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トップが変われば組織は変わる!女性活躍を実現する組織の作り方とは?(全4記事)

Googleによる「日本で一番優秀なのは専業主婦では?」の仮説 イノベーションを生む「多様な知見」と、それを妨げる「経路依存性」

2021年3月、世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」で120位だった日本。そこで日本には現状でどれだけジェンダー格差があるのか? そしてどうすればジェンダー平等の社会に少しでも近づけるか? といったテーマについて、早稲田大学大学院経営管理研究科教授であり『世界標準の経営理論』の著者・入山章栄先生と、全国最年少女性市長の徳島市長・内藤佐和子氏、そして女性7割の営業アウトソーシングサービスを提供している株式会社SurpassのCEO石原亮子氏が語りました。

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「D&I」「女性活躍」という言葉の、もっと先

石原亮子氏(以下、石原):ちょっとネガティブな話をしましたけども。このままいくと、日本の未来ってどうなるの? というところで。私もこのテーマで13年間、会社をずっとやってきて。本当はですよ? 「ダイバーシティ&インクルージョン」とか「女性活躍」という言葉の、もっと先があるじゃないですか。

だけど、女性活躍という言葉だけを13年間掲げてきても、3歩進んで2、3歩下がったことって、何回かあったなと思っていまして。今回ばっかりは下がっちゃいけないというか、むしろ本気でやってかないといけないなっていう“波”がきてると思うんですね。

内藤市長はご存知だと思いますけど、国も「女性リーダー30パーセント目標」を、コロナ禍だったからさらっと10年後ろ倒しにして、1回の会見で終わったっていう衝撃があったんですけど。気がついたら「202030目標」「2020年の社会は30パーセントの女性の管理職」って言ってたのが、2030年になったと。それで、2020年代の可能な限り早期に30パーセントを目指して取り組もうみたいなものが、新たな男女共同参画基本計画の方針に出ていて。

そんなにキツいものではないんですけど、来年に大きく変わるところで。4月に「101人以上の労働者がいる事業主は、女性活躍に関する数値目標と行動計画策定の提出を義務化」というのが始まります。

Googleでさえ「うちはダイバーシティが弱い」と思っている

石原:これ、まだ本当に第1歩目だと思うんですけど、ここまで強制的にやっていくと国も示していたり。ここでまた逆戻りや後回し、優先順位を低くしたら、日本の未来ってどうなっちゃうのかな? というところで、入山先生。今、先進的な企業を見ていて、そうじゃない企業もご存知だと思うんですけど。そっちのほうが多いですよね?

入山章栄氏(以下、入山):もちろん死ぬほどあります。ちょっと関係ない話なんですけど、僕は今晩(イベント開催当時)、さっきご紹介いただいたテレ東の『ワールドビジネスサテライト』に、また出るんですね。それで『ワールドビジネスサテライト』って外にはぜんぜん見せてないですけど、番組プロデューサーが2人体制で、2人とも女性なんですよ。よく考えたら「けっこうテレ東すげえな」って、今聞いて思ったんですけど(笑)。

石原:テレ東、相変わらず、エッジが効いてますよね(笑)。

入山:テレ東は基本ゲリラなんで。今はニシムラさんっていう方と、最近イシハラさんっていう方が抜擢されて。2人とも女性。たぶん番組の作りも、もっと柔らかくなってくんじゃないかなって、個人的には思ってるんですけどね。

いずれにしても、これからの未来っていうより、まず根本的に「なんで日本でダイバーシティが進まないのか?」ということを、僕自身もダイバーシティ&インクルージョンの話はよく講演させてもらったり。それこそGoogleで講演してきたんですよ。

すごくないですか? Googleって我々からすると、ダイバーシティがめっちゃ進んでるように見えるじゃないですか? でも、あのGoogleでさえ「まだまだだ」って言ってるんですよ。「うちはダイバーシティが弱い」って。いや、Googleさんに言われるともう……みたいな。

そこで講演すると「入山先生、本当に来ていただいてよかった!」って。Googleに言われてもねえ、みたいな(笑)。でもやっぱすごいですよね、グローバル、海外のほうが。

