
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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入山章栄氏(以下、入山):逆に南場さんから見て、この「スタートアップスタジオ」というのが……僕も実はあまりスタートアップがしたいことは何かって、よくわかってないんですけど(笑)。どういうことを期待していますか?
南場智子氏(以下、南場):スタートアップスタジオは、デライト・ベンチャーズ(DeNAグループの起業家向けVCファンド)も持ってるんですけど、やはり「トライできる」ということ。あと「いつか起業したいな」とか「アイデアはあるんだよな」とか思って土日一人で考えたりしててもあまり進まないけど、スタートアップスタジオのような環境に身を置くとガッと進むのではないでしょうか。
それをやるための、投資家や起業の仲間がここにいるというのは、起業に向けたエネルギーチャージ量が桁違いに高まるので、私はすばらしいって思うんですよね。
入山:こういう環境がすばらしいと。
南場:環境はすばらしいと思う。そういう人たちの「密度」というんですかね。コロナの話もありますけれども、必ずしも物理的に密じゃなくても、工夫してできることだと思うんです。
入山:なるほど。さっき南場さんが見せてくださった資料に、なぜ起業に興味がないかという理由の1つに、「周りに起業してる人がいない」「知り合いがいない」というのがあったじゃないですか。
逆に言うと、スタートアップスタジオがみんな起業したがってるわけだから、ここに連れてきちゃえばいい。
南場:そうそう。いろんなノウハウも共有できるし。例えば、VCや弁護士・弁理士の評判などそういったデータもみんなで共有したらいいと思うんですよ。アメリカはそういう情報が、もうワン・グーグル・サーチ・アウェイ(Googleの検索1つ)で集まる。例えばVCに関していえば、担当キャピタリストの評判まで共有できるんです。
入山:要するに、めちゃめちゃインフォーマルな情報ってことですね。ここだけの話のような。
南場:あとはいろんな手法ですね。調達の手法や役所対応などもわかりやすいし。そういうのを整えたらいいと思うんだけど、その第一歩が「集まる」ということですよね。「こういう時はすごく困ったよ」とか、「この人は助けてくれるよ」「この人は冷たかったよ」とか(笑)。なんでもいいんですけど集まればなんでも共有できるじゃないですか。そういうのは心強いですよね。
入山:今日はいろんな方が聴いてくださってると思うんですけど、特に日本のどういう層の人とか、どういう人にスタジオに来てもらうと良いんじゃないかなって、何かありますか?
南場:起業家候補として?
入山:はい。
南場:それは老若男女。起業を若者の専売特許にしないでほしいなと思っていて。
入山:いいですね。
南場:私も今ちょっと、こっそりやってるんですけど(笑)。
(会場笑)
南場:でもね、多様性という言葉はインチキな言葉じゃなくて、お互いから学べる内容が違う方が良いと思います。いろんな人が集まったらいい。
入山:アメリカのデータでは、実は一番起業の成功率の高い年齢は、40代半ばぐらいなんですね。
南場:(年齢が)高いですね。
入山:けっこう高いんですよ。なんだかんだいって若い方は勢いがあるんだけど……。若い方もたくさんいるので申し訳ないんですが、勢いはあるけど、経験値は低いじゃないですか。ミドルシニアって経験値はあるので、あと勢いつけるだけなんですよね。だから、勢いつけるとけっこう成功するんです。
有名なのは「ケンタッキーフライドチキン」。カーネル・サンダースが始めたのは、65歳ですよね。だからもう老若男女問わずいろんな人が集まって、多様性のある場所にすればいいんじゃないかということですね。
司会者:最後にお二方にメッセージをいただいて、締めくくりたいと思います。
まず1つは、今南場さんにお話しいただいたところとも重なりますが、起業したい方、起業を考えてる方に向けて、一言アドバイスをいただきたいです。それから南場さんから少しいただきましたが、スタートアップスタジオ協会への期待を、入山先生からもぜひお聞きしたいと思っております。
入山:はい。まず僕から言おうかな。その後、南場さんにお願いしたいと思います。
まず、起業したい方へのアドバイスは、もう単純なんですけど、いろんな起業してる人や起業したい人と会うといいと思います。やはり人間は「パッション」なんですよね。学者がパッションと言うのもあれなんですけど。
僕が早稲田大学ビジネススクールで唯一、一生懸命やってる授業があって。「トップ起業家との対話」という授業なんですよ。そのうち南場さんにもぜひ、もしよろしければ出ていただきたいんですけど。
それはなんでかというと、途中から「これは理屈じゃないな」と思って、「(起業は)パッションだ」と。ところがビジネススクールはパッションは教えないんですよ。そうでしょ? 理論とか、ファイナンスのなんちゃら手法のようなことはよく教えてくれるんですけど。でも、パッションが一番大事だから。
