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『ウィニングカルチャー』出版記念対談「組織に心理的安全性は必要?」組織文化と心理的安全性の関係を探る(全9記事)

リーダーが持つべきは「自分の無知」をさらけ出していく勇気 心理的安全性のある“恐れのない組織”づくりのポイント

多くのリーダーが苦心している、チームの「空気づくり」。明確に言葉にできないけれど、チームの中で何となく共有されている価値観や習慣、クセのようなものが「組織文化」です。そんな、組織に属する人々にとって当たり前すぎて意識できない「組織文化」を、どのように知り、どのように変えていくのか? といった疑問にお答えすべく、書籍『ウィニングカルチャー』の著者である株式会社チームボックス代表取締役・中竹竜二氏と、エール株式会社取締役・篠田真貴子氏が行った対談イベントの模様を公開します。

圧倒的に増えている、チームとして解決すべき仕事

中竹竜二氏(以下、中竹):まさに今の話って、先日、篠田さんがプロモーションに携わった『恐れのない組織』の中にありましたよね。

恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

篠田真貴子氏(以下、篠田):ありがとうございます、なんかつなげていただいて(笑)。

中竹:いやいや、あの本は本当に素晴らしいなと思って。実は彼女(エイミー・C・エドモンドソン氏)が書いたチーミングの本『チームが機能するとはどういうことか』の時、私が帯のプロモーションやってですね。

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

篠田:あっ、そうでしたか!

中竹:そうなんですよ。で、すごいバージョンアップされたなぁと思ってて。今の話ってあの本の中にもありましたけど、今やっぱり企業においても、単体で・一人で解決する仕事から、チームとして解決しなければならない仕事のほうが圧倒的に増えたっていう話がありましたよね。

篠田:書いてありましたね、50パーセント増しみたいな。それぐらい別世界。

中竹:パーセンテージでもはっきり出てましたよね。

篠田:「一人でできる仕事」と「チームでやらなきゃいけない仕事」みたいな対比だったと思います。

中竹:その中で今お話ししたように、上の人が「俺が全部わかってる」じゃなく、逆に上の人が「俺がわかってない」ってことをちゃんとさらけ出して、みんなから意見を聴くっていう姿勢が、結果的に恐れのない組織をつくっていく土台になる、みたいな話ありましたよね。

そもそも「心理的安全性とは何か?」

中竹:そのあたり、篠田さんからもお話ししていただいていいですかね。

篠田:はい。まず『恐れのない組織』っていうのは「心理的安全性とは何か?」という、もともとの概念を発見というか、提唱した方が書いた本です。その中でまず今のお話につながる前提として、心理的安全性とは何か。ここが誤解されることがよくあって。

この本読んでたら、やっぱりアメリカでも同じように誤解されてるんだなと思ったんですけど。語感からなにか「私がどういう状態でいても、みんなが許してくれる」っていうようなね。ちょっと甘やかな、お花畑っぽいなにかを想起させてしまうんですけど(笑)。

中竹:心地いい、みたいな(笑)。

篠田:まったくそういうことではありません、と。心理的安全性というのは、そのチームのパフォーマンスを上げるために……そこに向かった時に、やっぱり人間だからミスを起こしたりとか、あるいはわからないことがあったりとか、間違ったことをしてしまったとか。

それを自ら言ったり、あるいは他者の指摘をしたりするっていうことをやっても、誰も冷たくしたり怒ったり仲間外れにしたり、そういうことをしない。むしろ「(言ってくれて)ありがとう」って言ってくれる状態です、っていう定義なんですよね。

リーダーが「自分の知らないこと」をさらけ出していく勇気

篠田:するとその時に、中竹さんが言ってくださった「まず上の人から」っていうのは、やっぱり当然そうで。上の人がどうしても、やっぱりいろんな意味で人事権を事実上持っちゃってる時に、上の人が「言ってもいいんだよ」っていう雰囲気をつくらないと。下の方は、当たり前に人間の性質としては、恥はかきたくないし失敗もしたくないワケだから。本能的にそういうリスクを察知したら、絶対言わないんですよね。

だから心理的安全性って、私がこの本を読んだ印象としては「けっこう人工的な環境づくりの話をしてるんだな」って思いました。ほっとくと“自然体の私”は中竹さんに「バーカ」って思われて嫌われたらいやだから、わざわざ(自分が「わからない」ことや自分の間違いを)言わないじゃないですか。

中竹:(笑)。

篠田:っていうのが自然な状態の私で。でもこのチームでは「チームの成功のために」っていう、まず目標の共有があった上で。「ここは得意分野じゃないからぜんぜんわかんないんだよね、誰か教えて」ってリーダー・中竹さんが言ってくれたら、(メンバーである“私”からも)言ったりするし。

「中竹さん、それ違いますよ」とかって言うことを(メンバーにも)期待されてることを、初めて感じられるんだと思うんです。そういうことをこの本ではすごく強調して、だからリーダーの態度がめちゃくちゃ大事、っておっしゃってるんだという理解でいます。

中竹:まさにそうですね。だからリーダーがたくさんのことを知ってるかどうかよりも「まだまだ知らないことがあり、もっと組織を良くしたい」っていう、その中でさらけ出していく勇気がやっぱり「恐れのない組織」をつくる重要なポイントかな、と思いましたね。

