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リーダーシップ3.0、そして4.0へ~関係性を起点とした自律型組織づくり~(全6記事)

日本人よりも強い、アメリカ人の「上司への絶対服従」 評価も上司も関係なく“自律的に動く”人間を増やすためには?

組織が直面する課題の複雑さが加速度的に増している、VUCAの時代。どんなに優れたリーダーでも、ひとりで答えを導き出すことが難しくなり、メンバーから多様な意見を引き出しチームで課題を解決していくことが求められています。そんな「リーダーシップ」の在り方は今、カリスマから新たなスタイルへと移行しようとしており、重要となるのが組織内の人と人の関係性です。そこで『リーダーシップ3.0』『起業家のように企業で働く』の著者であり、リーダーシップの専門家であるTHS経営組織研究所 代表の小杉俊哉氏が登壇されたイベントの模様を公開します。

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日本人と逆で、リーダーばかりをやりたがるアメリカ人

斉藤知明氏(以下、斉藤):ではQ&Aに移っていきましょう。少しずつピックアップしながら、小杉さんにお答えいただければと思うんですけど。この質問、おもしろいですね。

斉藤:「マネージャーをリーダーに引き上げることはできるのでしょうか? 近いようでまったく別ジャンルのように感じるので、リーダーを上位に置くのがいいのか、人選を別にするのがいいのか。引き上げるのか、人を選ぶべきなのか? で悩んでいまして、どう思われますか」という問いですね。

小杉俊哉氏(以下、小杉):これはすごくいい質問だと思いますが、別のものじゃないですよね。「マネージャーの上にリーダーがいる」わけじゃなくて「マネージャーとリーダーを両方やらないといけない」んですよ。さっきの資料の1段落目に書いてあったんですけど、両方やらないといけないというのが現実なんです。

なのでマネジメント業務もやらなければいけないし、リーダーシップも発揮しなければいけない。その比率が職位によって変わるんだ、というだけの話なんですね。

これがおもしろいのは、さっき例に出したGEのクロトンビルで、長らく研修されていた牛島(仁)さんという方とパネル(ディスカッション)をやった時に「アメリカ人はみんな、リーダーばっかりやりたがってしょうがないですよ」と。「『あなたはマネージャーもちゃんとやってください』と言わなくちゃいけない」って言うんですね。

「あなたの仕事はマネージャーでもあるんだから、こっちもちゃんとやってください」と言わなきゃいけないという、この彼我の差。まったく(日本と)逆なんですよね。なのでこちらでは「マネージャーだけやって満足しないでくださいね」。「リーダーもやる必要があるんですよ」というのが、日本人に言わなきゃいけないことなんですよ。

斉藤:でもアメリカだと「リーダーばっかりやってないでマネジメントの仕事をやってくれないと」と言わないといけない。

小杉:「ちゃんとやらなきゃいけない仕事もきっちりやってくれよ」って言わなきゃいけないのがアメリカですね。どっちもどっちなんですけど、イノベーションが生まれやすいのはどっちでしょうか? という話なんですよ。

ベテラン層には“逃げてもらった”ほうが好都合?

斉藤:なるほど。では続けて次の質問にいければと思います。あぁ、これも難しい質問ですね。「組織と個人は上下関係から対等関係で移り変わってきているような気がします」と。

「社会的な雰囲気も相まってハラスメントも主張できるようになってきたなというのも、その顕著な例かもしれないのですが、この自律・自己実現という話になると、特にベテラン層で逃げる人が多いと感じます」とおっしゃっています。こちらは、いかが思われますでしょうか。

小杉:ベテラン層は逃げてもらったほうがいいんですよね。

斉藤:逃げてもらったほうがいいんですか? 

小杉:逃げてもらったほうが(笑)。

斉藤:なるほど(笑)。

小杉:逃げてもらったほうが好都合ですよね。むしろ。

斉藤:耳を塞ぐじゃなくて、逃げてほしいということですよね? 

小杉:「もう、その役割はできません!」と言って逃げてもらえば、それに越したことはないという。もうラガード(もっとも保守的な人たちを指す言葉)ですから。変わんない人はやっぱり変わらないんですよ。

特に「自律」という話だと、自分でやろうとしないかぎりは、なにを言われたって絶対に自律にならないですから。

斉藤:うん、うん。

小杉:「自己実現に目を向けろ」と言ったって「そんなん興味ないよ」という人に強制できないですから。

斉藤:なるほどなぁ。

小杉:なのでそういう人はちょっと横において、やる気のある若い人に任せてくださいという、それだけの話だと思います。

斉藤:本当にさきほどおっしゃった「20パーセントだ」に、すべてが詰まっていますね。役職を持っていようがいまいが、20パーセントじゃなくていいと。

小杉:ぜんぜん関係ないです。

斉藤:チャットでもいただきました。「自律するもしないも多様性なので、それを変える必要は必ずしもない。ただ、組織としてイノベーションを起こしていかないといけない」というのは、これはもう。

小杉:間違いないです。はい。

斉藤:必要な命題なので受け入れますが「革新をしていくのは自律する人材だ」というふうに、割り切っちゃうということですよね。

小杉:そうですね。そうしないと会社はもう回らないですよね。

斉藤:なるほど。

小杉:少なくとも経営層・経営者は、そう考える人がすごく増えてきたなと思います。

日本以上に強い、アメリカ人の「上司への絶対服従」

斉藤:まさにそうですよね。経営層にそういうことを考える人が増えてきた一方で、ですけど。こういう質問もいただいております。

「既存の評価制度だったり考え方だと、企業によっては自律人材が評価されないという事例をよく聞きます」。さきほど「前半の『MBO』だけを取ってしまった弊害だ」とおっしゃっていらっしゃいました。

こういう問題って、やっぱり評価制度に課題があるんでしょうか?

