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ビリギャル坪田x尾原「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない発売記念対談(全2記事)

真意は我が子に届かない、親が発する「歪んだアイラブユー」 将来的には親も子どもも苦しめる、正解主義的な“呪い”

新刊『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』が発売されたばかりの坪田信貴氏と、IT批評家・尾原和啓氏の対談の模様をお届けします。

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日本人の完璧主義に対する“呪い”

尾原和啓氏(以下、尾原):変化の時代って、昨日までの正解が正解じゃなくなることだし、なによりもインターネットによって情報がつながっていくと、みんながコピって真似するから、急速に埋没化しちゃうので。やっぱり、先に先に行くってことが大事だし。

でも、坪田さんの「最短最速70パーセント」っていう表現がむちゃくちゃ素敵やなと思って。「2割8割」って言葉あるじゃないですか。なんとなく日本人って完璧主義だから「100パーセントじゃなきゃ出しちゃいけない」って呪いもあるけど、一方で「じゃあ2割8割なの?」じゃなくて、そのもうちょっと下の7割ぐらいであえて出す。

しかも7割を磨きまくってゆっくりやるんじゃなくて、最短最速で7割を出して、あとは修正していったほうが。しかも修正ではなくて「アップデート」していけばいいよっていう。日本人の完璧主義、さっき言った「失敗を減らしていいものを出せば」っていう呪いからうまく発想転換できる、みんなが共通言語にしやすい言葉にされてるのがすごいなと思ってて。

「言いなり人材」から「変化の時代の自立自走人材」に

尾原:そういう意味でも、あんまり中身を全部出しちゃいけないと思うんですけど。今回の本『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』も「人に迷惑をかけるな」っていう言葉は「迷惑はお互いさま。困っている人がいたら助けよう」って言葉に入れ換えれば「言いなり人材」から「変化の時代の自立自走人材」に。同じことを言ってるのに、ちょっと言い換えるだけで変わるじゃないかって、この坪田さんの言葉力っていうか、共通言語力っていうか。これがすごいですよね。

「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない (SB新書)

坪田信貴氏(以下、坪田):それはそっくりそのまま熨斗をつけて、見事にお返ししたいんですけど。そもそもこの間、尾原さんの『モチベーション革命』に(同じことが)書かれてたってことを知って、すごい恥ずかしいんですけど(笑)。

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

尾原:いやいや、ぜんぜん。僕はたまたま坪田さんの28個中の1個が一緒だっただけで、今日お見せしない残りの27個もまたえげつないんですよ、これが。

子どもがついた嘘に、あまりにも過剰に反応する親たち

坪田:「人に迷惑をかけるな」っていうのもそうだし「嘘つきはどろぼうの始まり」とかもあるじゃないですか。いや、あなたたち嘘ついたことあるでしょ? っていう。それこそ、サンタクロースの話とかどうなの? みたいな。

尾原:もう、すべての子どもに嘘ついてるわけですよね。

坪田:そうなんですよ(笑)。「いや、でもこれはホワイトライ」だとか「これは相手を傷つけない」とかなんとかっていろいろ理由つけるけど、結局、嘘つくし。例えば「あんたもういい加減にしなさい! 二度とご飯作らないからね!」みたいなのも(笑)。

尾原:(笑)。

坪田:「そんなんだったら好きにしろ!」みたいな。それって嘘じゃん、となった時に「嘘つきはどろぼうの始まり」って言って。意外と親御さんって子どもに……これは夫婦関係でもそうですけど「嘘つかれたことが嫌なの」みたいな反応って多くて。それは僕、生徒と親御さんの面談の中で、間に入って「まあまあ」ってなだめることが多いんですけど。

子どもが嘘ついたってことに対して「この子は犯罪者になるんじゃないか!?」みたいなテンションになるんですよね。1つのことでのリアクションとしてはデカすぎることってのが多くて。それで呪いになっちゃってるんだよなって思うんですよ。

「子どもが『この学校に行きたい』と言うから中学受験を始めたんです」

坪田:「人に迷惑をかけるな」っていうのって、これ心理学的に言うと完全に「ダブルバインド」で、絶対に無理なんですよね。

尾原:「ダブルバインド」って、言葉では「こうしなさい」って言ってるんだけど、裏側では「こうしちゃだめよ」っていうことに挟まれると、人間はどっちに要していいかわかんないから、分裂症っぽくなったりうつ病っぽくなったりするっていう話で。さっき言った「嘘つくな」とか「ちゃんとしなさい」とかって、相手の目を見ながら「自由にしていいんだよ」って言われると、裏側では「お前おとなしくしてろって言うてるやん」みたいな。そういう感じですよね。