最初はちゃんと認めたほうがいい「否定されて腹が立つ感情」

篠田:あとこれ、日本語版のほうのうしろの解説文で村瀬(俊朗)さんが書いてらっしゃって、そこでも触れておられましたけど。本文でも解説でも、特に上の方が聴く……難しいコーチングとかそういうことじゃなくて、単純に聴くっていう姿勢を見せ、聴く時間を増やすだけで心理的安全性が優位に上がる、っていう成果を紹介されてて。

よく考えたら当たり前で。っていうのは定義として心理的安全性って、そういう普通だったら言わないことを「このチームなら」と思って言う、って話だから。言うってことは「絶対聴いてもらえる」っていう安心感そのものなので、そりゃそうだろうなと思って(笑)。

中竹:そうですね(笑)。

篠田:当たり前といえば当たり前なんですよね。ただやっぱり繰り返しになってしまいますけど「聴く」っていうことを、なかなか私たちは意識できないから。「言える」とか「言いやすい」とか「言うべき」っていう表現で、心理的安全性というものをとらえがちだなと思います。実はとにかく、聴く。

それこそ私が仮にリーダー役で「篠田さんが言ってること、めちゃくちゃですよ!」「とんちんかんです!」っていうことを言ってくれた時に、一瞬でも私が「ピキッ」っていう表情をしたら、もう心理的安全性は壊れちゃうんですよね。心から「本当にありがとう、ぜんぜん気がつかなかった、ごめん」って言える状態ですもんね。

中竹:これすごく微妙なのは、例えば篠田さんに「いや、それ違いますよ」って言って「プチッ」とするじゃないですか。これ、私の感覚で言うと、ここももっと長いスパンで見たほうがいいなと思うんですよね。たぶん今日聞いてらっしゃる人も、感情のコントロールをどうすればいいか? とかってあると思うんですけど。やっぱり人間誰しも、反対されたり自分のことを否定されたらムカつくんですよ。で、この素の姿をとりあえず、最初はちゃんと認めたほうがいいかなと思ってて。

「自分はそういう反対意見を言われると、ついついイライラしてしまうんです。昨日はごめんね」って、1日経って謝れるかどうかで……むりやり押し殺して、本当はムカついてるのに「これを今言うと誰も言えなくなっちゃうから、くそー」って、この怒りをずっと溜めて、聴いてるフリしてポーズとるよりは「ちょっと怒りが出てしまったんだけど、ちょっとずつ我慢していくんで長い目で見てね」ぐらいなことを言えて本音を語っていくほうが、私は結果的には良いカルチャーができるなっていう気はしますね。

「自分の感情を客観的に解説して伝えられる」英国人の特性

篠田:それは本当、おっしゃるとおりですね。今おっしゃってるのを聞いて思い出したんですけど。昔、外資系の会社に勤めてる時、いろんな国籍の方とお仕事をする機会があって。イギリス人の人、何人か一緒に仕事したんですけど、わりとそのへんの表現がうまいんですよ。「過度に感情的にならずに、感情のことを語る」っていうのができてて。

例えば上の方がイギリス人で、私を含め何人かがチームメンバーっていう時に「その上の方は知らなかった、でもけっこうヤバ目の情報」みたいなのが出てきて。(篠田氏が)若くて正義感が強かったので(笑)、そのヤバ目の情報を隠そうとしてる人に対して「ムカつく」と思って。

「それすごい大事だから、ちゃんと話したほうがいいんじゃないですか」みたいに私が食ってかかる、みたいな。そういう場面の時に、このイギリス人のリーダーの方が「ちょっと今、このまま話すと自分がどんどんuncomfortableになるから、この話はあとにしてもらえる? あとでゆっくり聞くから」って捌いたんですよね。

中竹:はぁー……。

篠田:すごく印象的で。要は私がカッカし始めてるのも、たぶん察知してたんでしょうね。

中竹:わかったんでしょうね。

篠田:で、自分にとっても「あ、これヤバい話」ってたぶん思って、ほっとくとまさに自分も「ピキーン」ってなりそう、っていうのも察知して。でもそれやっちゃうと、その情報を持ってる人からも出てこないし、みたいなことを一瞬で察知して。でもその時に冷静なフリをするのではなくて「このままだと自分はuncomfortableになるから」って言ってくれたんですよね。その場面を今、ぶわって思い出しました。

中竹:いや、ジェントルマンですね。その人に会ったことないですし、私の予測ですけど、その方はおそらく、過去にそれによって失敗したんじゃないかなと思ってて。じゃないといきなりそこには、人っていけないと思うんですよ。

「やばいやばい、この話はあとね」じゃなく、たぶんどこかでそのまま聴いちゃって、みんなにとってアンハッピーなことを経験したから、それに基づいた言い回しだったかなという気がしますね。

篠田:確かに。経験とか訓練なしに、ああいうふうにはならないと思います。そういうかたちで、ちょっと具体的な場面はここまでビビッドには覚えてないものの、別の人でもやっぱりイギリスで教育を受けた方で、そういうふうに対応できる人っていうのは複数見てきた経験があって。

もしかするとイギリスのある種の学校、大学だか高校だかは知りませんけど、そういうことを教えるのかもしれないですね。子ども同士でケンカをしたときの対応の仕方として、自分の感情をちょっと客観的に解説することで相手に伝える、みたいなことを。なにか教わってるのかもしれないですね。

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