小杉:評価制度が大きな課題であるのは間違いないですね。

斉藤:うーん。やはりそうなんですね。

小杉:要は「余計なことをやるな」という話で「言われたことをちゃんとやれ」ということですよね。

なぜならやっぱり、その評価の仕組みで人は動くので。それは最終的にはさっき言ったように、自然発生的に「評価は関係ない、上司は関係ない」って動く人間は2パーセントぐらいしかいないとすると。やっぱりそれを10倍にするためには、そこの部分(評価制度)もいじる必要があると思いますね。

行動したことが評価されるようにしないと。自律型人材がちゃんと認められないと、マジョリティの人は頭は低くして「またそのうち変わるでしょ」と考えてしまうのは致し方ないと思いますね。

斉藤:そうですよね。「自律型人材」と対比して「受動型人材」と申し上げていいのかわからないですけれども。その「自律型人材を2パーセントから20パーセントに」というお話がある中で。

とはいえ、すごくうまくいってる組織。僕らが外から見て“隣の芝”を見ているんだと思うんですけれども、AppleさんとかGoogleさんとかを見ていると「ほぼ100パーセントが自律型人材じゃないかな?」って見えちゃうんです。これってまず、イエスですか、ノーですか? 

小杉:うーん、難しい質問ですね。時代にもよりますし。例えば私がAppleにいた当時は、アメリカ人でも上司の腰巾着みたいな人がいっぱいいましたし。

斉藤:(笑)。

小杉:なぜなら、そうして日本以上に上司に対して服従するのは、上司が出世して他の会社に転職していくと、一緒にくっついていけるからですよね。

斉藤:なるほど。

小杉:なので「絶対服従」というのは日本以上に強いんだな、と感じます。じゃあ、みんなが本当に自律してるのか? というと、今現在も必ずしもそうではないと思いますね。

それこそ、それが多様性の問題かもしれないです。「それでよし」と。「その代わり、上司が失脚すればそのまんま一緒に落ちぶれていくのも覚悟の上」という。そういうことですよね。

「旧来型の人事制度」を踏襲しすぎた結果の弊害

斉藤:なるほど。そこを神格化するという話ではないですよね。そうなった時に、以前、新幹線清掃会社のTESSEIの矢部(輝夫)さんとウェビナーをさせていただいたんですね。

小杉:はい、はい。

斉藤:「7-minute miracle」と言われて、ハーバードビジネススクールでも取り上げられていらっしゃるんですが。そのウェビナーで矢部さんが、JR東日本からTESSEIに出向になったときに「『やれ』って言われて、何したんですか?」って聞いたら「もう2パーセントの仲間をとにかく見つけたんだ」と。

「2パーセントの仲間をとにかく見つけていった結果、その人たちがどんどん主導してくれるから、会社の雰囲気にどんどん波及していった。自分は10人しか変えてない。10人がその次の10人を変えて、その次の100人が1,000人を変えたんだ」とおっしゃっていて、すごくしっくりきたんです。

そうした時に「日本の」とくくるのはアレかもしれないですけど、旧来型の人事制度を踏襲しすぎてしまって「みんなに公平であれ。平等たれ」という考え方になってしまうと、この2パーセントの人が突出してグイグイ前に行くようなことって、やっぱり生まれづらいのかなって感じましね。

小杉:なので、One PanasonicとかONE JAPANじゃないですけどね。濱松誠さんとか。

斉藤:はい、はい。濱松さん。

小杉:ああいうふうに、制度はないけど「自分だけじゃなくて、社内で同じような志を持ってやっている仲間がいる」って思うだけで、ぜんぜん楽になりますよね。会社を越えて、業界を越えて、彼らは定期的に集まってそういった思いを共有しながら動いている。自律的に。こういった人たちもいるんですね。

そういうコミュニティを会社組織を越えて作っていくというのも、すごく働く本人にとっては重要な方法なのかなと思いますよね。

企業で働く時に選ぶ道は「染まるか、辞めるか、変えるか」

斉藤:濱松さんは、ちょうど先日、このウェビナーにご登壇いただきました。

小杉:本当ですか!

斉藤:3回ぐらいご登壇いただいて、よくお話しいただいてます。

小杉:そうですか。

斉藤:ものすごく熱量をいただけますよね。

小杉:そうなんですよ。何度も言われてると思いますけど「企業で働く時には選ぶ道は3つしかない」というね。「染まるか、辞めるか、変えるか」。「変える」を選んだ人たちのストーリーなんだって、ONE JAPANで本(『仕事はもっと楽しくできる』)を書いていますよね。

斉藤:そう、そう。すてきです。

小杉:あと濱松さんに学校に来てもらったり。私の関係してる会社でも話してもらったりして、けっこう親しいんですけど。やっぱりすごく強調してるのは「自分事にする」ということをいつも言ってますよね。

結局、会社で起こっていること、周りのことを他人事にしているうちは、結局は自律なんて生まれるわけなくて。自分事にするから自分で動くようになるわけですよね。

斉藤:一貫しておっしゃいますよね。会社というワードをあまり使わないですよね。

小杉:使わないですね。

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