2024.10.10
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佐々木大輔氏(以下、佐々木):(地方活性化について)それでは具体例について、いろいろ話していければと思っているんですけれども。まずは神山町の取り組みにつきまして、大南さんからお話しいただければと思います。
大南信也氏(以下、大南):神山町というのは1955年に2万1千人の人口がいて、今現在は6,000人を切っています。3割以下に激減している典型的な過疎の町です。
そこをもう少しワクワクするような町にしたいということで、1990年に「神山アーティスト・イン・レジデンス」という新たな事業を始めたわけです。そうするとその2、3年後から、アーティストの移住者が神山に生まれ始めます。毎年1組ずつくらいです。ところが、アーティストって結構飯を食うのが大変なわけですよね。
これは定着率が悪いということで、田舎には雇用や仕事がないから仕事を持った人に移住して来てもらおうと「ワーク・イン・レジデンス」というものを2008年から始めました。そうすると、力を持った若い起業家の人たちが入ってくれるようになってきたわけですね。
そうするうちに移住者だけではなくて、2010年からはITベンチャー企業とか、デザインの会社とか、あるいは映像の会社なんかがサテライトオフィスを神山に置き始めてくれたわけです。そうすると今までになかった人の流れが神山に生まれてきたわけです。
その結果、今までは成立をしなかったようなサービス産業、例えばビストロとかピザ屋さんとか、それからゲストハウスが今うまく機能して回り始めているわけですよね。そういうようなサービス産業が使われるものですから、神山のオーガニック野菜が使われるわけです。
だから今、もともとアートから入ったことが、本丸である農業を育み始めたのかなと思います。ライフの循環をぐるぐる回していけば、ひょっとしたら1つの日本の田舎に対するモデルケースになるんじゃないのか? っていうふうに考えています。
佐々木:なるほど。何かのきっかけをつくって、人が来る。その人の流れができると、そこでお金が回る仕組みっていうのができてくる。
奥田浩美氏(以下、奥田):実は私は徳島県に生まれて「神山町に取材に行ってください」っていうのが、私の地方進出のきっかけだったんです。それで神山町を見て、まんまとそれに引っかかっているという(笑)。引っかかったのかはわかりませんけど「地方で何かやれるのがワクワクするな」っていうのが、ほんのちょっとのきっかけです。
佐々木:木下さんは?
木下斉氏(以下、木下):我々はどちらかというと中山間の都市部が多いんですけど、地方都市中心部は約15年くらい、特に2000年以降急激に衰退をしてきます。逆に言うと、戦後作ってきたストックが山ほどある。公共施設も道路も公園も、民間のストックもあって、全国で合わせると800兆と言われるストックがあるわけですね。
我々は使っていないところをリノベーションして新しいオフィスにしてもらったりだとか、新しい店舗にしてもらったりだとかという形で変えていっているんですけれども。
道路上も今、国交省が規制緩和をしてくれているので、要は人があんまり通らなくなったら、広い大きな道路の一部にコンテナとかを置いて、店舗にしたりだとかがOKになっているんです。こういうことをさせていただいて、地域に新しい事業者に入ってきてもらえる環境を作っているんです。
そうすると実は街中っていうのは、昔は家賃が高くて誰も見向きもしなかったのが、今はある意味地の底までって言ったら怒られますけど、行き着くところまでいって、オーナーさんもツメを伸ばさなくなると。実は建物を建て替えなくても、現存するストックの内装をちょっと変えるだけで、全部新しい使い方に変わるわけです。しかも我々は、最初に営業をするんです。
先ほど「補助金なくてどうやってやるんだ?」という話がありましたけど、なんで補助金がいるのかっていうのは、最初に供給側から考えるからで「この建物改装しましょう!」って言って、例えば建築関係の方々を連れてきて「坪何十万かかりますね」というところから工事してやるんで、最後に使う人の家賃が合わなくなるだけで。
我々は最初に使うほうを「この街にこういう人が必要だよね」決めるんですね。それは何かというと、より労働生産性が高いとか、より粗利率の高い店舗を見ていくんです。カバンを地域外から、卸業者から買ってきて、お店に並べて売るのではなくて、自分の地元のところでやっている素材を使ったカバン製品を作った製造、そういうのを最初に営業したんです。
その人たちが払える大体の家賃を見たときに「これぐらいの工事費であれば3年で回収できるな」っていう金額でリノベーション投資をするんです。そうすれば予算がなくてもできることってたくさんあるんですよね。それは今、我々が15都市くらいでやっていても、1都市で2、3年で100から300くらいの新規創業者っていうのは、街中で十分作れるというのを今やっていて実感しているというところです。
佐々木:なるほど、ありがとうございます。
佐々木:こういったビジネスモデルを作っていくという中で、民間として事業のアイディアが出てくる。それから金融としてそれに対してお金が付く、そこに人が付く。こういったことというのが、実際のビジネスモデルを作っていく上で重要になってくると思うんですけれども。そういったお金、人という面では、平副大臣はどういったことに取り組まれているのでしょうか?
