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シリコンバレーで今何が起きているか(全5記事)

起業家の親は子をどう育てるか 学校や家庭が将来の仕事にあたえる影響

2015年4月29日に起業家、ベンチャー経営に関わる学者・政治家・官僚・メディアなどの第一線で活躍するリーダーたちが集う「G1ベンチャー2015」が開催されました。第2部の分科会Aには、グリー・青柳直樹氏、Shift Payments・Meg Nakamura氏、Miselu Inc・吉川欣也氏の3名が登壇。モデレーターのScrum Ventures・宮田拓弥氏の進行で「シリコンバレーで今何が起きているか」をテーマに、現地のスタートアップ支援やモノづくりの最新事情について語り合いました。本パートでは、シリコンバレーで家庭をもつ親が子供に行っている教育について、学校や親が務める職場環境から受ける影響を例に紹介していきます。

子どものアントレプレナー教育

質問者:先ほどの子どもの教育の話で、すごく興味があるんですけど、僕は結局親が子どもに対して、「こっち界隈に来い」というのを投資していかないと、なかなか次世代は育っていかないと思っています。

例えば日本だったら、「弁護士になります」「医者になります」「ピアニストになります」「サッカー選手になります」というものに対してはきわめてわかりやすく、あといい大学に入るため、いい塾に行かせるために投資をするじゃないですか。

でも、インターネットのエンジニアになるために小学校のうちから投資をするとか、もっと言うと、「スタートアップの起業家を目指しなさい」という親のマインドって今はまったくないと思うんですね。

質問が2つあって、シリコンバレーは「インターネット界隈に行きなさい」という投資がどれくらい行われていて、その中で「起業家になれ」という親のマインドはあるのか?

日本ではそれがゼロのような気がしてるんですけど、どうやったら日本でもそのマインドが出て、親が子ども対して教育の機会を与えてくれるんだろうかとか、肌感覚を教えていただければと思います。

宮田拓弥氏(以下、宮田):ありがとうございます。もろ吉川さんかなと思うので。

起業家の親から受ける影響

吉川欣也氏(以下、吉川):(それは)難しくて。ただ、子どもたちは、「アンドロイドを作ってるお父さんはあの人」「iPadを作ってるお父さんはあの人」みたいな感じで作っている人の顔が見えるので、子どもたちはそれで十分イメージが湧くと思います。

当然それぞれの子どもたちもいるので、どういう教育を受けているかというと、子どもたちはバカじゃないので、すごく刺激を受けていると思います。

スティーブ・ジョブズみたいな人間がいて、そういう本が学校のライブラリーに置いてあるんですね。エジソンの横にスティーブ・ジョブズとなってるわけですね。そういうのってけっこう重要かなと思います。

親が「起業家になれ」というのは、自分もふくめて起業家連中は言わないですね。ただ周りをみて、今できることをきっちりと教えている。今、子どもに教えるべきことを見極めてやっているというのが現状で、起業家の教育というのはないですね。

ただ、お父さんがエンジニアだと、ガンガンいろんなものが置いてあるので、そういうものを使って(子どもが)モノを作り始めているということはあります。

うちなんかもそうですけど、会社にどんどん連れてくるので、今楽器を作ってるのでそういうパーツがいっぱい転がっていて、テストマシンがガンガンあるので、(子どもに)触らせてくれるんですよね。

アッセンブル(組み立て)とかするので、一緒に親の会社に行って触れるというのは、もうテックショップとかじゃないんですよね。Googleに行っても、そういうテックショップっぽいものもあるので、子どもたちがそういうものをすぐ触れると。

中にいるエンジニアたちが「こうやって使うんだよ」「グラスってこうやってかけないと危ないよ」とか(教えてくれる)というのは、やっぱりシリコンバレーのいいところです。

日本だとお父さんの会社、お母さんの会社に行ってそういうのを触らせてもらう(機会)ってあまりないと思うんですけど、シリコンバレーは日常のようにあります。

学校のIT環境の重要性

宮田:僕も基本的にアグリーなんですけど、実際子どもを見ていて捕捉があるのが、去年くらいからほとんどの小学校にChromebookが1人1台入りまして、普通に学校の授業でみんなGoogleを使っていて、プレゼン文化なので、たぶん3年生くらいからパワポを作っています。

さらに驚くのが、みんな授業中お互いGoogleで会話をしているから、家に帰って何してるかと思ったら、自分のパワポを作っている延長線上でいきなり3年生同士がハングアウトし始めて、そこでグループチャットしてみんなでパワポ作るみたいな。

すごくベタですけど、学校にIT環境がしっかりあって、「クラウドとか当たり前だよね」っていうのはすごく大事だなと思います。

自分の子どもを見ていても僕の仕事のスタイルと同じくらいのことを4年生で普通に宿題でやっているので、それは末恐ろしいというか……けっこう環境が大事だなと思いました。

吉川:9歳でレジュメを書く練習をしてます。

(会場笑)

吉川:9歳で「(先生が)レジュメ持ってきなさい」と。どうやって書くんだと思いましたが、ちゃんと書いてました。びっくりしました。

宮田:ちょっと話はそれるんですけど、昨日見ていておもしろいなと思ったのが、日本でBtoBファイナンス、CtoCで個人ローンってあまり流行っていないと思うんですけど。

昨日か一昨日出てきたサービスで、高校生が自分のレジュメで個別でone to oneでマイクロ奨学金を受けるというサービスが今伸びていて、それなんかまさにレジュメを書けないと、高校生が自分の奨学金を人からもらうなんかできないわけで、自分というのをすごく確立させられるというのはけっこう違うかなと思います。

2つ目の質問に、どうやったら日本もそういうふうになっていけるかというのがあったので、青柳さんは教育についてコメントとかありますか?

