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特別対談企画「社会の価値観を変える事業の創り方」(全5記事)

リブセンス村上社長「AKBが流行るのは、日本のポテンシャル」 ソーシャルグッドなビジネスの可能性とは

「社会の価値観を変える事業の創り方」をテーマに、リブセンス・村上太一氏、リディラバ・安部敏樹氏、ジャーナリスト・津田大介氏が意見を交わしたトークセッション。本パートでは、村上氏が寄付文化がないとされる日本においても、近年ソーシャルグッドビジネスの萌芽が出はじめていると持説を語ります。

ブラック企業を可視化する

津田大介氏(以下、津田):今日のテーマは社会の価値観を変える事業ということですが、リブセンスで社会に一番インパクトを与えられた事業、もしくはインパクトに繋がるきっかけになったものはなんですか?

村上太一氏(以下、村上):いちばん分かりやすいものだと、先ほどの「転職会議」ですかね。いわゆるブラック企業とよばれてもおかしくない会社でも、そういった情報を隠してさえいれば採用できていたかもしれない。でも、実際に働いた人の声が明らかになることで、雇用・採用のミスマッチが減るんじゃないかと。

安部敏樹氏(以下、安部):それはすごいソーシャルインパクトですよ(笑)。

津田:なるほど、確かにそれはソーシャルグッドが増えてますね(笑)。

村上:その会社がブラックだと決めつけたくない、そして本来は色々な会社のよいところを見つけるサービスだったんですけれど、わかりやすさで言えばこの事業ですね。

津田:「転職会議」の話が印象的なのは、実は会社の良いところを見つけようと思って、その情報が集まるように設計された場でも、ネガティブなものがたくさん集まってきて、むしろそこに書かれた情報の信憑性が増すことですよね。だから、この会社は避けておくかみたいなことが起こる。そうすると、企業側も方針を変えざるを得なくなってくるというのはひとつ大きなインパクトかもしれないですね。

村上:今までは採用する側の会社と採用される個人の間に情報の非対称性があって、会社側が強い存在だったのが、実際に、労働環境が整備されず、適切な育成等もできないといったように適切な運用ができていない会社がしっかりとわかってそういうところに人が行かなくなるというのは、まあひとつのインパクトかなと思います。

津田:例えばマッチングをするときに企業側に対して、こういう風にするとこういう人材が集まりやすいですよ、みたいな呼びかけやアドバイスはしているんですか?

村上:企業側も実はわかっていると思うんですよね。それで徐々にルール自体が変わってくるのが面白い。

一生懸命やることがかっこわるいと思っていた

津田:安部さんはどうですか。リディラバでやってて、もちろん観光庁長官賞をもらったとかはありますよね。もっと上を見ているとは思いますけど、今までやってきた中で、「リディラバいける!」って思った瞬間とか、これが一番結果を残せたんじゃないかなって思うのは何ですか?

安部:僕の中で3つあります。1つめは、今契約して一緒にツアーを催行したNPOにツアーの売り上げの一部を渡す形にしていて、少しずつお金をNPOに振り込んでいるタイミングがすごく楽しい。

2つめは、修学旅行事業にできるだけ僕も参加するようにしていて、中学1年生の研修旅行などをやってると手紙やメッセージをもらうんですよ。それでもう400通くらいいただいてて、もらった手紙を見てすごく感動したことがありました。その手紙をくれた子は小学校の時にずっと、一生懸命やることが良くないことだと思っていた。

「私は一生懸命やるってことがすごくかっこわるいことだと思ってたし、社会に対して真面目なことを話すことがすごくイケてないことだと思ってました。ずっと学校でもそう教えられてきたし、そういう雰囲気が学校の中にもあって。だからなんとなくもやもやしてたけどずっとそれで当たり前だと思ってたのが、リディラバの修学旅行に参加してみて、すごく価値観が変わりました。私自身もっと社会を良くしたい、そういうことをもっと真面目に恥ずかしがらずに言えるようになっていきたいと思います」といった内容。こういう手紙を結構もらう時がツアーはいけるなと思う。

3つ目は結構多くの人がツアーを通して移住・定住みたいに仕事や生きるやり方を変えてくれることです。たかだか1回のツアーで現場に行って、数十時間現場に滞在しただけで自分の住む場所を変えようとか、ここに住んで自分の仕事も変えようって決める人たちを見ていて、それは社会全体から見ればすごく小さなインパクトだけれど、その人たちにとってはすごく重要なことだなと。

住まいを変え、生活の場を変えるのはすごいコストのかかることなので、それができてるっていうのは、自分の中では大きな喜びだし、これからもその部分を前面に出していけたらなって思います。

津田:逆にいえば人の価値観はたった10時間とか20時間の滞在でも結構変えることが出来るという話ですよね。

安部:出来ると思います。ただ、人間は緩やかに変わることはあんまりなくてすごく濃縮された時間の中で変われると思うんですね。すごい強烈な体験をしたり、変わりたいと思ってる人が変わるきっかけを誰かにもらったりすることで初めて変われるので、ツアーがそのきっかけになればいいなと思っています。

業績を一切聞かないファンド

津田:村上さんにお伺いしたいんですが、上場するというのはリブセンスが社会の公器になるということでもあると思うんです。上場したことで資金が得られて色んな事業が展開しやすくなってやりやすくなった部分と、利益を上げるように株主からのプレッシャーも出てきてやりにくくなった部分もあるんじゃないかと。いかがですか?