平将明氏(以下、平):まずは地方創生の先行モデルを見てみるとですね、やっぱり新しい需要を生み出すのに成功していると。舞台回しは極力地産地消、食材、人材、資金、エネルギーとかそういうハイブリッド型が比較的うまくいっているのかな、というふうに思います。
あとは人の流れを作るのは大事で、さっき言った一次産業で言えば規制緩和とか、六次産業化とか輸出産業化だし、観光で言えばインバウンドとかビザの関係を国がやるわけですけれども。外から若い人が行って、そこの地域の価値、地元の人が気付かない形や物を見つけて、新たな需要を生み出すっていうパターンがあって。
有名なのは「気仙沼ニッティング」という、気仙沼に若い女性の方が入って。普通は気仙沼っていうのは漁業の町ですから、漁業の加工業とかそういうとこで起業とかビジネスを考えるんだけれど、漁師の奥さんってみんな手編みができます、暖かい服を着させてあげたいと。その人たちをネットワークして、非常にセンスのいいデザインの手編みのセーターを作った。これはもうものすごくヒットして、今は買えない状態になっていますよね。
ですから若い人が地域に入って、東京でビジネスを起こすのではなくて、地域に入ってそこで新たな価値を見つけ出して起業する。「ビジネスをする」っていうのが、1つの成功モデルなんだろうなと思います。
平:資金のところも先ほど言ったように、地産地消はお金が回っていないんですよね。これは地域金融機関が大事です。地域金融機関って預貸率とかは目を覆うような状態で、それで地域金融機関の人に聞くと「いやぁ、うちの地域には資金需要がないんです」とか言って、国債を買ったりして東京に出てきたりするんですよね。
そうじゃなくて「地域で集めたお金は、地域で使ってください。ないならそれを生み出してください」そういう意識はすごい必要だなというふうに思っているので。今我々が、「地域版成長戦略作ってください。それは検証可能でKPIを持って、PDCAで回してください」と言っているんですが。そこで地域金融機関も入ってもらうと。
あと「補助金終わったら事業も終わり」ではダメなので、補助金が最初のスタートになったとしても、そのあと持続可能な事業計画っていうのは、地域金融機関の役割も大きいと思うし、もっと言えばファンド的なエクイティのやり方があると思っているので。
あとでちょっとお話ししたいと思いますけれども、例えばITの活用のところなんかはですね、人材やお金をつけてですね。ファンド的なもの、マッチングファンドになるかもしれませんけれども、お金をつけてIT人材を地域に送り出すという仕組みも必要だと思っております。
佐々木:そいういった資金を活用するといった意味では、木下さんなかはすごく事例をお持ちでいらっしゃると思うんですけれども、いかがですか?
