2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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大谷明日香氏(以下、大谷):「100人100通り」というお話がさっきあったと思うんですが、働き方も生き方も100通り。100人いたら100通りある中で、それこそ「女性だけの問題じゃない」ってよく言われることとして、育休の取得率の話があると思うんです。
例えば、男性の育休取得に関しては、「取りました」と言っても2日とか1週間という話をよく聞いたりするんですが、青野さんは実際に育休を3回取られたんですよね?
青野慶久氏(以下、青野):そうなんですよ。僕、もともと育休とかを取るタイプじゃなかったんですが、1回取ってみたら大変だということがわかったので、2人目、3人目の時も取ったんです。先ほど制度と風土のお話があったかと思いますが、率先垂範で風土を変えるのにはいいですよね。
男性育休という制度があるわけですよ。でも、やっぱり取らない。そういう風土がないですよね。それを作るにはトップダウンってけっこう便利で、「だって社長が取ってんじゃん」みたいなのはいいですよね。
なので、僕が3回取ってからは(サイボウズの)男性育休取得率がどんどん上がって。たぶん今は、取らないほうが珍しい感じになってると思うんですよね。やっぱり、トップダウンは大事だなと。ポーラさんもそうじゃないですかね?
管理職の比率を上げるって大変というか、「そういうのが当たり前」という風土ができるところまでが大変だと思うんですよね。一回当たり前になっちゃったら、何も気にしないと思うんです。ポーラさんとかは、女性の社長さんがぐーっとトップダウンでやったのかなと思っているんですが。
大城:そうです。ポーラ・オルビスグループでも、女性管理職を積極的に登用していこうと。事実、登用することで次から次へと橋渡しできているんだなあと思いますね。
福田恵里氏(以下、福田):私も今、女性が8割の会社なんですが、実際に私が26歳の時に起業した時は、自分と同じぐらいの世代の社員が多かったんです。31歳で5年ぐらい会社をやっていて、東京都の平均結婚が年齢29.5歳とかなので、それこそ結婚や子どもを望まれる方も増えてきた。
その中で、さっき青野さんがおっしゃってたとおり、トップがその姿を見せたりとか、トップが(仕事と家庭を)両立しているロールモデルとして事例を見せていくことが、その下で働いている社員にとっては心理的安全性にすごくつながるんだろうなと思いますし。
「その人生の選択・意思決定を、会社が応援しているんだよ」ということを、トップが実際に行動で示して伝えていくことが、嘘偽りないメッセージングにつながるんだろうなと思ったので。まだスタートアップでぜんぜん会社も安定してない時に、社員に私は「今、妊活始めたわ」という感じで、けっこう開示して。
青野:すごい。
福田:妊娠したことや出産を一緒に喜んでもらって、みんなも出産や妊娠とかした時にこういうふうにお祝いするよ、というカルチャーを作っていったのは1つあったので。さっきの話はすごく共感しました。
青野:今日は就活生も見ておられるということなので、1つ結論として言えるのは、「ちゃんとトップを見とけよ」ということですね。なんかいい会社っぽくても、トップが旗を触れないというところは、けっこう……「大変かもよ」というね。それは1つ、見極める目としてはおもしろいかもしれませんね。
大谷:本当にそうですよね。最近はいろんな意見広告や企業主体の発信によって、ジェンダーの問題についても、いろんなかたちでメッセージングされ始めた。「やっとそういう形ができ始めたな」と思う一方で、じゃあ実際に足元はどうなんだ? ということが気になっている人たちも、たくさんいるのかなと思います。
個人的に聞いてみたいなと思ったのが、役員の登用率とかを高めていく段階で、ぐいっとトップダウンでやることがすごく大事というお話があったと思うんですが。
そこに、いわゆる積極的是正と言われる取り組みとか、女性を登用していく段階で「そこに対して自信がない」とか、チャレンジする時に周囲の環境も障壁になる気がするんです。そういうことへの支援や風潮作りって、どうやってやられているんだろうなというのはちょっと気になっていて。
サイボウズさんもポーラさんも、例えばSHEだったら、会社として受講生の方に対してどういう心の育て方を支援しているのか、ちょっと聞いてみたいなと思ったんですが。大城さんからいいですか?
