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#わたしたちの生存戦略 WE Launch Event DAY1 「民主主義」編(全5記事)

争いや近視眼的な施策を生まない「地球同期」の考え方 田口一成氏が語る、国籍や民族を超越した視座

“社会課題の解決” という社会ニーズの市場化を加速することを目的とした、社会事業家の有志連合「WE」。このWE主催で、4日間にわたって行われたローンチイベント「#わたしたちの生存戦略」の初日に、社会活動家の石山アンジュ氏、ボーダレス・ジャパン代表の田口一成氏、そして構想日本プロジェクトマネージャーの田中俊氏が登壇。社会彫刻家/Next Commons Labファウンダーの林篤志氏のモデレートのもと、「自分だけ良ければよし」という風潮との戦いや、東洋思想をベースとした民主主義のOSなどが語られました。

「自分だけ良ければよし」という風潮との戦い

林篤志氏(以下、林):田口さんはたぶんいろんな起業家と接してらっしゃって、DAOとかNFTとかブロックチェーンというキーワードも出てきてるんですけど、ここらへんのテクノロジーに対する可能性や課題感はどのようにお考えですか。

田口一成氏(以下、田口):可能性をもっていろんなことを見たいなとは思っているんですけど。DAOと名前はついていますけど、自律分散型組織はずっと前から、組織経営者であればたぶん全員が考えているテーマではないかなと。だから特段、本当に新しい話なのか、とは思っているんです。

なので、みんながトライしようとし続けている結果、今があるので。何かこういうのがきた瞬間、サクッと変わるとは思っていないんですよね。ただそういうものを概念的に形にすることで、みんながわかりやすくなったり、それを技術的に実装しやすくなったり。コンセプトだったり技術だったりは、その実現可能性を上げていく方向性で資するかなと思っています。

本質的に、人間はあまり変わらないと思っているので、アンジュさんの「人の意識が変わらないといけない」というのは、僕もすごくそう思っています。やっぱりコミュニティの範囲には限界があるし、人は自分の目的とか思想と合う相手とつるみたがる。仲悪い人とわざわざコミュニティを作りたがる人なんていないし、みんなと考え方が同じとか、みんなと感覚が同じって、これはもう無理なので。

そういう人たちがしっかりまとまれる、新たなコミュニティを持てること自体は、すごく大きな可能性だと思うんですよね。それは前向きに捉えていることなんだけど、一方で合わせてやりたいのが、ほかのコミュニティに対して排他的にならないこと。ダイバーシティ&インクルージョンとよく言われますけれども、違うことをどう認めるかとセットで、自分たちの組織化を捉えていくことはすごく大切です。

それは教養とかそういうことなのかもしれないけど、自分もやっぱりSNSとか見ていて「自分だけ良ければよし」という風潮を、すごく世の中全般に感じるところがあるので。そことの戦いは必ず出てくるだろうなとは思っているんですよね。だから良い部分はあるんだけど、合わさって補わないといけないところもまた出てくるなと、見ながら思っている感じですかね。

人口800人の限界集落に900人以上のデジタル住民が参画

:明らかに僕が感じているのは、DAOは唯一解ではないんだけど、今まで生まれてきたいろんなコミュニティとかに、アクセスできなかったとか知らなかった人が参画しやすいような入口を、明確に提示しているなと僕は思っているんですね。

僕が今やってる別のプロジェクトで、人口800人の山古志村という限界集落にデジタル住民票をNFTで発行して、世界中から900人を超える人たちが参画しているんです。少なくともこのDAOというコンセプトと、ブロックチェーンをベースにしたNFTという技術がなければ参加しようがなかった人たちが出会っているのはすごい手応えです。

まだぜんぜん、意識の修行とかそういったレベルの話にはいけてないんだけれども。それをみんなでDiscordで直接的に対話をしながら、そこでは一応投票行為とかたまにあるんですね。投票して、直接的に意思決定をしていることの当事者意識をもって、みんなが楽しんで考えてやっている。それは、今までと違うコミュニティの形成の仕方だなと、すごく感じています。

