2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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林篤志氏(以下、林):今のアンジュさんの数の論理に任せた合意形成は対立を生むというコメントに対して、田中さんいかがでしょうか、
田中俊氏(以下、田中):僕もいろんな地域で活動をしている中で、やっぱり声の大きいおじさんの意見が通るみたいな話って、すごいあるなと思っていて(笑)。じゃあそれって合理的なのかというと、けっこうその人の個人的な感情でゴリ押しされてるみたいなことがある。
じゃあそこでほかの人たちが、なんで声を出さないかというと、声を出すほど関心が高くないとか。自分でそこまでやらなくてもいいよね、みたいなことがけっこうあるのかなと思っています。
でも、いざ土俵に乗せると、けっこうしっかり「それはあなたの意見で、別の考え方もあるよね」みたいな議論がされていくので。ある程度普通の考えを持った人たちと、フラットに並べていくことは有効なのではないかと、今の石山さんの話を聞いても思いました。
林:さっきアンジュさんが「民主主義について」のところで、「1番:個人の再定義」と「2番:意識の修行」と書いていただいたんですね。けっこうそこの前提が大きいかなと思っていて。西洋的な「個人」みたいなものからどう再定義し、その上で意識変容がどのように行われるか。
西洋的の対となるものが東洋的なのかはわからないですけども、ここの「個人の再定義」と「意識の修行」みたいなところ、ちょっとアンジュさん、補足してもらってもいいですか?
石山アンジュ氏(以下、石山):スライドを見せるんですけど……本当に対になるかは、完璧に切り分けられないとは思いつつも、やはり私たちの今の民主主義は、西洋的な、いわゆる個人主義が前提にあると思っています。
それはすなわち自分と他者はまったく切り離された存在であって、切り離された存在同士がアクションをすることで何かが決まったり、何かが作られていくという考え方ですよね。
でも一方でそうではない見方もあって。「自分はそもそも全体の一部であって、私とみなさんは別に境界線なんかないよね。それが連なっているのがある種全体」みたいな考え方があると思っていて。それが例えば東洋的な思想の中で、万物は循環と調和のもとに「つながるのではなく、すでにつながっている」という世界観があったりすると思います。
石山:どっちが良いという話ではなく、ただ今すごく、自分があんまり考えないまま、この西洋的な個人主義に「システム的な思想」を組み込まれてしまっている。それによって、「私って何?」というのがわからないままここにきている。それが政治だけではなく、孤独の問題にもつながっていると思っていて。
「Facebookで友だちがいる」みたいに、人類史上過去になく人とつながっているにもかかわらず、なぜ孤独を感じるのかは、この個人主義がベースになっているからだと私は思います。もしみんなが「別につながらなくても、すでにつながっているよね」という感覚を持っていたら、もっと共生意識が育まれると思うし、もっと全体善のことを考えられるかもしれないし、孤独を感じないかもしれない。そんなことを思っています。
もう1個「意識の修行」で言うと、冒頭にもお伝えしましたけれども、私たちはイノベーションと言って、仕組みを作ることには一生懸命になってきたけど、人間をアップデートすることには意外と一生懸命になってこなかったと思うんですね。仕組みを作ろう、新しいものを作ろう、新しいビジネス・国のシステムを作ろうとは言うんだけど、「私たちが日々いい人間になってますっけ?」ということに対してほとんど目を向けない。
これまでは宗教がその役割を担っていた部分があると思う。自分の良心が何かを問うとか、人に対してどうか、直接対話をして向き合うとか。今はそういった意識の修行をする機会がそもそもない。そうなるとシステムに頼りすぎることによって、システムも疲弊するし、個人もシステムが完璧であることの幻想を抱きすぎて、疲弊してしまうということが今起きているのではないかなと思います。
林:ちなみに意識の修行の仕方というのが、対話そのものだったりするんですか?
