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第2部 トークセッション(全3記事)

新しい発想ができるのは、働きアリじゃなく「うろうろアリ」 組織の中の観点を超えて、「メタ化」できる人の特徴

京都大学経営管理大学院に設置された「100年続くベンチャーが生まれ育つ都研究会」。同研究会が主催した寄附講座に、「行動観察」の第一人者で、大阪大学 共創機構の特任教授・松波晴人氏が登壇。本記事では、京都大学経営管理大学院の竹林一氏、山川賢記氏、並木洲太朗氏が参加したトークセッションの模様をお届けします。全部を構造化せずに余白を残す意味や、意識して“無意識を切る”必要性などが語られました。

「メタ化」できる人の特徴

竹林一氏(以下、竹林):山川さん、何かありますか?

山川賢記氏(以下、山川):やっぱり、メタ化するために何が必要かですよね。組織の中にいると、組織の中の観点での話に時間を取られるのかな。組織の中の道理に合わせることに取られる時間がなくなると自由になれる。

例えば、今回のこの講座にいろんな企業や学生さんに参加いただいているんですけど、こういう機会に触れること自体、この時間が取れること自体が、発想が変わっていくチャンスなのかなと思います。お話を聞いていて、どれだけ自分の時間を取れるかという時間管理が大切かなと感じています。

松波晴人氏(以下、松波):そうですね。働きアリじゃなくて、うろうろアリにならなければいけないですよね。あっち行ったりこっち行ってばかり「あいつどこおんねん」という人が、新しいことを発想できます。結局のところ、うろうろアリの人は外に行って情報を取ってきているんですよね。

竹林:それを認めてもらうような風土がないと、二次情報をなんぼ加工しててもインサイトは起こらないですもんね。

松波:ただ、そういう人はマイノリティなので潰されやすいです。だから経営者が積極的に保護しないと、絶滅危惧種と化します。短期の効率だけで言ったら、非効率にしか見えないので。

竹林:中期計画のお金にはならないかもしれないと。ただ、10年後に変わっていく、変化はつかんでいるのかもしれないですね。

松波:コストダウンし過ぎると、そういうことが起こってしまうんですよね。

全部を構造化せず、余白を残すことの重要性

竹林:松波先生は本の中で、「クリエイティブを発揮するには2つのことが重要」だとおっしゃっておられます。1つが、「引き出し」をたくさん持つこと。この講座も宗教や哲学、ティール組織から、1,000年のあぶり餅屋さんまでゲストに来ていただいて、どの角度から考えたらおもろいねんというのをやっているんですね。皆さんの、引き出しを増やしてもらえればと思っています。

もう1つ先生がおっしゃった中で、2つ目は「真面目じゃない」と書いてあるのかな。「遊び心がないと、真面目で一生懸命『新規事業をやらねばならない』と、眉間にシワを寄せてやっていたら立ち上がらへんで」みたいなことを書いてあるんです。

たぶんベンチャーも、真剣に真面目にきっちり決まったことを「この計画どおりやる」と言うたら、計画どおり行くわけないかなと思いますが、その重要性はどんな感じですかね。

松波:こういうことやる時には「半構造化」と言うんですけど、例えばクラシック音楽を演奏する時には、譜面が全部決まっていて構造化されているじゃないですか。誰が何を演奏するか全部決まっていますよね。半構造化はジャズですね。半分は決まっているんだけど、あとの半分はアドリブでやる。

野球も構造化の側面が強いですよね。ポジションが決まって、サインが決まって投げるみたいな。サッカーはどんどん状況が変わるので、走りながら考えるじゃないですか。そういうふうに半分構造化して、半分はアドリブを利かすようにやらないといけないですけど、真面目な感じでやると、「全部譜面にして、全部ルールを決めてそれで動いてください」となってしまうんで、遊び心を発揮しようがないんですよね。

竹林:その余裕の部分もなかったら、立ち上がっていかないやろなって。

松波:日本人は特に真面目なので。それが強みだったんですけど、AIとかがどんどん広がってくると、AIのほうが真面目に文句言わずにずっと働いてしまうので。

竹林:文句を言わないですからね。

松波:その日本人の強みが弱まってしまうんですよ。ただ日本も、クリエイティブではないかと言ったらぜんぜんそんなことはなく、めっちゃクリエイティブなところなので。「目に見えているところだけ」でやってこなかったのが東洋文明じゃないですか。デザイン思考とかも結局はそこから学んでいるところがありますので、そっちを進めていくと、いろんな明るい未来が待っているのではないかなと思います。