大城心氏(以下、大城):そうですね。弊社の社長、及川(美紀)は女性ですが、「私が(社長に)なるなんて思ってなかった」と、本当に素直におっしゃっていて。
でも、やれるかどうかって、「やってみなよ」と周囲が後押しをすることがすごく大きいんじゃないかなと思っておりまして。私もそうだったなと思うんですね。
子育てをしながら(仕事を)やれるのかなという不安はすごくありました。だけど、とにかくやってみることを後押しして、「もし難しかったら、その時は絶対にフォローするから大丈夫だよ」と言ってくれる人がいるかどうかは、大きいなと思いますね。
大谷:そうですよね。チャレンジをちゃんと応援してくれるというか、ある意味「失敗しても大丈夫」な空気作りも大事だったりしますよね。これは本当に性別関係なくかもしれないんですが、特にモデル不在なところに入っていく時は、なおさらすごく大事なのかなとか思ったりしました。サイボウズさんはそういう取り組みがあったりしますか?
青野:そうなんですよ。まだぜんぜん十分とは言えないんですが、サイボウズでもやっぱりロールモデルを作りたいと思って。人事系・法務系の役員をしている中根弓佳さんという方がいるんですが、当時の彼女はまだちっちゃい子どもが2人保育園にいたので、彼女は短時間勤務をしてたんですよ。
短時間勤務なんだけど、仕事がよくできるのでなんとか役員にしたくて(笑)。短時間勤務だけど(役職を)あげると、やっぱり彼女からすると「え、無理です!」ってなるじゃないですか。「熱出したら帰らないといけないし、無理です」と言うので、「じゃあ、わかった!」と。
1人で全部する必要はないから、ちゃんと情報共有さえしておけば周りの人がサポートを入れるようにするし、業務を見える化しとけば、ちゃんと分担できるので。「1人で全部抱えなくていいから」みたいな。
がんばってがんばってやって、今や彼女は日本の働く女性のロールモデルみたいになってきました。30代で東証一部上場企業の役員ですから「すげえな」というね。しかも短時間勤務。こういうのが出ると、やっぱりちょっと空気はやっぱり変わりますよね。
青野:カルビーさんでも同じような話があって。ジョンソン・エンド・ジョンソンから来られた松本(晃)さんが、カルビーさんがちょっと(体質が)古い会社なので「なんとか変えよう」と思って。ある工場の工場長に女性を指名したんですね。
それもやっぱり、彼女が子育て真っ最中で。「なかなかフルタイムはきついよね」という時に、松本さんはホットライン作って、もう徹底的に支援してやるという。このへんも、やっぱり大事ですよね。絶対にはしごを外しちゃだめですよ、はしごを外したら、今度は次が出てきてくれなくなりますからね。そう思います。
大谷:例えば男性からすると、女性の積極登用に関して「女性だからといって起用されている」「なんかちょっとずるい」というコメントを、SNSでもたまに見かけてしまうんですが。
今のお話を聞いていると、「女性だから」起用してるのではなくって、能力やポテンシャルとかいろんなものを踏まえた上で(要職に起用している)。ただやっぱり、比率に偏りが生じているのは事実なので、きちんと数は変えていかなきゃいけないという意志を、どこまで一貫してやるかをすごく感じたんですけど。
福田さんがいろんな女性のキャリア支援をしている中で、フリーランスとかの働き方も含めて、いろんなところにチャレンジしている女性が多いと思うんですが。今、壁に感じていることとか、受講生の方たちから見えるものがあったりしますか?
福田:そうですね。先ほどもちょっと話をしたんですが、20年とか25年とか生きてきた中で、自分の固定概念とか、自分自身で可能性を制限するような“呪い”に、最初はがんじがらめになっている女性が本当に多いなと思っているので。
まずは、そこの固定概念を払拭してあげる。固定概念から解放してあげるアクションが一番大変だなと感じていて。さっきの管理職登用の(話の)時に、そこに挑戦するマインド作りにも寄与してくるなと思うんですけれども。
福田:そのために、私たちがやっていてすごく効果があるなと感じているのは、我々SHEのコミュニティに入会していただく時のルールがありまして。その1つ目がけっこうパワーワードで、「SHEに入ったら『私なんか』は禁止です」というのを言っています。
「私なんか」「いや、もう私は大丈夫です」という謙遜ワードは、絶対に言ってはいけないということをルール化しているんですね。あとは「30代だから新しいことは無理です」とか、自分の可能性を制限することを言うと絶対にだめです、というお話と。
あとは、自分の夢は積極的に言っていったり、他人の夢を絶対に否定しないというルールがあるんですけど。さっき言っていたように、やっぱりみなさん自信がない・不安な中で、それでもなにか変わりたいとか、ちょっと興味があるクリエイティブの領域に挑戦してみたいっていう、勇気と覚悟を持ってSHEの門を叩いたりするわけです。
