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未来の社会に投資する ~ビジネス×NPOでつくる社会的インパクト~(全3記事)

「社会問題を自分から作っちゃいけない」という思い NPOで起きている「働き方」の意識の変化

株式会社SAKURUG主催で行われた、「未来の社会に投資する~ビジネス×NPOでつくる社会的インパクト~」のイベントの模様を公開します。日本ファンドレイジング協会代表理事で寄付月間推進委員会副委員長を務める鵜尾雅隆氏と、寄付月間2021にて賛同パートナー賞を受賞し、NPOと様々な協働をおこなうサクラグ代表遠藤洋之氏が登壇。「企業とNPOの協働でつくる社会的インパクト」について議論されました。

「会社が成長するだけでいいのか」という思い

司会者:本日のアジェンダはこちらになります。タイトルが「未来の社会に投資する~ビジネス×NPOでつくる社会的インパクト~」ということで、社会的インパクトにも詳しい鵜尾さまをゲストにお迎えしております。

まずオープニングとして最初にSAKURUGの遠藤より、これまで鵜尾さまも深く関わっていらっしゃる寄付月間とSAKURUGが、どのように関わったのかというお話を、簡単に5分ほどさせていただきたいと思っております。

そのあと、鵜尾さまから「ファンドレイジングと社会的インパクト」ということで、現在日本ファンドレイジング協会や社会的インパクトセンターでどのようなご活動をされているのか、ご紹介をいただければと思っております。

そのあと対談のパートに移り、鵜尾さまと遠藤で「企業とNPOの協働でつくる社会的インパクト」というテーマで対談をしていただきます。注目すべき協働のかたちや、民間企業だからこそできるNPOとの協働、寄付のかたちについて、お話をしていきたいと思っております。

最後に質疑応答、それから少しお知らせの時間も設けさせていただいておりますので、最後までお楽しみいただければと思います。それではさっそくですが、SAKURUGの遠藤よりお話を始めさせていただきたいと思います。遠藤さん、よろしくお願いします。

遠藤洋之氏(以下、遠藤):よろしくお願いいたします。はじめまして。SAKURUGという会社の代表をしております遠藤と申します。今日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。個人的には鵜尾さんとこうやってお話ができることが、すごくうれしいです。とても久しぶりなのでいろんなお話ができればと思っています。

簡単に自己紹介なんですけども、僕は出身が千葉県です。2012年、29歳の時にこの会社を作りました。もともと「世の中を良くしたい」という思いと、「会社を成長させたい」という思いの両方があったんですけれども、創業4年目くらいからですかね。少しずつ会社が伸びるようになってきました。

もちろん会社はこれからも伸ばしていくんですけれども、会社が成長するだけでいいのかということを、いろんな先輩の経営者であったり、いろんな方とお会いする中で思いました。

よく会社が成長してから社会的なことをしたほうが、大きいことができると言われたりするんですけれども、会社がある程度大きくなったらというのはいつなのかと、終わりがないことなので、会社の成長もさせ続けるし、社会的な活動も少しずつできる範囲で始めていくということで、今、事業をやらせていただいています。

創業4年目でビジョンを変更

当社は2012年設立で、今90名ほどの規模でやらせていただいています。東京の渋谷に本社がありまして、あと和歌山の白浜、仙台と3拠点やらせていただいています。

事業は大きく分けて2つですね。クリエイティブテクノロジー事業。社内では「モノ事業」と呼んでいる、ものづくりの事業。いわゆるシステムを開発したり、Webサイトを作ったりという事業です。

そしてリクルーティングエージェンシー事業。社内では「ヒト事業」と呼んでいるんですけれども、いわゆるHR領域の事業です。僕のこの(バーチャル)背景にもあるSangoport(サンゴポート)というサービス。採用マッチングプラットフォームを運営しております。

先ほど創業4年目から伸び始めたとお話しさせていただいたんですけど、その時にこのVISIONを思い切りガラッと変えまして、そこから会社が伸びたなと感じています。PURPOSEは2年ほど前に置いたんですけれども、このVISION(「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」)とPURPOSE(「テクノロジーとクリエイティブの力で世界中でDEIを推進する」)、これを会社の経営理念、採用方針として使わせていただいています。