シリコンバレーで子をもつ親の悩み

青柳直樹氏(以下、青柳):私は子どもが小さすぎるんですけれども。アメリカだと子どもにしてあげるのって高校までで、大学以降って基本お金も払わないし、勝手にやれっていう感覚がすごく強い。

シリコンバレーのお金持ちでできるのは、いい学区を選んで最後パロアルトハイスクールでも行かせて……開成高校みたいなものだと思いますけど。

その中で大成功するやつって、当然投資銀行に行くやつじゃなくて、在学中に起業して仲間を見つけてっていう環境を日常のものにしていくというのが彼らが信じていること。

僕の周りのベンチャーキャピタリストと起業家の人たちは、「エンジニアになれ」とか「起業家になれ」って言ってない気がしますね。

「俺はこの環境だけ与えたから、お前勝手にしろ」みたいな。そういう感覚がすごく強いなと思います。

宮田:たしかに環境というのはひとつ大きいのかなと思います。

吉川:あともうひとつ! シリコンバレーで親が悩んでるのは、自分と同じ給料を子どもたちが稼げるかというのをみんな悩んでいるんですね。たぶん無理じゃねぇかと。

(会場笑)

そこが今のシリコンバレーの親の悩みだと思います。自分たちと同じ競争を、自分たちの子どもたちはできるのかというので相当みんな悩んでいるし、稼げねぇだろうというのはありますね。

よくそういうのが雑誌とか新聞にも出てるんですけど、答えは出てないですね。

宮田:なるほど。あと3分くらいなので、あと1問くらいいけると思うんですけど、もしご質問があれば。

日本の給与水準が上がらないネック

質問者:日本の企業がシリコンバレー水準、またはそれ以上の給与水準になれない一番のネックは何ですかね?

宮田:青柳さんですかね。

青柳:ネックはなくなった気がしていて、一部ファイナンスがつくようになったので、給与水準を上げて、シリコンバレーだと家賃が倍なのであっちで1500万もらっているエンジニアって日本でいうと900万とかで同じ生活ができると思うんですよね。

僕らは上場企業なのでやられたら一番嫌ですけど、10億20億ファイナンスした会社のCEOはどうせ上場したら給与上げなきゃいけないんだから、最初から上げて、アドオンでストックオプションもあるんだから、そうしたら無敵の戦略が取れる。

一番特徴的なのは、ベンチャーキャピタルのお金を絶対返さなきゃいけない、「これは悪魔の契約だ」みたいな感じで高宮(慎一)さんのブログが上がってましたけど、シリコンバレーにはああいう考え方はないですね!

(会場笑)

「これはあんたが取ったリスクでしょ」という形で、「俺はバーンレートを上げてフォーカスして突っ込むんだ」みたいなことを許容する感覚があるので。言い方要注意ですけど、確信犯でやっちゃえばいいんじゃないかなと(笑)。

2年前までは無理だったと思うんですけど、今そういう方策取れるので、一番自分たちのレバレッジが効く。

上場しちゃってる会社だとさすがに開示もあってやりにくいので、やっちゃえばいいのになと思っています。

宮田:なるほど。大丈夫ですか?

日本の会社がシリコンバレーでチームをつくるには

質問者:よろしくお願いします。シリコンバレーがかっこいいとかいうのは置いといて、アメリカのマーケットは大きいので、僕らは日本とアジアで事業をやっているんですけど、やっぱりアメリカ市場にいきたいんですよ。

カルチャーコンテクストも違う日本のサービスを提供している会社がシリコンバレーでどうやってチームを立ち上げられるかというのがすごく悩んでいるところで。

スクラッチでチームがつくれるのか、もしくは日本とアメリカでは全然コンテクストが違うからアメリカ向けのサービスをまたゼロベースでつくるか、M&Aするかとかというのは、どうなんですかね? たぶん青柳さんとかはいろんなチャレンジされているので……。

宮田:ドンピシャで青柳さんの質問なんですけど。

青柳:つくれると思います。単純につくり方を知ればいいだけかなと思います。

宮田:最初は少し時間かかったんじゃないですか? 1年とか2年とか。

青柳:そうですね。最初の雇用制度とか、日本だと就業規則とかいろんなもののパッケージが違うので、一番の障壁は日本と違う制度を入れるよということを、日本のマネジメントが理解して受け入れることかなと思って。

「これだとじゃあ中国オフィスつくったときどうすんだ!?」とか、全部グローバルの画一のものにしようとするとハマるので。

本当の障壁は、アメリカで同じ能力の人に給与を2倍払わなくてはいけないということとかをどう役員に説明しようかみたいな。そういうものをまず取っ払えるか、うちの会社の場合それに1年はかかりました。

その先のところは先ほど申し上げたように、現地に行けばやったことある人とか、ツールというのがそろっていて。

最近日本でもスマートニュースさんもそうだし、2回目の起業をあっちでやっている会社とかトレジャーデータだって日本人がやってるし、エニーパークだってやってるし、ほとんど日本人がいない会社になってるかなと思っているので。

日本のマネジメントが違う制度を許容できれば、やる方法は増えていて、やってる人たちも増えていると思います。

宮田:ありがとうございます。ちょうど時間切れということで。今日はシリコンバレーというテーマで、実際に活動されている方々から、ビジネスとか起業とか投資とか、あと教育も含めてけっこうおもしろいディスカッションができたかなと思います。

最後にみなさんに拍手をお願いします。

(会場拍手)

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