2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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吉田雄人氏(以下、吉田):柳澤さんにぜひ発言してもらいたいのは、高島市長とか私もそうですけど火を付けよう、創業支援やっていこうという感じで、いま特に福岡はすごく盛り上がっていますが、カマコンの場合はすごく自発的で、実はビジネスギラギラしていないじゃないですか。
でも結果的にはカヤックのシェアオフィスに新しいベンチャーをやろう、立ち上げましたという人がいっぱい集まってきている。これはどんな鎌倉版のエコシステムなんですかね?
柳澤大輔氏(以下、柳澤):さっきランサーズの話とかいろいろ出てきましたけど、ITのツールが出てきたので、どこでも仕事ができるようになりましたから。そのなかで鎌倉って比較的選ばれている地域なので、カヤックがどうこうというよりは地域としてのポテンシャルでそうなって、たまたま場所を提供したらそうなったということだと思います。
今日せっかく来たので、市長もいるし、聞いてみたいなと思っていることがあって。いいですか? 入っちゃって(笑)。
吉田:このへんから、流れでいきましょう(笑)。
柳澤:流れを汲んだ話なので(笑)。よくよく考えると、なぜ国が地方を活性化しようと言っているのか、どういうところに本質があるのか僕はまだ掴みきれていなくて。このまま行くと地方がダメになるから、空き家が広がってどうにかしなきゃならないっていうだけの理由なのか。
そうではなく、生物的な進化として多様性が進化だとすれば、地方が輝くというのが進化の過程として、人間として正しいというビジョンからきているものなのか、明確な答えはないんですけど。ただ、地方といっても福岡のような政令指定都市とほかの地方はだいぶ違うかもしれません。
たとえば鎌倉はベンチャーを誘致しようとすると、まずは市民の方の賛同を得るのが難しいという側面があります。それはたぶんほかの地方にも共通するのではないかと。企業誘致が税収につながるというダイレクトなイメージが湧きづらいから、結局スタートアップを集められる地域は限られているなという感覚はあります。
吉田さんにもこのあいだ本を送りましたが、『エコノミックガーデン』という、市はもっと伸びている企業をサポートするべきだという施策がアメリカなんかではもうあって。
通常日本だと随意契約できないので、必ずプロポーザル提出があってコンペで正当な手続きを取らないと発注できません。だからなのか伸びている企業なのであれば自治体が雇用を含めその企業を積極的に個別サポートしたほうが結果的にその自治体全体も潤う、という考え方はますます地方には馴染まないというか。
でもそれがもし浸透すると個性のある自治体が増えるのではと思います。そこらへんは福岡とかどうされているのかなと。吉田さんはかなりエコノミックガーデン的にしてらっしゃるじゃないですか。
吉田:すごい怒られてますけどね。めちゃくちゃ批判されますけどね。
柳澤:その2つはちょっと聞きたいなということで、2人にパスをしたいと思います。
吉田:(高島に)マイク置かないでよ、もう(笑)。
高島宗一郎氏(以下、高島):どうぞ、先にどうぞ。横須賀の取り組み、私もぜひ勉強させていただきたいのでぜひ教えてください。
(会場笑)
吉田:何この気持ち悪い上げ合い(笑)。柳澤さんから本を紹介されて、横須賀には東芝ライテックという昔は蛍光灯をつくっていた会社、いまはLEDをつくっていますけど、その本社があるんですね。そういったこともあって、横須賀市の防犯灯を全部LEDにしようと。
ESCO事業と言って、10年間契約ぐらいで事業者と契約して、導入費用を肩代わりしてもらう代わりに電気代も安くなって、全体のコストは行政も助かるという仕組みでやったんですけど。東芝製でいこうという話をしました。
360の町内会が管理している防犯灯というのはすごいたくさんあって。それを全部東芝製にしたらいろんな方から、特に新聞の方々から怒られまして。「なんでそんなことやるんだ」と。かなり辛い立場に追い込まれたりもしたんですけど。
でもやっぱり、ベンチャーだけではなくて地元で働いている人、地元で創業した企業、こういう人たちのために自治体はあるんじゃないかと私は思ってるし、そういう姿勢こそが、「じゃあ横須賀でやってみよう」と、織田信長の楽市楽座じゃないですけど、そういう気持ちになってくれるんじゃないかなと、私は『エコノミックガーデン』という本を読んで思いましたね。
高島:それは文句言われますよね、確かに。大変ですよ。ベンチャーはせっかく先進的なチャレンジをしていても信頼がまだないので、「この人が言ってること本当かな?」と。海の物とも山の物ともつかない。だから、うちの地域のベンチャーに対しては、優先的発注ができるような制度は、制度としてつくった。これ、制度としてつくらないと、ピンポイントでいくと変な話になるので。
あとは、職員は1万人以上いるのでいろんな部署があるんですよ。あるところではスタートアップって言ってるのに、別のところでは「同じだけの実績がないと公募に参入できない」とかいうのがあるんですよ。だから、「いやいやそれだったら新しいチャレンジャー入ってこれないじゃん」って。
参入のときに、「同程度の規模の実績があること」みたいなものをいま排除するように行政的にはチャレンジをしていて。これちなみに、ベンチャーサイドから聞くといい話だとなるんですけど、もう一方では地元でこれまで一生懸命、熱い日も寒い日も汗かいてきた者たちは、ぽっといま来た人たちと同じなんかいっていうご意見もあるわけですよね。
そこってやっぱり難しいところで。どちらも一理あるので。
吉田:1つの手腕ですよね。それをどうやるか。
高島:そんな高島さんから2人に逆に聞きたいこともあるんじゃないですか?
