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「NTT法の見直しに関する意見表明」の記者発表(全4記事)

【全文3/4】NTT法廃止は国の将来を左右する大問題 大手3社が「5年、10年先を考えないと必ず後悔する」と語る理由

2023年12月4日「NTT法の見直しに関する意見表明」の記者発表が行われ、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟の4者の代表が、NTT法廃止に対する反対意見を表明しました。本記事は、発表会見の動画をもとにした全文書き起こし記事となります。

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■記者発表会見の動画はこちら

完全民営化によって最も影響が出る事業は?

司会者:ご質問のある方は挙手をお願いいたします。それでは司会側前から2列目の白い方ですね。

質問者4:テレビ東京のタナカと申します。よろしくお願いいたします。髙橋社長、宮川社長、三木谷会長、それぞれにおうかがいしたいんですけれども。このNTT法が見直され完全民営化されるとなりますと、具体的にどのような事業に最も影響が出るとお考えになっているでしょうか? お願いします。

髙橋誠氏(以下、髙橋):これは先ほどプレゼンテーションをさせていただきましたように、公正競争の維持が担保できなくなりますと、各社が進めている通信サービスすべてに影響が出る可能性があると思います。

特にモバイルサービスについては当たり前ですけれども、その根幹となる特別な資産をNTTさんがお持ちになっているので、それに影響するサービスすべてに影響が出てくる可能性があると思います。ただこれは本当に5年、10年先を考えてこういう政策をやっていかないと、必ず後悔することになるかなと私は思います。

宮川潤一氏(以下、宮川):一言で言うと、国民の生活すべて、それから企業の経済活動すべてです。もうほとんど毎日のように、すべての国民はNTTさんの光ファイバーの中継網を通って電話もかけていますし、インターネットもしています。

それから企業の経済活動も然り、1通のメールさえも、すべてこの「とう道」(通信用地下ケーブルを大容量で収容できるトンネル形式の通信土木設備)の中を通って通信をしています。この影響があるかたちで言うと、いち民間企業の経営状態によって、その料金が決まってしまうことを指しています。

三木谷氏「国の将来を左右する大問題」

髙橋:三木谷さん、お願いします。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):はい。先ほど冒頭に申し上げさせていただきましたとおり、やはりこのスマホだけに限らない情報通信、もうある意味リアルなインフラよりも重要なインフラだと思うんですね。

そのインフラに対してどうやって本当に便利で安くて、競争がちゃんとあるサービスを提供していくのか。これは国の将来を左右する大問題だと思っております。なので宮川社長がおっしゃったとおり、スマホだけじゃなくてすべての企業、すべての家庭、すべての日本人、あるいは日本にいる人々に多大なる影響のある重大な案件だと思っています。

髙橋:今、本当にこういうご質問をされることがすごく大事だと思うんですよ。だからこういう質問、あるいは何に影響するかということも、実はオープンに議論できないんです。こういうことをやはり国民の方々に訴えかけていきたいし、どんな影響があるのかをぜひともたくさん聞いていただいて、答えることによってオープンにしていきたいというのが我々の思いです。

SNSでの意見表明に留まらず、記者会見を行った意図

質問者4:ありがとうございます。もう1点、みなさんにあらためておうかがいしたいんですけれども、以前、三木谷さんをはじめ、SNSでも反対の意見を表明されていましたけれども。あらためてこういった場でみなさんが揃って反対の意見表明をするということの意味を、どのようにお考えでしょうか。

髙橋:三木谷さん、トップバッターお願いできますか。

三木谷:やはりソーシャルメディアはソーシャルメディアとして非常にパワフルですし、拡散力もあるんですけれども。こういう正式なかたちで関係者が集まって意見表明をさせていただくことで、正式に関係各所、そして政府に対して再考をお願いしたいということだと思っております。

今日ここに出ております181者だけではなくて、髙橋社長がおっしゃいましたとおり、これは全国民、すべての日本に住む人々、中小大問わず企業に影響がある非常に重要な問題であると再認識していただくために、このような会を開かせていただいていると認識しております。

宮川:何度か我々も総務省さんの中、自民党PTの中で発言をしましたけども、なにかしらのメディアさんから我々が目にするものは、我々の意見は通っていないし、まったく聞く耳を持っていないのかなと感じましてね。ですから今日、あえてYouTubeも入れさせていただいたのは、やはりダイレクトに我々の考え方を伝えたいという思いで今日の会見があります。

