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ウェブ生まれの編集者が本屋で語る、これからの編集・メディア論(全4記事)

いま最も優れたメディア人は誰か? 若手編集者がキーパーソンたちを4つの能力で分析

若手編集者の佐藤慶一氏、小川未来氏、前島恵氏が下北沢の本屋B&Bで「これからの編集・メディア論」をテーマに対談。メディア業界で働く人に求められる能力を4つに分類し、これからのメディア領域での戦い方を紹介しました。

Webを使って何かある考え方を広めるときのネック

前島恵氏(以下、前島):じゃあ次のトピックにいきます。『5年後、メディアは稼げるか』。こちらの本は単純に言うと、メディアの主戦力が紙からWebに移ってきています。そういった状況の中で、マネタイズモデルとしてどういうものがあるかについて書かれた本です。書かれているのは佐々木紀彦さん。元東洋経済オンラインの編集長。編集長時代にすごくPVを伸ばして、その後にユーザベースというNewsPicksをやっている会社の執行役員になって、NewsPicksの編集長もやっている。

小川未来氏(以下、小川):NewsPicksって、コメントを記事にどんどんつなげる、記事がそのまま掲示板になるみたいなUIのスマートフォンアプリメディア。

前島:ありがとうございます(笑)。本の一部を紹介します。「稼げるWebメディアづくりが健全な民主主義に寄与する」。僕も民主主義がどうとかいう議論が大好きなので取り上げたんですけど、これ、民主主義じゃなくても、「芸術」でも「下北沢」でも何でもいいと思うんですよ、「文化」とか。

要するに、Webを使って何かある考え方を広めよう、文化をつくっていこうという理想は掲げやすい。しかしそれを実現するため、もしくは継続するためにはお金を稼げないと意味ないよねというのは当たり前のことですということを再度言ってくれたというのがいいなと。

そういう状況の中で、じゃあ個人っていうのはどういう生き方ができるのか。どういうスキルセット、能力を持つとこれからのメディアづくりだったり、マネタイズだったりに寄与できるのかみたいなことが書いてあって。

この本の中では文字でそれが書いてあるんですけど、今日はわかりやすく図にしてきました。この4分類を取り上げていらっしゃるんですね。これの組み合わせによって10属性ぐらいあるよねと。

紙メディア、Webメディア、ビジネス、テクノロジーの4分類

佐藤慶一氏(以下、佐藤):全部あったら最強ということですか?

前島:高いレベルで全部あったら最強ですし、一方でいろんなメディア会社の中でも、これを1個ずつ究めている人は1割にも満たないというふうに佐々木さんはおっしゃっていて、だから、普通の人だと1分野究めるのは厳しいよね。逆に言うと何か組み合わせたほうがいいという話をしていらっしゃいます。

じゃあ、こういうふうに組み合わせることができて、且つ、実際のメディア人として今活躍していらっしゃる方を分類するとどうなるかっていうふうに見せた図がこちらです。これを見ながらいろいろと話していこうかなと思うんですけれど。

小川:偏っていますよね(笑)。これも中立って見せかけて、一部のWeb有名人とかね。

佐藤:紙とWebのビジネスも少ないですからね、サンプルは。

小川:ちょっと補足したほうがいいですよね。ビジネスとかも何? って感じですよね。

佐藤:広告であったりとか、Webメディアがどうやってお金を稼ぐかっていうビジネスモデル面。

前島:マネタイズを担当してる人ってこと。

佐藤:営業であり、広告でありっていう。

小川:あとは会社経営とかね。

前島:テクノロジーは、メディアに関わるデータマイニングやアプリケーションといった技術に関わっている人や、サービスを実際に手を動かしてつくる人。

小川:アルゴリズムとか。

前島:表には出てこないけど、大体どこのメディアも抱えてるっていう意味で、かなり広義な書き方をしたんですけれども。

佐藤:たまにすごい人達が。やばいですね、これは。

エンジニアと編集長の兼業

小川:これ見づらいですけど、要するに極めてる人が各会社にいるんですよね。マガジンハウス、講談社、何でもいいけど、各会社に何人かいて。WebメディアだとYahoo!とかLINEとかいて、ビジネスはビジネスで博報堂とか電通とかにいて、この重なってる人材が稀有だから書いてるんですよね。

