2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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大熊将八氏(以下、大熊):お待たせしました。初めまして。東京大学の4年生、2回目の大熊と言います。今日は何か、そうそうたるメンバーの中で呼んでいただいて、すごい恐縮してるんですけど。
3カ月間、クラウドファンディングでお金を集めまして、ありがたいことに106人のサポーターの方から、約90万5100円を集めまして、アメリカの東海岸で今起きてることを探ってこようっていうことで、行ってきました。
なんでそういうことをやろうかと思ったかなんですけども、右側は今アメリカのいわゆる新興メディアと言われるところで、最近資金調達を受けているところなんですけど、これ100万ドル以上、日本円でいうと1億円以上の投資を受けているメディア、ベンチャーがずらっとありますと。
というので、もともと僕は日本のメディア業界とかどうなっていくんだろうって考えていた中で例えば出版とか新聞とかがしんどいんじゃないかみたいなのを言われていて。
どうにかならないものかと思っていろいろ事例を見ていたら、アメリカですごい投資を受けて伸びてるところがあるっていうことで、何かそれで学べることがあるんじゃないかっていうのが、きっかけなんですけれども。
それでメディアさん自体で20社ぐらいと、個人でメディア事業をやられている方とか、向こうでメディアコンサルタントをされている方とか、大学や研究所などの教育機関とかっていうのにも行きまして。
また、新しいメディアだけじゃなくて、例えばニューヨーク・タイムズさんとかCNNさんみたいな老舗のところにもざっと回って、彼らがどういうことを考えて、新しいメディアのトレンドをウケてこれからどういうふうにメディアをやっていこうかっていうのを調べてきました。
大熊:他にはベンチャーキャピタリストさんですね。これらのメディアに、大体全部張っているベンチャーキャピタリストとかがいるんですね。日本のソフトバンクキャピタルも実は、例えばすごい有名なとこで言うと、バズフィードとかハフィントンポストのような、何百億円も投資を受けているようなところに、最初期から投資してます。
だから彼らなりのメディア業界に対する仮説があるんじゃないかと思って、そこのバイスプレジデントとかにも話を聞いてきましたっていう感じでした。
そこで感じたのが、メディアのブームなんだと思ってたんですけども、それ以上に感じたのはメディアというよりは、そこに乗っかっている、そこの流通を担ってるようなプラットフォームですね。
日本でも有名なのは、例えばTwitterとか、Facebookとか、Tumblrとかで、逆に日本で全く有名じゃないのは、例えばSnapchatとかだと思うんですけど。あとLINEのようなアプリのアメリカ版のWhatsAppとか、そこをめがけてみんな、こういうふうにニュースを求めてやってきている。
これは日々プラットフォーム上で、みんながニュースを見てる人の割合とかなんですけど。半分ぐらいの人が、日々Facebookでニュースを探してますと。
これらは西海岸、シリコンバレーの企業ばかりなんですけど、こっちのほうがむしろ盛り上がっていて。東海岸の企業がそれをどう飲まれそうになりながら、どう対応していくのかみたいな構図が結構見えたかなと思っていて。
大熊:その中で1つ、おもしろいなあと思ったのは、この分散型メディアの時代っていうことで。これは、NowThisっていう動画メディアなんですけど、それのFacebookのコンテンツなんですけど。
これを見てると、どこにもリンクが貼ってないんですね。普通は、例えばどっかの新聞社さんが、こういう記事出しましたって、そのリンクを貼るというやり方でFacebookは自分のとこに呼ぶための手段としてやってると思うんですけど。こういうところに全く、CNNさんのこれはVineかな? なんですけど、どこにもリンクが貼ってませんという感じで。
この発想は何かというと、自分のとこに呼んでくるんじゃなくて、お客さんのいるところに、こういったいろんなソーシャルのプラットフォームがあって、そこにお客さんがいると。お客さんは、ニューヨーク・タイムズとかCNNを見に来るんじゃなくて、Facebookを見に来るんだと。
そこで、そういうメディアのコンテンツがあったら見るっていうふうに、どんどんなっていっているんじゃないかというのと、実際にそれを実践していると、自分のとこに呼ばずに、そこでやっている企業やメディアがどんどん出てきていると。そういうとこに注目しまして、掘り下げていきました。
ジェフ・ジャービスさんというメディアコンサルをされている方がいて、あとニューヨーク市立大学っていうとこで、メディアで何か起業したいという学生たちに教鞭をとられている方なんですけど。彼が言うのは、自分のとこに呼んでくるんじゃなくて、ユーザーがいるんなら、そこに行けというふうな発想ですと。
