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カフェスタ189@女性局~児童虐待問題を考える第4回(全2記事)

家庭にどこまで踏み込める? 児童福祉司のジレンマ

自民党女性局がカフェスタからお届けする生放送番組「カフェスタ 189@女性局」。第4回目となる今回は、内科医として働く傍ら、認定NPO法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワークで理事長を務める山田不二子氏がゲストに登場しました。山田氏は2015年7月1日から全国で運用がスタートした、児童相談所全国共通ダイヤル「189」の課題として、相談窓口のシステムと児童福祉司が抱えるジレンマについて語りました。

内科医・山田不二子氏の児童虐待への取り組み

三原じゅん子氏(以下、三原): 皆さま、こんばんは。「カフェスタ189@女性局」の時間となりました。本日は、山田不二子先生にゲストに来ていただきまして、お話をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

この「カフェスタ189@女性局」はですね、全国共通ダイヤルの189番ができたことをたくさんの皆さまに知っていただきたいということで全5回でお送りさせていただいて、今日は4回目でございます。

1回目は、児童虐待に関して法改正等々に始めから携わっていらっしゃる馳浩先生をゲストに、2回目は現職の国会議員であり今まさに子育て中のお母さんである大沼みずほ先生をお招きしました。

そして前回3回目は元埼玉県の教育委委員長でいらっしゃった、私が子供のことの専門家として非常に信頼しております松居和先生をお招きしてお送りしてきまして、今日は4回目ということで山田不二子先生に来ていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、山田不二子先生のご紹介をさせていただきたいと思います。内科医でいらっしゃって、そしてさまざまな子供の虐待等々のネットワークの理事長をしておられます。

児童虐待の法律が施行される前から、児童虐待を防ぐという取り組みを積極的にしてこられた先生でございます。先生どうかよろしくお願いいたします。

山田不二子氏(以下、山田):よろしくお願いします。

三原:今年の2月、子供のためのワン・ストップ・センター「子供の権利擁護センターかながわ」を開所なさったと。これは、横浜ですか?

山田:いえ、横浜のような都会ではなくて伊勢原というところです。

三原:そうですか。先生がそこにお住まいで。

山田:そうですね、住まっているということもありますが、子供の虐待ネットワークの事務局があるところということで伊勢原で開設しました。

三原:なるほど、そうでしたか。これはたぶん、そんなにあることではない、先生が初めてですよね。すごい取り組みだと思うんですよね、ワン・ストップ・センターというのは。これはさすがに、「もうやらなきゃいかんぞ」ということで今年の2月に開所されたということですか。

山田:そうですね。

三原:全国でもそんなに例がないですか。

山田:例えば、児童相談所でも子供の聞き取りはやってますし、東京にある社会福祉法人でカリヨン子供福祉センターというところでも面接をしていらっしゃるんですね。ただ、ここの特徴は子供からの聞き取りの面接と、それから診察、全身の診察が一箇所でできるということです。

なので、お子さんにそこに来ていただけば、その子が受けた被害内容もみんなで聞けるし、みんなでって別の部屋で聞くんですけども、そして診察も一箇所で受けられるということで、文字通りのワン・ストップ・センターということでは全国初となります。

三原:なるほど。またその辺も後で詳しくお話を伺ってみたいと思いますが、まずはこの189ができたということはそれだけ児童虐待が増え続けていることによってだと思うのですが、この189ができたことについては先生はどう思われますか。

児童相談所全国相談所ダイヤル「189」の課題

山田:3桁化していただきたいというのは、亡くなられた高橋重弘先生も20年前近くからおっしゃっていて、その夢が叶ったということでは私たちは喜んでいます。

ただ、ちょっと苦言を呈する形になるかもしれませんが、元々あった0570-064-000の10桁を3桁にしたというシステムです。

実際私も何度かかけてみましたけれども、最寄りのそこを所轄している児童相談所までつながるまでに、60秒とか65秒とかかかりますし、試しに郵便番号がわからないという前提でずっとアナウンスを聞いていくと2分近くかかったりしました。

