2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
早川周作氏 インタビュー(全1記事)
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ーー新型コロナウイルスの感染拡大によって、プロスポーツビジネスの業界全体が受けた影響をお聞かせいただけますか。
早川周作氏(以下、早川):従来型のプロスポーツビジネスは、大きくチケット収入とスポンサー収入によって成り立つビジネスモデルでした。しかし、このコロナ禍でチケット収入は無観客や入場制限によって大幅な収入減になりました。スポンサー収入についても、これだけの不景気でスポンサーさまの数字が悪くなれば、必然的に広告費用が削減されます。プロスポーツビジネスは収入の柱を折られてしまったような状況でした。
ーー業界全体が苦しい中、御社の影響はいかがでしたか。
早川:無観客になったことで、チケット収入がなくなりました。年会費をいただくファンクラブも、生活が大変になったことで出費を控えられるようになりました。スポンサーさまについては、トップスポンサーに大打撃を受けた航空関連の事業者さまがおられたり、コロナという見えない敵に我々も非常に苦しめられました。
ただ、私は創業が早かったので、ITバブルの崩壊やリーマンショックなど、さまざまな試練を経験しています。通ろうと思ったら、いきなりシャッターがガッと閉められるような(笑)。でも、そのシャッターを開けようと挑み続けると、最初はすごく重たいんですがいずれは開き、開けてしまうと「このシャッターはすごく重かったけど開いたよね」となるんですね。
私は経営者には定期的に試練が与えられるものだと思っているので、今回のコロナも新しい重たいシャッターを開けるつもりで挑み続けました。
ーー具体的に今回のコロナ禍では、どのような取り組みをされたのでしょうか。
早川:コロナの影響で経営状況の厳しい企業が多いのですが、逆にコロナで成長する企業もあります。ですので、今までの常識ややり方から離れて、目線を変えて違う方向に営業を行ったり、業務の条件替えをするなどのシフトチェンジを行いました。
例えば、今まで500万円から4,000万円だったスポンサー枠を、月5,000円から6万円のオフィシャルパートナーという仕組みに変更し、市場環境に合わせて、「年間1,000万円は難しいけれども72万円だったら出せますよ」といった企業さまにご提案をさせていただきました。
月1万円で契約されたところが、お付き合いが続く中で月3万円や6万円にプランを上げられる可能性もあるわけです。「強い者、賢い者が生き残るのではなく、変化できる者が生き残る」という言葉がありますが、我々は、マーケットに合わせて考え方や提案を変えるという対応を行いました。
また、那覇市の国際通り(沖縄県で最もにぎやかな通り)にお土産屋をオープンさせました。今まで国際通りの1階に店舗の空きはぜんぜんなかったんですが、コロナでテナントに空きが出た。ピンチはチャンスでもあって、みんなが動けない状況下で動くことが後で効いてきます。下がったら絶対に上がり、上がったらまた下がるのが景気の自然な動きです。株もそうですが、下がった時に買うのがチャンスになります。
コロナの期間は無理やりぴょんぴょん跳んでも高く跳べません。でも、準備期間としては非常に有効だと思っています。デット(借入)でもエクイティ(新株や社債の発行)でもどんどん融資を受けて、自然に育つ種をしっかりとまいておくことがすごく重要だと思っています。
高く跳ぶために、深く沈む。助走と一緒で、私は低くしゃがめばしゃがむほど高くジャンプができると思っていますので、お土産屋をオープンさせたり、九州アスティーダという女子チームを創ったりと新規事業も行っています。
ーークライアントを獲得するために苦しい中でも成長している企業を探したり、スポンサーメニューを変えたり、テナントに空きが出た目抜き通りに土産物店を出すなどの施策をされたわけですが、どういった判断軸でそのような決断をされたのでしょうか。早川社長の判断軸の形成につながるようなご経験などがあればお聞かせください。
早川:父が建設業をやっていましたが、私が19歳の時に会社で2回目の不渡りを出しまして。銀行の方が家に来て「もう1回融資をしようか」という話になり、「ちょっと考える」と言って父は外に出て、そのままいなくなったらしいんですね。バブルの崩壊があって建設業がものすごい勢いで衰退する中で、なぜ父が会社をつぶすだけでなく蒸発をしなければならなかったのか。