前島:そうですね。

佐藤:今日の参加者だと僕以外は稀有な人材っていうことでOKですか?(笑)

前島:これちょっと誤解があると思うんですよ、皆さん(笑)。これ本当は3次元マップにするべきで、これプラス深さがあるから! 深さがあって、真ん中の人達は深いところにいるんだけれど、僕はまだまだ表層にいる感じです。

小川:この図やっぱ偏りがあるよね(笑)。前島さん、何でここなんですか。自分をここに置いた理由は?

前島:僭越ながら(笑)。一応頑張って会社を経営しているのと……。

小川:社長4年目!

前島:Webメディアを今やっていて、後はエンジニアも3年ぐらいやってます。メディアを全部自分で作るし、サービスも作るっていう感じなんで。

小川:4月からエンジニアとして……?

前島:そうです。今やっている会社を続けながら、リクルートホールディングスにエンジニアとして入るっていうキャリアプランでございます。

小川:要するに紙以外ってことですね。

前島:そうですね。紙以外ですね。

佐藤:リクルート入ってからも副業っていう。

前島:はい。副業申請を先日出したんで。

若手編集者2人の今までの歩み

小川:僕、ちょっとつまみ食いしすぎて面倒くさかったんですけど、テクノロジー以外をやっているつもりではあります。ただ、紙が一番経験が薄いので、あそこで多分正しいと思っていて。広いとこで言うと、電子書籍も、ニコニコ公式チャンネルで番組企画とかしたことあるんですけど、それもWebだと思うし、もちろん講談社の「現代ビジネス」でライティングしているのもWebだと思うし、LINEでタイアップ記事広告を作ってるのもWebメディアだと思うし、Webはやっぱ多いんですよね。

あとタイアップ記事は一応ライブドアで作ってたので、何となく広告とコンテンツの関係っていうのは、今勉強してる最中ではあります。紙は、あとで取り上げる本でもありますけど、今年、菅付雅信という編集者のアシスタントをしていて、初めて色校正だとか、ゲラ校正だとかっていうところを1年ぐらいやったので、ちょっと紙メディアに行きたいし、もうちょっと詳しくなりたいっていう時期でもありますね。

前島:なるほど。就活事変の連載とか。

小川:はい、ライティングもやっています。

佐藤:僕は純粋なポジションなので説明は不要かもしれないんですけれども、Webメディアの編集しかやったことがないっていう。

前島:どっちかっていうと、もちろん慶一くんぐらいWebの編集やってる人はいると思うんですけど、メディアの輪郭っていうところで、Webメディアアナリストという、批評までできるというのは稀有な人材なんじゃないですか?

佐藤:そうですね。仕事としては本当にWeb編集だけの立場なんですけど、知ってるっていう意味だとブログとかでよくリサーチしているんで、そういう意味だと全部やってます。

小川:それこそ紙の雑誌にメディア論の寄稿とかされるじゃないですか。新聞研究とか事業構想とか。いつも僕も慶一くんから勉強させてもらってますけど、同世代で慶一くんよりメディアの玄人感を極めている人はなかなかいないんじゃないですか。

