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平将明のCafé Staトーク ゲスト:田中良和さん(全2記事)

変化の"さざ波"を見つけ出せ! GREE田中良和氏が語る、イノベーションの起こし方

「変化を創りだすことは難しいが、変化が起こしたさざ波を見つけ出すことなら誰でも出来る」。新卒入社からわずか10ヶ月で退社したグリー田中社長と自民党・平議員の両氏が、既存のやり方にとらわれず、これからの日本で力強く生き残る術を語ります。

趣味で始めたサイトが、口コミで会員数10万人超え

:田中さんは、創業して10年ですか?

田中:10年です。

:10年でこれだけのグローバルな企業を作られたということですが、お話を聞くと就職にも失敗し、もともと財産を引き継いだわけでもなさそうですし、結構大変だったと思うんです。

まずやり始めて……まあ趣味で始めても何処かで会社にして人を雇って、という話になると思いますし、最初のころはいろいろ大変だったと思います。その辺の話と、何が転機で一人で始めた企業が何千人って雇用を世界で生むような企業になったのか、みたいなところを。

田中:もともと楽天で働いている中で、起業しようというよりは趣味でサイトを家で作ってたんですけど、そしたら口コミで10万人ぐらいが使うサイトになったんですね。

その時の問題はサーバーで、今はクラウドとかいっぱいあるんですけど、当時はなにもなくて、10万円ぐらいのサーバーを約20台、計200万円ぐらい使って買って、月1~2万円かかる経費を×20台分、自分で払ってたんですね。20代半ばですから給料も手取り20万円とか25万円とかの時に。で、家賃7万円ぐらいの所に住んでたんです。それでサーバー代が10万20万……ですから、どう考えても生活が成り立ってないんですよね。

:課金はどういう仕組みだったんですか?

田中:当時は単なる趣味だったので(課金制にはしていませんでした)。だからすごい勢いで預金残高が減っていくんですよ。ただお金使ってるだけなんで。お金が無くて、カードでキャッシングしながら、ボーナス50万ぐらい入って返済するっていう生活をずっとやってまして。このままだと生活が成り立たないという現実に25、6歳の時気が付きました。

:意外と遅いですね(笑)。

頑張っただけでうまくいくなら、みんな成功している

田中:(笑)。楽しいけどそれどころじゃない、ってことがわかって、会社にするか(サービスを)止めるかしかないなと思ったんですけど、ここまで大きくした挙句お金がないから止めますっていうのは、あまりにも人生さみしいなと思ったんで、ここは会社にしようか、という意味で会社にしたんです。ただ当たり前ですけど、会社にしたからすぐにお金が入るとか、うまくいくとか、あるわけないんですよね。

:そうですね。

田中:ということに会社を始めてから気が付きまして。

:そうですね(笑)。

田中:会社ってがんばったらすぐうまくいくかな、と思ってたんですけど、そんなわけない。だったらみんな成功してるわ、ということに気付いて、最初は少人数でこのサービス続けていけばいいなと思ってたんですけど、そんなに甘くないなと。そこでベンチャーキャピタルさんから1億円ぐらい投資してもらって。

:よくベンチャーキャピタルも1億出しましたね。何を評価したんでしょう、会員数の多さですかね?

田中:自分で言うのもなんですけど、その時何人かのチームで会社作ったんですけど、いっても夜中に数時間やっているだけで数十万人集まるサイトを作れる人たちって、世の中にそう何人もいるわけじゃないと思うんですよね。そういう実績があったんで、投資してくれた。

:うちのワーキンググループで議論すると、本当にベンチャーキャピタル使えねえなーリスク取らねーなーという話を今でも聞くんですけど、それは十年前ですよね? ベンチャーキャピタルよく出したなって感じですね。

田中:僕も、カードのキャッシングが100万200万だったらすごく頑張れば返せると思いますけど、何億っていうのは究極に返せなくなっちゃうんで、個人保証するような借金だけはするのやめようと思いましたね。

:ベンチャーキャピタルって銀行系の人が多くて、間接金融しかやったことないから、ベンチャーキャピタルなのに保証取る、みたいなそういう人いるでしょ? 社長も保証取られませんでした?

田中:そういう人も来たんで、猛烈に断りました。それなら銀行から借りてるよって。良い時は株で持っていくわけだし、悪い時だけ金返してくれって言われたら、そんなおいしい職業ないよって話になりますよね。

変化の"さざ波"に最初に乗り、突っ込む

:そういう会社を立ち上げて、どこが転機で利益がガッと出るようになるんですか?

