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大大大大ダイバーシティ〜「SDGs」の外で、自分の人生・働き方をフルスイングするには~(全3記事)

15歳で脳梗塞で倒れ、19歳で目が覚めたら半身不随に 沼田尚志氏が「日本で一番友だちが多い」存在になった背景

DMMオンライン展示会が開催した本セミナーでは、ビジネスの観点から多彩な登壇者を招き、本質的なSDGs推進のあり方を探ります。本セッションは「大大大大ダイバーシティ〜『SDGs』の外で、自分の人生・働き方をフルスイングするには~」と題し、世界ゆるスポーツ協会の澤田智洋氏、ドコモアカデミー学長の沼田尚志氏、経営コンサルタントの成澤俊輔氏が登壇。SDGsは壮大過ぎて、なんだか自分ごとしづらい……という意見に対し、各氏がそれぞれの見解を語りました。

「SDGs」は壮大過ぎて自分ごと化しづらい

近藤雄太郎氏(以下、近藤):みなさん、大変お待たせいたしました。ご参加いただいて本当にありがとうございます。このセミナーは「大大大大ダイバーシティ ~『SDGs』の外で、自分の人生・働き方をフルスイングするには~」をテーマに、お三方にお話しをうかがっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日の司会進行を務めます、DMMオンラインイベント事業部の近藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今回のオンラインイベントはSDGsをテーマにしているんですが、テーマが壮大過ぎて、なかなか自分ごと化しきれない現状もあると思っていて。そういった(壮大な)テーマに対して、お三方はどんなことをお考えなのかもおうかがいいしつつ。

「社会貢献もしたいし、自分の人生も豊かにしたい」というのが本音ではあるかなと思います。一方で、Canの部分でどうしても限界があるところもありますが、マインドセットに対して、自分の人生・働き方をフルスイングするにはどうしたらいいのか。

お三方は多様な働き方を体現されつつも、チャレンジングな境遇もあったかなと思います。それらを乗り越えて今に至った背景も踏まえながら、ぜひお話しをうかがえればと思っております。

最初に、お三方から自己紹介をお願いできればなと思っております。今回は「働き方」もテーマにあるので、今の働き方や、働き方に対しての考え方も含めて、お一方ずつお願いできればなと思っております。最初に澤田さんからお願いして大丈夫ですか?

澤田智洋氏(以下、澤田):あ、すみません。最後だと思って休んでいました。ごめんなさい。

成澤俊輔氏(以下、成澤):あかんやろ(笑)。

澤田:小休憩でコーヒーを飲んでいました。ごめんなさい。

成澤:あいうえお順で、澤田からでしょ(笑)。

登壇者3名のプロフィール

澤田:失礼しました。コーヒーを飲みながら話します。澤田と言います、よろしくお願いします。世界ゆるスポーツ協会という団体で、新しいスポーツを作ったりしています。あとは福祉の仕事もやっていて、目が見えない方のアテンドロボットを作っていたり、障害のある方の服を作っていたりしています。

この後にお話される成澤さんと沼田さんは、もう逸材中の逸材というか。「どうやったらこういう人が誕生するの?」という、ある種すごく異分子的なお二人で、沼田さんと成澤さんの“異分子感”もぜひお楽しみいただればいいんじゃないかなと思っています。今日はよろしくお願いします。

成澤:(笑)。

沼田尚志氏(以下、沼田):みなさん、こんにちは。スーパーイノベーターの沼田です。(澤田氏が)異分子とおっしゃっていましたが、NTTドコモという超大企業でイノベーション統括部にいて、ドコモアカデミーという社内の育成機関の学長をしています。異分子というよりは、わりと正統派のイノベーターかと。

成澤:(笑)。

沼田:笑っちゃった(笑)。

澤田:髪の毛がどピンクで、ロングですけれども。

沼田:朝起きたらこうなっていました。

成澤:(笑)。

沼田:いろんな会社で副業をやっていたり、日本で一番友だちが多いので、友だちを集めて飲み会をやったりしています。どうぞよろしくお願いします。

近藤:お願いいたします。じゃあ最後に成澤さん、お願いできますか?

