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「定年後夫婦のリアル」オンラインセミナー(全3記事)

夫婦の家事分担がうまくいかないのは、お互いの“正解”が違うから 家庭内で、気持ちよく「家事シェア」を実現するための秘訣

「定年」は夫にとっても、妻にとっても、互いの人生の一大事。終活の話、お金の話、仕事の話など、定年という節目が今後の生活を見直すきっかけにも。共働きの夫婦が、夫の定年後10年経って語る本音トーク満載の書籍『定年後夫婦のリアル』が発売され、刊行記念セミナーには、著者の大江英樹氏、大江加代氏夫妻が登壇しました。本記事では、妻の大江加代氏が、定年後に夫を「家事男(かじだん)」に育てた秘訣を語ります。

「健康」と「お金」の共通点

大江英樹氏(以下、大江英樹):そして3つめ。これは第4章の「健康」ですが、一番最初に「『アフター60』の健康管理はストイックすぎず、自然体で」と書いています。人間は年を取るにつれて、だんだん健康志向が強くなっていくんですね。

本当は逆で、若い時にきちんと健康管理をやっておくと年をとってもそんなに衰えないんですが、若い時は本当に無茶をしがちだし、無理をしがちです。年を取って体力が衰えてくると「健康が大事だな」と思うようになってくる。これはある程度仕方のないことです。

私、すごくおもしろいことに気がついて。私は健康に関してはまったくの素人で、医療に関して何も知らないまったくのど素人ですけれども、お金とか資産運用に関しては、多少なりともそういう仕事をやってきたのでよくわかっているつもりです。どうも、お金と健康には共通点があるんですよね。

どういうところが似ているかというと、1つはどちらもとっても大切なもので、みんなが「手に入れたい」と思っているわけですよね。「健康でい続けたい」「お金をたくさん儲けたい」というのは、みんな同じですね。

健康やお金はあくまでも「手段」なのに、目的化してしまう

大江英樹氏:それから2つめは、これは本当はどちらも「手段」ですよね。つまり、人生の目的は幸せに生きること、幸せになることなので。そのためには健康であることやお金があることは必要ですが、手段なのに往々にして目的化してしまうんです。

だからお金に関しては、みなさんもそういう人をたくさん見ておられると思うんですが、健康オタクという人も本当にたくさんいますよね。「健康のためなら死んでもいい」という人もいるぐらいですから、本当に健康オタクはいるんですよ。でも、これは本当はちょっと違うんですよね。

それから3つめは、どちらも専門家がいてそれらしいことを言っているけど、けっこういい加減なものもあります。もうね、医療に関してはどれが正しいのか・間違っているのか、私にはわかりませんけどね。

お金に関することや資産運用に関することは、いい加減な人がいっぱいいますよ。YouTubeとかでやっている評論家とかFP(ファイナンシャルプランナー)なんかでも、まったくデタラメなことを言っている人がいっぱいいますから、本当に気をつけないといけないなと思っています。

たぶん、医療関係でもそうじゃないかな。私の知り合いのお医者さん何人かに聞いても、「いやいや。けっこういい加減なこと言っている人はいますよ」と言っていますから、事実そうだろうなと思うんですね。

「人によって正解が異なる」からこそ、自然体でいい

大江英樹氏:ただ、お金と健康の共通点はたくさんあるんですけれども、中でも1番の共通点は「人によって正解が異なること」だと思います。

例えばお金で言えば、資産運用の場合はリスク許容度がとっても大事です。これは人によって違うんですよね。リスク許容度の非常に高い人もいれば、低い人もいる。その人の性格やお金に対する考え方によって、どういうやり方が正しいかは違うんです。

ところが、常に「これが一番いい」という方法を求めたがるところがあって。それは健康でも同じですよね。例えばかつてテレビの番組とか、NHKの『ためしてガッテン』とかで「納豆がいい」と言ったら、次の日はスーパーで納豆が売り切れるみたいなことがいっぱいありました。

みんなにとって絶対にいいことって、それほど多くはないと思うんですよ。やっぱり、自分の健康についてとやかく言えるのは自分ですからね。

だから、自分が自分の健康に素直になる。例えばこういうものを食べたいのであれば、無理して「それは健康に悪いから」とか言うのではなくて、ほどほどに食べりゃいいと思うんですよね。