山野智久氏(以下、山野):僕1つあるんですけど。
高島:はい、どうぞ。
山野:いまのお話で、そこの地域にある、例えば福岡市だったら福岡市のベンチャー企業さんになるべくはしごをかけてあげるというのはあるんですが、一方で我々のように、外の会社だけど福岡市がより良くなるためのソリューションがある、みたいな場合はどうお考えですか?
高島:来ればいいじゃん。来ればいい。福岡のスタートアップカフェだって、福岡市民に限っているわけでは全然ないし、逆に全国からどんどん来ている。あと、この前シリコンバレー行ってきたんですよ。
あっちですごいなと思うのは、ただITが進んでいるとかいう話ではなくて、いろんな立場の人がアイデアソンみたいなことをどんどんやって、集まって話してブレストして。まだ卵にもなっていないようなアイデアを、「じゃあ一緒にチーム組んでやってみようか」みたいなノリで新しいものがどんどん生まれてくるなかで、本当にヒットするものが生まれてくる。
福岡ではいま「イノベーションスタジオ福岡」というものをつくって。これは産学官民、学生から公務員から民間の方から大企業からベンチャーから、やりたいという人がみんな入って、みんなで地域の課題や、もしくは地域の宝を探しだして、これをビジネスとしてどうソリューションできるかというところまでやるっていう。
Think&Doのところまでやるイノベーションスタジオ福岡というものができて。こういうものを福岡でもどんどん開催しているので、そういうなかにさっきおっしゃったような、まさに地域課題を見える化して、ビジネスとしてソリューションしてという人たちも入ってきてやれば、できるような仕組みをつくっています。オープンです、うちは。
吉田:じゃあそんな高島さんからご質問があれば。
高島:……まあ特に聞きたいことはないんですけど(笑)。
(会場笑)
高島:ただ、「なるほど! 福岡ってそうやってベンチャーを優遇してくれるんだ」「じゃあ高島に言えば、自分のところも行政の仕事としてやってくれるのかな」と来る方もいらっしゃるんですよね。ベンチャー応援はしているけれども、ベンチャーの皆さんも行政の仕組みや力学をぜひよく知っていただきたいというのもあるんですよね。
吉田:そのへんお二人がどのくらい把握してらっしゃるか聞いてみましょうよ。せっかくですから。じゃあ山野さん。山野さんはいろいろな辛酸をなめてきてますから。行政の付き合い方などで、「ここ困ったな」とか思うところを、個別の自治体名を出さずにお願いします。
山野:実は某Y市といろんなチャレンジをさせていただこうと思ったことがあったんですね。
吉田:ふーん。
(会場笑)
柳澤:急に挙動不審になりましたね(笑)。
高島:すごい興味ある。
山野:ただやっぱり、いまおっしゃっていた通り、いま我々30くらいの自治体様といろんな取り組みをさせていただいているんですけど、2年ぐらい前に実績がさしてないときに1歩目を踏みだそうとしたら、まず実績がないのはダメだと。
あとはプロセスですよね。要は、公募があって入札にしっかり参加して云々かんぬんといったプロセスをしっかり踏まないといけなかったりとか。それをやるにあたっても、関係各所にしっかりご挨拶を重ねて、ちゃんと物事を進めていかないといけない。行政の大事な大事なプロセスがあると。
このへんは結構衝撃的でした。民間でやっていますので。なんだこれはと。なんて合理的でないんだ、というのはちょっと思いましたけど、いまはもうそれはちょっと理解できるなと。
高島:いまやってるこのやり方より、うちのこういうソリューションのほうが絶対に成果が出ますよ、KPI上がりますよって言うかもしれないけど、自治体の担当職員の人にとってそのKPIが上がることでその人の給料が変わるわけじゃないんですよ。わかりやすく言えば。
それよりも、こんな新しいチャレンジをして万が一があったときのリスクを取るほうが、むしろマイナスなわけですよ。職員にとってね。そういうチャレンジをすることだけがその職員にとって「よし、じゃああなたのところと組んでやりましょう」というわけでもないし。
また、民間と違うのが、予算組むのが1年に1回なんですよ。3月の当初議会で、予算議会で予算を組んで、それをあとは執行していくわけですよね。そんなにいますぐ「半年後のこれをやりましょう」なんて言っても、それは時間的に無理なんですよ。
だから、もう少し先を見据えた上で、次の予算のときに、「いまのよりどういいのか?」というところもしっかり議論しないといけない。また、担当の職員からすると新しく始めるほうは簡単なんだけど、前のものをやめるというのがすごい大変で。そこのしがらみの前線にそこの職員に立っていただくというところは、なかなか新しいものに変えにくいという現場の事情なんですよね。
山野:そのリスクを回避するという考え方は、お付き合いさせていただく上で、相手あってのことですから、そこを理解するのは非常に重要だと私も学んだところではありました。
吉田:逆に、カマコンバレーは「行政あとからついてこい」みたいな姿勢もあるじゃないですか?
