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「NTT法の見直しに関する意見表明」の記者発表(全4記事)

【全文2/4】NTT法廃止に通信事業者が反対するわけ 強大なNTTが「先祖返り」することへの懸念

2023年12月4日「NTT法の見直しに関する意見表明」の記者発表が行われ、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟の4者の代表が、NTT法廃止に対する反対意見を表明しました。本記事は、発表会見の動画をもとにした全文書き起こし記事となります。

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■記者発表会見の動画はこちら

NTT柱を借りているケーブルテレビ

司会者:それでは、これより質疑応答の時間とさせていただきます。

まずは会場からご質問をお受けし、その後、オンラインでもお受けしていきたいと思います。会場でご質問のある方は挙手の上、指名された場合は係員がマイクをお持ちしますので、媒体名とお名前を頂戴した上で、ご質問をお願いいたします。では入口側、前から3番目の方、お願いいたします。

質問者1:日本経済新聞のサトウです。村田さんにお聞きしたいことがあります。ケーブルテレビは電柱・管路を利用するかたちで提供しています。それがNTTに利用申請をすると拒否される事案が多くあるとおっしゃったと思うのですが、これについてご解説お願いします。

村田太一氏(以下、村田):ケーブルテレビで光ファイバーなどの回線を接続する際に、回線接続、敷設のために、NTT柱をお借りしています。先ほどのプレゼンの資料の中で、NTTさんが1,190万本の電柱を保有されているとあるのですが、そのうち今主力の200ケーブル事業者でだいたい220万本以上をお借りしています。

これを使わせていただきたいという申請を都度上げるわけですが、場合によって拒否されるケースや、申請してから非常に時間がかかるケースがあり、これによってインフラの敷設スケジュールなどが滞ってしまうケースもあるということです。

質問者1:その拒否の理由はどういうものでしょうか?

村田:例えば重量制限があるとか、あるいは新設の柱の場合に新設の登録が済んでいないとか、NTTさんの資産に計上されていないとか、いろんなケースがあります。

オープンな場での議論を求める理由

司会者:続いて、司会側の前から4番目の方、お願いいたします。

質問者2:読売新聞のオノと申します。いずれも髙橋さんか通信の3社のどなたかかと思いますが、2点お願いします。まず要望で、広くオープンな場で議論していただきたいというのは、果たして何なのかをおうかがいしたいです。

おそらくみなさん(自民党)PT(プロジェクトチーム)でも意見を述べられて、たぶん自民党としてはある程度外部の意見を聞いたという立場だと思うんですけど、よりオープンな場というのは果たして何なのか。具体的なものがあれば教えてくださいというのがまず1点目です。

2点目は、PTの提言案ですと、ユニバーサルサービスの中で、提供事業者をNTTだけではなくKDDIさんとか、ソフトバンクさんとか、事業者を対象として広げていくべきではないかという内容があって、そのあたりについてどのようなお考えかをお聞かせください。

髙橋誠氏(以下、髙橋):まず1点目のオープンな議論ですけど、我々は、本件が課題として起こってから、一度総務省さんの審議会にお呼びいただいて、発言の機会を得ています。

その時の内容は議事録などで公開されていますが、そこで1回ヒアリングを受けたわけです。実は提言書の内容を我々はまだ一切見ることができていません。どこにも公開されているものがないんです。

その中で急遽、土曜日か日曜日に各メディアさんが一斉に掲載されたのを見て、具体的に「あぁ、こういう提言なんだな」と思っています。

少なくとも我々キャリアは(総務省の審議会に)呼んでいただいてヒアリングを受けていますが、それ以外のPTの議事の内容は一切知らされていないんですよね。

当然我々も知らないぐらいなので、国民の方たちもわからない。ですから、これはどういう問題が内在していて、それについてどう解決しようとしているのかについて、一切国民は知らされていないんです。これをオープンにしなきゃいけないと思っているというのが1点目のご回答です。

「GAFAMと対抗する」はレイヤーが違う

2点目は、これは言葉がすごく難しいですが、ユニバーサルサービスとラストリゾート義務というのがあります。

ラストリゾート義務は、サービス提供者が、例えば誰もいないエリアにおいて撤退せずに提供する、担保を取る義務ということです。特別の資産をお持ちになっているNTTさんなので、自分の都合だけで撤退できないという義務を課されているものなんですね。

これは1,500万か6,000万かという議論があるようですが、我々が総務省さんに問い合わせると、IP電話を含めてまだ6,000万の加入電話があり、今も使われているので撤退をすることができないという、ラストリゾート義務についてはしっかりとNTTさんに持っていただきたいということですね。