やはり業態のシフトチェンジをしなかったこと。生き残るために必要とされる「変化」をしなかったからだと私は思っています。例えば上場企業では、シード期の事業をピボットしない会社のほうが少ないと言われていますが、私は父の蒸発で「変化の必要性」を学びました。
また父がいなくなった後に家族、親戚、社員がどれだけ大変な思いをしたかを知っていますので、変化の必要性と同時に「逃げずに責任を持つこと」も学びました。
ーーお父さまの会社の倒産、そして蒸発という厳しいご経験をされたんですね。
早川:19歳で父が会社をつぶして蒸発してから、新聞配達でお金を貯めて夜間の大学の法学部に行き、法律事務所に入れてもらいました。父の件で相当な苦労をしましたが、それは政治や社会構造が悪いのだと考えて、法律を勉強しなければならないと思ったんですね。
早川:19歳の頃から、強い地域や強い人たちのために働き、弱い地域や弱い人たちのために働かない政治や社会を変えていきたいとずっと主張し続け、それを実現するために法律事務所で死に物狂いで働き、売上にも貢献しました。しかし選挙に出るとなるとお金がかかりますし、しかるべき人脈も必要になります。
そうした中で21歳の時に、ある投資家の方から「お前はサラリーマンをやる人間じゃないから会社をやれ」と言われ、5,000万円の出資をしていただけることになりました。当時、なんでお前はそこまで働くんだと聞かれるたびに、母を迎えに行ってまた一緒に暮らしたいからと答えていたんですが、私が志を持ってめちゃめちゃ働いている姿を見て、こいつは絶対最後までやりきるだろうと共感いただけたのかと思います。
私も今はスタートアップに50社ぐらい出資をさせていただいていますが、やはり志を持っているか、諦めずに最後までやりきる力があるかは、投資判断として非常に重視しています。
ーーご苦労があって、19歳で弱い地域や弱い人たちのために働く政治家を目指されたと。
早川:はい。19歳で新聞配達をしながら、20代で世の中を変えるために選挙に出ると周りに言っていました。そうしたら、「選挙に出る前に病院に行け」と言われたんですね。「病院って何?」と聞いたら「精神科」と言われて。その当時はわからなくて、当時のiモードで精神科を検索したら、確かに私が通う必要があるかなと思ったんですけど(笑)。
今回プロスポーツチームでの上場を宣言した時も「絶対無理だよ」と言われましたが、大きな目標を掲げると最初はみんなが否定してくると思うんです。19歳で「衆議院選挙に出る」と言ったら「病院に行け」と言われましたが、21歳で創業してキャッシュもそれなりに入ってくると、100人中0人だった賛同者が、10〜20人になった。
さらに事業をスケールして会社が大きくなると30人が信じてくれるようになり、25歳で羽田孜の秘書になったら50人くらいになって。26歳で私が秋田1区から衆議院選挙に出るという報道が出たら60〜70人が信じてくれて、28歳で出馬した時にはみんな一斉に「やっぱり早川ちゃんはやると思ったよ~」と言うわけですよ。いや、やっぱりじゃないですよねと(笑)。
ーー手のひら返しですね(笑)。
早川:やはり諦めないということです。先ほどお話ししましたが、私は元内閣総理大臣の羽田孜のもとで勉強をさせてもらい、衆議院選挙に出ました。羽田は短命でありながらも、大蔵大臣、農水大臣など、主要な大臣を歴任して日本国の総理にまで押し上げられた人物で、彼のもとで勉強する中で「志を持って絶対に最後までやりきれ」というメッセージを受けてきました。
例えば、羽田は「政権交代を実現できる社会を作りたい」という志を持っていました。A政党が間違ったことをしたらB政党に代わる。Bが間違ったことをしたらAに代わる。ずっと自民党の中にいたら悠々自適だったのに、資本主義先進国として政権交代がいつでもできる社会を作りたいと言って羽田は自民党を出た。
当たり前のことですけど、どうしても党にしがみつき、志を持って外に出られる方は少ないと思うんです。「目的と志があるなら、最後までやりきれ」のメッセージは、羽田孜、おやっさんから非常に強く学んだところですね。
ーー早川社長の判断軸が形成される上で、政治家を志したことは非常に大きなウエイトを占めるようです。昨今は「パーパス経営」のように企業の存在意義が大切にされる社会になっていますが、政治家を志す方はパーパスの時代の企業経営に向くのではないでしょうか。