三原:要は、つながったらまず郵便番号を入れていくとか、そういう作業が必要で、だから逆に言えば最寄りの児童相談所につながるんだけれども、それまでの時間がかかりすぎる、手間がかかりすぎるぞというのが、先生の……。

山田:問題だと思うんですね。それと、私は伊勢原というとことでNPOをやっているので、伊勢原市の要保護児童対策地域評議会、長い名前ですけど、要は虐待防止ネットワークですね。

それに参加していると、児童相談所の職員さんたちは要保護児童対策地域評議会のメンバーの方は189を使わないでくださいね、直接、伊勢原は平塚児童相談所というところが所轄なんですけども、平塚児童相談所の番号を使って、直接お電話下さいとおっしゃっています。

結局ではなんのために189をつくったのかというのが、ちょっと最初の目的とずれてはいないかなということを感じるんですね。

三原:なるほど。正直あんまりよくご存知じゃなくて、もしかしたら虐待かもしれないと思いながらも何にも私たち手助けできないの、と思ってらっしゃる方にとってはこの189というのは非常に使い勝手がいいと思うんです。

しかし、やはり専門家の方がお考えになることと、そこがちょっとわかれちゃっているということですかね。

山田:一般市民の方は189を使ってください。でも、学校の先生とか幼稚園、保育所の先生とかは通告は直接児童相談所とか市区町村にしてくださいとなっていて、せっかくつくったのに有効活用されていないんじゃないかと懸念は感じています。

三原:あとは189だと、通報した方がどなただか匿名にできる、内緒にしてもらえるということもあるじゃないですか。そういうところももしかしたら使いやすいということがあるのかもしれないですね。

山田:それはもちろん、189は匿名であろうと匿名でなかろうとぜひ使っていってほしいんですけれども、今現在非常に使いにくいシステムになってしまっているということなので、そこは改善してほしいです。

三原:そうですね。本来、児童相談所に全部いくわけですよね、189は。

山田:189を使うと、児童相談所につながります。

三原:それで、緊急性があるだとか重症生があるということであれば、児童相談所の方々がもちろんそこへ、子供のところへ伺うとかそういう形をとるわけですよね。

家庭訪問をしたときに、そんなに緊急性がないなとか、そういうことのときには本来でしたら市区町村、市町村が担当して、緊急性があって重篤なところだけ児童相談所の専門の方にお願いするというのが、役割分担としてベストだと思っているんですけども。

山田:おっしゃるとおりです。

三原:そこがまだ189の中ではごちゃごちゃになっちゃってるよということも先生のアドバイスですよね。

山田:そうです。例えば、泣き声通告でどこに電話したらわからないから189にかけましたとなると、先ほど申し上げたとおり、189は児童相談所につながるので、赤ちゃんが泣いていて心配ですという通告も児童相談所にいくわけです。

それがいけないとは言わないのですが、児童相談所はもっと重篤なケース、子供たちを救うことにできるだけ専念していただきたいわけです。

例えば怪我をしている、性虐待を受けている子供たちとか、もう本当に病気を放ったらかしにされている子供たち、ごはんも食べさせてもらえなくて命も危ないようなネグレクトを受けている子供たち、そういう子供たちです。

三原:そうなんですよね。

山田:そうすると、重症なものは児童相談所へ、出来るだけ優しく保健師さんとかが入っていくようなケースは市区町村が担当したほうがいいわけです。そこを振り分けたほうがいいと思うんです。

189の窓口システムの問題点

三原:それはこれから先の非常に課題だと思いますので、その辺もぜひこれからご指導いただきながら、良くしていかなければならないんですが。

他にもですね、先生が変えていかなければいけない、非常に問題だと思われていることがたくさんあるということで、ここで先生にお話をしていただきたいと思います。

山田:今申し上げた189ですけども、ちょっと先ほどのものに補足すると、1つ大きな問題は重症ケースが市区町村に通告が行ったり、市区町村がファーストタッチをしたほうがいいだろうというケースが児童相談所に通告が行ったりしている。通告者はわからないわけですから、とりあえずどちらかにかける。