髙橋:今回のXの投稿ですけど、あれは本当に3社で示し合わせてやったわけではなくて、本当に順番につぶやいてみたんですけど、結果的に良かったことは、あの後にNTTさんが公式のXで反論をされたじゃないですか。実はこういう議論もなかなかオープンにならない。

だからああいうふうにご意見を言われると、今日宮川さんもご自身でご説明されていましたけど、我々も今日のプレゼンテーションの参考資料をもって「こういう課題をおっしゃっているので、こういうふうに考えます」としっかり言うことができるんですね。

こういう会話を世の中に、ちゃんとオープンに出していくことが大事なので。今回のXのやり取りは結果的に良かったと思いますが、実際にはそういうことではなくて、やはり正式な場でこういう議論が固められることが非常に大事ですし、みなさんにもしっかりと聞いていただければありがたいなと思います。

質問者4:ありがとうございます。

NTT法が廃止されることへの各社の懸念点

司会者:続きまして、ご質問がある方は挙手をお願いいたします。入口側後列の青いシャツの方、お願いします。

質問者5:朝日新聞のマツモトといいます。よろしくお願いします。大きく2点、うかがいたいんですけど。まず13ページのところで、提言がオープンになっていない中で恐縮なんですけれども、例えば公正競争のところで言うと、提言の中にはどうやらNTTドコモとの統合禁止であったりとか。

2点目のユニバーサルサービスで言うと、撤退の禁止についても一応規制がかかるような方向で記述があるようなんですけれども。やはりそれでもなおいろんな懸念が残るということでこういう反対の表明をされていると思いますが。具体的にそういった規制がなされた上での懸念は、どのようなものがあるのでしょうか。

2点目として料金の値上がりのところなんですけれども、こちらも現状の電気通信事業法でも「光ファイバーを公平に貸していきましょう」というような規定があって、今回NTT法の改正にはそちらは特に盛り込まれていないというか、あまり関係ない、関わってこない部分だと思うんですけれども。

それでもなおいろんな規制をくぐり抜けて、いろんな料金が値上がりしてくるだろうという懸念の表明だと思うのですが、規制の改正によって値上がりはどういうケースが想定されるのかと、もし具体的に何かイメージされているものがあれば教えていただけますでしょうか?

髙橋:1点目でございますけれども、おっしゃるように提言内容はまだ我々は正式に見ていないのでよくわかりませんが、メディアの方がたぶんブリーフィング(簡単な報告・事情説明)とかを受けられているんだと思うんですけど。

その内容によると基本的に「NTT東西とNTTドコモの統合はしない」と法律に明記していきたいと書かれているんだと理解しています。

ただNTT法というのはNTTの持株も含めての記載がされている内容でございまして、我々は実はNTT東西とドコモの統合に対しても懸念はしていますが。今回このNTT法がなくなってしまうと、NTTグループに対する牽制機能が大きく低下するかたちになりますので、先ほどのプレゼンテーションにありますように、巨大なNTTに回帰することを非常に懸念しています。

NTT子会社の存在によって、公平性を保つのは難しくなる

髙橋:これが本当に起こった場合には、やはり公正競争の維持はできないと思いますし、どうもやっぱりNTTのあり方についての議論を、NTTさんはすごく避けられる傾向にございまして。

そもそもNTTさんには電気通信事業界をしっかりと引っ張っていただけるような存在であってほしいなという思いもありますし、そういう観点からぜひともこのあり方については議論いただいた上で、NTT法のあり方についても議論をしたいという思いでございます。どうでしょうか?

宮川:2番目の話についてちょっとだけ付け加えさせていただきますと、事業法に書いてある公平原則というのは、市場の中で50パーセントのシェアがあるかないかという規制があります。

これからその一体化がもし行われれば、「この分野はどこどこの会社に一部譲渡して」といったかたちでの回避は可能になりますから、そういうのは絶対に駄目だと思っています。

髙橋:三木谷さん、いかがですか?