その時に誰かに「今からデザイナーはちょっと無理じゃない?」という感じで鼻で笑われたりすると、そのちょっとの勇気がへし折られて、もう戻ってこれなくなっちゃう。さっきの青野さんがおっしゃっていた、「はしごを外したらもう戻れない」という話と一緒の状況になっちゃうので、初めはいかにして「自分ならできる」という気持ちの醸成をサポートしてあげられるかが、一番のハードルだなと思っていて。
そこさえちゃんとできれば、あとはけっこう自走して。何が自分の心の琴線に響くのか、何が学びたいのか、何がしたいのかを内省して、どんどんみんな羽ばたいていかれるので。最初の一番のハードルはそこだなと感じてますね。
大谷:確かにそうですよね。個人で取り組める心の問題と、「チャレンジしよう」ってなった時に会社側が用意しなきゃいけない環境や制度とか、どっちも必要だなと、すごく感じています。
福田:そうですね。
大谷:さっきの育休のお話とか、あとはよく話題になるのは生理の問題。性別による身体差、働く中でどうしても生理の問題は避けられないことで、もちろん同じ「生理がある人」の中でも個人差があると思うのですが、「どうしたって働く」という働き方の中で、もちろん女性の中でも生理痛は個人差がありますし。
それぞれ個々に違う体と心を持つ中でサポートできることとか、取り組みの導入の検証とか、実際にどう仕組み化しているのかについておうかがいしたいなと思いました。大城さん、そのあたりってどうですかね?
大城:そうですね。「女性だから」「男性だから」ということではないんですが、日本の会社ができた成り立ちって、男性が働くことを前提に作られている場面があるのかなということは、人事にいながら思っていて。そこに従業員の健康、心身の安定やパフォーマンスが発揮できる基盤を整えようと思った時に、どうも女性視点が抜けがちだよなというのは感じています。
だから、あえてそこを重視して見ておかないと課題が埋もれてしまうので、積極的に見に行かなきゃいけないなぁと思っています。あと、これは性別関係ないですが、体調をちゃんと職場で言えるかどうかはすごく重要だなと思っていて。「今日ちょっとしんどいんだ」って言えるかどうか。その風土も重要かなと思いますね。
特にリモート下は家で1人の社員もいますので、(体調不良を)言えなくてしんどくなっちゃうとつらいです。そういうことはないようにしなきゃと思いますね。
大谷:なるほど、ありがとうございます。青野さんはどうですか?
青野:そうですね。まずは、知識がないことによって配慮できない問題は、知識をつければ解決できると思うので、ここをがんばっている感じですかね。なので最近は、生理の研修をしてくれるところもありますから、それを受けてもらう。それは女性に限らず、むしろ男性側に積極的に受けてもらって。
(男性からしたら生理は)自分の知らない世界ですよね。「マジか」みたいな。今でも本当に、僕はなかなか信じられないくらいですよ。「えー、本当?」「そんなことになってんの!」ということがありますから。
まずはやっぱり、基礎知識を持ってもらうと想像できるようになって、配慮ができるようになり、ちゃんと会話が通じるようにはなる。少なくともここはやらないといけないんですが、これがなかなか大変で。なんで大変かというと、研修をやる時に積極的に集まってくれる人は、もともと問題ない人なんですよ。
大谷:本当にそうなんですよね。
青野:あとは、僕みたいな古いやつが「なんでその研修が必要なの?」とか言い始めるので(笑)、ここを埋めるのが大変ですよね。ある程度、ここもトップダウンで強制的に「1回学んでおけ」というね。こういうのをやらないと、やっぱり大きな変化を作るのはなかなか難しいですよね。
大谷:受けることは強制にされているんですか?
青野:いや、まだそこまではできてないんですよ。今、「やらないといけないな」って感じているところですかね。
大谷:なるほど。じゃあ、受けてみたいと思う希望者を増やすための風潮作りみたいな。
青野:そうですね。なので、「受けてよかった」という声をどんどん社内に流す。そうすると、だんだん知らないことが恥ずかしくなってくるので、そういう風土作りも大事かなと思いますね。
大谷:そうですよね。
大城:女性自身も知らなかったりしますから、男性だと殊更ですよね。
青野:本当にびっくりです。「えーっ!」って、妻の見方が変わりますよね。「この人、毎月こんなことになってるんだ」という。びっくりですよね。「大丈夫?」って思う気持ちがやっぱり出てきますよね。
大谷:知識不足ってけっこう大きいなと思っていて。いろんな差別問題とか、相手を知らないことからくる怖さというか、知らなければ想像することすらできないことってあると思うんです。
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