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未来の社会に投資する ~ビジネス×NPOでつくる社会的インパクト~(全3記事)

儲けるだけが仕事ではない「社会的インパクト」の重要性 ビジネス×NPOで考える、未来の社会に“投資”する方法

株式会社SAKURUG主催で行われた、「未来の社会に投資する~ビジネス×NPOでつくる社会的インパクト~」のイベントの模様を公開します。日本ファンドレイジング協会代表理事で寄付月間推進委員会副委員長を務める鵜尾雅隆氏と、寄付月間2021にて賛同パートナー賞を受賞し、NPOと様々な協働をおこなうサクラグ代表遠藤洋之氏が登壇。「企業とNPOの協働でつくる社会的インパクト」について議論されました。

社会貢献の仕方の可視化

鵜尾:遠藤さん、今のSAKURUGが何ができるかというところで私、あらためて今回SAKURUGのWebサイトを見たんですけど、SDGs/DEIのページがすごくいいなと思って。これ、共有できますか?

遠藤:ありがとうございます。

司会者:はい。共有させていただいています。ありがとうございます。

鵜尾:ゴールが出ていて、そのゴール1個1個について、自分たちがやっていることを書いてあるんですけど、この切り口が非常に多様で、例えば左上の「すべての人に寄健康と福祉を」のところでは「iPS細胞研究所に寄付しています」とある。

これって大事なポイントがあって、ここで「iPS細胞研究所に寄付しています」と言うことで、そうか、SAKURUGのみなさんはiPS細胞研究所に寄付をしているんだなという信用補完になるんですよね。「そっか、ちゃんと企業の人たちが選んで、ここがいいなと思ったんだな」ということだから、こういうのをこっそりやらずに、ちゃんと出すということはすごく大事です。

同じ並びに(ジェンダーの平等を実現しようの項目で)「育休明け復帰率100パーセント」という環境づくりがある。これは自社でできることじゃないですか。これも実はさっきの寄付の選択肢の中で言うと、社会に価値を寄付している感じなんですよ。企業ってこんなことができるよねという価値情報を、社会に対して寄付している。

だからこれを見て他の企業も「そうか。こういうことをうちも言い切ろうかな」と思うわけです。というような軸で、いろんな社会貢献の仕方を可視化させているところが、非常にいいなと思いました。

遠藤:ありがとうございます。そうやって言われると恥ずかしいところもありますけど、でもこのページは良くも悪くもじゃないですけど、僕自身はノータッチで。コンセプトと「前に出してほしい」という依頼だけして、DEI推進室の今一緒に映っている木村が、諸々進めてくれているので、木村含めメンバーのみんなに感謝したいなと思いますね。

儲けることだけが仕事じゃない時代に

鵜尾:すばらしい。こうやっていろんなアワードを受賞していこうとか、認証を取っていこうとかというところも、社会の中でこういうテーマに関する関心や理解を広める上では、重要なことだと思うんですよ。

パートナーシップをいろいろ組んでやっていこうとか、やはりこういう発信をまとめてしていくのって、「自社が社会貢献をしています」じゃなくて、結果として「世の中を変えていきたいな、よくしていきたいな」というメッセージなんです。そしてそれは自社だけじゃできない。さっきのNPOとのパートナーシップの議論で言うと、いろんなプレーヤーと組んででも、とにかく前に進めて行きたいなという意思の表れだから、これはすごくいいなと思いましたね。

遠藤:ありがとうございます。やはりトップのメッセージってすごく大事かなと思っていて。何かやっているけど、ただやっているだけで終わらないようにするために、僕自身こんなことを思っていて、こんなことを大事にしていて、実際自分ではこういうことをしているよというのを伝えること。この館山のボランティアに参加した時なんかもそうなんですけど、やはり自分が何を大切にしているというのを伝えること。これもトップの仕事かなとは思っていますね。

鵜尾:インパクト投資の話がありましたけど、ちょうど去年岸田政権で新しい資本主義実現会議というのができて、実はあれの方針というか考え方って、英語にも訳されているんです。海外に流すとめっちゃ評価されるんですけど。

何が評価されているかというと、資本主義の未来のかたちというのが、今までの「投資して経済的リターンがある」というだけじゃなくて、インパクトという評価軸がこれから重要になってくるから、そこを入れていかなきゃいけないんじゃないかというのも入っているところなんですね。