坪田:本当そうなんですよ。「私はあなたに弁護士になってほしいと思うけど、あなたは好きな職業選んでいいのよ」みたいな(笑)。

あと、僕が一番伝えたいのは、中学受験の親御さんが必ず言うセリフがあってですね。「子どもが『この学校に行きたい』って言ったんです。だから中学受験を始めたんです」と。

尾原:あるあるですね。

坪田:僕の中では「絶対に嘘やん!」って思うんですよ(笑)。

尾原:親が「こういう学校に行ってほしいな」とか「○○ちゃんはすごいよね」とかって言ってたら、子どもは親の顔見て「(自分にも)そういう子どもになってほしんや」って絶対思いますもんね。

坪田:そうなんですよ。都心の中学受験なんて、だいたい小学3年生とかでスタートしたりするんですけど。小学3年生で「僕はあの中学に行くんだ!」とかってそんなわけなくて。どう考えても(親から)情報提供はたくさんされてて、そうやって誘導されてる、あるいは洗脳されてるのに「あなたが自分でやるって言ったんでしょ!」みたいな。それってちょっと、フェアじゃないなっていうところがあって。

成功してたらまだしもいいんだけども、成功してても結局、そこの自己肯定感みたいなのはある意味で育まれないので、問題ではあるんですが。やっぱり失敗した時に顕著にネガティブに出てくるんですよ、親子関係が。

尾原:無意識に出ちゃう反応とかを、子どもって言葉でも汲み取るけど、言った時の表情だったりとか「本音はそこなんでしょ?」みたいなところを、お子さんってすごいくみ取りますもんね。

坪田:そうなんですよね。それこそ、フランスの思想家のルソーが言ってるんですけど「子どもは『未熟な大人』だと思いがちだけど、そうじゃなくて。大人とは別の固有の価値を持つものである」と定義しているところが、僕はルソーのすごいところだと思うんですが。

大きい声で叱るということ自体が、子どもにとっては虐待

坪田:ありがちなのが「あなたいい加減にしなさい!」みたいな感じで、高いボリュームで叱ったりするんですけど。そういう意味でいうと、子どもの耳ってまだそこまで鈍感ではなくて。

尾原:耳ってだんだん、ふだん使うところだけの周波数に寄ってくから、実は子どもの耳っていろんなものを拾っちゃうんですよね。

坪田:歳を取ってくと、耳がそれこそ弱くなっていくからだんだん声が大きくなっていくとかするじゃないですか。でも、子どものうちってめちゃくちゃまだ敏感だったりするので、僕らが思ってる以上に高く、あるいは強く聞こえちゃうんですよね。それがデータとしてわかってるので、アメリカとかイギリスとかだったら強く叱る……なんていうんですかね。

尾原:語気を荒げたり、声を高くすること自体がそもそも、子どもにとって拷問っていうか。

坪田:そう。「虐待です」って定義されるんですよ。

尾原:やばっ。俺のリアクション全部虐待や(笑)。

坪田:そんなことはないですけど(笑)。だから、けっこう海外ドラマとかを見ると、お母さんが子どもに、例えば子どもが何か物を盗みましたという時に、それを強く叱るシーンがあって、子どもはショックを受けるんですよね。それを見て、お父さんが「声を荒げたのか?」みたいな感じで、後でお父さんがお母さんを問い詰めるっていうシーンが。これ、日本人にとってみれば「別に普通じゃない?」ってなるんですけど。

尾原:子どものためを思ってとかね。

坪田:でも実は、声が大きいっていうだけで、叩いているのと同じであるっていうのがあったりするんですよね。なので、意外と大人の都合でやってることっていうもの。それこそ、耳が弱くなってきてるからだんだん声が大きくなるとかもそうだし、子どもにできるだけいい学歴をつけたいと思って中学受験をさせようとするっていうこともそうだけど。