石山:私はそう思っています。これまでは、宗教の物語においては「神と対話すること」。要は宗教がメインだった時は、この世がどう作られたのかは神が知っていて、その神と対話することで、自分が人間として成長する、みたいな世の中だったわけですよね。その次は権威主義になって、仕組みやリーダーが完璧であって、その完璧な存在のために自分は何か奉仕するとか、戦争に行くみたいな話だったわけですね。
でも今の社会は、神もいなくてシステムも完璧ではないなら、誰が意識の修行を導くんですか。その存在が今ぽっかり空いている。私にとってはその1つの解が(Ciftでの)拡張家族だったりするんですけど。相手を家族だと思って見て、対話をしてみる。それを続けていくのが1つの答えだと思ってやっていたりします。その意識の修行の機会がないことが、今私が持っている問題意識です。
林:もし対話が意識の修行だとすれば、たぶんCiftってある程度感度も似ていて、属性もけっこう似ている人たちが来ると思うんですよね。その中で多様なことをいろいろやっていると思うんだけど。
「自分ごと化会議」は本当に無作為に選ばれた地域住民なので、仮に対話が意識の修行と定義するのであれば、その人たちが計5回とか6回の、数ヶ月間かけての対話を重ねることによって何か明確な変容みたいなもの、もしくは個人から「全体の一部である」みたいな感覚が垣間見えたりするものですか?
田中:さっき石山さんのおっしゃっていた、システムの中で生きるみたいな状態……例えば課題があった時に、その地域でその課題についてぜんぜん盛り上がっていないとか。
ある地域では、高校生が通うチャリンコの道が、すごくガタガタだったりするような状態を「それってもうここの地域だからしょうがないか」と諦める。不満はあるけど「それってしょうがないよね」とか、「行政がなんとかしてくれないと動かないから、結局動かないよね」と、その高校生は思っていたらしいんです。
いろんな人たちと話す中で、「必ずしも行政が動かなくても、地域の人たちと一緒に動けば解決できるかもしれない」とか、「自分も動けば、何か盛り上がるようなイベントをできるかもしれない」と、課題をただ享受する立場ではないと気づいた、という話をしてくれた高校生の参加者がいるんですけど。そのへんは、今までの話も含めて、すごく良い特徴だなと思っています。
課題を解決できるということを、参加した人たちが思ってくれる。で、そういう人たちがどんどん増えると、ただただシステムを享受するだけではなくて、自分もシステムを作る側になれたり。もしくはシステムがなくても生きていけるのではないか、みたいな話として変わっていけるのかなと。そういう意味では4回か5回の議論は、意識が変わるような機会になっているのではないかと思います。
林:ここまでの議論を少し整理すると、なんとなくバラバラとした人たちが、ただ議論をして多数決をするのではなくて、一定の目的、共通項みたいなものが必要なのではないかという話と。
あとはさっきのアンジュさんと今の田中さんの話を聞くと、豊かな関係性が、みんなの共通善みたいなものになっていく。そのプロセスを対話を通じて作っていく手法が、一定効果的なのではないかという話を、ここまでのみなさんの話を聞いて思っています。
そうなってくると、地球規模で決めないといけないことと、ある種コミュニティやアソシエーションの単位で決めていけるものと、大きく2つのレイヤーがあるとする。一旦はちょっと地球規模の話は置いておいて、コミュニティとか範囲の再定義なのではないかなと。個人の再定義でもあるけど、対話する範囲とか意思決定の範囲。それは例えば「顔の見える範囲」みたいなことだと思うんですね。
例えばボーダレスは、それを株式会社という法人の集合体でやっていると思うんですけれども。適正な人数とか、適切に議論を進めるためのかたちとかボリュームとか、そういったものはボーダレスの経験則では何か見えていますでしょうか。
田口一成氏(以下、田口):例えば、さっき「孤立」というキーワードがあったので孤立に関しての話をします。起業家は、みんなが「自立したいけど孤立はいやだ」みたいに言う、そういう人たちじゃないですか。「そういうことはよくないよね、みんな孤立しないように」と、月1回、ある一定のグループで一緒に経営会議をやっているんですね。
固定のグループにしているんですけれども、6人とか5人とかいろいろ試した結果、今のところ4人が一番最適ですね。なぜかとみんなに聞いてみると、自分と残り3人だったら、いつも意識の中にその3人のことがあるからだ、と。「この前話したのってどうなってる?」とか、常に関心に置いておける範囲。
だけど5人組とかになって、自分以外の人数が4人を超えてくると、やっぱり「月1回会うだけの人」みたいになってくるというんです。自分の意識の中に留められる範囲は4人(自分以外の3人)だったというので、今4人1組というかたちで、それぞれの月1経営会議をやっています。
あとは今47人ぐらいで、さっきの合議制をやっているんですけれども。これに関しては「まだ大丈夫かな?」というので僕も実験しながら人数を考えています。何人からがダメになるのかとか、何人を超えると自分がその決定にコミットしなくなるのかは、実験的にやってみようと思っています。
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