ダイバーシティがない組織は生き残れない、3つの理由

入山:これも1個の視点なんで、正解というわけじゃないんですけど。僕がよく講演で申し上げてることの1個目は、まず「そもそもなぜやるのか?」っていうところを、自分ごと化して考えることがすごく重要で。もちろん政府の目標も、僕はすごく大事だと思ってますし。これからはSDGsが入ってくるんで、たぶん大手の上場企業からすると、投資家さんが女性が活躍してない会社には投資してくれないんですよ。確実にそうなるんですね。

そういう外圧は当然あるんですけど。一方で、自分自身にとってプラスでないと、やっぱり腹落ちしないじゃないですか。でも同質性が高すぎたんで、それを今までは考えてこなかったんですね。だけど、実は「ダイバーシティがない組織は、これから生き残れないんですよ」っていうことを、自分たちで理解することのほうが重要かなって、僕は経営学者なんで個人的に思っていて。

少なくとも、3つぐらい理由があるんですね。1点目として地方でありえるのは、単純に人が少ないんで、女性に戦力になってもらわないとしょうがないと。実は地方の中小の会社で、女性をガンガン活躍させてる会社ってたまにあるんですよ。それはもう、戦力として重要ですと。

2点目が、これは中堅の会社さんで、本当にダイバーシティを進めてる会社の社長さんが言ってたんですけど。「ズバリ、女性のほうが優秀です」っていう意見があって。超大手ってやっぱり男性社会なんで、優秀な男って(超大手に)取られちゃんですよね。だけど、女性がまだそういうところにガラスの天井があって採用されないんで、そういう方がBtoC系の、食べ物とかそういうのを売ってるような、女性に対して共感性が高いような会社さんに入社されるんですよね。

実はそういう人たち一番いい層なんで、ピカピカで優秀なんですよ。だから、単純に優秀だから(女性を)採ってますっていう会社もあります。

イノベーションは「多様な知見」が集まることで生まれる

入山:ただ、3点目が一番重要だと思っていて。ひとことで言うと、イノベーションを起こすために不可欠なんですっていう話を、僕自身は経営学者なんでよくしていて。イノベーションってどうやって始まるか? っていうと、多様な知見が集まることで生まれるんですね。多様な知見ってどうやって生まれるか、詳しくは僕の本とかを読んで欲しいんですけど。

離れた考え方同士が組み合わさることで新しい知見って生まれて、新しいことができるんですね。これからの時代、イノベーションを起こせない企業とか組織とか政府はなくなるので。変化が激しいですから。その時に、新しい価値とかアイデアをどんどん生み出さなきゃいけないから。

そう考えると、新しい組み合わせ、知と知の組み合わせの時の「知」って誰が持ってるか? って言ったら、人間が持ってるわけですから。ということは当然、多様な人間がいたほうがいいわけですね。少なくとも世界標準の、僕が研究しているような経営学の分野だと「ダイバーシティはイノベーションのために不可欠です」っていうのが、ほぼコンセンサスが取れてるっていうのが、現状ですね。

イノベーションを妨げる「経路依存性」

入山:ではなぜ、そこまでわかってるのにイノベーションが起きないか? っていう時に、これもいろんな理由があるんですけど。1つ、僕が最近よくご説明してる理由で「『経路依存性』っていう考え方があるんです」っていうのを言ってて。会社って、いろんなものでできてるじゃないですか。いろんなものが組み合わさってるでしょ。いろんなものが組み合わさって複雑にできてるから、どっか1個だけを変えようとしても、他が旧体制のままでガッツリ噛み合ってると、変わらないんですよ。

僕は「その典型がダイバーシティだ」っていう話をよく言ってて。これはむしろ内藤さんとかが痛感されてると思うんですけど、ダイバーシティって“ダイバーシティだけ”やろうとしても、うまく進まないんですね。他の古い体質のものが噛み合ってるんですよ。例えば企業で、本当に女性を増やしたい、ダイバーシティ増やしたいんであれば、もしかしたら根本的に新卒一括採用・終身雇用をやめないといけないかもしれない。

新卒で多様な人って採れないんで。今だったらどうしてもM字カーブで、一度お子さんを生んだタイミングで会社を離れたような専業主婦の女性の方って、東京でもいるんですけど、実はめちゃめちゃ優秀なんですよね。だけど、そういう方を中途で採る仕組みがないわけですよ。ちなみに、Googleが一時期狙っていたのは、ここです。「日本で一番優秀な層は専業主婦なんじゃないか?」っていう仮説を立てて(笑)。すげーなGoogle! みたいな。

