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篠田真貴子さんと考える なぜ心理的安全性は組織を強くするのか(全10記事)

「発言しないなら、会議に出てる意味ない」って本当? 向上心があって成果を出したい人ほど遠ざかる“聴く”行為

組織のパフォーマンスを最大限発揮するためには、土台となる対人関係やチーム内での不安を最小限に抑えることが重要。そんな組織を作るため、いま「心理的安全性」の実装が求められていますが、じつはそのヒントは組織の中で「聴き合う」ことにあるのです。そこで今回、社外人材によるオンライン1on1サービス「YeLL」を提供するエール株式会社 取締役・篠田真貴子氏が登壇されたイベント「なぜ心理的安全性は組織を強くするのか」の模様を公開。日系大企業、外資系企業、ベンチャー企業と多様な組織で要職を歴任してきた篠田氏の経験や知見から、役職や部署を越えて共創する組織のつくり方を徹底解説します。

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向上心があって成果を出したい人ほど「聴く」から遠ざかる

斉藤知明氏(以下、斉藤):ありがとうございます。「聴く力」について、さまざまな観点からお話しいただいたんですけれども。

斉藤:この連鎖する(聴いてもらう体験をすることで、話した側の「聴く力」も高まる)って、すごく大事だと思ったんですよね。

なんで組織に心理的安全性が必要なのか? 聴く力が大事なのか? というのは、1つめのテーマとしてお話ししていきたいと思うんですけれども。

斉藤:組織にとって必要なことって、まず前進じゃないですか。利益を出すため、ないし社会に貢献するために、前進し続ける。そのために建設的なディスカッションが必要で。

その建設的なディスカッションだと、伝える側もパッと思ったことを伝える。「なんでそう考えたのか?」を言語化して伝えて、それが“いい意見”として場にある。そういったことでディスカッションされている状態、というのをふわっとイメージしていたんですね。

そこに足りないところが、まさにこの「聴く力」なのかなと思ったんですけど、こういう整理ってどう思われますか? 

篠田真貴子氏(以下、篠田):まさにそうだと思うんです。本当は、聴く力ってバランスなのでね。

もちろん「これ、まずいんじゃない?」って、さっきもチャットのご意見にありましたけど「解決策まで求められる」とかだと、なかなか言えないじゃないですか。その前に「思ったら言える」という状態が心理的安全性なので。やっぱり聴いてもらうというのはすごく大事なんですけれども、実は私たちがこれまでやってきている環境とか受けてきた教育からすると「聞く」って、何か弱っちい感じがしません? 

斉藤:(笑)。

篠田:なんか「話聞きなさい!」って、子どもの頃に大人から言われると「言うことを聞きなさい」「従属しろ」というニュアンスがあるし。

私も特に外資系にいる時には「発言しないと会議にいる意味がないから」みたいな感じで「生産性が低い」とか言われるんで。本当に向上心があって成果を出したいビジネスパーソンほど「聴く」からどんどん遠ざかるんですよ。

この行動が、私たちを心理的安全な場から遠ざけているという、このパラドックスがあるなと思っています。

意見の相違はあっても「まずは受けてもらえる」が大事

斉藤:チャットでもいただいてた中で「聴くが先行する」って、先行すること自体は正しいんですけど「聴くだけになる」というワケでもないんだな、という感じなんですよね? (笑)

篠田:そうそう(笑)。よくこれ、言われるんですけど。

私が「聴くは大事!」って言うと「でも全員が聴いたら、話進まないじゃないですか!!」って。そんなことは当たり前で(笑)。そうですよ、進まないんです。だけど「今の私たち」と「これから目指したい私たち」を比べると、今の私たちの意識って、たぶん「話すが99パーセント」で「聴くって1パーセントあるかどうか」だと思うんですよね。

私が提案したいのは、この1パーセントしかない“聴く”を20ぐらいに上げませんか? という話なんです。

それでも話すが8割あって、ドミナントなんですけど。聴くだけ見たら、1から20だから、20倍じゃないですか。意識の振り向け方として。このチェンジはいかがですか? という提案なんですよね。

斉藤:そうですよね。この引き出されるという経験をしない中で、たぶん条件反射で「あー、それだめだね」「それいいね」だけで言われてしまうと「『いいね』だったとしても、何か考えてないのかな?」「とりあえず受け取られちゃったけど、アドバイスもくれないな」と。これはたぶん、門構えのほうの「聞く」なんでしょうね。

篠田:おっしゃるとおりですね。あと本当に「いいね」って、真剣に考えて答えてくれたとしても、どうしてもそのwith Judgmentの反応しか経験してないと「いいと思われることしか言っちゃいけないんだ」って。要は否定されるのが怖いから、やっぱりそうなっちゃうんですよね。

だから意見の相違はあっても「まずは受けてもらえる」ということが、すごく大事で。

人間は「言う・言わない」の調整を、自分で意識できない

篠田:あともう1個ここで指摘したいのが。私たちって話す内容で、相当、無意識に(言う・言わないを)調整しています。だから雰囲気でなんとなく「あ、今は言えない感じだな」って思ったら、言わなくて。しかもそれを、自分で意識化できないんですよね。

斉藤:なるほど。

篠田:だからこそ「組織風土です!」ということを、これを研究したエイミーさんもおっしゃっているんじゃないかなと思っています。

斉藤:まさにその、無意識下に押し込めてしまったアイディアを引き出すことで、組織が前に進むアイディアが生まれると思うんですよ。

最終、聴くというプロセスにおいては、without Judgmentが重要なのではないか。ただ会議という場で見たら、最後はジャッジであると思うんですよね。

篠田:はい。もちろん。

斉藤:「決められない会議」というのはよくないし、ネクストアクションの決まらない会議は、進んでない会議です。会議のすべてプロセスをイメージできると、聴くことの重要性はより際立つかな? と思ったんですけど。

エール社内でもいいですし、今までのご経験の中でもいいですが、篠田さんの考える「進め方が最高だったなという会議」って、どんな会議がありましたか?

篠田:本当おっしゃるとおりで。決めないと、組織の目的は進みませんので……。

斉藤:そうですよね(笑)。

エール社内で実践している、付箋を使ったミーティング

篠田:必ずジャッジは入ります。なので、そこで言ってる「決断」という話と、ここで言ってる「いったん相手の意見を受け止める」というのは、なんでしょう……。その時間軸の流れの中での“使い分け”だと思うんですよね。

例えばですけど、エールの社内ミーティングでよくやるのは、まず今日のテーマがあります。そのテーマについての自分の考えを、5分使って全員が議題に出したいことを、もう付箋を何枚使っていいから、まず書くんですね。

書いて、とにかく出しちゃうんです。そうすると「発言とかちょっと億劫だな」という気弱な人の言葉も、とりあえずは出てくるんですよ。

それをフラットに眺めて、必要であれば、必ず全員がその出したものについて簡単に説明をしていくという時間をとります。そうすると「まず、いったんは聴いてもらった」という状況が生まれるんですよね。

するとその後「じゃあ、これに対して意見を交わしていこう」と移っても、いったんは聴かれたので。まったくそれを挟まずに、いきなり議長が「この件について意見ある?」って言って、なんとなくパワープレイが上手な人が「はい!」「はい!」って支配的な意見を言って。そういう他の人が意見を言いづらくなる会議と比べた時には、多様な意見が出やすくはなりますね。というのはいかがでしょうか?

斉藤:ありがとうございます。

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