親から子への言葉は、そのすべてが「アイラブユー」

坪田:僕いつも思うんですけど、どんな言葉も親御さんが言ってるのは「アイラブユー」なんですよね。

尾原:そうですよね。「子どもが好きだからこうしてる」と。

坪田:だから「あんたのことなんか一生見たくないわ!」っていうのも「アイラブユー!」って言ってるわけですよ(笑)。でも結局、(子どもに)伝わってるのはネガティブなことだから、僕は親御さんがちょっとかわいそうだなって思っていて。うちの塾がある意味で特殊なのは、最初の卒塾生というか僕の教え子とかも40歳近くになってきてるんですけど、今だに半年に1回ぐらい連絡をくれたりするんですね。

見ててすごく思うのが、中学生・高校生当時にお父さんお母さんがそういう感じだったりしてワーッて揉めてるところって、何が起こるかっていうと、大人になった時に孫を連れて帰らないんですよ。つまり、散々怒られてて、散々ネガティブなことを言われてきて、また子育てとかで怒られたりとか「しつけがなってない」とか言われても。

尾原:自分自身はおじいちゃんおばあちゃんの子どもだから「子育てでまた怒られるんちゃうんか?」と。また正解主義にさらされて「あなた、こういうことやってるの!?」って呪いがガンガンガンって来るのが怖いから、帰りたくない。

坪田:「帰りたくない」って言ってて。でも「親孝行はしないといけない」っていうのもあるじゃないですか。

尾原:これもまた「ダブルバインド」ですね。

坪田:そのとおりなんですよ! それで苦しんでる人ってすごくいて。親御さん目線で見ると、孫とあんまり会えないし、大人になった子どもがあんまり積極的に連絡を取ろうとはしてくれないって言って。これ、子育てという意味でいうと「そこが失敗なんじゃないの?」って僕は思うんですよ。

尾原:そもそも祖父祖母に、いろんな人にあたたかく囲まれて。なによりもさっきおっしゃったように、みんな「アイラブユー」って言ってるんだけれども、実は今までの立ち居振る舞いみたいなもののせいで。本の中ではこうやって5つの「ダブルバインド」の話をされてらっしゃいますけど、無意識のうちにさらされてしまってるっていう。

坪田:尾原さんが優秀すぎて、ちょっと笑っちゃうんですけど(笑)。想定してた以上にすごかったなって、今思ってます。

尾原:(笑)。僕にとっては自分の好きな人、好きな本の著者の魅力をいかに引き出すか? っていうのが、僕の喜びなので。

無意識のうちに自分にかけた呪いを解く、28個の言い換え

尾原:最後5分ぐらい、この本の使い方みたいな話に入っていきたいんですけど。

この本のすごいところは、そういう「なぜ無意識のうちに呪いをかけてしまってるか?」っていうことで、実は親御さんは悪くないんだよっていうことをちゃんと説明・構造してあげながら。でも、矛盾した呪いをつい無意識にかけてしまうことに対して、たった28個の言葉の言い換えをするだけで、自立自走型の人材に変わってくんだよってことを言ってらっしゃって。

この処方箋がものすごい実践的で、なんでこんな28個のシンプルなものにまとめあげれたんだろう? という。「こう言いそうになったら、こっちの言葉使う」っていう28個。これをひたすらちゃんと徹底してるだけで、たぶん子どもが自立自走になるし、なによりも親も自分の呪いから解放される。

たぶん会社とか周りの近所付き合いとかも「なんかあの人優しくなったよね」とか「あの人いい上司だよね」みたいな感じで。教育だけじゃないと思うんですよね、この28個の言い換えって。

坪田:おっしゃるとおりです。親御さんとか大人の人っていうのも、いわゆる日本の伝統的な、今まである意味「成功パターンだったもの」で、植え付けられてる部分があって。これを「変えたい」とか「変わりたい」って思ってる人ってすごく多いんだけど、何をしたらいいの? ってなった時に、やっぱり言葉が認知を作っているので。まずその代表的な言葉を変えていきましょう、ってところがポイントなんですが。

ただ、ここはすごく重要なポイントで。結局、ビジネス書って読んでも人生変わるか? っていうと、たぶんそんな変わらなくて。

尾原:そうなんですよね。ヒントとか「あっ、そこがだめだったんだ」ということの気づきは提供してくれるけど「じゃあ明日から何するの?」っていうと、つながらないみたいなのが残念ながら多いですよね。

坪田:なので「その28個を練習する」ってことがたぶん大事で。例えば、今までは普通に水に浮いたけど「今度はクロールを学ぼう」ってなった時に、本を読んだらクロールがマスターできますよってことは、まずありえなくて。それこそ溺れながら、うまくいかず前になかなか進まないでイライラしながらも、練習していくってことがすごく大事で。そうじゃないと、たぶん泳げないじゃないですか。

