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偏愛と夢中でつくる事業 ~起業 × アート思考の可能性~(全5記事)

「君みたいな人、何人も来てはすぐ辞めてるから協力できない」 起業当初は苦戦した『食べチョク』の根底にある、代表の想い

不確実な現代社会で求められる、今までにない新たな視点や、自分らしい価値で事業や仕事をしていく必要性。そんな時代において「0から1」を生み出すアートシンキングは、新規事業の創出につながる思考法として注目を集めています。そこで今回「起業したいひとのためのアートシンキング」の特別編として「偏愛と夢中でつくる事業 ~起業 × アート思考の可能性~」というテーマのトークセッションが開催されました。ゲストは『アート思考ドリル』『ハウ・トゥ アートシンキング』の著者であり、 株式会社uni'que代表でもある若宮和男氏。『アフターデジタル』『ディープテック』などの著者であり、IT批評家として活動する尾原和啓氏。そして、生産者が個人や飲食店に直接商品を販売するオンライン直売所「食べチョク」を運営している株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長、秋元里奈氏の3名。自分が夢中になっていることで起業したい方、起業とアートシンキングについて知りたい方は、ぜひご覧ください。

偏愛と夢中でつくる事業~起業×アート思考の可能性~

司会者:それでは簡単に自己紹介を兼ねて、秋元さん、尾原さん、若宮さんの順番でお願いできますでしょうか。

秋元里奈氏(以下、秋元):ビビッドガーデン代表の秋元と申します。私たちは今、全国の農家さん・漁師さんから直接食材を取り寄せられる「食べチョク」というオンラインの直売所を行ってます。

私はもともと、新卒でDeNAに入社をしました。実家が農業だったところが原体験としてあって「生産者さんに貢献できる事業をしたい」ということで、2016年に会社を創業して今に至ります。よろしくお願いします。

司会者:よろしくお願いします。

尾原和啓氏(以下、尾原):今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。尾原と申します。僕は今、シンガポールで隔離4日目なんですが、日本でもコロナを封じ込めて自由を取り戻すため、みなさん厳しい状況の中来ていただきまして本当にありがとうございます。

私自身は今、IT批評家として『アフターデジタル』や『ダブルハーベスト』という、AIを戦略デザインに使う本とかを書いてるんですが、一応、起業経験もあります。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン

KLab(クラブ)という、一部上場の会社の創業期の取締役をさせていただいたり。創業9ヶ月で溶かしてしまった、電子金券開発という会社をやっていて、失敗も成功も経験しておりますので、そういった中からお話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

司会者:よろしくお願いいたします。

若宮和男氏(以下、若宮):みなさんこんにちは、uni'queの若宮と申します。建築士から色々とキャリアをシフトしてきたのですが、今のメインは起業家としてITベンチャーを経営していて、自分の会社では「Your」というインキュベーション事業をしています。日本では女性の起業家の比率がすごく少ないこともあるので、アイデアを持った女性と一緒に事業を立ち上げて、事業が立ち上がったら分社化して代表になっていただくという事業です。

あとは、企業での新規事業の経験が長いので、直近だと資生堂さんやパナソニックさんとかの新規事業のメンターをしています。最近「アート思考」の本を出しているので、Startup Hub Tokyoさんでは何度かアート思考のイベントをやらせていただいているご縁で、今日もお呼びいただきました。よろしくお願いします。

ぐんぐん正解がわからなくなる! アート思考ドリル

司会者:よろしくお願いいたします。

当初は、仲間集めもお金の調達も苦戦した「食べチョク」

司会者:ところで今回、基本的には起業準備中の方が参加されています。秋元さんは今、起業されてどれぐらい経っているんですか?

秋元:今、4年半ぐらいですね。

司会者:4年半、なるほど。(起業の)そもそものきっかけなど、お聞かせ願えればと思っております。

秋元:実家がもともと農家だったんですが、中学校の時に実家の農業が廃業していまして。昔はすごく綺麗だった畑が、耕作放棄地になってしまったというのが最初のきっかけですね。農家さんにいろいろ話を聞くと、みなさん同じように「息子に継がせたくない」と言っている人もいっぱいいて。「このままだと、自分と同じような人がどんどん増えていってしまうな」という危機感があって、創業することにしました。

初期の頃はけっこう、Startup Hub Tokyoさんや東京都の支援、アクセラや補助金とかを受けて、かなりいろんなかたちでご支援をいただいていました。

司会者:やっぱり、最初から順調に事業は進んでいったんでしょうか?

