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パネルディスカッション(全3記事)

「書類を作ってるだけの司法書士は職を失う」 IT化が進んでもなくならない法律家の仕事とは

誰もが法制度を利用できる社会を目指して活動するNicogoryが主催したイベントに弁護士法人Next・多田猛氏、司法書士法人名南経営・荻野恭弘氏、行政書士事務所Necogory・山内聡氏、北海道大学大学院・情報科学研究科教授の荒木健治氏が登壇。「人工知能で法律専門家の仕事は奪われるか」をテーマにIT時代に法律の専門家に求められる能力・姿勢について意見が交わされました。本パートでは、司法書士の荻野氏が人工知能の登場でなくなる仕事がある一方で増える仕事もあるとし、そのニーズを捉えていくことが法律家にとって重要になると語りました。

書類作成を主とした司法書士は仕事がなくなる

司会:続きまして、司法書士の観点から(「人工知能によって法律専門家の仕事が奪われるのか」について)荻野先生がどのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

荻野恭弘氏(以下、荻野):先ほどの荒木先生のお話を聞いて、「そうなんだ……」と。実感していることを、さらに再認識させていただいておりますが。

弁護士が、例えば「10」聞いて1つの結果を出すと。司法書士だと、本当に簡単な仕事もありまして、「2」聞いて1つの仕事を。「2」ヒアリングして、1つの結果を出すと。あんまり少なすぎると、多分すぐ。今でも、自動化されちゃいますし、あんまり多すぎると、なかなか難しくて、とんちんかんなほうにいってしまうかもしれない。

適度なIT化、ロボット化が一番起こりやすいのが、司法書士の仕事じゃないかと。「5」くらいで1つの仕事っていうのをね。登記とか、そういった書類作成、そういうことを主としている我々司法書士の方々は、恐らく仕事がなくなる。

これは、旧来から言われていることでございますので、驚くに値しないのではないかと。実際、そういう現象も起きています。そんな中で、我々どういうふうになっていくのかというところなんですが。

IT化でもなくならない仕事とは

荻野:私のほうで、2,3年前から「頭、おかしいんじゃないか?」と言われるくらい変わったことをいくつかやっておりますけれども。

いろいろなビジネスをやっているんですが、1つ実例として挙げさせていただくと、高齢独居の方々が老人ホームに入る時の身元引き受け。「こんなのを法律家がやることはおかしいんじゃないの?」と社内の中でもいろいろありましたが、「とりあえずやってみようよ」と。別会社を作ってやっています。

そういうものをやってみますと、見えてきますのは、確実にIT化によって、なくなりそうにない、そういう仕事があるんじゃないかと。

法律業そのものって、あんまり具体的に言うと、時間なくなっちゃいますんで言いませんが、今後日本が高齢化を向かえ、超高齢社会の本番に突入するわけでございますけど、そういった社会情勢があって、国家戦略としてそういう仕事が必要だと。

そういった時に、「司法書士がやるべきは何か?」財産管理とか、身元引き受けとかをやってみると、見えてくるのが新しい分野。

その時に、必要なのは、今までのスキルじゃダメですね。確実に、地域の医療・介護セクターの方々、社会福祉セクターの方々とつながる必要が出てきます。

しかも、依頼者である高齢者の状況もモニタリングしている。さらに、おかしな動きが出てきた時に、いち早くそれを分析されて我々のところにくるような、こんな流れが必要なんじゃないかと思いますし、今後作っていきたいな、というふうに思っていますね。

そうすると、最終的に、成年後見とか、遺言とか、法的業務、書類作成もかかるかもしれませんが、そういう業務にもつながってくる。

かなり前のほうにいきますと、司法書士業務、IT化によって合理化されちゃう、そこの分野はなくなります。

人工知能によって空いた時間で新しい仕事をつくる

荻野:しかし、我々がテーマとして持つのは、お客様の権利の保護だというふうに考えれば、じゃあ権利が。もっと言うと、高齢化社会で一番怖いのは、侵害されるんじゃなくて、行使できなくなっちゃうということなんですね。

日本には、生命保険の放置ってどれだけあるか。お世話した方がいなくなっちゃったとなると未請求で、100何歳になりますと、全部国にいっちゃうんですね。

自分が払い込んだ保険金を、請求する間もなく、国に全部持っていかれちゃうと。こういうのもきちんと例えば我々が介護することによって、ちゃんと請求して、その方のために使うとか。

高齢化していくことで、どうでもよくなっちゃう、っていう気持ちが、結構出てきまして、そういった方々の権利を我々が把握して、そして管理して、そして行使して、お客さんに帰属していく。

こういうことをきちんとできるような仕事っていうのは、まだまだある。そこは、正直言うと誰もやっていないんで。人工知能にも任せようがないですね。

我々がそういうことを持っていったから、100年も勉強して、次にまた新しいところを持っていくと。無尽蔵に仕事はあると思っていますので、そういう意味で、人工知能によって手がすいたその分、きちんと新しい分野を、顧客の権利を守るという分野に入り込めというふうに私は思っております。

私も多田先生と一緒で「減るし増える」と確実に思っています。そんな感じですね。

マイナンバー制度の導入で仕事のあり方も変わる

荻野:特に、実務の面でいいますと、例えば遺言状をパシャッと写真を撮ると、その遺言状というか、自分の最終意思を書いたものにパシャッと写真を撮ると、その写真に写った手書きの文章から、いろんなものが情報が引っ張られて、遺言状のサンプルができる。

こんなふうなものは、すぐにできるんじゃないかと。そんな話を聞いて、マイナンバーが導入されて、それを医療介護のほうに使う。きちんと管理すると、お客さんも手書きの意思がパシッと写真を撮るだけで、遺言状になったりとか。契約書になったりとか。多分すぐきちゃう。

実際、「自宅を姪っ子にあげるわ」っていうことも、マイナンバーにつながれば、姪っ子が誰かもわかりますし、自宅もどこかわかりますから、パッとサンプルができちゃう。

こんな時代がすぐ来るんじゃないかと。こういう世界に入ってきたことによって、速度があがるんじゃないかというふうに思います。

そこにつながるためのコミュニケーションを取っていく、っていうのは、司法書士さん、行政書士さん、みんなやっていかなきゃいけないし、やっていけば、仕事はまだまだあるのではないかと思っていますので。そんなことで、私の意見にさせていただきたいと思います。

新しい仕事にキャッチアップしていけるか

荻野:特に、遺言に関しましては、今日のニュースで、「遺言控除」ができるということで、またブームができましたね。その時に、我々の仕事もまだまだ増えますので。

そういった、仕事はどんどん増えていく。新しいことはどんどん出てきます。国も作っていきます。そこに、フィットしていけば、確実に仕事は増えると思っていますので。

以上で終わりました。ありがとうございます。

司会:荻野先生、ありがとうございました。IT化によって分野によってはなくなる仕事もありますが、そこで手があいた分、超高齢社会に向けての新しい分野に、また仕事が増える、というお話伺いました。

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