三木谷:はい。NTTドコモと東西との合併がないと言ってもですね、100パーセント子会社なわけですよね。よってこの利用料なり接続料の利用条件は行って来いなので、じゃあ公平に全社に対して30パーセント値上げしましたということは、これは公平公正なのかということですよね。

それから現実的にはそれ以外にも、先ほど村田さんがおっしゃったとおり料金だけではなくて、自社の子会社。当然100パーセント子会社のほうがかわいいわけですから、そちらを優先することになると思いますし。場合によっては、いろんな会社に対してNTTが作ったこの通信網を使うように、半ば強く行っていくということなんですね。

言い方は悪いですけど、私がもしこれだけフリーハンドでやれるのであれば、NTT東西、光ファイバーの利用料を20パーセント上げるだけでたぶん莫大な利益が出るんだと思うんですよね。でもそれを今回の電気通信事業法の中で牽制することも書いてありませんし、規定するのは難しい。

そういうことを総合的にモニタリングしていくのがNTT法ということなので、やはりNTT法は単なる電気通信事業者(だけの問題)ではないという認識であります。ここにおいてはもう一度強く強調させていただきたいと思います。以上です。

村田太一氏(以下、村田):過去、いろいろなNTTさんの保有するダークファイバーや局舎内のスペースを借りるかたちでサービス提供をしたりしているんですけども。その場合って借りているコストよりも安く応札してくるとか、いろんなグループの体制の中でそういったことが今現在も行われているわけでございまして。さらにそのへんが進んでしまう懸念があるのではないかというのが一番の脅威な点でございます。

髙橋:それが大きな課題ですよね。

ひたすら空中戦が繰り広げられる中、今後の展開は

司会者:では続きまして、ご質問のある方は挙手をお願いいたします。真ん中の入口側、2列目の方。

質問者6:フリーランスのイシカワです。よろしくお願いします。次にどういう展開にしたいのかを教えてください。これはNTTが一方的に発表をして、自民党のプロジェクトチームの提言が報道されて、今回こういった説明があってという、ひたすら空中戦が繰り広げられているんですけど、どうしたらいいのかを教えてください。

髙橋:ちょっと我々も今後の展開がよくわからないところがあるんですけど、本来であれば、これは防衛財源の話でもなくなっているので。やはり総務省の管轄だと思うので、この審議会も立ち上がっていますので、この場でしっかりと我々の意見も聞いていただいて、公開をし、また有識者を入れたかたちでの議論が行われるべきだと思います。

ただこの提言で、もうNTT法廃止が決まったと言われることに対して非常に違和感があります。本来であればそこから総務省さんが議論を引き取ってやっていただけるのが一番理想だと思うんですけど、提言が具体的に出たら、そのように正式に総務省さんにはお話しに行かなくてはいけないだろうなと僕は思っています。

宮川:2025年を目処にという表現でもし書かれてあるとしたら、2025年を目処に議論をするんですけども、私どもはもう一切この話について引くつもりはありませんから、とことん議論をしていただいて、とことんお付き合いしますと。

それが2025年でまとまるとは僕は思っていませんけれども、これが10年かかろうが、20年かかろうが議論にはお付き合いします。次の社長にも必ず伝言しますから、そういうかたちでずっと延々と話し合いをやりたいということです。

政府が問題を真剣に捉えて議論していく必要がある

髙橋:三木谷さん(お願いします)。

三木谷:はい。何回も申し上げますけれども、これは単純な携帯事業者、通信事業者の話じゃなくて、国民、国のあり方を左右する最も重要な問題の1つだと思っております。与党の意見とそれから内閣、総務省、そして総理がこの問題を真剣に捉えてしっかりとした議論をした上で、この問題に対する方向性を決めていくことがとても重要だと思うんですね。

ここで禍根を残してはいけないと思っております。海外、アメリカでは今1ヶ月あたりの使い放題の携帯電話が100ドルを超えてくるような、日本の今の換算レートで言うと1万5,000円ぐらいという状況になっております。

国民のみなさんにとってはわかりにくい問題かもしれないですけれども、そのような危険性を含んだ事案であることをしっかりと国民の方に理解していただいて。そしてテレビでも取り上げて議論をしていただいて、その上で与党、そして内閣、そして総理には「新しい議論を起こそう」という判断をしていただきたいと思っています。

村田:やはり地域の情報発信機能を継続的に提供できる事業者を確保すべきだということでございまして。そのへんが確保できるような仕組みをみなさんで議論をしていただいて考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

質問者6:これは国民の関心を引くためにも、例えばどこかのメディアが議論する番組を作ったら、みなさんは出ていただけますかね?

髙橋:当然そのような場には参加できるようにしたいと思います。ね?