秋元:いえ、なかなか。私が今やっている「食べチョク」は、簡単に言うと産直通販サイトみたいな感じなんですけど、これまで10年ぐらい、産直のサービスって同じようなサービスがいっぱいあったので。

「何が違うのか」「ビジネス的になかなか難しいよね」ということで、投資家さんからもなかなかお金が集まらなかったり。生産者さんも「君みたいな人、何人も来ては2~3年ですぐ辞めてるから協力できないよ」と言われて。最初、仲間集めもお金の調達もなかなか苦戦していた感じですね。

根底にずっとある「生産者ファースト」

司会者:そのあたり、秋元さんの「生産者の方の販路を開拓したい」という熱量が原動力というか、周りの方はいろいろ応援してくれた感じですかね?

秋元:そうですね。同じようなサービスを同時期に起業していて、もう途中で辞めちゃった方もいるんですけど。やっぱり粘り強く続けたのは、自分の原体験が大きいです。

正直、一次産業以外の領域だったら起業していませんでした。もともと起業したいタイプではなかったのですが、一次産業という軸が見えて、初めて起業という手段を選んだ身だったので。そこで粘り強く続けて、いろんなご縁に恵まれて。投資家さんや仲間だったり、すごくいいメンバーが集まってくれて、今、少しずつ事業が軌道に乗ってきた感じですね。

若宮:たぶん、DeNAから出て起業したタイミングは、秋元さんのほうが僕よりちょっと早い。

秋元:でも、ほぼ一緒ぐらいですよね。

若宮:ほぼ一緒ぐらいですね。ちょっと今日、謝ろうじゃないけど……。2人で渋谷でランチしたんですよ。

秋元:しましたね。

若宮:その時に「産直の~」という事業モデルを聞いて「いやぁ、ロジスティクスとか考えるとけっこう大変なんじゃない?」みたいに、新規事業経験ある人ぶって言ったんですよね……(笑)。

秋元:そうでしたっけ(笑)。

若宮:でもそこから本当に、DeNAにいた頃以上に秋元さんらしさがめちゃくちゃ出てきて。今、すごく伸び盛りだと思うんですけど、その根底に「生産者ファースト」がずっとある。

僕は事業アイデアを聞いた時に、消費者側の目線で「いやいや。産直ってでも結局、ロジでお金がかかっちゃうから」みたいに、消費者側のニーズ視点で言ってたんですけど。そうじゃなくて秋元さんは「生産者に貢献したい」ということしか見てなくて、それで突っ走ってるのがすごくかっこいいなと思いましたし、本も買いました。

秋元:うれしい、ありがとうございます(笑)。でも、良かったです。(自分の)思いが強いぶん、どちらかというと(若宮氏が)そこに顧客目線や色付けをしていくというか、バランスを取ってくれて。やっぱり、思いだけで100パーセントは難しいので、事業として成り立たせていくために、想いは残しながらもいろんな人のインプットを受けて。

「確かにビジネス的にはこうしていかなきゃいけない」と、想いをブラさずにいろいろマイナーチェンジしていったのは、若宮さんはじめ、いろんな方からアドバイスいただいたおかげかなと思ってます。

がむしゃらで、変にカッコつけない秋元氏の“らしさ”

司会者:じゃあもうすでに、起業に関する過程を見ながら若宮さんもいろいろと知っているということですね。

若宮:「知ってる」なんて簡単に言えませんが、本当にがむしゃらにやられていて……「努力は夢中に勝てない」と、この本の中でも書いてらっしゃいますけど、本当にそういうことだなと思っていて。ちょっとこれ、映していいのかわかんないですけど、僕が前回、秋元さんに会った時に……。

秋元:(笑)。

若宮:これは新宿のお寿司屋さんで、DeNAの時の上司とご飯を食べていたんです。そしたらこの日(秋元氏が)「農家の格好で野菜を配る」というイベントをやっていて。「近くにいます」「じゃあ来る?」という話になったら、完全“農家ルック”で登場して。寿司屋がすごくザワつくってことがあったんですけど(笑)。

秋元:よくありましたね、この写真(笑)。

若宮:あの時は本当に、とにかくがむしゃらにやっている感じだったと思うんですけど、こういうところを変にカッコつけないのがすごく秋元さんらしいなと象徴的です。周りはザワついてましたけどね(笑)。

秋元:ありがとうございます(笑)。

司会者:そういった、一貫して夢中に突き進むところは変わっていないんですかね。

秋元:そうですね。

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