ここ(スライド)に「世の中にはどうにもならないこともある」と書いてあるんですが、実際、健康はそんなもんじゃないかなと思っていて。これもいろんなお医者さんに聞くと、みんな異口同音に「決してお医者さんは、病気を治すことができる万能の存在ではありませんよ」とおっしゃるんですね。

お医者さんは病気を治すためのお手伝いはできるけれども、治るかどうかはその人の持っている力、生命力だから、いくらがんばったってどうにもならないこともあるんだ。

だからといって何もしないとか、努力しないということではないんですけれども。でも、それにこだわりすぎる、つまりストイックになりすぎることはあんまり良くないのではないかなと私は思いますね。だから、自然体でいくのがいいのではないかなと考えています。

定年後、夫を「家事男(かじだん)」に育てた秘訣

大江英樹氏:ということで、夫からの一言はこれぐらいにしておきます。この後は妻からの一言で続きに入っていきたいと思います。それじゃあ、選手交代しますね。どうぞ。

大江加代氏(以下、大江加代):みなさま、おはようございます。妻の大江加代です。ここまで主人がペラペラとしゃべっておりましたけれども、ここからは私から一言申し上げたいと思います。

私からの3つのテーマの1つめは、家事の話ですね。Facebookで私たちとつながっている方は、主人が料理をすることをご存じの方が多いと思います。そしてそれを見た女性陣からは「旦那さんが料理をしてくれて、家事をしてくれて、助かりますね~」とよく言われるんですね。

ただ、そんな主人も娘たちからすれば、現役時代に大して家事をやっていたわけではなくて「もうびっくり」と言われてしまうぐらいです。では、そのような男性をここまでどうやって家事男(かじだん)に育てたか、という話をしたいと思います。

ここ(スライド)に書いてあるとおり、褒めていくことがコツと言えると思います。家事の中でも、主人が最初に始めたのが料理。定年前ぐらいから始めました。

初めは男の料理というか、凝っていろいろいい食材を買い、ちょっとしか使わないような香辛料や食材とかもばーっと買ってしまったりして、ずいぶん時間と手間暇をかけて料理をしていました。もちろんそれだけお金も時間もかければ、おいしくていいものができあがります。

また、見た目も気を使えばいいものができるので、すばらしい。「本当においしい」と私自身も思いました。

ポイントは、最初はとにかく「褒める」こと

大江加代氏:じゃあ、その裏でキッチンはどうなっているかというと、(調理器具や食器を)いくつも使って、ちょっと使ったお皿や鍋とか、洗い物が山積みされている状態でした。

まあ、最初ですからね。それを見ながら一緒に洗ったり片付けたりして。すごくおいしかったので「おいしい!」と言うと、やっぱり人間は褒められるとうれしいので、「じゃあまたやるよ」と言ってくれる。

おまけにFacebookに投稿すると、もうみなさんが「いいね」「いいね」「いいね」と言ってくださるので、私が言う100倍うれしくなってしまって、「またがんばろう」とどんどん繰り返してくれました。

人間は繰り返していくと、「これってやりながら片付けられるんだな」「この材料って、別にこれでなくてもいいんだな」と気づくわけですよ。そうすると、どんどん改善されていきます。

今となっては、お買い物に行く前にちゃんと冷蔵庫の野菜室を開けて、「あ、これがあるな」と確認ができるようになりました。最初の段階で褒めてがんばってもらうのが、スタートをする上ではとても大事だと思うんですね。

逆に言えば、ある意味「褒めてもらえない」のは逆効果ですよね。(家事を)やり始めた時にがんっと一言言われてしまうと、意外に男性は繊細なので、やれなくなってしまうところがあると思うんです。

実際にコロナ禍で家にいる男性陣が増えています。同い年ぐらいの男性で、奥さんがいろいろ家事をしているので、「じゃあ洗濯物を畳もう」と思ってやったところ、「やり方が違う。あなたがやるとかえって手間になるから」と言われてしまった。喜ばれると思ってやったのに、怒られちゃったわけですよね。

そうすると、さすがにしゅんとなってしまうわけですよ。「怒られると思ったら、二度と手が出せない」と言っていました。

家事は、自分の中の「正解」にこだわらないほうがいい

大江加代氏:家事はきりがないので、主にやっている側が「これぐらいをこうやってできた」ことをどんどん重ねていくごとに、暗黙の中で正解というかルールを作っているんだと思うんです。そして、家ごとにそのやり方がある。それと違うと「やめて」「手間がかかる」とか、できていないと見なしてしまうところがあるのではないかと思うんです。