今日お話を聞いてて思ったのは、おそらく、このWEが今後いろいろ試行錯誤していく中で、DAOというコンセプトはぜんぜんいいと思うんです。「対話がコストだよね」みたいな、そういう次元ではないところで自分たちの共通善を、リアルだけではないオンラインを通じてどこまで作っていけるのかは、体験や身体性も感じました。

最後にお一人ずつコメントをいただきたいなと思います。もしみなさんが理想とする民主主義、民主制みたいなものが実現した世の中では、みなさんはどんな風景を見ていますか。すごく抽象度の高い質問ですが。

石山アンジュ氏(以下、石山):始まる前に「聞きますよ」って言ってくださいよ。そんなすぐ答えられないよ(笑)。

:大丈夫、素のままでお答えいただければ(笑)。

田口:ごめんなさい、聞いてなかった!

(一同笑)

:聞いてなかったんかい(笑)。

田口:電池が切れそうで、ごめんなさい(笑)。ちょっとワタワタしてたら聞いてなかった……。

:今、考える時間を田口さんがくれてるってことでね(笑)。

田口:ごめん、俺は考えられてないな(笑)。

:みなさんが今いろんな議論をしてくださっていて、理想とする民主主義とか、こうあるべきだとか、課題意識を共有してくれてたんですけど。それがクリアされた世界・社会ってどんな風景が広がっていますか? これは僕の質問ではなくてDiscordの中から出てきた質問なので、事前には用意できませんでした! すみません。

(一同笑)

ローカルの課題を解決してきた自治会の課題

:まず、田中さんからお願いします。

田中俊氏(以下、田中):さっきのDAOの話とも関連させていくと、ローカルの課題解決をする時にはけっこういいのではないかなとは個人的には思っています。今ローカルの課題を解決するためのコミュニティは、自治会とかが大きな役割を担っているけど、それってすごく閉鎖的だし……(閉鎖的と言ったのは、)一般的にですよ、違うところももちろんあるかもしれないですけど。

けっこう同じような人たちが役員を何度もぐるぐる回っていて、その人たちに任せてやっていますみたいなところが多い中で、それをどう世の中に開いていって、いろんな人たちが参加していって……。

すごく負担が多くて、若い人たちは自治会に参加したくないから新興住宅に引っ越します、みたいなことで、どんどん地域からも人がいなくなっている状況を、もしかすると変え得る1つの方法になるのかな。変わっていくことができたらいいな、という期待を込めてこの先取り組んでいきたいなと思っています。

:WEという1つの枠組みがDAOだとすると、そういった各ローカルでのサブDAOみたいなものができていって、今まで風通しがよくなかったところが抜ける感じが出てくるとおもしろいかもしれないですよね。関わりたい人たちはいるはずなんですけどね。

田中:逃げていく若い人たちではなくて、逆にどんどん参加していって賑わいが生まれるみたいなことが生まれてくると、楽しいなと思っています。

:ありがとうございます。現場のお話をしてくださって、すごく参考になりました。田中さん、ありがとうございました。

争いや近視眼的な施策を生まない「地球同期」の考え方

:じゃあ続きまして田口さん、お願いします。

田口:うーん、よくわかんない(笑)。

:(笑)。

田口:よくわかんないけど、「そんな世界になったらいいな」というのは、僕は「地球同期」という言葉が最近気に入っているんですよね。

:「地球同期」? あっ、地球の同期メンバーみたいな。

田口:みんな同じ地球人として同期だよねという。日本人もウクライナ人もロシア人も関係なく、大きな地球の中で見たら同期じゃんという考え方。そういう意識が持てるようになると、僕はすごくいいのではないかなと(笑)。いいのではないかなというか、そうだと思うんですよ。地球同期だと思うんです。

気候変動とかに対しても、地球同期の意識を持つ。戦争を見たら「こういうことやめようや」「このままじゃいけないじゃん」とか。そういう視座というか、その視点に立って過ごすことができたら、変な争いもないし。近視眼的な考え方はないし。

