝手みたいなところも当然あるわけですよね?
高場:そうですね。
鈴木:両方追求していくと。
木下:でも僕、ここも補足したいのが、彼は1月から会社始めたって言ってましたが、1月中にはもうプロトタイプができてたんです。その時点で僕も、まさにメディアの人とか、いろんな人に彼がアプリを見せ始めたタイミングで会っています。
「会社作ったばっかりなのに、もうプロトタイプあるの?」みたいな状態からそもそもスタートしていて、これは鈴木さんや皆さんの中でも、何かプロジェクトをスタートすると、1ヶ月目で何か見えるかたちで共有できるものがあるっていうのは、あんまりないと思います。やっぱそのスピード感と、あと回転数ですよね。
いろんな人に見せてフィードバックを受ける。彼の基本シナリオがあんまり変わってないから、見た目の部分はそんなに変わらずにずーっといき続けている。
多いのは、いろんな人から(意見を)聞いて、ぐちゃぐちゃになっちゃうみたいなのがあって。でも、彼はすごい迷わないですよね。それは(高場さんに)非常にあったところです。
鈴木:さっきゲーム画面がありましたけど、プロダクトはプログラムでできると。ただデザインとかクリエイティブっていうのはどうやってやったんですか?
高場:デザイナーが1人いるんですが、その人の力もありますし、僕と2人で議論しながらデザインしている感じです。それも、もう感覚でやってますね(笑)。
鈴木:世界を狙うっていうところから逆算していったある種、抽象化みたいなものも含めて?
高場:そうですね、やっぱり「世界で売れてるデザインは何だ?」っていうところから見て。
鈴木:それはもう、ちゃんと見たんですね。たとえばそのときのレーダーにはどんなものが引っかかりましたか?
高場:一番参考にしたのはOSです。AppleのiOSとAndroidのAndroid OSを見ました。純正のアプリを。なぜなら、スマートフォン市場で僕らがやろうって決めた時点で、スマートフォンのプラットフォームに乗るアプリを作るんですよ。
なのでスマートフォンと近しいデザイン性だったら、これは世界何10億台普及してるものと似通ったデザインコンセプトだということで、AndroidのマテリアルデザインやiOSのフラットデザイン、そのデザインガイドや彼らが出してる純正のアプリを非常に参考にしました。
鈴木:なるほど。おもしろいですね。それをやって、先ほどのプラットフォームの後押しもあって、創業したての頃は周りの人のいろんな意見や楽しんでる姿を参考にしてフィードバックをしていくと。
それから今度世界の人に伝わってきたときに、たとえば各国のストアのコメントとか、そういうものって結構見たんですか?
高場:結構見ますね。アメリカのストアとかすごいんですよ。5行、6行とかの長文でバーッと書いてある。星が非常に高い。ハイレートなんですよ。
鈴木:たとえばアーティストだったらライブに行けばそこで反応がわかるわけじゃないですか? でもそういう場はないわけですもんね。
高場:まったくないですね。
鈴木:星とかコメントの長さとかでわかると。
高場:はい。ストアのコメントもそうですし、あとTwitterとか連携してるので、Twitterでいろんなコメントをしてくれる、Facebookでコメントしてくれるのをひたすらエゴサーチするっていう、暗い仕事をしてましたね(笑)。
鈴木:暗い仕事(笑)。それは高場さん自らやってたんですか?
高場:自らやってました。直接反応もしちゃったりして。それがユーザーの人はおもしろかったみたいですね。「作者がリツイートしてくれた」って。
鈴木:リツイートけっこうしてたんですね。
高場:RTしますし、リプライもしますし。
鈴木:そこでアクティブサポート的なことをちゃんとやっていたと。
高場:やってましたね。
鈴木:確かにそうですよね、作者自らがRTしてくるアプリってそんなにないですよね。
高場:そうですね、あんまり聞いたことはないかな。
鈴木:それで、ある種インターネットって空間を越えるので、そういうRTがすごくコミュニケーションになったというのがあると。
高場:そうですね。対戦ゲームだったので、中で友達になる機能があって。ユーザー間でTwitterを利用してずーっとコミュニケーションしたり。ユーザーの中でオピニオンリーダーみたいな人が出てくるんですよ。
その人を他のユーザーがフォローし始めて、意見や「こういうテクニックがあるよ」っていうのを共有したり。それこそテクニックゲームなので、ビデオをみんなが見て攻略をするといった、コミュニティがもう立ち上がっちゃいましたね。
鈴木:それはコミュニティマネジメントとか特にせずに自発的に?
高場:そうですね、本当に自然誘発的に。
鈴木:何か名前はあるんですか?Brain WarsやBrain Dotsをやってる人っていうのは。「ブレインウォーザー」とか(笑)。
高場:「ブレインウォーザー」とか、「ドッツァー」とか言ってたりしますね(笑)。
鈴木:言ってます? やっぱり。
高場:ゲーム内で「グレード」っていうランクがあるんです。トップランクまでいくとその上がないんですけど、そのトップランクをひたすらサーチして、人数を計算しているユーザーがいたり。一番上が「フェニックス」なんですけど、ひらすらフェニックス、何人目できましたみたいなのを(笑)。
鈴木:すごいですね(笑)。
高場:「台湾人フェニックス」とか、ちゃんと国にマッピングされてるんですよ。
鈴木:ちなみにどこが多いとかあるんですか?
高場:フェニックス、一番トップランクはやっぱり日本が多いですね。中国、韓国も多いですし、アメリカも多いです。
鈴木:そういうコミュニティが自発的にできていて盛り上がっていると。
高場:そうですね、オフィスに遊びに来たりもしますし。
鈴木:本当ですか? オフ会とかやってるんですか?
高場:オフ会を公式でもたまにやるんですけど、ユーザー間で勝手にやってますね。
鈴木:それは日本で?
高場:日本で。
鈴木:海外だとオフ会は?
高場:中国でやったりしてますね。すごくおもしろいです。
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