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中竹 竜二さんと考える 共創する組織をつくるリーダーの育て方(全6記事)

「勝つため」でなく「負けるために何をすべきか?」という思考法 あえて理想の真逆を目指す、対極からの議論が導く“真の答え”

「求められているリーダー像は変わってきているが、どう育成していいか分からない」「研修内容が長年変わっておらず、このままでいいのか漠然とした焦りや不安がある」。そんな悩みを持つ経営層・人事マネジメント層に向けた、Unipos主催のスペシャルウェビナー「日本ラグビーフットボール協会『コーチのコーチ』中竹 竜二さんと考える 共創する組織をつくるリーダーの育て方」が開催されました。本パートでは「『好きなこと』より『嫌なこと』を語る方が、議論は活性化する」「悪気なく“よくない言動”を取っている人を変えるには?」などについて話しています。

1つ前のパートはこちら

「違うな」と思ったら、早めに朝令暮改するのがトップの仕事

中竹竜二氏(以下、中竹)(「トップが“正解”を示した後に変わる」という話を受けて)これからどんどん変わっていくので、朝令暮改だという話がありますけど。

斉藤知明氏(以下、斉藤):はい。

中竹:私、10年以上前に、ド素人で早稲田の監督になったんですよ。その時に前任の清宮(克幸氏)という、ラグビー界ではトップの人から、ほとんど引き継ぎがないまま監督になったんですが。要所要所で重要だと言っていたのは「朝令暮改はありだからな」ということなんです。

斉藤:はい。

中竹:それを10年以上前に彼(清宮氏)は言っていたんですね。「信じてやっていたけど『違うな』と思ったら、早めに朝令暮改するべきだ。それがやはり監督の仕事だよ」と言っていて「あ、確かにそうだ」と思って。私も「こう言ったけど、ごめん違った」ということはよくあるんですね。

もっとすごいなと思ったのは、エディー・ジョーンズ。彼は南アフリカに勝った試合を率いた名将で、今はイングランドの監督をしているんですが、彼と私が一緒にいた3年間、彼は“朝令朝改”をやりまくっていました。

斉藤:(笑)。

中竹:早朝に言ったことを、朝食後に「ぜんぜん違うんだ」という感じで、朝礼朝改しまくっていましたね。選手は混乱もあったんですけど、大きな上位概念から見ると「さっき言った細かいことを変えていくのなんか、別に大した問題ではない」という考えが彼の根底にありましたね。だから朝令朝改も平気でしたし、(文句を)言われても「このほうが勝ちに向かっているんだから、しょうがないだろう」というね。

手段ではなく、“目的の朝令暮改”はダメ

斉藤:ポイントが大事だなと思いました。“目的の朝令暮改”はダメなんですよね。何を成したいのか、成果を出したいのか? というところは“北極星”として一定期間は目指し続ける。一方、手段や「こうやるべきだ」という”べき論”に対しては、変化をするために朝令暮改を恐れないことが大事。

この間、サイバーエージェントの曽山(哲人)さんとウェビナーをした時に、すごく示唆深いことをおっしゃっていました。それは「変化をし続ける。つまり、変化に慣れることが重要だ。その変化に慣れるために一番いいことって何だと思う? 実は変化し続けることなんです」ということでした。

変化し続けない組織が変化をすると、すごいアレルギーを起こすんだけど「また変わったな。じゃあもしまた変わったら自分はどうしよう、と思っていると、変化に慣れてくるし変化の適用がうまくなる」と、とても示唆深いことをおっしゃっていて。

手段を朝令暮改や朝令朝改するのを一切恐れてはいけない、というのはリーダーとしての1つの役割だし、コメントにも書いていただいた「説明するのも大事」というのもおっしゃるとおり。説明するのが大事ですし、マネージャーが勇気を持たないといけないということなんですかね。

中高:まさにそうだと思います。

斉藤:そんなところがおもしろい。

「好きなこと」より「嫌いなこと」を語る方が、議論は活性化する

斉藤:そんな中で、2つ目のテーマがまさにその”リーダー”なんですよね。

目的を1つに置いて変化し続ける環境をつくるのが、成果を出し続けるチーム。そんな中で「共に創る」の共創ができないチームをつくってしまう特徴を考えよう、というこのセッション。

中竹さんからご提案いただいて入れたんですけど、あえて「できないほうを考える」ってどういうことなのか、ご説明いただいてもいいですか?

中竹:人間の思考って、同じ観点から見るだけではなかなかいい考えって出てこないんですね。だいたい、理想って実現されていないものなので、考えようと思っても考えられないんですよ。「好きな人は誰ですか?」というよりも「嫌いな人は誰ですか?」のほうが、意外にどんどんと挙がってきたりするんです。

斉藤:(笑)。

中竹:社会学で物事の視点を変える研究をずっとやっていたんですけど、これやはり手法として使えたほうがいいというので、私が考えたのが次のページですね。

対極視点法というのがあるんですが、これは私がラグビーの時もチームづくりでしょっちゅう使ったんですね。「どんなゲームをしたいんだ? どんなゲーム展開だと50対0で勝つと思う?」みたいなことを聞くというより、逆に「どんなプレーがたくさん出ると、50対0で負けちゃうんだろうか?」と考える。

人ってだいたい、理想のことやいいことのほうが気持ちいいから考えがちなんですけど、いやいやちょっと待てよと。境界線や琴線に触れるところを明確にすることによって、我々って思考が豊かになります。

これは私がやったんじゃなくて、一緒にやっていた仲間がやったものなんですが。最年少のラグビー日本代表であるU-17の高校生を遠征に連れていって、いろんなチームづくりを本当に1週間でやらないといけない時があったんです。その時にいろんな問いをして、ワークをやったんです。