技術とか新たなコンセプトメイクをもって、人間のそういう意識の部分を引っ張り出せたら、すごくおもしろいと思っていて。それができたら文明として一歩、人類は進歩したなと言えるかなと思っています。そういうのに、DAOとかブロックチェーンの仕組みとか、いろんな技術的なところが寄与していけたらと。

そういう実験がこういうところ(WE)で、何かしらその小さい版でもいいから、可能性が見えたらおもしろいなと思っています。すいません、この話とどうつながるの、というのはちょっと置いておいて(笑)。わからないんだけど、そうなったらいいな、なんて思います。

:でもつながる気がしますね。国家みたいな枠組みを越えて、地球全体でつながっていくDAOみたいなものもあると思うし。もっと小さな、みんなの拠り所、寄り木になれるような小っちゃなコミュニティとか。ゆるいのもタイトなものも含めて、つかまれるような小さなDAOが、共存しているようなイメージだと思っています。

WEがどっちに向かっていくのかはまだ……というか両方なのか、僕たちもちょっとまだ見当がついていないんだけど。すごくシンプルな問いで、そこを考えていかないといけないなという視座をいただきました。ありがとうございます。

東洋思想をベースとした民主主義のOS

:じゃあ考える時間はたっぷりありました。アンジュさん、よろしくお願いします(笑)。

石山:じゃあちょっと最後に、めっちゃ抽象度高くいきたいと思います(笑)。「『循環と調和』的な、東洋思想をベースとした民主主義のOS」。

:もう1回言ってもらっていいですか?

石山:「循環と調和」的な、東洋思想をベースとした民主主義の模索ですね。

:なるほど。

石山:今日話してきたところと重なる部分もあるんですけど、いわゆる「循環と調和」的な東洋思想をベースとした民主主義を考えた時に、例えば目的やゴールを置きすぎない。それは循環や流れの中にいるから、とか。今日言ってきた数とかデータの限界みたいな、数という世界を溶かしていく考え方だったり。

いわゆる多数決は、利害調整みたいなところがあると思うんですけど、利害を超えて全体的な調和に一人ひとりが視点を置くきっかけになるかもしれないし。最後はいわゆる個人の再定義じゃないですけれども、自我を意識しすぎないとか、正義をある種手放すみたいなイメージ。

東洋思想をベースとした民主主義のOSは、実はこれまで考えられてこなかったし、もしかしたら……日本人と言うとちょっと偏っていますけど(笑)。日本人だからこそ、そのヒントを模索できるかもしれない。

私たち日本人は基本的に、この近代は西洋をそのままダウンロードしたみたいになっているので。もう1回昔と近代を溶かしていきながら、そういった東洋的な思想の民主主義を模索できるのではないかなと思いました。

:ありがとうございます。ちょっと……一晩考えますね(笑)。

石山:(笑)。

:本当にありがとうございます。今日いただいたキーワードは、もうちょっと何回か繰り返してやらないといけないと思うんですけど。Discord上でもみなさんいろいろコメントしてくださって、本当にありがとうございます。質問も全部追いきれず申し訳なかったです。

こういう問いをどんどん出していただいて、個人をどう再定義していくかとか、WEが社会においてどういう役割で、そしてWEにとっての共通善とは何なんだろうとか。どうやったらWEという形態で、民主主義をゼロから作っていけるか、みたいなところを、みなさんと一緒に実験をしていきたいなと思っています。

引き続きDiscordにも入っていただいて、DAY3まで残っていますが、実際に秋のローンチに向けて、僕たちはこうやって一緒に議論できる仲間を募集しています。もしかしたら本当にこのWEを通じて対話をして、意識の修行をみんなでしていく中で見えてくるものはあるのではないかなと思っていますので。

「僕こういうの手伝えるよ」とか「俺こういったことやりたいよ」とか、ただただ参加したいよという人たちも、どんな方もウェルカムですので。ぜひ一緒に作っていってほしいなと思っております。

今日はちょっと、DAY1でバタバタしておりますけれども、まずは3人のすばらしいスピーカーのみなさんに拍手したいと思います。みなさん、ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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