前島:確かに、メディアと言えば意見をうかがいますね。

小川:持ち上げますね(笑)。

前島:実際にCredoの立ち上げの時も相談に行ったんですよ。

佐藤:実はそうなんですよね。前島くんが、Webメディアをやりたいんだけれどもっていうのを言われて。

前島:やりたいなと朝思って、夕方くらいに連絡して、次の日会ってくれて。

佐藤:相談を受けた時に、「ニュース解説」っていいんじゃないですかって言ったら、その日にサイトが立ち上がってたみたいな。

小川:慶一くん、ずっとトジョウエンジンっていうNPOで、ほぼインディペンデントな形でやってたじゃないですか。

佐藤:そうですね、NPO法人e-Educationというところの非営利メディアとして。

小川:実質人員が10人くらいですかね。最高15万PVくらいですか。月間10万PVくらいまで、ずっと立ち上げから編集長やっていたのと、講談社で今ずっと数千万PVの編集をやっているということで、マイナーなのとメジャーなので両方やっている。

greenz.jpもそうだし。そういうところで本当、Webメディアのマネタイズのところ、実務的にもアナリスト的にも詳しいのは慶一くん以外あまり僕も浮かばないので、それはここで名前を挙げても遜色ないんじゃないですか。

佐藤:たしかに非営利と営利、マイナーからメジャーまでやっているのは珍しいかもしれないですね。引き続き頑張ります。

求人広告とインタビューが融合したメディア「日本仕事百貨」

小川:これ何人か有名な人だけ説明したらいいんじゃないの。重なってる人はこういう人だからみたいな。

佐藤:まずはセンターの田端さんから?

小川:いや、ちょっと中心はスーパーだから。ナカムラケンタさんとか分かりやすいかな。「日本仕事百貨」というメディアをやっている方で、求人サイトとインタビューサイトが一緒になっているものなんですよ。

もちろん全部の求人記事は、要するに広告なわけですね。例えば地方の商店の求人が多いだとか、あるいは職人的な求人が多いだとか、クオリティコントロールを整えつつ広告もやっている。そういう意味でWebメディアをわかりつつ、広告的な観点でのメディアをやられてる。

しかも会社経営者でもあるので、ナカムラケンタさんみたいな人はわかりやすい例かなと。求人広告メディアビジネスと、メディアをやっているところで、それがひとつだなと思います。

佐藤:SmartNewsの松浦茂樹さんとか。今はニュースアプリをやっていて、もともとエンジニアもやってらして、ライブドアだったり、WIREDとか、グリーとか。以前はハフィントンポスト日本版の編集長をやっていたり。

小川:編集もできるし、裏側のアルゴリズムもわかる人。あとは嶋さんとか。嶋さんはWebもできるから、ここに入れたらちょっと失礼だと思うんだけど、今一番メインでやられてるところだと、実はここのB&Bの共同オーナーでもあるし、博報堂ケトルの社長でもあるし、紙の雑誌『ケトル』の編集長でもあると。

なので、会社経営も広告もプロだし、紙の雑誌の編集長でもあるからプロだしというところで、ひとりでここに置くのに全く遜色ない素晴らしい方だと思うんですけれど、本当はWebもちょっとわかるはずなんですけどね。

田端信太郎氏は全ての領域を経験している稀有な存在

小川:次に田端信太郎さんっていう方が、この『5年後、メディアは稼げるか』という本の中で、とても礼賛されていて、すごい方で。NTTデータにもともと就職した人なんですよね。だから完全に数字とかテクノロジーとか。学生時代もWebサイト構築とかで食っていた方なんで。そこがもともと発端だと。

そこからリクルートがあって、R25というフリーペーパーを立ち上げられたと。その時は編集ではなくて、どちらかというと広告営業側で、プロデューサーとしてやられてたと。その後ライブドアに行って、ライブドアニュースのディレクションみたいなことやっていて。

Webメディアの編集もわかってるし、その後コンデナスト・ジャパンっていう『WIRED』とか、『VOGUE』とかの編集やられてる会社に行かれて、そのWeb版を立ち上げられた。だから紙とWebの翻訳者というか、プロデューサーをやっていて、今LINEの執行役員。

