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中竹 竜二さんと考える 共創する組織をつくるリーダーの育て方(全6記事)

最悪なリーダーには、責任はあるけど“責任感”がない 責任感あるリーダーには、人に“支援を求める力”がある

「求められているリーダー像は変わってきているが、どう育成していいか分からない」「研修内容が長年変わっておらず、このままでいいのか漠然とした焦りや不安がある」。そんな悩みを持つ経営層・人事マネジメント層に向けた、Unipos主催のスペシャルウェビナー「日本ラグビーフットボール協会『コーチのコーチ』中竹 竜二さんと考える 共創する組織をつくるリーダーの育て方」が開催されました。本パートでは「最悪なリーダーは『責任はあるけど“責任感”がない』」「いい組織には『哲学=問い』がある」などについて話しています。

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今は、答えが1つではない「混乱のVUCAの時代」

斉藤知明氏(以下、斉藤):もしよかったら、そちら(対極視点法で得た気付きから「自分はこうやって行動しよう」という宣言をして、チェックアウトすること)もぜひみなさん、発言していただけるとおもしろいかなと思います。今見た中で「自分はこれからこうしていこう」「自分のチームではこうしていきたい」ということも、コメントに書いていただけるといいんじゃないかなと思いました。

「教えすぎない」とか。そうですね。

中竹竜二氏(以下、中竹):ちょっと前の問いと重ねて補足をすると。時代の流れの中としては、答えが1つじゃなくなっているので、本当に混乱のVUCA(「Volatility=変動性」「Uncertainty=不確実性」「Complexity=複雑性」「Ambiguity=曖昧性」の頭文字を取った言葉)の時代で。じゃあ「すべての組織が365日そうか?」と言われると、組織によっては明らかに「ここを乗り越えよう」とか「最後のこの1ヶ月、有無も言わせずやりきるぞ」という場面が訪れるんですよ。

だから、さっきの石井(遼介)さんのスライドを見て「よし、これをやるぞ」ではなく、どんな組織にも、昔からあるようなはっきりとわかる上位の世界に入る瞬間があるわけですよね。

中竹:(スライドの)下の時代も変わっているから、下のようなコミュニケーションやマネジメントをやろうっていう一辺倒だとダメで。そんな組織でも、ある瞬間やある場面、あるチームによっては正解が明確で、トップダウンでスピード感を持ってやんないといけない。

言われたことをきちんとこなす人材になれないといけないし、そういった観点を持たないといけないので、上がダメで下がいいという対極ではなく、常にこれが組織の中で行ったり来たりするのがこれからの時代かなと思いますね。

斉藤:後藤田(正晴)さんという昔の官房長官の方が出した「後藤田5訓」の中で、1訓から4訓は徹底的に「意見を具申しろ」、つまり「言え」ということなんです。だけど第5訓に関しては「決まったことは必ず従え」という言葉が書いてあって。

成果を決めたルートに対しては、確実にみんなで取り組むのがチームの在り方だということが、まさに中竹さんのおっしゃっていた「ないからといって自由だけを認めるのではなくて、決まったらそれはそれで成果を出す」。ここのバランスなんだなと思いました。

今、このお話を中竹さんからいただいている間に「じゃあ自分だったらどうすれば共創できるチームをつくれるか」「自分の行動をどう変えればいいのか」というところを、みなさんから意見をいただいていますね。

中竹:読むのが追いつかないくらい、どんどん書いていただいていますね。

斉藤:いやあ、本当に素敵ですよね。「失敗を許容して任せてみる」「やってみたら? 何か起きたら自分が責任取るよという後押し」。

中竹:「GOOD」「BAD」「NEXT」。これはチームボックスで使うフレームです、書いていただいてうれしいですね。

斉藤:そうですね。

中竹:なんでもフィードバックをする時に、いいものと悪いものを全部ポジティブにフィードバックしてもダメなので。ちゃんと悪いところも明確にして、その中から次のフィードバックをしていくのが非常に大事ですね。

斉藤:ありがとうございます。

最悪なリーダーは「責任はあるけど“責任感”がない」

斉藤:改めて「共創するチームをつくり成果をあげられるリーダーの育て方」は、問3のテーマでもあったんですよね。

斉藤:対極視点法の中から「何が共創を阻害してしまうか」という観点がありました。共創を阻害する観点の中で、自分たちはどうやったらその共創を起こすことができるチームを作れるか、みなさんからも発言いただいているかと思います。

共創するチームをつくり、成果をあげられるリーダーを育てる。このリーダーの定義は一人ひとりかもしれないですし、チームのリーダーという考え方かもしれないんですけど「やはりこれが大事だな」というところって、どういうポイントでしょうか。

中竹:リーダーの定義って、やはりそれぞれのリーダーが定義付けないといけないんですけれども。参考までに私の定義は、能力があるとか人格が優れているとかではなく、シンプルに“責任感”を持っているかどうか。“責任”を持っているか、ではなく。

責任って、一人しか持てない。ポジションでしか持てないですよね。どんなに責任感があっても、責任がある人が表向きに立たないといけない時がある。「あなたが謝罪に来ても意味ないですけど」みたいな。でも、責任感は誰でも持てるんですよ。

けどやっかいなのは「責任はあるけど“責任感がない”パターン」ですね。これは本当、最悪ですね。新入社員だったり、優秀なパートやインターンの子とかでも、入った瞬間から責任感を持って、何でも拾う人っていますよね。