当たり前だけど、本を読んで急に変わるってことってありえないことで。28個だけまず集中して、意識して言い換えをするっていうことが……たぶん失敗のほうが多いと思うんですけど、でもそれはぜんぜんよくて。「最短最速70パーセント」で、28個の言い換えっていうものを、失敗しながらもやっていくってことをやっていただければ、本当に認知が変わるだろうな、そしたら人生も変わるだろうなと思うんですよね。

リッツ・カールトンホテルに存在する、とあるカード

尾原:「迷惑をかけちゃいけない」って言いそうになったら「お互いさまだからね」って言えればいいし「ちゃんとしなさい」とか「やればできるよ」とか「言うこと聞きなさい」って言いそうになったら、これに言い換えればいいだけっていうのがあって。

実はこの本を読んだ時に思ったのが「リッツ・カールトンホテルでは、すごくいいホスピタリティをなぜ実現できるか?」って話があって。リッツ・カールトンホテルって、ホスピタリティ・おもてなしがすばらしいから「普通だったら1万円で泊まれるホテルだとしても、5万円払ってでも泊まりたい」っていうホテルなんですけど。

彼らって、この「クレド」っていうカードをずっと持ち歩いてて。この中に、12個の言い換えみたいなものが書いてあるんですね。これをどうしてるかっていうと、要はリッツ・カールトンに入社した人も、みんな最初からホスピタリティのある行動ができるわけじゃないんですよ。

この「クレド」を持ち歩いて日々見ているということと、もっと大事なことが、他のサービスパーソンがこの12個の言い換えに近い行動をしてると「今、7番目のことやったね。すごいね」って言って、(カードを)あげるんですよ。そうすると、もらったほうも「そっか。俺は今、この言い換えやってたんだ」ってなって、うれしいし。

でももっと大事なことが、このカードを一番“あげられた人”が褒められるんですよ。

坪田:なるほど。“気づいてあげた”と。

尾原:そう。周りが言い換えに気づいたっていう。そうやってお互いにいい行動の言い換えを増やしていって、それが日々蓄積されていると、それが自然の習慣でできるようになって。そうすると、みんなでそれを喜び合う文化もできてるから、1人が1万円じゃなくて5万円を払ってでも何回も泊まりたいっていうホスピタリティ空間に変わるっていう話があって。

坪田:なんかもう(尾原さん)マジシャンみたいですね。クレドカードまで出てくるとは思ってなかったんですけど(笑)。

尾原:これは準備してました、もちろん(笑)。

自分がかけられてる呪いに気づけるし、1歩目も踏み出せる

坪田:実を言うと僕、リッツ・カールトンの前社長の高野(登)さんがとても親しくしていただいている師匠で『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』っていう、ベストセラーをお書きになった方です。

リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間

尾原:もう、大好きな本です。

坪田:あれ僕も大好きで。あれ以来、もうリッツ・カールトンにめっちゃはまって。世界中のリッツに行って、社員研修とかが本当なのかっていうのをめっちゃ聞きまくるっていうのを。

尾原:同じや。一緒のことしてる(笑)。

坪田:本当ですか!? 実は僕の坪田塾も「クレド」を半年間かけて推敲して作って、「クレドカード」とかを作って。まさに今、サンキューカードじゃないですけど「こうやってくれたよね」っていうのを、名刺のところで渡すみたいなこともやっていてですね。すごいなんか今、これ全部仕込みなんじゃないかっていう部分が(笑)。

尾原:おもしろいですね。個人的にはぜひこの本読むだけで、まず自分がかけられてる呪いに気づけるし。2番目に、この28個をやり始めることで、本当に1歩目を踏み出せるし。できれば、周りで「この28個やってるよ」って褒め合う。

だから僕、個人的にはこの本を、本には申しわけないんですけど、マルバツのところを切り取ってカードにして「これできたね!」って渡していく、みたいな習慣にすると。

「人に迷惑をかけるなカード」を、ぜひ作っていただければなと思っております。本当に今日は濃厚な時間ありがとうございます。

坪田:こちらこそありがとうございました。

尾原:ぜひ共感した方は『人に迷惑をかけるな』を読んでいただければ、明日からのあなたの行動が変わりますということで、今日は本当ありがとうございました!

坪田:ありがとうございました。

尾原:どうも、失礼します。

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