どこでもコミュニケーション、SNS、全てオンライン、オフラインを手掛けている方です。

前島:僕らの話ばっかり申し訳ないんですけど、次にまだまだ駆け出しっていうお話をしたんですけど、これからどういうふうに、この図で表すと移動していくのか、つまりキャリアを築いていくのか、能力を身に付けていくのかってところの話をさせていただけたらなと。そこに絡んで、編集者にこれからなっていきたい方とか、ここの移動したい方とかに何かしらの端緒を差し上げられるかなと思っております。

小川:だけど、こんなに分断していると思わなかったですね。会場の方はまだわかってないかもしれないけれど、少なくとも20代の方が多いですよね。うやむやのうちにウェブの仕事と紙の仕事がまざる流れもあるから。Webも紙もやっちゃったみたいな人が結構いるのかなっていうイメージだったんですけど、まだいない状況っていうことは参考になるかもしれないですよね。

いかにテクノロジーを駆使して、メディアをマネタイズするか

前島:それで、この図です。

それぞれ、どういう軸でこれからキャリアだったり、能力を築いていくかっていうところを、矢印で表してみました。

佐藤:まずは前島くんから。

前島:僕はこれから深めていくっていうことだけなんで、本当に。やっていきたいことも、リクルート入ってもそうですけど、テクノロジーを使ってメディアを育てて、いかにお金を稼いでいくかっていうとこですね。そこを極めていきたいなっていう。それと、僕的には紙メディアじゃなくて、学術っていうのを入れてほしいなって思っていて。学術を入れると、例えば東浩紀さんとか、宇野常寛さんみたいな方が。

小川:あとSmartNewsの会長も。

前島:そう。そうすると中心には鈴木健さんっていう、東大博士までいって、めちゃくちゃ思想的にも極めてるし、テクノロジーも天才エンジニアだし、サービスも立ち上げてて、ビジネスでも展望がある方っていうのが中心にくるわけですけれども。

小川:これにアカデミックがあるわけですね、ここら辺。

前島:紙メディアを学術に入れ替えるとそうなる。

小川:そうだね。

前島:もし仮にそうした場合、僕はその辺を目指したいなと。

小川:でも、編集はあんまり得意じゃないですよね?

前島:はい。

小川:今カミングアウトしました(笑)。

前島:そうですね(笑)。

佐藤:でもCredoでは編集長。

前島:一応今は編集長で頑張ってるんですけど、適正ないなって。

佐藤:適正がない。

小川:エンジニアと編集って噛み合わせるのがすごい難しい。

前島:編集長がいかに気持ち良く働くかみたいところを作るのは得意だと思うんです、好きだし。自分がプレイヤーとしてやるのは、なかなか厳しいかなって(笑)。

地元の佐渡島が持つ魅力を掘り起こしてきちんと伝えていきたい

小川:僕は割と物理的な移動であって、4月からフリーペーパーを作るんで、メディア、ビジネス、紙メディアの3つかなと思ってると、リクルートっていう会社はほぼ広告だけでメディア作ってる会社なんで。そういう意味で、もっと広告もビジネスも極めるし、おそらくフリーペーパー製作、1年から2年ぐらいかかると思うので、紙のこともわかるようになると。なので、メディア、ビジネス、紙メディアの3つは被ってると思ってます。

僕自身も、そういうテクノロジーは今から学んでも、何となくHTMLとかCSSぐらいわかりますけれど、Webサイト構築の言語ですね、そっち以上は学ぼうとも思わないし、逆に言うと僕は適正がないと思っているので、この3つを頑張っていくことで、僕のキャリアステップを作りたいなと思っています。

佐藤:僕は新潟県の佐渡島っていう島から大学進学を期にこっちに来たので、考え方とか価値観がすごい田舎な感じで。なので、今は地元ではできないことをやろうと思って、Webメディアの編集をやっているんですけれども、将来的に島に戻ると思うので、島でWebメディアっていうのは機能しないっていうことを感じているので、あとは現状としてはWebメディアの編集を長くやろうとも思っていないので、たぶん……。

