2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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小池彩加氏:お待たせいたしました。それではさっそく1時間目、SDGsの授業を開催したいと思います。1時間目を担当していただくのは、株式会社arca CEO・クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんです。よろしくお願いいたします。
辻愛沙子氏(以下、辻):1時間目ということで、ドキドキしながら始めさせていただきます。よろしくお願いします。
今日は楽しみな授業がたくさんあって、皆さんワクワクだと思うんですが、この時間はSDGsをテーマにお話します。まずは、なぜ私がSDGsについてお話するのかに通ずるところがあるので、簡単に自己紹介と今までの仕事をお話させていただきます。
arcaという会社でクリエイティブディレクターをしていますが、ふだん自分のことを「クリエイティブ・アクティビスト」と呼ぶこともあります。
「アクティビスト」は「社会活動家」の意味で使われることが多いですが、よく「社会派クリエイティブ」という言葉を使うこともあります。クリエイティブの手法を使って、社会課題の解決や社会にどう貢献できるかを掲げながら仕事をしております。
毎週水曜日に『news zero』という報道番組に出させていただいたり、まさにSDGsをテーマにしているWeb番組『ハフライブ』を毎月やっています。発信の仕事と、クリエイティブ・作る仕事の両方を通じて、社会課題の解決を目指しています。
会社自体でも「社会課題」を1つの軸にしていて、女性向けの商材や、Z世代・若い世代に向けた企画を多くやっています。実際に作るもの(コンテンツ)で言うと、テレビCMから商業施設の企画や内装と、ジャンルにとらわれず様々なものを作っているんですが、総じて「社会課題の解決にどうつながるのか」を1つの軸として仕事をしているんですね。
「SDGs」や「社会課題」と聞くと、「むずかしい」「教科書っぽい」とか、まじめな印象があるかもしれません。そんな中でも1つの手法として、デザインや企画、クリエイティブを通じて堅苦しくなく、だけどより多くの人に課題に興味を持ってもらうことを意識しながら仕事をしております。
辻:改めて「SDGsって何ぞや」というお話ができたらと思います。(イベントを)見てくださっているみなさんの世代だと、もしかしたら義務教育でもうSDGsをやっているか……ギリギリその上の世代ですかね。
おそらく今の中学生だと、SDGsが義務教育で教科書の中で出てくるようなトピックになってきていて。社会のために、プラスアルファのボランティアでやろうという意識よりかは、必須科目としてみんなが学んでいかなきゃいけないものになってきているなと思っています。
今日はまず入り口というところで、ざっくりとお話しさせていただければと思います。2030年までに実現すべき、社会・地球全体、いろんな国と連帯して実現していくべき全17項目の目標がSDGsです。
これは国連が打ち立てたもので、もともと別の名前で2つ掲げていた目標があったんですが、その2つを統合してSDGsになって、みなさんが見たことある虹色の輪っかのアイコンと共に目標を立てています。
大きく分けて、3つの課題・17項目にカテゴライズされます。例えば環境問題、ジェンダー、ないしは人権問題など。この3つのカテゴライズの中で、「自分たちはどれをやっていこうか」と、いろいろな企業やインフルエンサーの方、個人の方、国などが注力しています。
中には大きなテーマもあって、3番の「すべての人に健康と福祉を」だと、「個人で何をしたらいいだろう」「できることないよ」と思う人もいるかもしれないんですが、今日、自分の仕事も含めて、実際に社会で具体的にどのようなアクションが生まれているのかをお話していきます。
この17項目は「SDGs」で画像検索していただくと出てくると思うので、興味がある方は検索してみてください。私自身は5番の「ジェンダー平等」を1つの軸として仕事をすることが多くあります。
辻:例えば、広告と言われると「こんなが商品あります」「新商品のペットボトルです」と、ただ商品を紹介するイメージがあると思うんですね。タレントさんが出てきて、「この化粧水がこうで」みたいな話をするだとか。
一方で私が進めている社会派クリエイティブでは、例えばこういう仕事をやっています。「『女子力』って何だろう」というキャッチコピーの広告です。実は「女子力」って当たり前に使っているようで、ステレオタイプを生んでいるのではないかと思ったんです。
「女性ってこういうものだよ」「女性らしさってこうだよ」という決め付けを生んでいる言葉でもあるので、私自身も言われてモヤっとしたことがある言葉です。少しでもステレオタイプを壊す表現ができないかと、「女子力」を英語に変えた「GIRLS POWER」という言葉を立てて、『LOVE YOUR GIRLS POWER』という企画をやりました。
これ、おもしろいんですけど、「女子力」と「GIRLS POWER」で(それぞれを)画像検索すると、ぜんぜん違うイメージが出てくるんですね。
もし興味のある方がいらっしゃったら検索していただけたらと思うんですが、それくらい女性のあり方って多種多様です。サラダを取り分けたり、片付けができたり、本当はそういうものだけが女性の働くあり方や生き方ではないよね、ということがわかるかと思います。
ミルボンさんはヘアケアの企業さんで、こういった表現の企業広告を作らせていただきました。これも、ぱっとビジュアルで見て伝わるとうれしいんですが、髪の毛を通していろんな方々をキャスティングして、「人や女性の数だけ、女子力のあり方や女性の強さのあり方が違うよね」という広告になっています。