柳澤:いや、全部受け入れる姿勢なのであとからというか、楽しければいいというスタイルでやってるんですよ。だから行政の方もですし、あらゆる方が参加してくださっています。
さっきカマコンバレーはギラギラしてないっておっしゃってましたけど、まさにそういう企業が集まってるんですよ。鎌倉をあえて選んでいる会社だから。パタゴニアも鎌倉にありますし、鎌倉投信という世の中に貢献するような良い会社にしか投資しないという会社もあえて鎌倉を選んでいるように、利益追求だけを目的としていないメンバーが集まっている。
だけれども、それでも地域の方や行政の方からすると、「ビジネス臭がする」という話になるんですよ。ルールの違いはいいんですけど、言葉の使い方や感覚の違いで生じるギャップについては、やはり歩み寄っていかなければと感じます。
高島:行政の言葉で好きなのが、最初はバカにしてたんだけど、最近おもしろくてよく使ってるんだけど、「適切な対応をして、一定の評価がなんとかで」という。「一定の評価・適切な対応させていただきます」って、はっきり言ってるけど意味が全然わからないじゃないですか。
結局、みんなが1つの利益を求めていこう、KPIを上げようということで議論していれば、もっとはっきりしていろんなことを詰めた話ができるんですけど、反対のために反対する人もたくさんいるわけですよね。
そうすると、結局文句を言うために全部議事録取られて一つひとつ文句を言われるから、そういうことにも対応していくためには少し幅の広い、はっきりと物が言えないというところも行政職員にはあるようで。
まあ福岡市はないと思いますけど、そういうところで(そういう事情も)あるようでね。それで、行政言葉でどうしても奥歯にものが詰まったような言い方をしているところはあるかもしれませんね。
柳澤:やっぱり違うのは時間軸ですよね。結果を短期で見る民間と、長時間かけて見る行政と。クリエイティブの世界も結構そうなんですけど、長く経たないと価値がわからない類のものというのは短期の利益では判断できないものが結構多いですから。
高島:結論的に言うと……。
吉田:結論。
高島:なぜかというともう22分なので。
吉田:それ俺の仕事だから気にしなくて大丈夫ですよ(笑)。
高島:ごめんなさい(笑)。たぶん、それぞれの地域で、カマコンバレーにはカマコンバレーの雰囲気とか特徴がある。横須賀バレーには横須賀バレーの特徴と強みがあって、福岡は福岡であって、京都もきっとある。それぞれの地域という選択肢のなかで、成功事例をどんどんつくっていく。
なぜかというと、ベンチャーを応援するということは既存企業の人たちのシェアを奪うことになるわけですよね。既存企業の人たちのほうが一生懸命選挙も手伝ってくれたり、政治家的に応援してくれるんですよ。
ベンチャーは全然、投票も行ってるかどうかわからない……ことはないと思いますけどね(笑)。そういうこと言う人がいましたけどね。私じゃないですよ。私は全然思ってないんですけど(笑)。
山野:イメージですね、イメージ。
高島:イメージイメージ。そういう人もいましたと。そうなると、自社でイノベーションを起こせない企業は、いかに自分がマーケットを独占できるかということを考えると、新規参入をいかに阻むか(が大事になる)。そうすると、既存企業の人は政治をしっかり使うわけですよ。自分たちが独占状況でいられるようにするわけですよね。
ですから、いまベンチャーを応援している、例えばスタートアップ都市推進協議会に入っている吉田市長のいらっしゃるような地域では、こういう新しいチャレンジをリスクを冒してでもしようっていう首長がいるところで、まずは成功事例をつくっていくというのが早いと思うんですよ。
吉田:ロールモデルね。
高島:ロールモデルというものを、いかにいまそういう地域のなかでつくられるかというのが1つポイントかなと思います。
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