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『ウィニングカルチャー』出版記念対談「組織に心理的安全性は必要?」組織文化と心理的安全性の関係を探る(全9記事)

部下への「正解を当ててみて?」的マネジメントは、もう限界 航空自衛隊を例にみる、企業が直面する課題解決のヒント

多くのリーダーが苦心している、チームの「空気づくり」。明確に言葉にできないけれど、チームの中で何となく共有されている価値観や習慣、クセのようなものが「組織文化」です。そんな、組織に属する人々にとって当たり前すぎて意識できない「組織文化」を、どのように知り、どのように変えていくのか? といった疑問にお答えすべく、書籍『ウィニングカルチャー』の著者である株式会社チームボックス代表取締役・中竹竜二氏と、エール株式会社取締役・篠田真貴子氏が行った対談イベントの模様を公開します。

航空自衛隊では「上から下への指示」が3つに分かれている

篠田真貴子氏(以下、篠田)その中竹さんが清宮(克幸)さんに対する態度について。これは航空自衛隊の方に教えていただいたんですけど……あの組織の中では上の方の指示を理解するのに、その意図を取れているのかの「意図取り」っていうワードがあって。

中竹竜二氏(以下、中竹):言葉があるんですか? へぇー! それは知らなかった。

篠田:あるんですって。すごいんですよ。私もまだ中途半端にしか教えていただいてないので、もういっぺんちょっと深く、じっくり教えてもらおうと思うんですけど。

その話を聞けたきっかけは、上から下の方への指示に関して、別のアメリカの海兵隊の方の回顧録を読んだ時に「とにかくインテンション、意図を伝えることが大事」みたいなことを全編書いてあって。これは素晴らしいなと思って。

で、その後に航空自衛隊の方のお話を聞く機会があったので「海兵隊の方の本を読んで、そこがすごく印象的だったんですけどいかがでしょう?」って問いかけたんですよ。そしたら「そう!」って言って。「航空自衛隊では上から下への指示が定義として3つに分かれています」と。それは「号令」「命令」「訓令」。

中竹:へぇー……!

篠田:何が違うかって行動と意図の組み合わせで。「号令」は行動のみ。意図の指示はない。「回れ、右」とかっていう。「命令」は行動と意図の伝達、両方入ってる。で「訓令」は主に意図なんですって。まずこの定義づけがあるってすごくないですか?(笑)。

中竹:すごいですね(笑)。

篠田:この話、大好きで(笑)。

中竹:これは勉強になりますね。

「意図取り」ができるようになれば、組織はとてもよくなる

篠田:上から下への指示がそういうふうに定義されているから、逆にそれを受けた側は、特に「命令」とかだった場合「上の意図を自分たちはちゃんと理解できているのか?」っていうのが、めちゃめちゃ大事なワケなので。上の方に対して「意図取り」をするとか、同僚同士で「どういう意図か汲み取れたか?」の確認をし合うみたいなことが、フォーマルにもインフォーマルにも、かなり意識してやってらっしゃるようなんですよね。

中竹:へぇー……けどこれ徹底的に訓練すると、すごい良い組織になりそうですね。軍隊ってすごくタテ型で、今の流れだと心理的安全性もなさそうだし、古い組織って感じですけど。これがお互いに本当に定義づけて「意図取り」もちゃんと部下からできるようになってたら、めちゃめちゃ良い組織な気がしますね。

篠田:本当そうですよね。その時おっしゃってたのは「航空自衛隊というものの特徴があるんだ」と。つまりパイロットが飛び立っちゃうと、もうどうにも指示とかできないワケですよね。まさに自律的に、ものすごいスピードで、ものすごい高さに機械を飛ばしているワケなので。いわゆる「行動の指示」だけではどうにもならないから、全体の作戦の意図みたいなものをよくわかってもらって、あとはもう自分でその場で判断してもらわないと、要はミッションが遂行できないと。

中竹:そういう文化なんですね。

篠田:その状況において「でも上の方が考えてる作戦とかを実行するのはどうやるの?」っていうのが、組織の課題の根幹にあるみたいで。それはもしかすると、ほかの部隊とはまた状況が違うのかもしれないです。

