2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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野村:ではこの辺から、具体的な話にいきたいと思います。「どういうふうに経済情報を取ればいいのか」にいきたいと思います。実は経済情報は、2種類に分けられると思っているんですね。
1つは、社会の共通言語となる情報です。例えば自動車マーケットがあるとすると、自動車市場にどういった企業がいるかは、わりともう共通言語なんですよね。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、スバルとか。そういった「どのプレイヤーがいるか」という情報も、ある意味常識といえば常識です。
なのでみなさんが社会人になるにあたっては、その業界で常識とされているものについては、すぐにキャッチアップすることをお勧めします。その業界だけではなくて、ある意味横に広がって、その業界に隣接する業界についてもそういったこと(知識)を得られるといいかなと思います。
ただこの1つ目だけだと、アイデアって差がつかなかったりするんですよね。なのでもう1つは、あなたしか知らない、もしくはあなただけが注目している独自の情報を持っておくことをお勧めします。
正直、これは何でもよくて。例えばあなたが音楽の中でもヒップホップに興味があるとすると、ヒップホップの中ではいったいどういう歌手が売れていて、どういうレーベルがあって、お金の流れがどうなっているのか。ビジネスモデルがどうなっているのかを知っておくと、実はあなたが入った会社では、ヒップホップに詳しい人はあなただけかもしれない。
そうすると独自の立ち位置を取ることができます。1・2の両方を手に入れていくのが、これから社会人になっていただく方が経済情報を取る上でのスタンスになってくるのかなと思っています。
野村:具体的なツールとしては、手前味噌なんですが、私が勤めているNewsPicksは1・2の観点では非常にお勧めです。まずアプリを開いてすぐの画面を見ておけば、とりあえず社会人になるにあたって、その日にキャッチアップしておくべきニュースが一発でわかります。
それから、背景がわからないニュースに対してコメントができる機能があって。プロピッカーと言われるプロの有識者の方々が、ニュースに対して解説を加えてくださっているので、そのニュースの背景を理解することできます。
それから私もその一部なんですけど、各界で活躍しているジャーナリスト……ちなみに、私が「各界で活躍しているジャーナリストの一部」というよりも、「所属している」という意味なんですが(笑)。各界で活躍しているジャーナリストが本当に心血かけて注いだ、ここでしか読めない深い記事が読めるので。
Facebookって日常的に使っているかもしれませんが、例えばFacebookが何かをしたとか……あ、そっか。この年代の方は(Facebookを)使っていないかもしれませんね。Twitterを使っているかもしれないですけど、そういったものがいったいどういうビジネスモデルになっているのか、経営者が何を考えているのかが読めたりします。あとは経済メディアは、日経新聞さんでも別にいいと思いまして。
野村:こういったメディアから情報を取ることと、もう1つはとにかくたくさんの人と話そう、ということですね。
人と話して得られた知識は一次情報というんですけど、何のフィルターもかかっていない知識なんですね。なのでそれは、まぎれもなくあなたしか知らない知識になることが多いです。本で読んだこととか、どこかに書いてあったことばかり知っていると、どうしても頭でっかちになってしまうんですね。
そうではなくて、人と話して得られた知識はけっこう自分の血肉になるし、自分だけしか知らないことが多いので。周りと仕事をしていく上で、「君、そんなことを知っているんだ」みたいな感じで、差別化することができます。
それからもう1つは、「フットワーク軽くいろんなところに足を運ぼう」ということですね。基本的に経済メディアで流れてくる情報は、ネタ元があるんですよ。例えば流行っている映画でもそうだし、どこかでビルや商業施設が建ったということでもいいんですけど、現場があるんですね。記者や編集者がその人なりのフィルターを通じて、現場のニュースを世の中に発信しているんですね。
だったら、生の現場の情報を取ったほうが自分にとって学びが大きいと思うんですよね。もちろん一般の方ではアクセスできない場所がいっぱいあるので、その場合はメディアや映像越しの情報も見ればいいと思うんですけど。
「なにかが流行っている」と思ったら、それをいち早く自分で見てみるのが一番大事なんじゃないかなと思います。流行っている映画を見てみるとか、新しく何かが建ったらそこに行ってみるとか。そういった姿勢が、経済を自分のものにするためにはけっこう大事だったりします。
野村:とはいえ、私が散々「経済の情報を取りましょう」「経済の情報は大事なんですよ」みたいなことを言っても、「むずかしくない?」「おもしろくなくない?」と思う人も、けっこういるんじゃないかなと思います。
ちなみに何を隠そう、私は社会人1年目に出版社へ入ったんですけど。関係者の方が聞いていたら恐縮ですが、そこの上司から「日経新聞ぐらい毎日読め!」と言われまして、日経新聞を購読していたんですね。
ただやっぱり、読むのがけっこうしんどくて。「漢字むずかしいな」とか、読んでいてもあんまり心が踊らない感じが、どうしてもしてしまったんですね(笑)。
それは今振り返ると、別に日経新聞に書かれていることの質が低いわけではまったくなくて。「自分ごと化できていなかったな」という感じがするんですね。やっぱりどこか自分と関係のない世界の話で、知識として経済情報を読んでいたので、だんだんと読んでいくうちにしんどくなってしまいました。
野村:なので最後に伝えたいのは、経済のことを学ぶためには「身銭」を切ろうということです。今日1つだけ持ち帰っていただくとしたら、これだけ持ち帰っていただきたいです。「身銭を切ろう」とは具体的にどういうことかというと、要は本当にお小遣いの範囲で構わないので、何かに投資をしてみるのをお勧めします。