「京都から」という発想をリフレームする

竹林:ありがとうございます。感想で「京大の経営管理大学院では、リサーチメソッドの講義があります」といただいています。

松波:お! いいじゃないですか。

竹林:ところが経営大学院になるまでないので、大学の学部とか高校でやっておいたほうがいいんちゃうかという意見をいただきましたね。このあと参考になればと思います。

あと、「シリコンバレーなんかでは、哲学を大学院で極めた人間を採用する企業が増えてきた」という意見もいただいていたり、「意志を明確にする塾は、全国に5つ展開してます」とかいっぱい情報をいただいています。

松波:へえ。

竹林:ぜひみなさんと共有できればいいですし、「この授業自体も既存の宗教を含めて、いろんなことを学べますね」という感想もいただいています。

その延長線上で、京都から新しいものづくりのリフレーミングをかけるのも、1つの発想になるんですけれど。京都から新しいベンチャーが生まれていく、京都をもう1回リフレーミングしたら、何が起こるかは、最後の最後に一言、聞いてみたいと思います。

松波:わかりました。そもそも「京都から」という発想をリフレームできないですかね。

竹林:そもそも「京都から」をリフレームすると。

松波:なんで関西は京都と大阪と神戸がバラバラになるんですかね。

(一同笑)

松波:みんな一緒にやればいいじゃんと思うんです。つまり、なぜ「京都」という枠組みにこだわるのかは、何かあるんでしょうけど。そこからリフレームしたほうがいいんじゃないかなと、個人的には思います。

どういうことかというと、東京とか行くと、わりとあまり分かれないんですよね。東京自体がそもそもいろんな地域から集まっている人たちの集団なので、ちょっといろんな国から集まっているアメリカっぽいんですよね。

竹林:そんな感じかもしれないですね。

松波:そう考えると、関西はヨーロッパっぽい。

竹林:(笑)。

松波:イギリスは、フランスが何やろうが「知らんがな」みたいな感じがあって。

竹林:「一応EUになってます」みたいな。

松波:イギリスはイギリス、フランスはフランス、ドイツはドイツでバラバラです、と。こだわりがあるのかもしれませんけど、そういうのをもうやめて、ヨーロッパみんなで考えようや、という枠組みで考えられないかなと思いますね。

竹林:はい。

松波:何でバラバラにやることになってしまうのか。何でも必ずバラバラになってしまうんで。

竹林:ねえ! 関西弁の圏内で何か考えたほうがいいかもしれないですね。

松波:それぐらいの発想でやりましょうよと、個人的には思います。

意識して、“無意識を切る”

竹林:もう1回上に上がって、AかBかCかを、京都と大阪と神戸でやって、もう1回抽象化して、これらはわずか100キロもないですよね(笑)。

松波:そう。なんか「大阪万博」って付くと「大阪がやりはるんですから知りまへん」ってなるじゃないですか。別に一緒にやればいいじゃないですか。

竹林:その発想も入れていきたいなと思います。

今日は「横糸をどうリフレーミングするのか」ということで、これはビジネスだけではなくて、人の気持ちとか、思考パターン、組織もリフレームできるというお話をしていただきました。

これから世の中コロナを含めて変わっていくと思います。せっかくこれを聞いていただいているので、最後は組織論としてではなくて、自分自身の生き方とか自分自身がやろうとしていることを、1回リフレームして考え直したらなと、とても感じました。

同時に最後のまとめですけども、バイアスがかかってきて、与えられる情報から分析していくようになっています。でもさっき松波さんが言われた、ちょっとレストランに行った時や、Uber Eatsを頼んだ時に、フレームを変えて「これどんなんやろな」「そもそもこれって何やろな」とか考える。

最近思うのは無意識に生きると、脳が楽なほうへ働くんですよね。だから意識して、無意識を切りにいかなあかん。現場に行っていろいろ考えるとか、違った道を歩いてみるとか、意識で切りに行く。(今日)リフレームを学びましたがもう1回どんなことができるんやろなと、自分自身で、組織論としてではなくて一人ひとりとして考えていただきたいなと思います。松波先生、ありがとうございました。

松波:ありがとうございました。

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