成澤:成澤俊輔と申します。自分の仕事は「経営コンサルタント兼アーティスト」という言い方をしているんですが、今は60ぐらいの会社の経営のとらえ直しをしています。

目が見えないことをいいことに、思い込みが激しく、自分の持論を世の中にいろいろ表現していけたらいいなぁと。おととしは1人でアフリカに行ったり、今度はゴルフ始めてみようかなと思ってみたり、自分の中のいろんな初体験を作っている仕事をさせてもらっています。楽しい時間になることを願っています、よろしくお願いします。

近藤:お願いします。僕はあんまりしゃべらずに、お三方にどんどんお話しいただきたいなと思うので、次に進みたいと思います。

「幸せな国」ブータンの幸福度が急落した理由とは

近藤:今回のテーマであるSDGsやサステナビリティが大事なのはわかるんだけど、「ちょっと壮大過ぎて肌触りがない」「あんまり自分ごと化できない」ということが、ちょくちょく本音ベースで聞き漏れていくところがあります。

お三方は「SDGs」や「サステナビリティ」という言葉をどう捉えられているのか、自分ごと化できないことが間違っているのかをおうかがいできればと思いますが、成澤さんはどうですか?

成澤:ありがとうございます。最初のアイスブレーキングも兼ねているかなと思うので、最近僕が一番興味を持ったニュースについてお話できればなと思います。2、3週間ぐらい前に新聞を読んでいたら、ブータンについての記事があったんです。今、ブータンが世界の幸福度ランキングで90位ぐらいになっているのは知っていますか?

澤田:下がっているってことですよね?

成澤:そうそう、下がっていますね。

澤田:GNH(Gross National Happiness)と言いながら、下がっているというニュースですね。

成澤:そうなんですよ。あれがけっこうおもろいなぁと思っていて。4、5年前にブータンは幸福度が世界でトップクラスでしたが、あの頃ってブータンが情報鎖国をしていたんですよね。なので、国外の情報があんまり入ってこないと。

だからこそ、「屋根があってご飯があって仲間がいて、これで幸福でええやないか」ということを言っていたのが、直近で情報鎖国をどんどん解禁していった時に、国中の人が隣の芝が青く見え始めたんですよね。「あっちの国にはあれがある」「こっちはどうだ」となった時に、4、5年ぐらいで150ヶ国中90位に下がったんですよね。

ダイバーシティとは「比べる相手がいない」ということ

成澤:ちなみに日本は60位ぐらい、ブラジルが30位ぐらいです。日本で言う沖縄じゃないですが、ブラジルが30位なのも、感覚的になんとなくみんなわかるんじゃないかなと思います。隣の芝が青く見えてしまうとか、人と比較しちゃうことって、けっこうこの時代のテーマだなと思ったりしています。

SDGsを今日の3人の共通テーマでいうと、タイトルでもある「ダイバーシティ」や「多様性」にもなるかなと思います。僕なりにダイバーシティを日本語訳すると、「比べる相手がいない」ということだと思っています。

隣の芝が青く見えてしまうことや、「大企業がいいなぁ」「あの家族はいいな」というふうに思ってしまうことにどうやって向かい合っていくかが、この時代のテーマだなと思ったりしました。最近、僕の中ではブータンの情報がおもしろいなぁと思って、けっこういろんな人に事例としてしゃべらせてもらっています。

近藤:なるほどですね。ついつい比較しちゃうところはあるかなと思うんですが、それでも自分らしく、SDGsを捉えていくということですね。ありがとうございます。

「日本で一番友だちが多い」と語る沼田氏

近藤:沼田さん、事前のお打ち合わせでおもしろい話をされてましたが、いかがですか。

沼田:成澤さんの後、ものすごくやりづらいですね。

成澤:なんで(笑)。いつものようにやろうよ。

沼田:いつものように(笑)。私、日本で一番友だちが多いと思っているんです。確かにSDGsって、「自分とはちょっと違う世界の話なのかな?」と思いがちなんですが、結果的に、SDGsの17項目すべてに(該当する)圧倒的当事者の友だちがいるんですよね。