大熊:それを支えているのは、どんどん動画の時代が来ているというトレンドです。今、インターネットのトラフィックの6割ぐらいが動画らしいんですけど、これが今後2018年か19年には、8割に達すると。
どんどん、今まで文章を中心に書いていたり、画像中心だったメディアも、動画をやらないといけないですと。どんどん動画が増えていくのは必然ですというところで、例えばリンク貼らずにTwitterにそのままコンテンツを出しますと。
例えば新聞記事とかを140文字だけで書こうとしても、伝えられることってすごい少ないと思うんですけど、動画なら30秒でそのまま伝えられるとか、動画を見に行くのにわざわざリンク先に飛ばないですよねって話で。
さっきの動画メディアとかが実践してるんですけれども、動画の時代っていうのも、それを後押ししてるかなというふうに思ってます。
さっきも出したんですけれども、このNowThisっていう、これが言ってるのは、ホームページとか音すら古いと。だから、あなたのいるところに見たいコンテンツが、ニュースが行くよっていうふうなことを言ってる動画メディアなんですけど。
それはもう、あらゆるソーシャルメディアのプラットフォームとか、いろんなコミュニケーションアプリ、LINEみたいなところにいきますよと。というとこで、そこのバイスプレジデントの方ですとか、実はここでは日本人のエンジニアの方とか1人働かれていて、その人と仲良くなったりして、いろいろと話を何回もお会いして聞いてきました。
ここの理念としては、新時代のCNNをつくる、CNNキラーだって言ってて。スマホ時代、ソーシャル時代のCNNになるんだっていうふうに言ってて。
大熊:おもしろいなと思ったのは本当にそのソーシャルで、どう拡散させるかが大事なので、普通のメディアさんだと、例えば政治担当とか、経済担当とか、スポーツ担当みたいなふうに割ると思うんですけど。
ここがやってるのは、例えばTwitterとFacebook担当とか、InstagramならInstagramの政治も、経済も、スポーツも見るし、みたいな人たちでやってますと。
で、ここには書いてないんですけど、先々月には月間2億回トータルで再生も達成したんですけど、おもしろいのは平均年齢が26、27歳ぐらいなんですね。彼らが言ってたのは、どんどん新しいプラットフォームが出てくると。それの読み手っていうのは、やっぱり若い人たちだと。
で、その若い人たちの気持ちを直に理解できるというのは、自分たちが若いからこそじゃないかっていうのを言ってて。すごい若い人たちでやってるっていう。
彼らがどうやって儲けてるかなんですけど、リンクを貼って自分とこのページに呼ぶわけじゃないので、そこで勝手に課金とかできないわけじゃないですか。例えばFacebookにこのコンテンツ出しますって言って、そのコンテンツ見たら、いくら払えよとかっていう決済は他人のプラットフォームで勝手にできない。
基本的にぐんぐん伸びてるネイティブ広告っていうのの、市場に合わせてるんじゃないかなと思いまして。今、2015年ですかね。あと3年後に、10億ドルぐらい大体100億ドルぐらいですから1兆円ぐらい、アメリカで増えると予測されていますと。
そこに合わせて、そういうお客さんのお金を取るんじゃなくて、プラットフォーム上で見た人向けにネイティブ動画、ネイティブ広告っていうのを売っていって、それでもうけようとしているんじゃないかなっていう感じなんです。
大熊:これは既存メディアといいますか、例えば今までお客さんからお金を取ることをでかい収益源にしていたメディアからすると、それは大変困る話なわけですよね。というのは、ニューヨーク・タイムズさんとかも、80万人ぐらいですかね、月額10ドル取るような有料課金の人がいたわけですけど。
それを全部捨てて、それぞれのFacebookだけにコンテンツ出すとか、Twitterだけにコンテンツを出すとか、Instagramだけにコンテンツを出すとすると、それ全部捨てちゃうことになるので、それはできないんですけれども。
ただ、例えばニューヨーク・タイムズも3月ぐらいにInstagramを始めましたと。なんですけど。Instagramって、そもそもリンクが張れないようになってるんですね。
これが意味するところは、Instagramでいくらフォロワーが増えて、何百回、何百万回見てても、直接そこから課金には一切つながらないんですけれども。
たださっき言ったように、お客さんがそこにいるんだから行くっていう、そこにニューヨーク・タイムズの潜在的なユーザーがいるんだから行くっていうことをまさにInstagramの立ち上げた人とお会いできたんですけど言っていて、確かになと思って。
CNNの話なんですけど。CNNのCNNマネーっていうところに行った話なんですけど、これは、実はさっきあげたNowThisですね。NowThisは、そもそもCNNキラーを謳って始めたわけなんですけれども。
そこのNowThisから逆にCNNに戻って、同じようなそういうソーシャルメディア部門を立ち上げた人がいて、それでCNNも今Instagramとかを頑張ってますということで、というようなところがありましたと。