村上:成長していかなければ、みたいなプレッシャーはよりかかりやすくなると思うんですが、一方で非常に面白い流れを感じています。「鎌倉投信」っていうすごく面白い会社をご存知ですか?

津田:あ、知ってます! ソーシャルグッドなことをやっている会社だけに投資をするっていうファンドですよね。

村上:先方のファンドマネージャーと話をしても業績とかの話は一切聞かないんですね。もちろん、業績などはご自身で調べているんでしょうけれど、良い会社を増やしましょうっていうコンセプトでひたすら投資をしていて。結果、年間の運用成績が去年2位とかだった。そういった世の中を良くする、みたいなモチベーションのあるところに結果としてお金も集まるし、市場からも評価されて、そこに良い人も集まる社会の流れを感じ始めています。

安部:村上さんそれうちでやりましょうよ。

ネットにダメなメディアが多い理由

津田:お金って重要で、僕も自分が作ったメディアを売ってみて分かったのが、今は本当にネットにダメなメディアが多いので、ネットにもっとまともなメディアを増やさないといけないんです。でも、まともにやればやろうとするほどコストがかかりすぎるからペイしない。ペイしないから炎上体質になっていってしまう。この状況を変えたいんですね。

そのためにはちゃんと手間をかけて作った炎上狙いじゃない良いコンテンツがすごく評価される必要があるし、収益性とは別の色んなシナジーの部分でメディアがきちんと評価されてバイアウトし、その後もメディアの経営者や編集長が残って運営を続けられるのが一番いいなと僕は思っているんです。今後はそういう仕組み作りやファンディングとかもしたいなと思ってます。お金の話で言えば、リディラバは最初の頃はきつそうでしたね。

安部:今でもきついですけれど、ある程度廻るようにはなってきています。僕も長期的には社会的にいいものじゃないと事業として伸びていかないと思ってるんですね。リディラバは色んなNPOさんと組んでツアーをやっているので、一種のNPOのプラットフォームみたいになってきます。

今やりたいなと思っているのは個別課題の解決をしている現場のNPOさんにもっとお金を流すことで、その方法として今のようなツアーでの売り上げだけじゃなくて、他にも投資とか、寄付をもっとエンパワーできればなと思っていて。そのためにファンドのようなメディアをつくってツアーをリディラバと一緒にやってもらっているNPOにどんどん投資する仕組みをつくってちゃんとリターンできるところまで持っていけたらなと思っています。

津田:そういうファンドをリブセンスが関わる形でつくったら株主から「いや、そんなんで利益上がるのか」っていう文句が来ませんかね。

安部:村上さん個人でやってほしいっす(笑)。

Wikipediaの仕組みが成り立つ時代

村上:驚いたのが、ヤマト運輸さんが一気に純利益の40%を震災地に寄付したんですよ。そして評価もされているのは世の中面白くなってきたなと思って。

あとちょっと前なんですけれど、Wikipediaの仕組みが成り立つのがホントに世の中変わってきているなって思うんです。意味分からないじゃないですか。でも融資と寄付で成り立っている。

皆さんもWikipediaに1回寄付してみると驚くと思うんですけれど、寄付を次の年に募る文章が非常に美しいというか、絶対プロ中のプロが書いたっていうような文章なんですよ。でもお金を出して書いてもらってるかっていうと違うと思っていて、有志でいい人が集まるような仕組みだったり、一流の人材が無料でも良いからやるみたいな、社会を良くするという熱い想いに共感した動きが出てきてるのかなと。

津田:ああいう寄付やボランティアみたいなのが成り立っていたのは、アメリカの文化的多様性もあるし、寄付文化自体が成り立ちやすい文化や税制があったとも言われてますね。でも「あれはアメリカの話だから日本じゃありえないよね」と言われてたことが、ここ1年2年くらい日本でも起きるようになってきてるんですよね。それは震災という大きな出来事とも関係があるように思うんですけど。

AKBの流行にみる日本人の精神性

安部:採用の変化ってすごい大きいと思っていて、例えばリディラバが儲かっているようには外から見ても見えないと思うんですけれど、採用のアプライがたくさん来るんですよね。僕らみたいな活動をやっているところにすごく良い人材、特に若い良い人材が集まるようになってきているなと思っています。

村上:今年のリブセンスの新卒は面白かったですね。あと、私、AKBが流行るのも、ある意味日本のポテンシャルを現している。あれはAKBのメンバーを応援するっていう気持ちから来た売り上げだと思うんですけど、あの売り上げの上がり方といい、CDの売り上げ枚数といい、日本人って他に対して貢献するじゃないですけど、「頑張って」みたいな精神が根っこにあるのかなと。

安部:寄付じゃないとは思うんですけど、僕、ヨーロッパにあるような稼いだ人がポンって出しますって言う形じゃなくて、みんなで出し合うみたいな参加型の方が日本には向いてると思うしその方が良いと思う。

津田:ソーシャルグッドなNPOを集めた「NPO48」を作る必要とかあるかもしれない(笑)。

安部:そうですね。やりましょうか(笑)。

リディラバとは?

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リディラバは、「社会の無関心を打破する」をテーマに、社会問題をスタディツアーにして発信するプラットフォームです。

ひとりひとりがもっと気軽に社会問題の現場を訪れ、理解し、解決の方法まで考えられるようにすることを目指します。

社会をよりよいものにしたいと願う皆さんの“思い”を“カタチ”にするお手伝いをします。

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