成澤:なるほどね。

沼田:すべての項目に興味を持って、関心を持って、深く考えていくのはさすがに難しいんですが、17項目に(該当する)本当に大切な友だちがいるので。その子のことを思うと、「圧倒的当事者」ではなくても「当事者」ぐらいにはなれるかなと思っていて。

自分の目の前で人が倒れていると介抱するんですが、道路を1本隔てた向こうの道で人が倒れていても、「誰かが助けるだろう」って思うんですよね。でも私は友だちが多いから、道路の向こうで倒れた人を介抱している人も友だちなので、そばに寄ってしまう感じですね。あんまり難しく考えないで、友だちを増やしたらいいんじゃないかなっていうのが、私の持論ですね。

成澤:いや、おもしろい。

澤田:つまり、SDGsというコンセプトも17項目のイシューもそうだけれども、(多くの人の解釈では)記号化されている。僕らは、道の向こう側にいるのは「人」じゃなくて「記号」として情報を処理している可能性が高くて、沼田さんが言ったのは対岸の「人」だった。SDGsは記号的に処理されていることが多いから、それよりかは17人の友だちを作るというか。

15歳で脳梗塞になり、19歳で目覚めたら半身不随に

澤田:1から17のイシュー、それぞれのテーマに当てはまる人を沼田さんが100人ずつピックアップして、SDGsの1の方には、森林保全に関連する100人の友だちを日本中から沼田さんがキュレートして、「この100人のうち、誰かと友だちになってください」みたいな。「17種類の友だちを5年以内に作ろうキャンペーン」とかをやったほうが、もしかしたらはるかにいいかもしれないですよね。

沼田:100人は難しいんですが、10人ぐらいだったらぜんぜん。

澤田:10人でもすごい。じゃあそれを「DMM.SDGs」でやりましょう。

近藤:いいですね。確かに、それぞれの企画に温度感を持ってトライアルできそうな気もします。

成澤:沼田さん、友だちがすごくいっぱいいるというのは、「友だちをいっぱい作ろう」と思って作ってないですよね?

沼田:ここに呼ばれた理由もそうだと思うんですが、15歳の時に脳梗塞で首から下が動かなくなって、3年間入院していて。1回ちょっとやばかったんですよね。19歳で目が覚めて、首から下が動かなくて。鉛筆を咥えて、ひらがな練習帳を書いていました。

成澤:その頃、髪はピンクではなかった?

沼田:その頃はね、髪はピンクではなかった。めんどくさい……そういうの入ってくるの?(笑)。

成澤:(笑)。

澤田:倒れる前はピンクだった? はい、もういいですね(笑)。

沼田:だから、友だちが欲しくてしょうがなかったんですよね。1人いるより2人がいい、2人いるよりかは4人がいい、という感じで際限なく友だちを集めて。その友だち同士をつなげていたら、またたくさん友だちができたので、ビジネスメリットとかはあんまり考えたことがなくて。みんなすごいんすよ。超リスペクトしています。

「デベロップメントもサステナブルも、めちゃくちゃきな臭い言葉」

澤田:沼田さんは飲み会のイノベーションを起こしていて、メソッドがすごくて。それだけでNewsPicksの記事になる、稀有な人なんですよ。

SDGsって基本はめっちゃ複雑で、きな臭いというか。まず、「持続可能な世界を作りたいんだったら、デベロップメント(発展)していいんだっけ」という議論があるわけじゃないですか。サステナブルという概念自体も、もともとはものすごく人間中心で、そもそも海洋資源の経済学で語られていた言葉なんですよ。

生態系が維持可能な最大収穫量がサステナブル。つまりは、人間にとって最も漁業で魚を収穫できる量を最大化するのが、サステナブルの考え方です。豊かな生態系を保存しておくという考えじゃなくて、人間が食べられ魚を大量に維持しようっていう、欺瞞がめちゃくちゃ含まれているんですよ。

だからそもそも、デベロップメントもサステナブルも、めちゃくちゃきな臭い言葉であることは間違いなくて。ただ、ブレークダウンした17個の1種はすごく大事な課題だと思っているので。きな臭さをなくすためには、いろんな事情や社会性や経済性とかを1回取っ払って、「そこに関わっている友だちがいるから」みたいな、シンプルなところに立ち戻るのはすごく賛成ですね。