これまでの寄付月間との関わりは、まだまだ会社がこれから成長していこうというところなので、そんな大きなことはできていませんが、個人的にあるいは会社として会わせていただいた、いろんな方々や団体の方と、こういったウェビナーをやらせていただいたり、会社として一部寄付をさせていただいたりしています。

個人的にも学ばせていただくことが多くて、寄付・支援をさせていただきながらも、いろいろ学ばせていただいているのは、こちらなのかなとも思っております。僕のパートは以上です。ありがとうございます。

司会者:遠藤さん、ありがとうございました。それでは続いて鵜尾さまからのお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

寄付や社会的投資を、いかに課題解決の現場にもたらすか

鵜尾雅隆氏(以下、鵜尾):よろしくお願いします。貴重な機会をいただいてありがとうございます。大変ご無沙汰しております。遠藤さん、今回ご一緒できてうれしいです。

私たちファンドレイジング協会は、社会の課題が世の中でいっぱい出てくる中で、お金の流れを進化させることに特化した協会だと思っています。寄付や社会的投資を、いかに課題解決の現場にもたらすかが我々のミッションでもあり、その中で社会が好循環していくということを実現したいなと思っています。

具体的にはファンドレイザーの資格制度。我々ファンドレイジング協会が日本で初めてのファンドレイザーの資格制度を始めて、今、1,600人を超える方が認定ファンドレイザー、准認定ファンドレイザーとなっていますけれども、こういう人たちを育てていく部分。

寄付教育とか子どもたちの社会貢献教育とか、大人のSDGsカードゲームの寄付版みたいなものも今開発しています。人がお金を使う場面は必ずあります。物を買う。貯蓄をする。投資をする。寄付をする。自分がお金を使うことで、結局自分の分はウェルビーイングというか、幸せも上げながら社会がよくなっていくことを体感していただけるような、コンテンツをどんどん提供していこうとしています。

もう1つが、まさにインパクトセンターというものを立ち上げて、社会課題解決において、やはりきちんと仮説を立てて検証して、そこで生まれている変化を評価して共有していくみたいなインパクトの評価であったり、それに基づいた投資を誘発させていくインパクト投資だったりという動きもさせていただいています。

そういう中で2015年に寄付月間というのをいろんな方と一緒に立ち上げました。そして今850を超える企業・団体のみなさんが賛同していただいているキャンペーンに育った。こういう感じです。今日はよろしくお願いいたします。

司会者:ありがとうございます。あらためてよろしくお願いいたします。

企業とNPOの「協働」のかたち

司会者:ではさっそくなんですが、お二方の対談のパートに移らせていただきます。対談のテーマが、「企業とNPOの協働でつくる社会的インパクト」ということで、ぜひお二方に未来について考えていただきたいと思っております。

遠藤:ありがとうございます。これは対談というか、僕自身も学ばせていただきたいなと思っていることなんですが、要は協働のかたち。企業とNPOのかたちってどんなものがあるのかなというところを、まずお聞かせいただいてもいいですか?

鵜尾:はい。企業とNPOの協働って、例えば一番シンプルな寄付というかたちを取ってもいろいろあります。もちろんお金を寄付しますというのもありますが、それだけじゃなくて、社員参加で寄付することで、社員に機会を提供し、社員の能力や経験や知見が広がるというかたちもある。そういったNPOと協働するかたちでのお金の流れがあるし、あるいは時間とか技術の寄付というやり方もある。

さらに最近は、チャネルを寄付というのかな。社会問題に関して「こんなことがあるよ」と、社会に共有することで発信してもらう。例えばDV。今でこそDVは社会問題ですけれども、昔は「家庭内の喧嘩だ」と言われてきたみたいなことがあるから、社会問題を知ってもらうのはすごく大事だと思うんですよね。それもまた寄付のかたちだと思うんですね。

寄付だけ捉えてもそれだけいろいろな切り口があるので、「(NPOと企業が)協働で社会問題を解決していきましょう」みたいなこともありますし、実にいろんな連携のかたちが増えてきているなという感じがしますね。

遠藤:人とか技術の寄付というと、例えばどんなことがあるんですか?