田中:最初会社を作ったのは良いんですが、当時ミクシィさんがすごい流行ってまして、三年ぐらいグリーも成長してはいたんですけど、比較論的には全く成長していなかったので、どうしようかなと思って。

そこで考え方を切り変えて、PCのサービスうまくいかないから、モバイルに特化して、これからスマートフォンの時代がくるかもしれないし、って始めたのが6、7年ぐらい前で。その頃逆に、PCでうまくいってなかったからこそ、これはモバイルでやっていくしかないなと、全部オールインで出来たのがよかったですね。

:6年前でスマホだってイメージですか。私だってスマホに替えたの去年ぐらいなんですけど。

田中:まさにモバイルの時代ですよね。

:10年前にシャープのザウルスっていうのがあって、それをもっと標準化した世界に通用するようにしたコンピューター端末があってですね。私の友人がそこのブラウザソフトの世界標準を作るんだと言って、かなり有名どころも出資して私も投資したんですけど、やっぱり時代が早くてですね、今はもう無くなっちゃいましたよね。

今思うと、windowsなんかも入って、あれがスマホの原型だったなと思うんですけど。でも時代がどのタイミングで来るかっていうのを見極めないと、スマートフォンが来るにしてもそれが3年後なのか5年後なのか来年なのかで、投資の仕方も違うし、資金繰りがつながるかどうかもありますよね。それは、その時点でスマホは間違いないと、数年後に来ると。

田中:おもしろいのが、変化を誰よりも早く一番に発見するのは難しいけど、変化のさざ波を起きているものを誰よりも早く感じるのは出来るって話がありまして。何が起きそうかなと思いつくのは難しいんだけど、起き始めたことを起きてるって感じ取ることは出来るっていうのはあると思います。

僕がモバイルいいなって思ったころは、ちょうど3.1Gが始まって、いわゆるインターネットでいうとIDSNからADSNに変わった時代と同じなんですよ。そこでインターネットが爆発的に普及するんですね。

:ソフトバンクがタダで端末配ってたあの時ですね。

田中:そうです。(通信速度が)1Mとか出るようになって、インターネットが低額化すると大ブレイクするっていうのが2000年の学びなわけですよね。ちょうど2006、7年に3.50が現れて、パケット定額が現れて、インターネットのモバイル化が来るっていう、7年前に起こったことがもう一度起こったわけです。

という風に見てやっただけで、めちゃくちゃ(すごい事)思いついたというよりは、前にも(この流れ)あったなと。しかもおもしろいのが、「こういうこと起こります」っていうのが総務省の資料に出ているんですよ。

:出ているんですか!

田中:これからはこうですって書いてあるんですよ。そうだよなって僕も思ったんですけど。意外にそうであることが明確なんだけど、多くの人が本当にそうなのかな、例えば家庭用ゲーム機は家庭用ゲーム機であるのに、スマートフォンのゲームが大ブレイクするのか? とか。

考えたら5年前でもわかるじゃないですか、iPhone見たら。そこで実際ゲーム作らなきゃって思う人は少ないわけですよね。そういう意味ではさざ波を感じて、そこに突っ込んでいくというのはありますね。

くじけない術を教育で教えるべき

:そこで実行する力が、さっきの話じゃないですけど、実行できるかというところも大きくなりますね。

田中:あと人にいろいろ否定されても、めげずに頑張るっていうことが大事だと思ってまして。

:そうなんですよ、そのめげずに頑張るというのが一番大事で。さっきも会社作ったら頑張れば儲かるって言ってましたけど、世の中ってそんなに甘くなくて、頑張ったって、たいていうまくいかないんですよ。学校って努力すれば必ず報われますよって教えるじゃないですか。

田中:そうなんです。

:大事なのは、努力しても報われません、基本は。そこでくじけないっていうことを教えなきゃいけないのに、そのずっと手前で、頑張れば夢は叶うって。叶わないって、だってみんな夢叶ったら大変なことになっちゃう。でもそこであきらめちゃいけないとか、頑張り続けるとか、気分転換をするとか。そこが教育の本質なのに、そこまで行かないんですよね。

否定され続けても曲げない強さ

田中:僕もよく言うのは、仮にすごく高くて遅くてまずいレストランがあったら、その人がどんなに努力しても行かないですよね。だってまずいし。でも自分がレストランを始めてみようと思うと、なんでこんなに頑張ってるのに客が入ってこないんだと思ってしまうんですね。自分が作ってる時にはなんで来ないんだ、自分の時は行かないという矛盾があるなと思いますね。