経営者とか企業が結果として、どういう社会にポジティブなインパクトを生み出したいのかという中にビジネスもあるし、ビジネスを使った社会貢献もある。ビジネス外でいろんなパートナーシップを、持っているチャネル、人員を使ってやれることってあるじゃないですか。

全体捉えて1つの企業体だ、みたいな。別に儲けることだけが仕事じゃないという感じが、やはりこれからの時代すごく大事になってくる気がしますね。まだこういう取り組み、新しいと思いますけど、むしろこれから世界はその方向に行くんじゃないかなという気は、すごくしますね。

未来を見ているNPOが企業とパートナーシップを組むメリット

遠藤:僕もまったく同じことを思っていて、僕自身、自分の思いの根源にあるのが不平等さというか、自分で変えられないものに対しての不平等感みたいなものなんです。

例えば支援をさせていただいているLGBTQ関連の団体さんであったり、幼児虐待に取り組まれているの団体さん、難民とかいくつかあるんですけれども、自身が変えられない環境で不平等が生まれてしまうことに、憤りじゃないですけどすごく感じるものがあって、それを解消したいなという思いは強くあるんですよね。

鵜尾:なるほど。やはりその感覚の中で事業を経営されるのっていいと思うし、今回のサブタイトルが「未来の社会に投資する」じゃないですか。日本だと投資という言葉を聞くと、投機的に「投げる機械」みたいに思われちゃうんですけど、もともと英語ではinvestだから、語源的には「ベストの中に入れる」、自分に取り込むということだと思うんですよ。

遠藤:なるほど。

鵜尾:投機、投資と言うと「投げる」感じなんだけど、本当はInvest(投資)はベスト(チョッキ)の中に入れるというニュアンスがあると聞いたことがあります。未来を自分の中に取り込んで自分のリソースを考えるということじゃないですか。人生であり経営であり。未来の社会のかたちを自分たちの戦略の中に取り込んでいく。それが単に「どれが儲かりますか?」だけではない、社会そのものを見ていくというのがすごく大事ですよね。

NPOはどちらかというと未来をすごく見ていると思うんですよ。未来の社会を見ているけど、その分未来を見すぎていて足元の日々はけっこう大変(笑)というところがあるので。

だから企業とパートナーシップを組むことで、実務的な今が担保されながら、未来とか本当に貧困の状況をどうしていくのかというところを対話していくと、お互いの強みと得意技が掛け合わさる感じがしますね。

個人のファーストステップは「現場に触れる機会」を得ること

遠藤:そうですね。あとすいません。ちょっと戻っちゃうんですけど、NPOと企業の協働のところで、企業ではなく個人が何かしたいなと思った時に、どんなアクションがあるのかなと思って。何かしたいけど何ができるかなという人もいると思うんですよね。

鵜尾:結局、個人って本当に多様じゃないですか。さっき遠藤さんがおっしゃったように、自分の中で「これだな」と心が震えるみたいなものがある。それが見つけられた人というか、頭で考えるよりも、心が動いて首から下が動いちゃったみたいなのがあると、そこでスイッチが入るから動機ができますよね。

例えば今、(遠藤さんが)水を飲まれましたけど、喉が渇いたら水を飲むというのは、欲求が出て水を飲むということじゃないですか。でも社会貢献って、別にやらなかったら明日乾ききって死ぬわけじゃないから、何かやはり内発的な欲求みたいなことが、出てくる必要があるんですね。これをどうやってまず作るかだと思うんですね。それが、第一歩としてあるということ。

それがさっきの企業が社会貢献に社員参加させる機会を作る意味があるということなんですけど、やはり接点を作らないと、やってみないとわからないというか、本を読んだことがない人が読書が趣味になるはことないし、映画を観たことない人が映画鑑賞が趣味になることはない。まずは現場に触れる機会とか、応援する機会を得るというのが、大事なステップなんだろうなと思うんですね。

そこで関心があったところからまたいろいろ選択肢があって、もちろん寄付するのもそうだし、ボランティアするのもそうだし、でももう1個手前に関心を持ち続けることが、実はすごく重要なことだと、私はやってきて思っていますね。