だけど、受けたほうからするとこれは児童相談所が受けるより市町村だよな、とか市町村からしたらこれは児童相談所のケースだよなと思っても、来てしまったら受理したところが調査をするというのが今の法体系になっているわけです。

そうすると、ちょっと荷の重いところを市町村が担当したり、身近なところで素早く行った方がいいケースを児童相談所が担当したりということになってしまうわけです。

三原:本来でしたら、本当の窓口みたいなところがあって、そこを振り分けるその段階が1つ必要かもしれないということですね。

山田:そういうことです。ですから、せっかく189をつくったのであれば、今は市区町村と児童相談所に2本立てで通告先が設定されていますけども、ここを一本化するべきだと思います。

そこに専門のトリアージと言いますけども、重症度によってどこが調査するのかがいいのかを振り分ける専門家の児童福祉司さんを置く。

そして、その人たちが適切な機関に情報を提供して、そこが最初の初動の調査をする。そういうふうにすれば、それぞれが自分の機能と持ち味を活かした調査になると思うんですね。

児童福祉司が抱えるジレンマとは

もう1つの問題は、例えば、児童福祉司さんは今、地域児童福祉司という制度になっています。すべての児童相談所ではないんですけど。

そうすると担当の児童福祉司さんは、この人虐待をしたよな、だから子供を守るために少し対立的にでも頑張んなきゃいけないんだけど、この後この子をこのお家に返すとしたときにそのような対応ができないのです。

例えば一時保護をしました、将来もしかしたら施設に入ったり、里親さんにもらわれたりするかもしらないけど、将来的にこのお父さんお母さんに返したいなと思ったときに、そのお父さんお母さんとケンカ腰になってしまったら、その後のケアができないですよね。

どうしても先のことまで考えてしまうので、本来であればもっと毅然とした対応をすべきだと思いつつも、そこまで踏み込めないというすごくジレンマを今の児童福祉司さんたちは抱えているわけです。

昔はスーパーマンみたいな児童福祉司さんがいらして、ここをちゃんとやっていたんですよ。両方。調査もできます。対立的な対応、親との対峙もできます、かつ支援もできます。というスーパーマンみたいな方がいらしたんです。

しかし、今なかなかターンオーバーも早いので、そこまで育ちきらない、とすれば機能を分けて、子供の調査と介入を中心にやるチームとそれから支援に特化したチームに分ける。

あるいは、児童相談所自体が、ここの児童相談所が調査をして、周りが支援をしましょうとか工夫をしてここの役割を分けたほうがもっと機能的にかつ確実に子供を守れるだろうとことです。

ですから、調査・介入をする部署と支援をするチームを分けたらどうかというのが1つご提案なんです。

ただ、そのためにはもう1つ克服しなければならない課題があって、先ほども言いましたけども3、4年で児童福祉司さんが変わってしまうんですね。専門性が育っていない。

私は医者ですけども、医者としての自負があってこの仕事をやっているわけですよね、でも責められるばっかりで、その仕事に誇りをもてない現状になってしまっていると思うんですね。

そのためにはきちんとした専門性を付与してあげて、その生きがいというか仕事のやりがいを感じてもらうためには、こういった難しい、子供の命に関わるお仕事をしている人たちには専門職として国家資格を提供していくということが非常に重要です。

専門性の担保の意味でも、やりがいの意味でも国家資格化をしていただけないかなと思いますね。

三原:まず児童相談所の数がですね、208ですよね。これがまず少なすぎるというとことで、みなさんがお一人おひとりが抱える子供さんの数が100人を超える方もいらっしゃるなんていうことを聞けば、もうちょっとそりゃ難しいよなと思わざるを得ない。

それくらい人材不足ということは言わざるを得ないですよね。その人数もそうですし、質という意味でも専門的にもっと資格を付与していただいて、ここに特化して頑張っていただきたいということですね。

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