早川:本当におっしゃるとおりだと思います。私は、インタビュー等で大切にしている言葉を聞かれたら、社会貢献性を考え「志」を持って事業に取り組み、5年先15年先30年先の「夢」を持ち、どんなに苦しくてもそれを「継続」すると、志・夢・継続の3つを挙げています。100社のうち98、99社が市場からいなくなる中で、残っている企業を演繹するとこの3点に集約されると思っています。
ーー28歳の時の選挙では、4人の候補者がいる中で次点という結果になりました。その後は政治ではなく、経済の世界で働かれることを決められた。
早川:落選後も月3,000軒を歩いて回りました。その時に、経済人など政治を支えている人間のほうが実は影響力があるなど、さまざまな気づきがありました。中学校や高校の科目にもあるように政治と経済は密接に関わっているんですよね。20代で政治経済を一通りやり、あらためて経済人として自分が世の中に対してできることは何だろうと考えました。
そして小さい会社を大きくしてIPOさせるとか。資金繰りに困っているところをお助けするとか。志は変わらず、それを叶える場所が政治か経済かの違いだけですので、経済人として自分がやるべきことをやっていこうと決意しました。
琉球アスティーダは、Tリーグの元チェアマンの松下浩二さんに声をかけられて、5歳で始めて15歳でメダルが取れる、お金をかけずにチャンスを得られる卓球という競技があることを知って引き受けました。
ーー政治から経済に移り、また政治に戻るということはありそうですか。
早川:今は毛頭考えていません。例えば社会に必要な人間として求められる存在になったら、その方々の思いを持って政治に取り組むということはあり得なくはないです。松下幸之助先生が国会議員は国の最高経営者であるとおっしゃっていますが、私がこれまでの経営で培った力が発揮できて、神輿に乗せられるような環境があったら、その可能性はないとは言えないですかね。
ーー他の経営者やこれから起業をされる方に向けて、これまでの経営者人生、あるいは今回のコロナ禍でのお取り組みを通じて、早川社長が得られた教訓がありましたらお聞かせください。
早川:ユニクロの柳井(正)さんでさえ、10回新しいことをやれば9回は失敗すると言われています。私は、チャンスは失敗した人間にしか来ないと思っています。ですから失敗を恐れてはいけません。そして、低くしゃがめばしゃがむほど大きなジャンプができるんです。
ウォルト・ディズニーやカーネル・サンダースでさえ破産したことがあるんですから、コロナでの失敗や事業の1、2回の失敗で諦めてはいけないと思います。海外では、失敗は挑戦の証として評価されますが、私は日本も挑戦したことが評価される社会にしていきたいと思っています。
ーー最後に逆風のコロナ禍で好業績を残された、早川社長の2022年の展望をお聞かせいただけますか。
早川:車検が通らない車のように、ブレーキもエンジンブレーキも効かない状態で、アクセル全開で進みたいと思います。
ーーアクセルを踏み続けて進むことで、3年、5年、10年経つとみなさんの評価がガラッと変わる、手のひら返しを生むわけですね。
早川:スポーツビジネスは間違いなくそうなると思います。これからは、テクノロジーも進化していく中でベッティングなどのグローバルなスポーツ消費にもフォーカスが当たっていきますし、そうした環境にあるスポーツは絶対に成長産業だと私は思っています。スポーツみたいな儲からないことはやらないと言っていたところが、5年後10年後に「あー」となると思います。
ーーありがとうございました。近日、早川社長と琉球アスティーダの歩みをまとめた本が出版されるとお聞きしました。
早川:はい。12月17日に毎日新聞出版から『琉球アスティーダの奇跡』という本を出します。私の志がなぜ生まれたのか、業界の常識等にどう立ち向かったのか、なぜ最下位だったクラブチームが3年で日本一を実現できたのか、スポーツビジネスにお金が循環する仕組みをどうやって作ったのか、プロスポーツチーム初の株式上場の意義などを書いていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。
ーー新著、そしてアクセル全開で進まれる早川社長の2022年が楽しみです。本日はありがとうございました。
早川:こちらこそ、ありがとうございました。
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