関心を持ち続けることの重要性

鵜尾:マザーテレサというノーベル賞を取られた方がいましたけど、彼女が言う社会貢献の「愛」「フィランソロフィー」って、語源的には人類に対する愛なんですね。友だちや家族、パートナーを愛するのはわかるけど、人類愛って何なの? ということについて、彼女は「愛の反対は憎しみじゃなくて無関心だから、関心を持ち続けることが愛の第一歩だ」と言う。自分の友達でも家族でもない人に、関心を持ち続けることが、すごく重要なんだろうなと思いますね。

遠藤:関心を持ち続ける。そのために何か自分でしてみるということですよね。

鵜尾:そうですね。何か活動の現場を見に行くのでも、D×Pの今井さんとかの方の部分の話を聞くというだけでも、その中で心が震えることがあれば、それがスタートラインだと思います。

試しに月1,000円でもいいからマンスリーサポーターに寄付してみると、いろんな情報が来るので、それをずっと見ているだけでも、新しい自分の中の眠っていた脳内細胞が動き始める、みたいなことがあるんだろうなという感じがしますね。

遠藤:しますよね。それで僕、鵜尾さんと最初にお会いしたのがまさにその流れでした。一番最初PEADの。

鵜尾:PEADのね。災害支援の。

遠藤:はい。災害支援の社団法人のメンバーと一緒に行った時に、鵜尾さんとお会いすることができました。それの1年か2年前、さっき写真にもあった館山の台風被害の時に、僕は地元が千葉でもあるので、SAKURUGメンバーと何人かでボランティアに行きまして。まさに「百聞は一見に如かず」だなと現地で思いました。こんな大変なことになっているのかと。

実際、社員旅行で泊まったホテルにも行って、そこがボロボロになっていてすごい衝撃を受けましたし、そこからPEADに入らせていただいた。それでピースウィンズの大西さんとのお時間をいただけることになって、そこで鵜尾さんともお会いすることができた。自分で行動して思い続けて何かをしていると、いろんなご縁が生まれるんだなという。鵜尾さんの話を聞いていてすごくウワーッと思いました。

1人の物の見方やパラダイムが変わることの影響力

鵜尾:PEADもおもしろい仕組みで。やはり私も何か出会いの連鎖みたいな。私も昔JICAというところで働いていて。ODAをやっている政府系の機関なんですけどね。その時にオフィスの中に同僚が1,600人くらいいたんですね。

今は、ファンドレイジング協会をやっていて、本当は一緒にやっているのは、数十人という感じなんですけど、このセクターにいると、同僚が10万人いるみたいな感じなんです。なにかどこかでみんなつながり合って、いざという時に助け合って、「大きなところで見ている社会観が一緒だ」みたいなところがある。この伝導性がやはりSDGsの影響もあって高まっているというか、人と人がワーッとつながって連鎖していく感じが速い。

遠藤:そうですね。

鵜尾:アンテナを立てていると、どんどんいろんな接続ができますよね。

遠藤:さっきの自分でした質問の一部の答えにもなってしまうんですけど、個人が何かできるのかということで、僕、先日難民系の支援をされているWELgeeさんというところで、実際に難民として来ている方とお話をさせていただいた。それで実際に見て、会って、話さないとわからないことがたくさんあるなと思って、(それ自体が)何か小さなアクションかなと思いました。

鵜尾:そうですね。一個人ってみんなすごく小さいと思うじゃないですか。

遠藤:思います。

鵜尾:私は、1人の人間の物の見方とかパラダイムが変わるって、ものすごく大きいと思っているんですね。やはりその人が変わると周りも影響を受ける。遠藤さんが変わると社員の方がみなさん変わるように、あるいはPEADもそうだけど、企業経営者同士でお互い影響されるように、やはり社会を変えるというのは、新しいビジネスモデルとか新しい法律ができるというのも大事なんですけど、もう1個、人間の物の見方が変わるということなので。

物の見方を変えるには大本営発表みたいな放送があるというよりは、周りの人が「なんか変わってきたな」みたいなことで、結局我々の空気も変わるので、一人ひとりが言葉を持つとか、感覚を持つということはすごく大事。そのためには遠藤さんがおっしゃるとおり、関わるということが大事です。

遠藤:そうですね。

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