そういう意味では「誰でもリーダーになれる」と、20年くらいずっと言っています。私のリーダーの定義は、圧倒的な「責任感」です。そうなると、物事を自責的に捉えていきます。

そう説く中で、自責して責任感を持ち、自分の成功体験を一旦捨ててunlearnできる人をいかに育てていくか。というのが、共創するチームをつくる究極のリーダー(にとって必要)だと思っています。

いい組織には「哲学=問い」がある

中竹:その中で具体的に何かというと、やはり「問い」です。正解がないからこそ「問い」を立てられるかというのが、すごく重要になってきています。

今回の本で書いたFCバルセロナもそうですし、よく取り上げられるラグビーニュージーランド代表のオールブラックスなど、ウィニングカルチャーを持った組織は他となにが違うかというと「問い続けていること」なんですよ。

ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方

「そもそも俺たちにとって勝利とは何なのか」「人としてはどうあるべきなのか」。これって答えではないですよね。

哲学って「問い」なんですけど、よく、いい組織には哲学があるといいますか。哲学が1個あるわけじゃなく、大事な問いをずっと立てている。そういう意味では、共創するチームで「問い」自体も1つではなく、自分たちの現状においてどういう「問い」が一番機能するのかを問い続けていることかな。

斉藤:はい。

中竹:(今「コーチのコーチ」をやっていますが「問い」を立てられるリーダーを育てるには)「問いを立てなさい」と言うのではなく「問いってどういうことが機能するんだろうね」と、問いを問いで豊かにしていくことをしないといけないです。育てる側も、こういったリーダーを「問い」で育てていくことが非常に大事だなと思います。

自責して当事者意識を持つと、選択肢が増えていく

斉藤:「責任感」という言葉が示唆深いなと思って、聞いていました。チャットの中でもいろいろご意見いただいています。

よく、自分ごとや再解釈といったいろんな言葉で語られますけれども、何かが起きた時には自分自身も原因の一部であって、だからこそ「どうやったら自分から変えられるだろうか」という思考が積み重なることで組織は前進する。だけど「相手が原因であり、それを変えなければ組織は動かない」という思考に陥ってしまうと、どうしても停滞してしまうという解釈でよろしいですかね。

中竹:そうですね。あとはシンプルに、なぜ他責じゃなく自責にするほうがいいか。無駄に自責づくと病んでいくのでそれは気を付けてほしいんですけど。

斉藤:そうですよね。

中竹:なぜいいかというと、選択肢が増える。今後のリアリティが。

斉藤:なるほど。

中竹:概念的な姿勢の話とか人として云々ではなく、自責して当事者意識を持つと、やる選択肢が増えていくという、単純な話なんですね。精神論の話ではなく、実践論の話ですね。

斉藤:まさにコメントで書いてくださった「そうすることで、(自分で)コントロールできる、選べる」というのはそういうことですよね。今、中竹さんがおっしゃってくださったことは、すごくシンプルだなと思いました。すごく高尚に語られがちだけれども「せっかくその場にいるんだから、自分の選択肢が増えたほうが楽じゃん」ということですよね。

中竹:(うなずきながら)もう。

斉藤:シンプル。ただそこに対して、さっきの共創を生まないリーダーの捉えかたの中であった、すぐに物事を否定したり、ほったらかしにされちゃって「やった甲斐がなかったな」と思われちゃうと、そこが止まってしまう。

だからこそ、責任感を持って自分ごと化して取り組み続けられる人がいる中で、それ自体を「やってよかったな。認められたな」と思える環境を生み出していくことによって、どんどんその変化に共有されると思います。

「リーダーの力」とは「人に支援を求める力」のこと

斉藤:あと、もう1個ありましたね。要素としては「目的」「成果の定義」「責任感」。さらに、これに基づいた行動を「やってよかったな」という積み重ね。改めて1つ目の問いにも戻るんですけれども、この3つの要素が組み合わさることで変化し続けられるチームができていくのではないか、という考え方なんですかね。

中竹:そうですね。あと「ネガティブ思考と自責って似ているかも」と考える方も多いんですけど、リーダーのスタンスを変えないと「リーダーが全部やんなきゃいけないんだ」「リーダーは正解を出さないといけないんだ」という無意識な観点で、助けを求められなかったり、相談できなくなってくる。

そもそも「リーダーの力」とは、全部をやることではなく、実績の中でできなかったときにお願いする力。要するに、人に支援を求める力のことです。リーダーとしてどんどん役職が上がると、人にお願いするのが恥ずかしくなるんですよ。ありますよね、これね。「できない」とか「知らない」と言えなくなってくるんですよ。

斉藤:うーん。

中竹:リーダーがそれじゃダメなんだと思いがちですけど、そうじゃなくて。早めに「ちょっとこれできないんだけど、お願いできるかな」と言う。これが責任感なんですよね。だって、抱え込んで「できなくてごめんなさい」より「できないし、責任感あるからみんなでやろうよ」みたいな。これ大事ですよね。

斉藤:そうですよね。自分で全部をするのがリーダーではなくて、率いた結果、成果になんとか近づけるのがリーダーだということですよね。

中竹:そうなんですよ。

斉藤:人を動かすことがリーダーシップだという考え方をしていましたけれども、リーダーシップはリーダーだけの持ちものではなくて、責任感というものは個人が持つものだから、その個人の責任感の発露をちゃんと成果に向けさせるということが、リーダーとして成さねばならない役割だという解釈ですね。

中竹:そうですね。

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