:よく市場主義ということに対して、市場原理主義という言い方をするけど、要は自分の評価は自分でしないで、それは他人がするという当たり前の仕組みだと思うんです。そこを間違えてるなと言う気がしますよね。

田中:僕がお伝えしたいと思うのは、変な話ですが、僕は失敗というか否定の連続……ほとんど褒められたことがないというのがありまして。インターネットの仕事をしようと思った1990年代中盤は、インターネットの仕事をしたいと言うと、「ああ、ワードとかエクセルが好きなのね」って言われました。

:(笑)。

田中:そこ、全然関係ないんですけどね(笑)。次にインターネットの時代が来るって言ったら、日本はキーボード文化がないから、タイプライターが打てないからネットが流行ることはない、と言われ。楽天に入ろうと思ったら、クレジット番号はインターネットに入れたら危ないから、eコマースなんか絶対に普及しないと言われ。

ケータイのコミュニティーサイト始めたら、コミュニティーなんか儲からないと言われ。ケータイやろうとしたら、着メロのビジネスをやるのかと、今さらそんなの流行らないと言われ。で、ケータイのゲーム作り始めたら、みんなは検索サイト作ってるのに、お前はゲーム作ってるんだと言われ。

:なるほど。

田中:良いことはまるでない、何か始めると「それはもう終わってるでしょ」とか「なんでやってるの」とか言われることばっかりで。それでも続けられるということが重要なんですよね。

:その強さですよね。ある意味鈍感力じゃないけど、そこが成功とそれじゃないところの分かれ道である気がします。

「創造すること」に価値を見出す文化を

:これからの日本は資源もないし、かといってどんどん活性化していかないと社会保障も維持できないという状況なので、我々は起業家を増やしたいなと、会社を起こせる人を増やしたいなという風に思っているんです。

一方で、子供たちに将来の夢は? と聞くと野球選手、サッカー選手、パティシエとか、キャバクラ嬢とかいろいろ出てくるんだけど、全然起業家と政治家が出てこないわけですよ。これは非常にまずいなと。政治も目指す人が少ないと、能力や機能は上がっていかないんですよね。起業家も少ないんだけど、それをどう解消していけばいいと思いますか?

田中:起業というか、何かを創造している事を賞賛する文化にしていくといいのかな。別にお金がもらえるから頑張るというよりは、みんながそれが良いと思うから頑張るという人が多いと思うので。そういったことを貶さずに褒めていく、という文化にしていくことが、一番重要かなと思いますね。

:本当に政治家や起業家というのは、褒められることないですもんね。うちの子供は、パパが政治家って隠してますからね。

田中:(笑)。

:そういうの良くないですよね。

田中:褒めることもないですけど、貶す必要もないですよね。

:貶すことないですよね。政治家やってますと言うと、変わってるねって言われるんですよ。カルチャーを変えなくちゃいけないんですね。田中さんに頑張ってもらって、かっこ良くあって、今のこの雰囲気のまんまね。田中さんも出来るんだから、言い方悪いですけど、俺も頑張んなきゃって(笑)。

田中:もちろんです。

:親しみやすさをね。あんまり、この人の真似は出来ないって雰囲気じゃなくてね。第2第3の田中さんが出来て、第2第3のグリーが出来たら良いなという風に思います。

いよいよ自民党も、6月に政府の成長戦略が改定するので、それに向けて起業大国先進グループ、私が主査をしているところで、起業支援というのもおこがましいんですけど、そういう方々のやる気を出させる、足を引っ張らない、ということになると思うんですが、そのような政策を出していきたいと思います。

出来れば田中さんには、子供たちに「起業って素晴らしいよ」とか「怖くないよ」とか「挫折しても立ち直れるんだよ」とか、そういうところを子供たちに普及するところを協力していただきたいと思います。グリーはコンピュータープログラミングの……。

田中:講座を、子供たちに。

:やってますよね。そこを協力していただきたいと思います。何か言い残したことはございますか?

田中:大丈夫です(笑)。

:大丈夫ですか。本当にお忙しいところ、わざわざおいで頂いてありがとうございました。

田中:ありがとうございます。

:これからもみんなの目標になっていけるように。

田中:頑張ります。

:期待しておりますので、頑張っていただきたいと思います。では今日のゲストはグリーの田中社長でした。ありがとうございました。

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