成澤:さっきのGNHの話で言うと、ブータンが一時期(幸福度が高いことが有名になって)流行った時って、「困った時に頼れる・助けてくれる人が何人いますか?」というのをブータン中で聞いたら、みんな「50人」や「100人」と答えて。これがハピネスだなって一時期言われていたじゃないですか。それとSDGsの17ターゲットに関する友だちがいることは、けっこう近い話な気がしますね。

澤田:ダンバー数というのがあって、人間が知覚できるコミュニティの人数はだいたい150人と言われているんですよ。150人ぐらいであれば名前も知っているし、「元気ないな」「子ども生まれたな」とか、事情まで含めて知っている。世界中のいろんな村とかを文化人類学者が研究すると、120人から150人で村落を作っているケースが非常に多い。

成澤:ザッポスとかもそうですもんね。

澤田:ザッポスもまさにそう。だけど今はいろんな企業が肥大化しているし、肥大化した上におんなじような人しかいない。「ホモソ」って言われている集団ですよね。だから、その150人の“村”の中に、(SDGsの)17テーマに関連する17人を入れておくのはすごく大事ですよね。

成澤:おもしろい。

SDGsがうまく前進しないのはなぜか

澤田:でも沼田さんは、150人どころか友だちが4,000人だっけ?

沼田:だいたいみんな、「みんな」って言うんです。

成澤:いや、めっちゃおもしろい。そうですよね。

澤田:なるほど。おもしろい。

沼田:「みんな」なんて人はいなくて、「40代女性」なんて人もいなくて、私がいてあなたがいるだけなんですよ。固有名詞で語らないと何も前に進まないのに、漠然としたもやっとした抽象的な、「SDGs」みたいな記号をターゲットにするから、なんとなくうまくいかないのかなと思います。

成澤:そうだよね。

澤田:成澤さんの周りにいる人たちって、「成澤さん」という視覚障害の当事者である1人がいるから、それをきっかけにスパークしていく人っているんですか? 成澤さんと友人のためにというか、共にというか。

成澤:それはめっちゃあるなと思いますね。僕は目が見えません。これがどんな意味かと考えると、「目から入ってくる情報で人と比較しないでね」というのを、世の中に指し示す要素もあるかなというのが1個あります。

たぶん、澤田さんも沼田くんもみんなそうだと思うんですが、僕らはやったことがないことをやってみるのが大好きじゃないですか。やっぱり、やったことがないことをやってみるのっておもしろい。

「目が見えない成澤が、英語もしゃべれなくても1人でアフリカに行くんだから、アジアぐらいは行ってみようかな」ってなるじゃないですか。なので、目から入ってくる情報に囚われないようにっていうのと、やったことないことをやってみることをそそのかしていくのが、僕の周りではいっぱい起きている現象かなって、すげー思いますね。

SDGsにおいて、障害者が当事者にならざるを得ないという重荷

澤田:成澤さんって前例になりたがりですもんね。でも本当だったら、成澤さんや沼田さんが前例にならなくて済むんだったら、一番いいなと思っています。

僕の周りにも障害のある方がいっぱいいますが、結局この2021年においても、意外と当事者の選択肢や活動領域って限られてる。だから、チャレンジせざるを得ないのも、それはそれでしんどいなと思ったりもしますけどね。

成澤:そうですよね。僕は使命感や責任感とかはまったくないので、好きだからやってるというか。目が見えないからいろんなことをやってるというよりは、多動性が止まらなくて、同じことをやり続けるのが苦手なので。それこそさっきの近藤さんの話に戻すと……。

澤田:さすが、戻した(笑)。

成澤:SDGsの当事者性で意識していることは、自分の中にルーティンを作らないことを大事にしてるんですよね。自分の中のルーティンを作らないとは、なるべく自分の中で常識を作らないようにする。

毎日いろんな場所に行って、毎日なるべくいろんな業界の人としゃべって、毎日なるべくいろんな人たちに会うと、「こういう考え方もあるな」ということに気づけるなと思います。いかにルーティンを作らないかは、自分の当事者性を高めることや、「自分って何だっけ?」ということを考える機会にはなっているなと思いますね。

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