鵜尾:そうですね。例えばテクノロジーがある企業が、どこかの社会問題を解決している人たちのために何かホームページを作る。データベースを作ってあげる、設定してあげるみたいなサポートをするケースもありますし、まさに人材マッチングをしているようなところが、人材の紹介という際に選択肢としてNPOを入れていくこともあるかもしれません。

NPOにある「自由な働き方」

遠藤:あるいは、最近で言うとコンサルティングの企業が、ふだんだったら有償でコンサルティングしていますけれども、資金支援したところにプロボノでコンサルティングに入ってあげるというかたちでマッチングさせたり、本業の知見やノウハウが最も役に立ちそうなポイントを見つけて入っていくということが、ありえるんじゃないかなという感じがしますね。

遠藤:じゃあ例えば当社は、システムとかWebサイトを作っている企業なんですけど、いろんなNPOさんに対して、そういうものを当社で作らせていただく。また、スマホのアプリとかも作らせていただくことがあるんですけど、そういうところでもご支援が可能ということですかね。

鵜尾:すごくあると思います。NPO側も課題の現場に向き合っているので、アプリを考える時に、例えば貧困家庭のシングルマザーの方がどんな情報にアクセスするのか。「それが検索しやすくなったらいいよね」という議論をする。現場に入っていると、NPO側はどんな仕組みになるといいのかというイメージがなかなかつかない。そこでどうアクセスがいいものを作ってあげられるかというのは、対話で一緒にチームになっていると考えられるじゃないですか。

そういう意味では、寄付をきっかけにして対話が始まって、「どんなソリューションがあるといいのか」「こんなことがニーズだったらできるかも」みたいなことにつながっていくというのが、すごくいい流れなんだろうなという感じがしますね。

遠藤:なるほど。あともう1つ、鵜尾さんがおっしゃっていた、採用、人材みたいなところで、例えば当社も採用支援の、採用マッチングプラットフォームを運営しているんですけど、例えばNPOさんに対してそこは寄付のようなかたちで、人のご紹介をさせていただくというのもニーズはあるということですよね。

鵜尾:あると思いますね。これはこの間、ある調査の中であったんですけど、NPOって普通の企業に比べて、なかなか待遇面で十分じゃないという議論があったりしますよね。いくつかの団体では、けっこう中小企業並みになってきたり、それより多くなってきていることもあるのはあるんですけど、まだまだ少ない。

けれども、もう1個調査で明らかになっているのは、例えば自由な働き方。フレックスタイムの導入率とか、テレワークの導入率とか、育児休暇の取得率ということで比較すると、NPOはめちゃめちゃいい。「めっちゃ働きやすい」となっている。

ライフステージによってちょっとそういう働き方を選びたいという人にとっては、実はいいかもしれないんですけど、NPOもたくさんあるから「どこがどうなん?」というのがわかりにくいじゃないですか。

遠藤:そうですね。

社会問題に対する「自分たちが作ってはいけない」という思い

鵜尾:ある程度働きやすい感じのある組織を、そういう求職活動をしている方の中の選択肢として提供できるというのは、実はけっこうニーズが最近あるなという感じがしています。あるいはお試しでプロボノ的にでもいいから働けるマッチングみたいなのがあると、「意外といいな」みたいなね。

「合うな」とか「子どもの笑顔に触れられていいな」とか、そういうのって経験しないとわからないじゃないですか。こういうミスマッチがまだ世の中にはあるなという感じはしますね。

遠藤:じゃあやはりNPOさんの中でも、働き方はけっこう変わってきた5年、10年ということなんですかね。

鵜尾:そうですね。変わってきましたし、これから1、2年でまた変化が出るなという感じがします。日本社会全体で、今、海外と比べて給料が安いのが社会問題になってきているじゃないですか。ぜんぜん給料が上がっていなかったと、最近しょっちゅうメディアに出てきている。待遇とか働き方の改善というのは社会問題なんですよね。

となった時に、NPOの人たちって社会問題を解決したい人だから、例えばイクメンとかワンオペ問題が出てくると、真っ先に各団体、NPOの代表者が軒並みみんな「僕も育休取ります」みたいな発表してFacebookで言うみたいなことを、先頭切ってやるわけですよ。社会問題を自分から作っちゃいけないと思っているから。

今、働き方というのも社会問題になってて、給料、待遇が問題になっているから、ここを自分たちが量産し続けちゃいけないんじゃないかという感じが、今、NPOに出てきているのは、すごく大きな変化の可能性だなという感じがしますね。

ここらへんはみんながみんなじゃないので、ある程度財政的に余力がないと対応改善できないから、そうしたところのマッチングニーズというのは確かに必要かなと思っています。

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