宮川:髙橋さんが(笑)。

髙橋:また(笑)。まぁまぁでも本当に、どういう場が設定されるかわかりませんけど、できるだけの理解を得られるような場は必要かなと思いますね。

質問者6:ありがとうございます。

いまだ不透明な、NTT法を廃止する必然性とは

司会者:続きまして、ご質問がある方は挙手をお願いいたします。では入口側、前から2番目のジャケットの方ですね。

質問者7:NHKのヤマネと言います。よろしくお願いします。髙橋社長を代表してでも、3社のトップの方でもお答えいただければと思うんですけども。自民党の提言案でまだ公式には出ていないですけど、一応他の法律を改正して、公正な競争環境やそのユニバーサルサービスを担保でき次第というような、一応条件みたいなものがつくのではないかとされているんですけども。

今日の4社のお話をうかがうと、NTT法はそもそも他の法律ではもう担保できない位置づけのものなんじゃないかというご説明だと思うんですけど。

この提言案に入っているとされるその担保措置の条件で担保できるとお考えかどうかということと。あと2025年を目処にという、その年限が区切られたことについてどう受け止めてらっしゃるかをうかがえればと思います。

髙橋:基本的にNTT法の廃止に反対というスタンスであるのと、実は提言内容の担保措置は、だいたい想像はつくんですけど、今のところまだ明確に書かれたものを見ていないので、ちょっとなんとも言えないです。

ただ申し上げましたように、防衛費の問題から始まって、今NTTさんが求められているのは技術開示の問題だったはずじゃないですか。そこについてはNTT法の改正をすれば済むということも、たぶんみなさん認めてらっしゃるんですよね。それ以上のNTT法廃止を、なぜ今議論しているのかよくわからないんですよ。

例えば外為法とか、いろんな担保措置をしてとおっしゃるんですけど、なんでそれを今やらなきゃいけないのか。それをやってでもNTT法を廃止したいとおっしゃっているということは、その担保措置以外にもなにか大いなる目的があるんだろうなと、推測せざるを得ないと思うんですよね。

やはり強大なNTTさんへの逆行を目指してらっしゃるのかもしれないし、それは公正競争の維持を担保することにはならないので。技術開示の問題で始まった問題だから技術開示をクローズすれば、なにも廃止の議論をする必要はない。

万が一本当にそれをやりたいということであれば、ちゃんと何が問題なのかを有識者も含め、あるいは先生方やいろんな方も含め、ちゃんと議論した上でやらないと、今言われている担保措置だけでは足りないのかもしれないですし。そんな議論が必要なんじゃないかと僕は今思っているところです。宮川さん、どうでしょう?

廃止することの“裏の意図”を疑う声も

宮川:僕もまったく一緒で、結局担保されればということであれば、そもそもなんで廃止しなくちゃいけないのか。国会の大事な時間を使って、そんな面倒くさいことをこれから一生懸命やるよりは、NTT法の一部改正だけでやりたいことはできるわけですから。

わざわざ他の法律で「この条文にこう書いてあるから、これが担保されます」という議論を重ねることすら無駄だと思うんですよね。ですからもっとシンプルに、今NTTさんが事業をやる上で「困った」と言われることについて我々も「わかった」と。ここは181者すべてが理解しているわけです。

だったら一部改正で終わるべきだと思うし、NTT法をどうしても廃止しなくちゃいけない理由を、我々は穿って考え始めちゃっているということです。政府の中で2025年という目標まで設定しながら、どうしても取り決めなくちゃいけない理由があるのかが未だに理解もできていませんし、飲み込むつもりもありません。

髙橋:三木谷さん、お願いします。

三木谷:はい。髙橋さんと宮川さんがおっしゃったとおりで、そもそもなぜ廃止しなくちゃいけないかわからないということと、そしてやはりどこまでいっても、NTTのこの特別な資産を広くオープンに、安価で使えることが国の経済の発展のためにとても重要だと思っております。なのでそれを電通法に変えたいということであれば、そこに何か意図があるんだろうなと思っています。

それはもしかしたら大NTTへの復活ということなのかもしれませんけど、それはそれで技術発展という意味においては、ガラパゴス回帰という意味でけっこう危険だとも思っております。

まとめて言うと、そもそも技術開示の話であれば、なぜそのNTT法を廃止しなくちゃいけないのかわからないと。もっと言うと、この防衛費に充てるというところの入口も、もしかしたら何かの意図があって、このNTT法廃止を目的として始まった議論なのかなとさえ、ちょっと疑っております。以上です。

村田:電気通信事業法はいわゆる通信事業者一般に対する法律だと思うのですが、先ほどから申し上げたように電柱とか管路等の特別な資産、公社から引き継いた国の資産、これを独占的地位を持っておられるNTTさんには、やはり特別な規律が必要なのではないかというのが私どもの考え方でございます。以上です。

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