中竹:そうですね、確かにあり方と紐づいてますね。いや、おもしろいですね。まさに組織文化を語る時に軍隊をひとくくりにできないのは、本当にそれがどういう形態で、いわゆるサービスを為してるかっていう。

ネイビー、アーミー、エアフォースって、ぜんぜん文化はやっぱり違いますから。確かにエアフォースの、放つともう「さよなら」で、なにもコントロールできないっていうのはよくわかりますね。

審判からキャプテンに飛ぶ「お互い話し合って」の指示

篠田:でもそれこそラグビーとかも……すいません、超素人なので違うかもしれないですけど、なにかそういうふうに見えますけど。「監督はなにも言えない」みたいな感じで、選手たちがその場で臨機応変にやってるように。

中竹:そうですね。基本、ラグビーという競技が、そこのカルチャーをめちゃくちゃ大事にしてて。今はもういろんな、無線とかトランシーバーとかあるんですが、一応、今すべてのスポーツ競技の中でも(ラグビーは)「監督は競技場に降りちゃいけない」ってルールがあるんですね。基本的に交渉はキャプテンとやるっていう。レフェリー相手にしろなににしろ、チームの話し合いは。

反則が起きました。お互い相手が“人”だという前提で、試合中に話し合いが行われるんですよ。「ちょっと今、反則多いし、これはお互いにとって良くないから、自分たちでそれを考えて解決に向けて話し合ってね」っていうような指示が、審判から飛ぶんですよね。

篠田:「話し合ってね」っていう指示なんですか!?

中竹:そうなんですよ。今の状態はお互いちょっと興奮していて、反則が良くないと。感情に任せる部分があると。「それはやってる人も見てる人も、みんなにとって良くないから、キャプテンを中心にちゃんとチームを落ち着かせてね」みたいな指示が試合中に飛ぶんですね。これって(審判が)監督に言うワケじゃなくてキャプテンに言うので、ふだんからそのトレーニングをやっておかないと、実はうまくいかないというのがありますね。

ウェイトとして上がっている「聴く」スキルの重要性

篠田:はぁー……おもしろいなぁ。でも本当これ、多くの企業が今直面している状況とか、これから入っていく状況って、今のラグビーとか航空自衛隊の考え方と、すごく近いんじゃないかと私は思っていて。自分がそういう好みだからっていうのが、一番大きいんですけど(笑)。

中竹:(笑)。

篠田:細かく「こういうふうにやりなさい」っていう「箸の上げ下ろし」的なところが決まっていたり。上の人が全部わかってて、それを下の者に指示するんだっていう世界観から、上の方の経験値とかがあんまり活きないぐらい環境がすごく変わっちゃってたり。あるいは新しい事業を始めたりすると、このやり方だともうどうにもならないんですよね。上の方も「だいたい指示すること全部外れる」みたいなことになっちゃうから。

そうなるとそこにいる人が、役割としてはマネージャーとかプレイヤーとかあるのかもしれないですけど。けっこうフラットに自分で考えて探索して、わかったことを共有して一緒に考えていく……っていうふうにしないと仕事が進まないような状況に、わりと伝統的な大企業も直面されているような気がしていて。

そうなると上の人が「自分は答えわかってるから、その答えを当ててごらん」みたいなマネジメントだと、ちょっとうまくいかないかなと。

中竹:もう限界ですよね。

篠田:「上の方がわかってる」っていうのが通用する世界は、むしろやっぱりそっちのほうが効率的なので、組織の中のコミュニケーションのモードとしても「伝える」っていうことが主になっていくんだと思うんですけど。

一方そうではない、今、私が言ったような状況だと、よりリーダーになる方も「聴く」ということをして。判断力とか、どこまでリスクとれるか? みたいなことは一定、その会社の中で権限を持ってると情報が多いからできるのかもしれないけど。

どこにチャンスがあるか? みたいなことは、むしろ現場に近い人のほうがわかっていて、それをよーく聴くっていう。だからどっちかっていうとやっぱり「聴く」スキルの重要性が、ウェイトとして上がってるんだろうなっていう感じは持ってるんですよね。

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