木下:今の預貸率の問題は、深刻で。我々がやっている事業では地銀さんが非常にパートナーシップをもって融資なさっている県もあるんですよね。その時に、実はやっぱり行政とか国で支援が必要なのは、今おっしゃられたエクイティの部分がすごいあって、補助金とか、融資の部分の議論ばっかりなんですけれども。
例えば我々がやっている1つの事例として、岩手県の紫波町に「オガールプロジェクト」っていうのがありまして、「公共施設と民間施設を建てるプロジェクトを民間が資金調達してやる」っていうのをやっています。役所が公共施設を建てないっていう時代が僕は来ると思っていて、それをやっているんですが。
それなんかはエクイティ部分を、実は国の政府系機関が一部優先株出資の形で入れてくれて、そうすると全体の中でプロファイで融資を組む際に、3分の1くらいをエクイティで積んだんですね。そうすると地銀さんも最後のほうは、金利はずっと払ってもらえるくらいちゃんと自己資本はあるということで、安心して事業審査をしていただいて、融資までちゃんとやってもらえる。
そういうプロジェクトファイナンスをちゃんと地方銀行で、即座に審査できるっていうのはなかなか難しいことで、エクイティを入れるっていう段階で、事業審査をしっかり政府系金融機関やファンドがやってくれて、そこで「大丈夫ですよ」という話になると、ちゃんと金融機関も審査の俎上にあがってくれるっていうことを我々がやってたんですよね。
1件あたりの開発をちゃんとやって、地域内のお金で開発されて、黒字が毎年ちゃんと出てきて、雇用も生まれて、自治体としてはいろんな施設で固定資産税収っていうのもちゃんと上がっていく、歳入が増えながら、地域のお金でもちゃんと循環が生まれていくっていうのが、1件で10億から20億くらいできるわけですよね。
これから地方は、戦後作ってきたストックが古くなるわけなので、この建て替えをやってきた時に、先ほどの話ではないですけれど、それぞれ複数の自治体が持っていたのを合併して、複数あるものを1個にまとめる時に、単に公共施設を合築するのではなくて。
公共施設には年間10万、15万、20万の人が来るので、累積ではその店先を民間施設にして、これを1個の施設として、民間が銀行から資金調達やるとか、すごくたくさんやれることはあるんですよね。
地銀で地域内のお金が回ることはすごく重要で、今は外にお金を出しちゃっていて、みんなのお金でどんどん複利でお金が奪われていっちゃうという構造になっているというのを変えることは、地域活性やっている人間からすると非常に大切だと思います。
佐々木:ファイナンスの問題というのは、ビジネスの屋台骨というか裏側になっているんですね。私のようにベンチャー企業をやっていて資金調達なんかしていると、そのノウハウっていうのは、ブログだとかいろんな本とかが出ていて、結構表にでてきていると思うんですけれども。
なかなかこういった地域再生といったところでは、ノウハウっていうのはまだまだ表に出てきていないのかなと思うんですよね。この辺りを、どう広めていくかというのは、1つ次の課題なのかな、というふうに思いました。奥田さん、いかがですか?
奥田:ずっと東京のスタートアップの支援をやってきて、1番足りていないのがお金の流れと人の流れですね。流れる状態を見ることってすごく大事で「こういうふうにお金も人も流れるんだ」ということを見せるために私たちは今、徳島県を拠点として「たからのやま」という会社を作ってまして。
すごく簡潔に言うと、地域のお年寄りが持っている社会課題と、最先端のここにいらっしゃっているような方々、あるいは国がやっているような天才発掘プロジェクトみたいなところの天才エンジニアみたいな人たちを、お金と人とをぐるぐる回すんです。
具体的にどういうことかというと、東京で作っている最先端の技術のガジェットですとか、いろいろな製品を町の中に持ってきて「おじいちゃん、おばあちゃん、これ使いなよ!」「これ、何のためにあるの?」みたいなところの声をすくい上げて、それで製品開発を一緒にしていこうと。
製品開発をすることに意味があって、検証だけだと検証してもらって返ってきたメリットというのは東京の会社にしかないんですよね。
東京の会社がストロー式にお金を吸い上げるだけで、ITでフラットになったように見えて、IT企業は地域展開すればするほどストロー現象でお金がこっち向きに流れてくるというのを、地域でも何かを生み出す主体を作りたい、製品開発の場というのを今広げようとしています。
実際に今度鹿児島のほうで、実証実験の町っていう製品開発・競争の町、っていうブランドで町自体が主体になって何かを生み出していこうという動きが今出てきて、もうすぐ発表できる予定です。
佐々木:教えてくれないんですか?(笑)
奥田:多分来週くらいになると思います(笑)。お楽しみに!
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