ユニバーサルサービスについて、要請が出ることについては別に悪いことではないので、他の事業者も入っていくことについては議論していけばいいのではないかと思います。そんな感じですかね。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:続きまして、最前列の入口側の方、お願いいたします。

質問者3:ありがとうございます。NewsPicksハタニと申します。私からも2つお願いします。いずれも髙橋さん、宮川さん、三木谷さんへの質問です。みなさんNTT法廃止には反対で一致していると理解していますが、法改正の部分はちょっと温度差がある気がします。それぞれどこまでの改正なら認められると思っていらっしゃるのかが1つ目です。

2つ目が、直接NTT法は関係ない話かもしれませんが、みなさんふだんビジネスでバチバチやり合っている関係で、決して仲が良いとかそういう話ではないかと思いますが、みなさんが揃って会見をされることをどこの社が言い出してこういう場に至っているのかについて、お願いできればと思います。

髙橋:1件目は、先ほど申し上げたように技術開示の件について、もともとNTTさんは「技術開示義務が法律上規定されている」とおっしゃったんですね。

法律を読んでみると普及の義務と書いてあるだけなので、本来であれば法的解釈で十分いけるのかなと思ったんですけど、どうしても「これを廃止したい」とおっしゃっていると。NTTさんの国際競争力をつけるためだと。

この国際競争力というのがすごくわかりにくくて、GAFAMと対抗するとおっしゃる方がいらっしゃるので、ちょっとレイヤーが違うじゃないですか。光電融合、IOWNとは違うので、どうやって対抗するのかなというのは非常に疑問があるんですよ。

なんだけれども、国際競争に寄与するということで、廃止をこの法律の改正でやられるのであれば、これについては我々としては反対しませんよと表明しています。

KDDI以外の3者の考え方

髙橋:これについて宮川さん、いかがですか?

宮川潤一氏(以下、宮川):この改正の中で、何までは認められるのかという話でいくと、もちろん技術開示は必要ないと思いますから、それはもう改正すればいいと思います。名前も変えたいという話だったので、勝手に変えればいいじゃんとも思っています。

ただ、僕がさらに強化すべきだと思っている点は、ユニバーサルサービスについては、メタルの電話ではないと思います。それはもう言い分そのとおりだと思っていますが、光ファイバーのユニバーサルサービスコストを今こそもう一度強化し直して、将来の日本のために備えるべきだと思っています。「もうちょっと追加したらどうだ」という考え方が僕の中では多いですね。

髙橋:三木谷さん。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):髙橋社長、宮川社長とまったく同意見です。本来であれば、このNTT法で縛られているのはNTT持株とNTT東西だけですから。

いろんなところで開発をされてらっしゃると思いますので、もし本当に開示義務があるということであれば、別に持株のところで研究開発をしなくても、できるのではないかという感じもありますが、いわゆる開発状況、そして技術の詳細に関する開示については改正してもいいのではないかなと思っています。

誰が言い出したかということよりも、これだけの事業者の人々が反対しているということは、それだけ重大な、日本の将来を左右する大きな事案であるということの示唆ではないかと思います。

髙橋:じゃあ(村田さん)お願いします。

村田:みなさまのご意見とほぼ同一ですが、特に強調させていただきたいのは、やはり先ほど申し上げた公社設備の競争的利用で他社に対する独占的地位を強化されるという恐れがないように、電気通信事業法による規定については、組織についての規定をNTT法でぜひ残していただきたい、分離分割の規制を残していただきたいというのが特に強調したいポイントです。

強大なNTTが先祖返りすることへの懸念

髙橋:あと、2点目については誰からというわけではないですけど、こういう重要な課題については各社で情報交換をしておりますので、あくまでも競争と協調の、協調の領域で、あくまで競争を阻害しない範疇でやらせていただいています。

1つだけ言いたいのが、もともとNTTさんのネットワークを公正に使おうという時に、我々はドコモさんも交えてやっていたんです。楽天さんはまだ入られていなかったかもしれませんけど、ドコモさん、ソフトバンクさん、そして我々で。

みんなで集まってしっかりとNTTさんに対して例えばアクセスチャージをするとか、あるいは相互接続をどうするんだと議論をしていたんですよ。

しかし、この2020年にドコモさんが(NTTさんの)100パーセント子会社になってから、もうドコモさんはこっち側のサイドでは議論してくれなくなったんですよね。ストラクチャーの変更というのはそういうことなんですよ。

今回のNTT法廃止がもしも実現されてしまうと、そのような強大なNTTさんに、もしも先祖返りされてしまうとそういう議論の場さえ失われてしまうんじゃないかというのが我々の大きな懸念です。これは必ず国民のサービスに直結した話になりますので、そのあたりをぜひともみなさんにご理解いただきたいなと思います。以上です。

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