株式でもいいし、ちょっとした為替でもいいですし。最近だとハイリスクハイリターンすぎるので、これはあまり大きな声ではお勧めできないですけど、仮想通貨がめっちゃ流行っていますよね。めっちゃ流行っているというか、仮想通貨はめちゃめちゃ値段が上がっているんですね。
投資はあくまでも自己責任なんですけど、これ(投資)をすることをお勧めします。なぜかというと、投資をすると買った株の業績や、もし為替を買ったら為替の値動きが全部自分ごと化されるんですね。
そうすると、例えばこの(スライドを指して)1番上って円ドルの相場なんですけど、円ドルの相場が単なるただのグラフの値動きじゃなくて、これによって喜んだり落ち込んだりと、自分にダイレクトに影響してくるものに変わってくるんですね。
そうすると「このメカニズムはいったい何なんだろう」とか、例えば自分が損をしてしまったら「次は損をしないためにはどうしたらいいか」を真剣に考えるようになります。そうすると「そうか。世の中でこういった政治の動きが起きると、為替はこう動くんだ」とか。
あとは企業の決算もそうですよね。「世の中がこういう流れになると、こういった企業の業績が上がって、こういった企業の業績が下がるんだ」ということが、かなり血肉になることがあります。とにかく身銭を切って、何かに投資をしてみる。そうすると、経済情報は向こうからあなたのほうに入ってくると思います。
最後はこれ。たまたまNewsPicksのロゴが入っているので、深い意味はないんですけど(笑)。世の中の経済情報がカラフルに見えてくるんですね。単なる無味乾燥なグラフの蓄積ではなくて、(身銭を切ると)経済情報がカラフルに見えてくるので、とにかく身銭を切って経済の情報を取りにいくことをおすすめします。
というわけで、この辺りで講義編を終わりたいと思います。
野村:(コメントを見ながら)「経済のお話、楽しみにしていました」。ありがとうございます。もしなにか質問があればここでいただければ幸いですが、なければ残りの時間は私がベラベラとしゃべりたいと思います。
少しつなぎでしゃべらせていただくと、もともと私はコンテンツの編集者の仕事をやっていて、その後外資系のコンサルティング会社に移ってから、まだベンチャーだったNewsPicksに入ったんですね。
本当に伝統的な日本的企業から、外資系からベンチャーまで、いろいろとやらせてもらってきたんですけど。その時にやっぱり自分の身を助けてくれたのは、経済に対する現象ではなくて、仕組みに対する理解だったんですね。世の中のお金はどこからどこに回っていて、いったい株価とは何なのか、とか。
例えば「会社に雇われるということは、いったいどういうことなのか」というような、仕組みに関する理解が自分の身を助けてくれたことがあったので。私が3社を経験していて一貫して役に立っているので、たぶんそれは大事な知識なんだろうなという感じがするんですね。なので、そういったものを身に付けていくとよいかな思います。
(視聴者からの質問)「情報の取り方として、『人と話をする』というのも紹介していただきましたが、人と話をした情報を集めたり、(相手への)質問の仕方などはありますか?」
これは(相手に)何を聞きたいかにもよるんですけど、私がよく聞くのは、例えばその人の仕事(についての話題)だとしたら、「その人の仕事のおもしろい部分は何なのか」ということ。それから、「その人は今、仕事に限らずいったい何をおもしろいと思っているのか」をよく聞きます。そうすると、その人なりの「おもしろさ」が出てくるんですね。
そのおもしろさは、単なるお笑いを見ておもしろいというよりも、「私が知らない世界で、実はそんなことが起きていたんですか」とか。「そんなうまい仕組みがあるんですか?」ということを聞けたりします。なので、「おもしろいことは何ですか?」と聞いてみるとけっこういいかもしれませんね。
(視聴者からの質問)「新社会人の者です。株をしたんですが、自分の生活に支障がない範囲でやるほうがいいですよね?」
これはなんとも言えないんですが、私はそっちのほうがいいかなと思います。それ(投資)で人生が変わるぐらいになってしまうと、そっちにマインドを取られてしまうので、「ちょっと損した」「ちょっと嫌だな」ぐらいのつもりでやったほうがいいと思います。
「一度、外貨預金をやったら円安になって損切りすることもありますか?」。そうですね(笑)。そういう損をすることもあると思います。
野村:「『たくさんの人と話すのがいい』というお話で、同じ人と何度も話すより、さまざまな業界や世代の方と話して視野を広げたほうがいいですか?」。そう思います。一番よくないのは、会社の人とばかり飲みに行くことです。同じ世界しか見えていないので。
それよりも、定期的に会社の外の人というか、できるだけ努めて幅広い業界の人と話をしたほうが、あなたに入ってくる情報は確実に豊かになると思います。
最後(の質問)、「編集者としてどんな時にやりがいを感じました?」。これは1分じゃ言い切れないんですが(笑)。編集者としてやりがいを感じるのは、まったく自分が知らない世界が見えた時です。
「こんな世界があったんですか!」「こんなことが起きていたんですか!」「こんな人がいたんですか!」ということを知ると、自分としては一番アドレナリンが出まして。「なんとかして、この魅力を世の中に伝えたい」と思います。
ということでお時間が来てしまったので、一旦ここで終わりたいと思います。ちなみに私「野村高文」で検索していただくと、Twitterアカウントがあります。そこのダイレクトメッセージを開放していますので、もしなにかご質問があれば、基本的にSHEの今日の講義を聞いてくださった方には、基本的に全部お答えしていきたいと思いますので、お気軽にダイレクトメッセージを頂戴できればと思います。
というわけで、今日はご清聴いただきましてありがとうございました。
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