おもしろいことに、一番盛り上がったのは「いじめをなくすにはどうしたらいいか」という問いではなく「いじめを加速させるには、どういうことをやるといいか」みたいな。この問いをすると、ふだんしゃべんないやつがどんどんとしゃべり出すんです。

それを対極に持ってきて「自分たちが今、チームづくりの中で何をやらないといけないのか?」を、極論して逆を考えていくと、見たいものが見えてくるというのは大きな視点であります。それで出させていただきました。

「共創できないチーム」をつくるリーダーが取りがちな言動

中竹:ぜひ今日はみなさんと共に、この時間をつくっていただきたいなと思っていますので。

みなさんの経験から、共創できないチームをつくってしまうリーダーがどのような言動を取るのか? 具体的な言動とかがあるとイメージが湧きやすいので、ぜひ、どんどん書いていただければなと思います。

斉藤:どんどんコメントいただいていますね。「俺の言うことを聞いていればいいんだ」「それでいいんじゃない?」と言う人、確かにいますね。

中竹:「それでいいんじゃない」は、しょっちゅう言っていますね。ちょっとドキッとしましたね。

斉藤:(笑)。

中竹:反省します。

斉藤:前提の信頼関係があって「自分のことをちゃんと理解してくれている」というのが伝わっていればいいんでしょうね。「コーチをされている」と感じているとよくない、ということでしょうね。

起こるかどうかわからないリスクを挙げてくることで、やる気をそいじゃうということもありますよね。チャットに「若い時の成功体験に縛られて押し付けてくる」というのも上がっていますね。

中竹:「犯人探し」もそうですよね。みなさんいいですね。

斉藤:「否定から入る人」。いやぁ、まさに。ドキッとしますね。「引き算思考、引き算評価」、減点思考や減点評価とも言われるんですかね。「上には重々で、下には横柄」、ああ、なるほど。

中竹:いますよね。これね。

斉藤:(笑)。いますか。「今はタイミングじゃないからもう少し待って」と言われても、これも確かにいつまで待てばいいのかわからないなと思うし「せっかく言ったのにな」と思っちゃいますよね。そうですよね。

おお、ドぎついですね。「俺の評価が下がるような行動をするな」。

中竹:ある意味、これを言える人ってすごいなと尊敬しますけど。

斉藤:(笑)。

悪気なく“よくない言動”を取っている人を変えるには?

中竹:こんな感じで、嫌いとかちょっと嫌だなと思う言動のほうが、実は脳科学的に見てもネガティブな感情のほうが、人間の心に残っていくんですね。いろんな観点がありますが、最近の問題だと、いじめとかで人から言われたことってすごく強烈な印象で残っちゃうんですよね。

そういう意味では、それをどんどん覆していくために、Uniposさんのサービスを入れてポジティブに上書きをしないといけないんです。それって1対1じゃないです。上書きするというのは、2倍3倍ものポジティブなメッセージが必要ですので。

斉藤:まさに中竹さんの提唱されている、フォロワーシップ型のリーダーという考え方があるんじゃないですかね。「リーダーシップを持つフォロワーがいてもいいし、フォロワーシップを持つリーダーがいてもいい」という発言をされていらっしゃいましたね。

この対極視点法の中で、中竹さんの「それでいいんじゃない? でドキッとしましたね」という発言が素敵だなと思ったんです。これこそが、対極して目指したい世界なのかなと思って。みなさんも今、チャットにコメントを書いていらっしゃると同時に、読んでいらっしゃると思うんですね。

読んでいた時に、自分自身や身の回りでドキッとしたことってありますか? 僕自身はあるんですけど(笑)。それを思った時に「じゃあそれってポジティブにすると、どういうことができるんだろうな?」と考えるのが、まさにこの対極視点法のヒントなんですね。

中竹:そうですね。

斉藤:そうすると、自分自身を応援してくれるフォロワーが増えていく。自分がやる気になって「やってよかったな」と思えるので、変化に対して前向きになれるチームができる循環を、どんどん生み出してくれる。今も書いていただいていますけれども、いい気付きが溢れているなと思いましたね。

中竹:みなさん書いているのを見ると「ああ、そうだそうだ。自分では出てこなかったけれど、確かにな」と共感することが多いなと思いますけど、意外にこういう人たちに伝えるのって難しいんですよね。

斉藤:うーん。

中竹:チームづくりしていた時に、私は基本フォロワーシップ型なのであまり引っ張らないし「みんなでがんばろうよ」というタイプでした。任せる選手のリーダーたち、例えばキャプテンやバイスキャプテン(副キャプテン)がこれまでトップダウンで来ていて、悪気なく「俺について来い」みたいな人で、そういう人のチームになると、なかなか共創できるチームにならない。

悪気なく、ここのみなさんが考えているような言動になってしまう人がいるんですよ。これを変えるのはけっこう難しいですね。その時に大事なのは、あえて本人の事例とは言わずに、1対1で先ほどの対極視点法とかを使いながら「共創できないチームってどういうチーム? その時ってどういうリーダーいるんだっけ?」みたいなことを照らし合わせる1on1は、けっこうやっていましたよね。

斉藤:プラスアルファで、そのあとの再解釈が重要なんでしょうね。

中竹:そうですね。

斉藤:だからこそ「自分はこうするんだ」と宣言して、チェックアウトすることが重要だなと。対極視点法で得た気付きから「じゃあ、自分の言動をこうしていこう」「自分はこうやって行動しよう」というのを1つ宣言してチェックアウトしていただけると、変わるきっかけが生まれる。そういう循環なのかなと思います。

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