でも、それが本当に正解ですか? と考えると、別に長年自分のやりやすいようにやってきたパターンは気に入っているパターンというだけであって、本当の正解ではないのではないかなと思うんです。他の人にやってもらおうとすると、自分の正解にこだわらないほうがいいと思うんですね。

実際に会社で言うと、新人が入ってきた時に、新人は仕事がぜんぜんわからない。家事で言えば、夫たちが終始そんな感じですよね。

それをやってもらうことになると、「こうやるんだよ」と教えるわけですが、その時に、じゃあ業務として実際本当に欠かせない手順とか、気をつけなければいけないこと。ゴールとしての絶対やらないといけないことと、あとは若干好みの部分。自分の慣れだったり、好みの部分でやっていた範囲は1回整理をして新人に教えますよね。

やらないといけない部分をやってもらったとして、それ以外のところはやり方が違っていたとしても、「これはこの子の個性だし、もしかしたらそれでうまくいくかもしれない」と、温かい目で大目に見て見守っていきますよね。家事もそんなものではないかなと思うんです。

ちょっとうまくいかない時も、「最初は慣れていないよね」と、先輩としてはおおらかな気持ちで見守ります。

家事男を育てるのもまったく同じで、おおらかな目線で見守って、かつ褒めまくる。褒めまくるとやる気を出して、どんどんやってくれることが広がっていくので、これが家事男を育てる上での1つのポイントかなぁと思います。

夫婦で価値観が違っていた、定年後の「お金」のこと

2つめのテーマはお金の話です。この本ではお金のことを書いているのはごく一部ですが、定年になる時。特に私どもでいけば、主人が定年の時に私も会社を辞めて、会社員という立場から離れる決断をして、ある意味崖から飛び降りるような決定をしたわけです。

その時に、「お金が大丈夫か?」ということが本当に気になりました。暮らせないと困りますからね。その上で、「だいたい生活費だからなんとかなるよね」と、夫は大丈夫だと言うんですけれども、実は夫婦と言えども他人で、見えているものが違っていました。

私の不安ポイントと、夫が「大丈夫だ」って言っているポイントが、実はずれていたんです。私としては、夫がいる間以上に1人になった時。年の差があるので、その時にやっていけるのか、人に迷惑をかけずに暮らせるのかがすごく心配でした。なので、お金に関してはちょっとしつこいぐらい、いろんなパターンで試算をしました。

私と主人が勤めていた会社には、企業年金というものがありました。終身でもらえる部分と、途中で何歳で亡くなるかによって、遺族になる私に入ってくる収入が違ったり。または一時金と年金の割合がわりと自由に変えられるので、主人の分、そして私の分も含めてその割合をどうするのか、いろんなパターンが組めたんですよね。

夫婦と言えど他人、まずは「見える化」が大事

大江加代氏:私として気になるのは、主人のことはさておき、自分が最後に1人になった時。お一人様で介護してもらうにしても、何のサービスを受けるにしてもお金がかかるとすると、「お金に困らないかどうか」の観点でいろんなパターンで本当にいくつも(試算を)行いました。

この時に、私自身が1人でずっと生きていく時に公的年金の繰り下げがあることも初めて知りました。当時はあまりネットでも書かれていなかったのでよくわからなくて、年金事務所に何度も確認をしました。

Excelのキャッシュフロー表で、このパターン、このパターンと(たくさんのパターンを)作って主人に見せて、「私はこういうあたりが不安だ。それで、これだったらやっていけるのか?」と、数字を見せて話をしました。

たぶんそこで初めて主人は、私が本当に心配していたのは自分がいる時ではなくて、1人になった時のことだと気づいたと思います。お金の話を対面でしていても、案外、関心事や見えているものが違ったりします。

本当に関心のポイントを合わせる意味でも、不安を共有したり解消する上でも、数字に落とし込んで見える化して話すことがすごく必要だなと思いました。

お金の問題はなんとなくでは解決しないので、シビアに見える化することはすごく大事だと思います。やっぱり(夫婦といえど)他人なので、自分が思っているようには伝わっていないので、見える化することが大事かなと思います。

いろいろ組み替えて、「私としてはこれだったらいけるかな」と思って、じゃあやるかという決断ができました。

定年を迎えるのは収入の糸口とか、その金額とかについては、ずいぶん大きく変わる瞬間になると思います。不安を解消するには、見える化をして話し合うことがいいんじゃないかなと思っています。

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