小川:紙を経験して。

佐藤:そうですね。紙経由の佐渡島行きみたいな感じになって、紙メディアに行きたいと考えてます。

前島:ここで学んだことを佐渡島で活かしたいみたいな文脈なんですか。

佐藤:そうですね。すごくシンプルな例だと、佐渡島は朱鷺っていう鳥が有名なんですけれども、「佐渡=朱鷺」だよねみたいな、こっちに来るとそういうパブリックイメージをすごく言われるんですけど、編集やっていることにも繋がりますけど、別の魅力であったりとか、ちゃんと掘り起こして、編集して、外に伝えるっていう部分をやりたいです。

自分自身としてはキャリアとしても、同級生とかずっと島にいる人が多いので、こういうキャリアの多様性であったりとか、選択肢の広さみたいなのを帰って還元できたらと思って、こういう矢印になっちゃったっていう。

小川:島自体がメディアになったら一番面白い気がしますけどね。

佐藤:かっこいいこと言うね(笑)。

日本は東京にマスメディアが集中している特殊な環境

前島:ちょっと補足というか、話したくなっちゃったんですけど、僕は専攻がローカルイメージとメディアについてで、ちょうどぴったりなんですけど、日本って超特殊で東京にマスメディアとか主要メディアが全部集中しちゃっているんですよ。

小川:ニューヨークとかもそうですよ。

前島:ニューヨークは点々とあるって。かつ、例えばニューヨーク・タイムズでさえも、新聞の部数は70万部。読売と朝日をあわせて2,000万部近いじゃないですか。そういう意味で、超中央集権的なんですよね。だから地方は、地域のイメージとかを東京視点によって決定されてしまっている。ニューヨークとか、アメリカの場合だと、対抗するメディアを持って少なくとも反論ができるみたいな。田舎のほうも、こっちはこう思ってるんだよっていうのをメディアとして出していけるんですけど。

小川:まあ、広いしね。

前島:情報の非対称性によってそれが成り立たないっていうのがあるんで、何かこう、地域メディアもがんばんなきゃなっていうのがありますね。

小川:なるほどね。

前島:そういう感じです。ではですね、ここでちょっと聞きたいのが、さっき言ったように、これから移動していきたい方とか編集者になりたい方に何か届けられたらなと思うんですけれども。小川くんの、就職っていうことによってこの矢印の方向に行くっていうこと、ひとつあるじゃないですか。就活をどうやったのかなみたいなことを聞きたいと思って。

佐藤:現代ビジネスでも就活事変っていう連載をやっていますからね。

小川:はい、大変お世話になってます。内輪ですみませんね(笑)。Webでの反響を結構いただいたので、今回ここに来てくださっている方にも共感得られたら嬉しいんですけれども、今編集をやりたい、編集長になりたいっていう方がそもそもいないんですけれど、数少ないやっている方、やりたい方がここにいらっしゃるとして、そういった方がどういう会社に行けばいいの? っていうところがすごくわかりづらいなって思っていて。

編集者志望はどこの会社に就職するべきか

小川:実はこの3人で正規就職したの僕だけですよ。前島くんは起業兼正規就職、慶一くんは講談社の業務委託ですもんね。フリーランスですよね、今。僕だけちゃんとした就活一本で一応入るつもりでいて、とても会社選びに苦悩して。

編集者やりたいっていうのは先に決まっていて、それは正しい姿だったと思うんですけれども。僕は編集者になりたい。編集の仕事がしたい。そういったところで、じゃあどの会社に入るのっていうところがすごく難しい時代になっていて。

何でかっていうと、この4つが一番わかりやすいですよね。紙メディアもあるし、Webメディアもあるし、そこに広告ビジネスも繋がってくるし、テクノロジーもWebやれば必要だし、この4つを全部やってる会社ってすごく少ないんですよ。