大熊:一方で、全く自分のとこにお客さんを呼び込む取り組みがなくなったわけではなくて、これはApp Storeの6月のある日のニュースカテゴリーのランキングで、日本を見るとヤフーとかSmartNews、Gunosyとか、LINEニュースとかっていうようなキュレーションメディア。いわゆるキュレーションメディアっていうのが、上のほうに来るんですけど。
アメリカで見るとCNNが一番多くて、NYT Nowっていうやつですとか、ニューヨーク・タイムズの、これだけ読めばいいよっていうような厳選されたコンテンツとか、BBCとかテレビ系が多くて。
ニューヨーク・タイムズも確か、去年1年だけで出した、もちろんiPhone版とかBlackBerry版とかでも分けているんですけど、アプリがこんだけありますよってことで。
何が言いたいかっていうと、アプリって完全に分散型メディアの考え方と逆だと思うんです。アプリわざわざ入れてもらって、そこしか見えないアプリに来てもらうと。そういうのも、今は向こうのメディアも一生懸命やって、何とか自分のとこにも呼び込んで、そこで何とかお金を取りたいってやっているんですけれども。
例えばこのNYT Nowってやつとかは、それで月額何ドルか取る課金版でスタートしたんですけど、今年の5月に課金やめて無料版になるとかっていうことで。そこでの課金をある種、諦めたっていうことで。
アメリカで見てきて思ったのは、自分とこにお客さんを呼ぶんだっていう派と、お客さんのいるとこに行くよっていう分散型メディア派っていろいろあって。
そこのせめぎ合いが起きているのかなっていうことを特に、いわゆる課金で今まで儲けてきた課金型モデルをつくろうとしていたメディアが、そこで試行錯誤しているのかなっていうようなことを感じました。とりあえずは、以上ですかね。
佐々木俊尚氏(以下、佐々木):興味深い話、ありがとうございます。VCとかも取材してきたんだよね、ベンチャーキャピタル。
VCとかは、どういうところにものすごい今アメリカのメディアが、さっきの冒頭のグラフであったように、巨額の資金が流れ込んでいるわけなんですけど。何を期待してるのかなっていうのはどういう感じだったのでしょう?
大熊:そうですね。彼らが期待していることとしては、やっぱり全部紙からネットになりますよねっていうところで、ゲームチェンジが起こるからっていうので、張っているんですけど。ただ思ったのが、実際お会いしてバイスプレジデントの方とかと話して思ったのは、実はそこまで深い仮説があるわけじゃないんじゃないかなと思って。
佐々木:ないんですか。なるほど。
大熊:そうなんです。何となくじゃないですけど、メディアがゲームチェンジはするっていうところで彼らはメディア領域には、もう全部張ってるんですね。ハフィントンポストにも張るし、NowThisにも張るし。後は、裏のシステム側とかにも張るんですね。動画を分析する会社ですとか、マッチングする会社とか、そこにまで張っていて。
メディアっていうのが何か盛り上がるらしいっていうのを捉えていて、どこか生き残るだろうっていうことで、あらゆるところに張っているっていうような感じですね。
佐々木:だから、バズフィードがすごいとかそれだけの話ではなくて、もうメディア全体がイノベーションの時期を迎えてるので、そこに総張りして、とにかく生き残るところを全部ドカンと儲かるようにしようという、そういう発想なわけですよね。
大熊:そうだと思いますね。
佐々木:あと今、課金の話が結構おもしろかったんだけど。結局、日本はそう言いながら、有料課金モデルって結構アメリカでの成功みたいなものが報道されて、例えばウォール・ストリート・ジャーナルとかフィナンシャル・タイムズっていう経済誌で、結構課金で成功してるって話で。
なので日経は追随して、日経は40万人の有料課金会員を集めて成功だと言われ。そこに毎日、朝日、その他いろいろな新聞社も追随して。何となくみんな、囲い込みのゴール制の有料課金モデルに行きつつあるような状況っていうのは、すごく見えるんだけれど。そういう空気感はどうなんですか、アメリカではあると思う?
大熊:それで言いますと、いわゆる新興メディアみたいなところですね、ハフィントンポストとかバスフィードとかボックスメディアっていうのは、月間で何億人もユーザーをとっていますよっていうようなところっていうのは、多分あんまり課金を考えていなくて。
いわゆる、今までメーター制で何とか頑張ってきたところですね。ウォール・ストリート・ジャーナルとかFT(フィナンシャル・タイムズ)とかニューヨーク・タイムズとかっていうのは多分、僕が分散型に踏み出すんですかっていうような話をしても、いやあくまでこれはお客さんがそこにいるから行くっていうだけで、課金の終わりを意味することではない、みたいな言い方をする。
佐々木:そこはやっぱり、まだどうしていいか悩んでるみたいな雰囲気なんですね。
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