石原:すごいですね。ちょっと興味深いですね。

入山:いずれにしろ、メンバーシップ型雇用自体が、新卒一括・終身雇用でずーっと同じ人を採ってるっていう仕組みがあると、そもそも多様な人を採れないんですよね。

「なぜやるのか?」を自分たちで腹落ちしてやる

入山:それから評価制度もそうで。多様な人がいたら、評価制度がバラバラな必要があるわけですよ。一律評価できるはずないんだけど、日本の評価制度って比較的「毎日定時で会社に来てくれる男性が前提の、一律の評価制度」になっているから。そこに女性が入ると、同じ評価の仕組みでは評価できないですよ。評価する人事の担当もおじさんなんでね。だから「無理です」みたいな。

評価制度も変えなきゃいけないし、さっきも話が出ましたけど働き方ですよね。多様な人がいたら当然、働き方が多様でないといけないんで。ある人は会社に来るかもしれないけど、ある人はずっと家で働きたいかもしれないわけですね。だから、働き方改革もそもそも必要で。働き方改革をするには、さっきのアメリカン ファミリーみたいにデジタル改革も、そもそもコロナ前から不可欠なんですよ。

だから実は、こういった全部を変える必要があるんですね。日本だとよくあるのが、ダイバーシティだけやろうとして、掛け声だけかけるんだけど。そうするといろんなセクションが「いや、評価がこれなんで」とか「働き方が変わってないんで」って話になって、ズルズルいっちゃうんですね。

なので僕は、内藤さんのアプローチはすごい賛成で、トップダウンで全体を変えていかないと。これは企業もそうなんですよ。経路依存性があるから全体が変えられないので、そこ全部を変えていかないとダイバーシティも進まないっていうことですね。

僕のポイントは「なぜやるのか? を自分たちで腹落ちしてやる」っていうことが重要で。少なくとも経営学者としては「イノベーションを起こすためには、ダイバーシティがこれから不可欠です」っていうのが個人的な意見。もう1つは、とはいえ経路依存性があるんで、ダイバーシティだけじゃなくて全体を変える必要があって。

ただ、今それがコロナで全部を変えられるチャンスなんですね。働き方改革。今の我々って「絶賛働き方改革中」じゃないですか。DXも進んできたし、終身雇用みたいなのも見直しが入ってるし。評価制度も、リモートワークになったら絶対に変わるんで。

リモートワークの普及で全滅する「ウインドウズ2000」?

入山:リモートワークになると、コロナ前にいた「ただ会社に来ていただけで、謎の存在感を放って無駄に給料もらっていたおじさん」。某大手総合商社では、そういうのを「ウインドウズ2000」って言うんですけど。窓際で2,000万円もらってたからね。

石原:(笑)。

入山:いよいよ大手総合商社も「ウインドウズ2000」は全滅するんで。存在感とかどうでもいいですから。だからけっこう今ってチャンスで。評価も少しずつ、時間とかじゃなくて成果みたいなものをちゃんと評価する時代になってきて、多様な評価制度が出てくるはずなんですね。今はチャンスなんで、民間企業は今ぜひ変えましょうっていう話を僕はしています。

石原:おっしゃるとおりですよね。コロナというパンデミックそのものはネガティブですが、全体の社会の変化という意味において、女性の働き方に関しては、中期的に見るとすごく追い風になるタイミングかなと思って。(入山先生が)おっしゃったように、急に在宅勤務が“善”となり。

入山:赤ちゃんがいて、(仕事をしながら)子どもをあやしていても許されるみたいなね。

石原:今までそういう場合って、お客さんにも「すいません。えっと、それで……」みたいな。もしなにかあった時のことを考えて、前もっていろいろ根回ししなきゃいけなかったのが「今、家からなんで」「わかりました」みたいな。そのへんはけっこう、勝手に整ったっていうのはありますね。

今、内藤市長と取り組もうとしている「とくしま TECH WOMAN」も在宅で、営業のDXの支援できる女性を育成するっていうプロジェクトがあるんですけど。これも3年前から構想していたけど、このコロナがあったから余計に進めやすくなった部分はあるのかなとは思ってます。

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