僕は大した人間じゃないし、ただの学者なんでパッションもダメなんですけど、僕の周りには起業家でパッションのある人が死ぬほどいる。その人たちを呼んできて、とにかくパッションだけ語ってもらうと、伝染するんじゃないのかなと思って。
入山:早稲田でこの授業を何年か前から始めて、たぶん今、早稲田のビジネススクールの中でも一番人気がある授業になってるんですね。みんな本当に思いを語ってくれるんです。やはり思いに触れるのはすごく大事です。
そういう時に、まさにこのスタートアップスタジオに来て、あるいは関係ない、ちょっと興味なさそうな友だちとかも巻き込んで、パッションを感じるようなことをしてくれるのは大事かなって思っています。
スタートアップスタジオ協会への期待はまさにそれです。パッションの場にしてほしい。あと、南場さんに言われて僕もハッとしたんですけど、これからは確かにスタートアップエコシステムのグローバルの競争がめちゃめちゃあるんですよ。もう今、世界中で起きています。
僕も3、4年前ぐらい前にインドのバンガロールへ行きましたけど、すごいんですよね。今はインドネシアがめちゃめちゃすごいです。ユニコーン企業の数は日本より多いわけです。なので実は放っておくと、日本のスタートアップエコシステムは世界に取り残されてしまいます。
逆に言えば、日本だからできるおもしろい、ちょっとぶっ飛んだイノベーティブなスタートアップエコシステムができる。スタートアップエコシステムそのものにイノベーティブを起こしてもらえるといいかなと思います。
南場:私からの起業したい方へのアドバイスは、「どうぞ。起業してください!」ということですね。
(会場笑)
南場:「今すぐやりましょう!」と。その後のことはそんなに心配しなくても大丈夫な時代です。今よりももっともっと、今日よりも明日、明日よりも明後日、今年よりも来年のほうが、起業して失敗した人に対する門戸が開かれていきます。
大企業もそういう人を探しまくって採用するような時代が必ず来ます。何の心配もしないで、まずやってみる。
起業という概念に、なんとなくハイになっている場合もあるじゃないですか。意外と起業って、やってみるとものすごく地味なことも多い。「あ、起業ってこういうことなんだな」とか、やってみてわかることもある。
だからやることの内容に対して、入山先生がおっしゃった「パッション」がすごく重要だと思うんですよね。
南場:平松政次さんって知ってますか? 野球の、殿堂入りのピッチャー。
入山:あ、平松さん! 懐かしい。横浜DeNAベイスターズの前身の、大洋ホエールズのね。
(会場笑)
入山:久々に聞きました(笑)。
南場:あと、V9の高田繁さん。この2人でずーっと。
入山:たぶん、参加者の7割はわかんないですよ(笑)。
(会場笑)
南場:まあでも、いうなれば(お二人とも)プロ野球、引退してからも40年、ずっとプロ野球界を見てきて、大成する人としてない人の選手の差を見てきているの。
みんなすごい選手なわけですよ。その中で大成する選手としない選手の差ってどこですか? って聞いたら、高田繁さんは「工夫だ」って言ったんですよ。
どんな選手もスランプに必ず陥りますが、その時に「こうしてやろうか」「ああしてやろうか」と工夫するのは、ビジネスと一緒なんですよ。うまくいかない時にこの工夫の道のりを楽しむって、私は大事だと思うんです。その「工夫」をできる人。
南場:もう1つ、平松さんは何と言ったかいうとですね、「思いの強さだ」って言ったんですよ。入山さんが言う「パッション」ですよね。
やってることに向けての想い、あるいは、チームに対する思いとかでもいい。どんなパッションでもいいけど、「ぜったい成功するんだ」という、思いの強さがすごく重要ですよね。
スタートアップスタジオ協会への期待で言うと、「いろんな人が集まる場所にすればいい」と言ったんですけど、スタートアップスタジオもいろんなところがあっていいと思うんですよね。
しかも、できればさっき入山先生が言ったバンガロールの話とか、Yコンビネータとか……アクレラレータとはちょっと違いますかね。まあ、スタートアップスタジオも世界のトップを見て、どうか目線を高く取り組んでほしいなって思います。それで自分たちのスタジオの特徴を持ってほしいです。
この協会は、そこ(一つひとつのスタートアップスタジオ)で得られた知見を共有できる場として、機能するといいんじゃないかなと思ってます。
入山:というわけで、最後の金言は「高田選手と平松選手から学べ」というね。
(会場笑)
司会者:突然の野球ネタに。
入山:突然の野球。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手がパーフェクト(2022年4月10日)やった翌日にまさかのこういうネタで(笑)。
司会者:本当ですね(笑)。でも、結局は思い、「パッション」に集約されるというところですね。お二人から非常にパッション溢れるメッセージをいただいたと思います。
それではこちらのセッション、以上としたいと思います。あらためて、入山先生、南場さん、ありがとうございました。
(会場拍手)
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