出版社入ったらできないですからね。おそらくWebメディアやりつつはあるけれども、出版社が運営しているところで僕が好きなWebメディアってほとんど無いし。テレビもそう、ラジオもそう。そういったところで、僕らはスタートとしてはかぶさったほうが自分の付加価値、市場価値が上がっていくっていう立ち位置ですけど、編集をこれからやりたい人とか、あるいは次のキャリアステップで自分がどうかぶさっていくのが市場価値が上がっていくのかっていうところで、キャリアステップが見づらいとは思っています。

僕はリクルート住まいカンパニーっていう会社を選んだのも超シンプルで、個人的にリクルートってキラキラしすぎて、そのイメージはあんま得意じゃないんですけど、全部あるからなんですよ。社風とか上場とか個人的にはどうでもよくて。これ全部あって、それなりにマスメディア、マスの仕事をしている。本当に無いですね、他に。

前島:配属先が良かったよね。

小川:そう。配属は幸いにも紙メディアなんで、自分が埋められて無いところを埋められるんで。そういう意味で、社内のシステムはすごく素晴らしいなと思いました。ちゃんと対話して、行きたいところに行かせてくれるっていうのは。

コンテンツや人によって媒体を変え、組み合わせられるのが「編集」

前島:ありがとうございます。一方で佐藤くんの場合、結構前に聞いたことあるかもしれないんですけど、紙メディアだからこそ実現出来ることみたいなお話をされてたと思うんですけど。さっきのアンバンドルのお話とか。

小川:要するに全部やるんじゃなくて、ここ単体だからこそっていう話?

佐藤:Webも紙そうですけど、やっぱりWebだけやってると、本当にどうしても抗えない部分とか、広告モデルであったりとか、それこそアンバンドルという流れでどうやるかみたいな、そこで解答を出さなきゃいけないんだけれども、やっぱり紙メディアみたいに、そういう世界観とか文化とか価値観みたいなものをパッケージして、表紙から読んでもらえたりとか、もうちょっとちゃんと深く刺さったりとか、人を動かすメディアをやっぱりやりたいっていうのがあります。パッケージとか、そういう感覚がわからないので。

紙を経由するけれども、またWebに戻るっていうことももちろん選択肢としてはあります。今Webメディアの環境を見ていて、Web単体でできる人は多くいるんだけれども、紙メディアの人はあまりWebに来なかったりっていうのがあるので、両生類じゃないけれども、行ったり来たりできるみたいな、コンテンツによって出し口を変えるというか、編集の切り口であり、スキルであり、使いどころをちゃんと見極めてできたらな、そういう人になれたらなと思いますね。

前島:なるほど。この対談の前にお二人のインタビュー記事をCredoで作ったんです。そこでも言っていたんですけど、2人の編集って結構、誤字脱字チェックとかそういう事例に収まらなくて、組み合わせるコンテンツや人によって媒体のあり方から変えられるような、適正な組み合わせを選んで作っていけるような能力みたいなことを言ってましたよね。

小川:少なくとも編集って言葉をそのまま字義通り捉えるのであれば、従来は紙しかなかったからね、紙だけっていうのは時代の話であって、今はWebもあるし、この本屋も編集だと思ってるんですけど、例えば、人がいらない編集っていうのは、あいうえお順とか、あるいは出版社別に並べるとかになりますけど、この本屋はまったく、そういう編集をしていないですよね。

編集ってあえて言いますけど、大きさばらばらだし、レーベルばらばらだし。完全に本のコンテンツありきで本棚を作ってますよね。だから本屋もリアルスペースの編集なんですよ。そういったところで、自分が編集者やりたいっていう言葉は、それを全部包括してるんですよ。

なんか本作りたいとか、テレビの番組作りたいっていうならわかるんですけどね。あんまりピンと来ないですよね、編集者やりたいっていう時に、会社でメディアを限定されるのは。

前島:なるほど。ありがとうございます。

※続きはこちら!「Umeki Salon」のおもしろさは覗き見願望? 若手編集者が異色の有料オンラインサロンを分析

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