辻:あと、もしかしたらこれはSDGsとは離れちゃうかもしれないんですけど、『Tapista』というタピオカ屋さんのブランディングの立ち上げを、半年間やらせていただいた時に、若年層の方がお客さんで多く来てくださっていて。ただ、若い人たちって「社会のこと考えてない」「けしからん」みたいなことをよく言われたりすると思うんですよね。
タピオカもそうだなと思っていて。「タピオカに行列するような人なんて、何も考えてない」みたいに、揶揄するような報道や週刊誌の記事があった中で、私も一当事者として「若年層だしタピオカも飲むけど、投票だって行くし、社会のことだって考えてるよ」ということを、なにかアクションしたいなと思いました。
参院選のタイミングだったので、選挙に行って投票済証をお店に持って行くと、半額でタピオカが飲めるキャンペーンをやったり。これ、指原(莉乃)さんが紹介してくださってすごくうれしかったです。
他にもABEMAで女子高生向けの性教育のドラマのクリエイティブをやらせていただいて、これもすごくいいテーマのドラマなので、ぜひ見ていただきたいです。性教育というテーマでも、やっぱりジェンダーギャップがあって。どうしても男性向けのコンテンツがすごく多いので、そこに対してどういうアプローチをしていったらいいだろうかと考えました。
生理のことやセクシャリティのこと、「そもそも、恋愛ってするのが当たり前なんだっけ?」「異性と付き合うのが当たり前なんだっけ?」という問いかけをしていくドラマになっています。
辻:あとは『Ladyknows』というプロジェクトは、これはまさにジェンダー平等(というテーマの)ド真ん中だと思います。いろんなジェンダーギャップの課題がある中で、「でも、ジェンダー平等っていきなり言われても、大きすぎてわからん」ということを、私自身もみなさんも思う方がいらっしゃるんじゃないかなと思うんです。
日常の中でいきなり言われても、すぐに自分ごと化できるものでもないので、まずはどんな課題があるのかを知ることから始めるのが大事なんじゃないかなと思いまして、例えば一番右上のグラフですね。
これは去年のものでデータがやや古いのですが、上場企業の女性役員の割合です。今は5パーセントになっているんですけど、100人中5人しかいない。
下から2番目は最近話題の選択的夫婦別姓のグラフなんですが、結婚の時に選択する苗字を、男性側の苗字にするか女性側の苗字にするか。今でいうと、別姓は事実婚しか選択肢がないんですけど、そういう選択をしている人ってこれぐらいの割合でいます。
「知ることでわかる課題がある」ということを、プロジェクトやメディアを通してやっていたりします。
辻:その中で、こんなイベントを実施しました。婦人科検診って、20〜30代の若年層がぜんぜん受けていないというデータがあるんですね。賃金格差やいろんな原因があるんですが、乳がんや子宮頸がんは若い人たちにも起こりうるリスクです。SDGsにも健康の話がありますし、なにかできることがないかと思って、こんなポップアップのイベントをやってみました。
SDGsって「教科書っぽい」とか、ちょっと説教臭いイメージがあるかも、というお話をしたと思いますが「そうじゃないあり方で課題解決ができないかな」というのを、私はクリエイティブとして考えていて。
まさにこれはそうかなと思うんですが、例えば「健康診断に行きましょう」と言っても、「いや、めんどくさいし」「そんな高いお金出して」「まだ私、若いから大丈夫なのに」と思う人もきっといると思うんですよね。
なので「タスク」になっている健康診断をちょっとでも「行きたいもの」にしようと考えて、渋谷にある『TRUNK BY SHOTO GALLERY』というおしゃれな結婚式場で、ミュージアムやトークイベントを絡めながら、エンタメ性を持たせた健康診断を実施しておりました。チェスのかたちの身長計を作ってみたり、パーソナルカラーを測れる場所を置いてみたり。
辻:今日はジェンダーのお話が多くなってしまって恐縮ですが、もし「国際女性デーって何?」という方がいたら、検索していただけたらなと思います。毎年3月8日が世界中で「国際女性デー」、International Women's Dayと言われている日があり、その日に新聞広告をいくつか作らせていただきました。
今日は事例をいろいろお持ちしたので、“情報の嵐”という感じだと思います。SDGsと聞くと「まじめに学ばなきゃ」というイメージがあると思いますが、自分ができるアクションやアイデアや表現で、どういうふうに解決に一歩でも近づけられるだろうかというのを、みなさんご自身のアイデアで考えていただけたらなと思って、私自身の例をいくつかお出しします。
朝日新聞さんの広告で、これまで実際に使われてきた新聞の見出しや記事を使った広告を作りました。「未来は勝手に進まない。進めてきた人たちがいる」と、女性で初めての大臣が誕生した時や、女性が初めて大学に行けるようになった日とか。
あとは、女性社員が99パーセントのライフクリエイトさんという企業。もしかしたら、支持も圧倒的に女性比率が高いんじゃないかなと思うんですが、女性社員が多いからこそ「選択的夫婦別姓に賛成する」広告を作ったり、Adobeさんで女の子たちの夢を表現した広告を作ったり。いろんなクリエイティブを作らせていただいています。
SDGsやジェンダーギャップといっても、やるべき課題もできる表現もたくさんあります。いきなり「ジェンダーギャップを私1人で解決する」というようにむずかしく考えすぎずに、まず知ってみることや、自分が気になった課題を解決する入り口として、「どんなアイデアや表現やデザインがいいだろうか」と妄想するだけでも、できる一歩として思いつくものが出てくるんじゃないかなと思っています。
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